21/07/25(日)02:17:37 黒く濁... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1627147057479.jpg 21/07/25(日)02:17:37 No.827225614
黒く濁った空が、アタシの心情を代弁するかのように雨を降り注がせて体を打たせる。あいつの、とりあえずと作られた墓の前で膝をつきながらアタシは後悔の念を静かに吐き出していた。 あの時、アタシが居れば。あの時、アタシが駆けつけてれば。あの時、あの時…後悔は濁流となって押し寄せてくるのに、不思議と感情は昂ぶりを見せない。雨に濡れて冷えていく指先が、とてもつらくて悲しくて。そんな言い訳を洗い流すように、ただひたすら謝り続けていた。 「ゴールドシップさん。一度、学校に戻ろう。」 そういって傘を差し出してきたのは、ライス。少し変わってたけど、アタシの友達であることには変わりなかった。スイープの次に、大事なやつ。 「…もう少しだけ、こうさせてくれ。アタシは、もっと、何か…」 後悔を洗い流さなきゃ、と続けようとすると強く言葉で諫められる。
1 21/07/25(日)02:17:52 No.827225663
「…貴方が悲しいばかりじゃない。ライスだって、私だって…!あの時あの場に居れたらどれだけ良かったことかっ!…毎日、夢に見るんだよ…?あの時いなかったのに、目の前で、スイープちゃんが倒れちゃう夢…寝ても覚めても、あの子がいる気がしちゃう。辛いのは、貴方だけじゃない。…だからせめて、その辛さは共有させて。」 傘を突き出して、涙をにじませながらそう言い放つ。はっと、自分の思考を戻して目の前の大事な友達の涙をぬぐう。冷えた指が温かい頬に当たって、心地よかった。 「…ああ、そうだったな。ごめん、ライス。」 冷たく堪えた身体を包むような、小さな黒い体。それでも今、アタシが求める安らぎはそれと言っていいほどに、温かみを感じれた。 二人で抱き合い、互いに拭う。スイープがいたら、情けないなんて軽口を叩くんだろうけど。それでも、今だけは見逃してくれよ、スイープ。 横目に映る墓石が、涙を流すように左右に水が分かれて。なんだかそれが、スイープの涙に思えて。アタシの脳を、離さなかった。
2 21/07/25(日)02:18:04 No.827225710
それにしても、魔法界というものは残酷なものだ。一度無くしたそれを取り戻す術はない、と勝手に宣いやがる。それを奪う方法は、数多としてあるのに。 くるまれた複数の羊皮紙を解いては投げを繰り返し、出口のない迷路に入ったような底なしさを感じる。 今のアタシを見たら、スイープは叱ってくれるんだろう。でも、今のアタシはそれじゃ止まれない。禁忌すら厭わない覚悟が、そう示している。絶対にお前を、底から掬い上げて見せる。 けれどその覚悟はあくまで覚悟。見つからないものは見つからないものなのだ。最後の羊皮紙を捨てたとき、アタシはそう思った。こんな世界、潰れて消えてしまえばいいのにと。 あの子は、秀才だ。魔法界で一番才能があって、一番優しい心の持ち主で。例のあの人なんていうバカげた奴らなんかよりも、よっぽど魔法界を背負っていける人物だった。無情にもそれは奪われて、それを奪ったやつは既に死んで。やり場のない気持ちをそれに向けながら、ひたすらに文書を読んでは違うとかなぐり捨てる。はぁ、はぁと焦りが体を蝕んで、余計に重苦しく体をきしませてくる。
3 21/07/25(日)02:18:17 No.827225757
そんな日々を過ごしていたある日。いつもの幻覚が目の前に見えた。スイープが、アタシを起こそうとするところ。ゆすられる感覚がした後、あいつの声が。 『起きなさいゴールドシップ、今日はいい朝よ。晴れやかで、とっても心地いいわ。』 寝ぼけながら起き上がると、キラキラと光る陽に顔を隠したスイープがにこやかにこちらに微笑む。 「…す、すいー、ぷ?」 幻覚だというのに、その名を壁に叩きつける。その返答が返ってくることはなく、光が収まるにつれて彼女はどこかへ霧散していった。 「…はぁ、はぁ…」 途端吹き出る脂汗が吐き気を誘発して、今日は朝に一回目を吐き出した。ポリジュース薬のようなどろどろした緑色が、吸い込まれていく。 「…たく、よ。アタシの体、もっと丈夫だと思ってたのにな…」 自嘲気味に洗面台に笑いかけながら、汗をぬぐう。鏡の自分と目が合って、酷い顔だと自虐する。乱れた髪に青ざめた頬、少しやせた印象を受けるも、それがアタシであることを受け入れるのに時間はいらなかった。
4 21/07/25(日)02:18:29 No.827225776
自分のそれを確認していると、ふとドアがこんこんと鳴った。ライスか?と思って特に化粧もせずドアを開ける。 結論から言えば、最悪だった。あの家のクソどもが送り込んだであろう、醜い瘴気をまとった黒装束。死喰い人の屑どもということに、そこまで時間はかからなかった。 「…!何しに、きやがった…!そのローブ、取っちまえよ!」 腰に差していた杖を取り出して臨戦態勢をとる。その言葉にこたえるかのように剝ぎ取れたローブの顔を見て、アタシは体を硬直させた。 「……ばあ、ちゃん…?」 理解を拒む脳に、否応なしに現実は叩き込んでくる。しわしわになったけど、厳しさの残る顔。あの時アタシを慰めてくれたその手には、杖が握られている。 「あんたにばあちゃんと言われる筋合いはないね。勘当されたバカが、今更家族面かい。反吐が出る。」 耳障りなその声が、嫌だった。今すぐにでも禁術を解放したくて、早く少しでもこの痛みを飲み込みたくて。その禁術を、喉まで昇らせた。
5 21/07/25(日)02:18:42 No.827225810
ただそれは、昇るだけだった。出そうとする瞬間、脳裏に浮かんだのは家族との思い出。小さい頃はやんちゃしてばっかりでいつも怒られていたけど、そんなアタシをばあちゃんは諫めながら慰めてくれていた。確かに厳しい言葉だったけど、その中に入る優しさが心地よかった。その思い出を、自分で殺すのだ。嫌な冷たさを背後には知らせてしまって、ぐっと駆け巡ったそれ等が、アタシに一瞬のためらいを作ってしまう。 「やっぱりアンタ、甘ちゃんだね。ステューピファイ!」 放たれた閃光がアタシに直撃して、膝をつく。無駄にしぶとい体に嫌味を言いつつ、ギシギシと鳴る体に鞭を打つ。 「…しぶといのは親譲りかね。せいぜい利用させてもらうよ。」 そういわれて、頭の中を覗き込まれる。激しい痛みに嘔吐が体を襲って、ただでさえ苦しい痛みがさらに加速する。 「なんだい、もう半分こっち側だったのかい。…悪いことは言わん、お前もこっちに来い。今なら口利きしてやるから。SS様の探す死の秘宝が、アンタを救うかもしれないよ。」
6 21/07/25(日)02:18:57 No.827225858
死の秘宝。何度も書物で見聞きした、異端のマジックアイテム。あるわけない、と頭ごなしに否定するには知識をつけすぎてしまった。けれど、それに屈するぐらいなら。クズに落ちるぐらいなら。 「…へ…そん、なの…!…信じ、られるか。っつーの…!…あるわけもねぇ、秘宝なんかに…現、抜かしてんじゃねえぞ…!」 軋む体を起き上がらせて、そうにらみつける。意外だったのかもしれない、そう思うほどに目の前のそれは酷く狼狽した表情を作った。今更、ためらってんじゃねえぞ。そう口に出す前に、ばあちゃんはこういった。 「…なら、せめてアタシの手で殺してやるよ。」 そういって放たれたのは、悪霊の火。燃え盛る炎が体を包み、アタシの羊皮紙群もまとめて焼き尽くしていく。熱さに体を堪えさせながら、歯を食いしばって立ち上がる。 「…やる、じゃねえか…!ばあちゃん…こんな、力…持って、たなんてよ…!」 黒くくすんだ瞳が光を取り戻して、照る炎に輝いた。不敵に笑って、相手を最後まで威嚇した。燃え盛る炎に身を焦がし、最後に考え事をぽつりと吐き出す。既にばあちゃんは、姿くらましで消えていた。
7 21/07/25(日)02:19:08 No.827225900
「…ライ、ス…ごめん、な。アタシまで、お前を置いてっちまうよ…!…でも、よ。…不思議と、寂しくはねえんだ。…向こうに、あいつ、が…いる、から……か、な…」 崩れ落ちる体を支える暇もなく、体は燃えて燃えて燃え上がる。最後に残った意識は当に消えていたが、アタシの手を引く懐かしい感触が、上へ上へと導いてくれた。そうしてアタシは、一人のウマ娘として。一人の魔法使いとして、燃え尽きていった。
8 <a href="mailto:s">21/07/25(日)02:19:32</a> [s] No.827225979
書くだけ書いておこうと思ったスイープポッターゴルシ 解釈違いあったらすまん
9 21/07/25(日)02:32:55 No.827228439
>書くだけ書いておこうと思ったスイープポッターゴルシ >解釈違いあったらすまん とてもよかった… 解釈違いというか魔法使いはホグワーツ内で姿眩ましが使えないくらいだけど些細なことさ
10 21/07/25(日)02:33:24 No.827228511
かなりあやふやな記憶で書いてたからそこはごめん
11 21/07/25(日)02:35:05 No.827228755
ほぼほぼ介錯一致のものを書いてもらえて本当にありがたい 満足したのでアーチの向こう側に失礼する
12 21/07/25(日)02:39:57 No.827229492
fu189644.png
13 画像ファイル名:1627148580596.png 21/07/25(日)02:43:00 No.827229930
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
14 21/07/25(日)02:43:36 No.827230004
>ほぼほぼ介錯一致のものを書いてもらえて本当にありがたい >満足したのでアーチの向こう側に失礼する おい待てェ失礼するんじゃねぇ これ以上アーチの向こう側に行く奴を増やしちゃならねぇだろうが
15 21/07/25(日)02:50:55 No.827230917
>fu189644.png この三人を題材にした話を書こうと思ったけどうまく文章にできなかった… 少し泣く
16 21/07/25(日)02:53:20 No.827231233
まあこの時空は閉じたから… このまま終わってたら耐えられなかった
17 21/07/25(日)02:54:02 No.827231312
こっそりスレ画お借りして別の部分をかかせてもらいたいんだけども良いかな…
18 <a href="mailto:s">21/07/25(日)02:54:20</a> [s] No.827231352
>こっそりスレ画お借りして別の部分をかかせてもらいたいんだけども良いかな… めちゃくちゃ適当に作ったやつだけどそれでいいなら自由に使ってくれ
19 21/07/25(日)02:57:39 No.827231759
>No.827229930 最近追ってなかったけどここでゴルシ死んだの知って本編読んできた ちょっと泣きながら描いた
20 21/07/25(日)02:58:57 No.827231944
fu189991.jpg 書こうと思って作ったやつあるのでよろしければどうぞ
21 21/07/25(日)03:05:37 No.827232804
誇り高いグリフィンドール生だったよなぁゴルシは…
22 21/07/25(日)03:15:28 No.827233896
光属性だからどんなに苦しんでも悪になる才能が無かったんだろうな…
23 21/07/25(日)03:23:08 No.827234783
>魔法界というものは残酷なものだ。一度無くしたそれを取り戻す術はない、と勝手に宣いやがる。それを奪う方法は、数多としてあるのに。 ここの怒りが辛い…
24 21/07/25(日)04:15:05 No.827239418
美しい銀髪も消し炭になったし抜群のプロポーションも神々しい美貌も何一つ残ってないんだよね…