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21/07/25(日)00:14:31 「幸太... のスレッド詳細

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21/07/25(日)00:14:31 No.827187228

「幸太郎さん、失礼します」 夏の暑い時期のこと。 フランシュシュの活動も軌道に乗ってきた頃、ある晩さくらが俺の部屋を訪ねてきた。 「何じゃい?用事って」 「あの……その…………香水が欲しいんです」

1 21/07/25(日)00:23:03 No.827190722

微妙にもじもじしながら、さくらはそう呟いた。 何かねだるにしても、生活用品や実用品なら俺も驚かない。しかし、香水か。香水……。 この年頃の女子なら普通……なのか?……わからん。ま、まさかさくらに気になる人でも!? ……という思考が顔に漏れていたらしい。 「幸太郎さん……すごい顔ゆがんでますよ」 「……失礼。意図を量りかねたのでな」 「たぶん、幸太郎さんが想像してるようなことじゃなかです」 「じゃあ、なんだ」 「ほら、私たちゾンビじゃないですか?それでしばらく生活してて気づいて、他の皆もだいたい  同意してくれたんですけど…………『移りやすいんです』」 「……なるほど。しごく実用的な意味じゃったか」 「あとイメージ的にまずいですよ!消臭スプレーや防水スプレーの匂いのするアイドルなんて!!」

2 21/07/25(日)00:23:48 No.827191042

「すまなかったな。そういうことまで気が回らなくて。まぁ、ちょっと考えてみるわ」 「ありがとうございます」 あくまでアイドル活動の観点で必要ということで安堵するが、ふとここで疑問が湧く。 「ところで、何故さくら一人で来たんだ?普段のミーティングの時にでも言えばいいじゃろ」 「そ、それは……」 何故か口ごもり、目を逸らすさくら。 「ゆ、ゆうぎりさんが言ってました。『幸太郎はんにおねだりするなら、さくらはん一人の方が  ええでっしゃろ』って。意味はよくわからんかったですけど……」 「あの花魁め……。……別に意味はわからなくていい」 どうもあの人は苦手だ。すべてを見透かされていそうで。現に、俺がさくらの……、まあいい。 こちらがヘタを打たなければ、多分向こうも積極的に動くということもないだろう。

3 21/07/25(日)00:24:35 No.827191356

「色々調べたり、準備とか実際の買い物とか……そうだな……。とりあえず一週間時間をくれ」 「はい!」 当面の不安が解消されたせいか、さくらはニッコリと笑って部屋を去った。さて、どうしたものか。 ・・・・・・ 幸太郎さんが私たちに香水を買うと言ってくれた日から一週間が過ぎた。 普段はミーティングは地下室で行なっているが、今日は応接間でいいと彼は言う。 「おっはようございまーす!!」 「「おはようございます……」」 「ちょい声が小さいが……まあいい」 少し不満げな彼は、胸にダンボール箱を抱えて立っていた。 「それって……?」 「この前言ってたものが揃ったのでな。まあ、他の皆もさくらから話は聞いてると思うが」

4 21/07/25(日)00:25:16 No.827191676

幸太郎さんの言葉を聴いて、明らかに周囲の空気がぱっと明るくなる。 「やっとこの時が」とか「アイツ……仕事は早いのよね~」とか口々に言うのが聞こえる。 彼が箱をローテーブルに置くと、そこにサキちゃんが手を伸ばした。 すると、幸太郎さんはするっと箱をその手から避ける。 「……私らにくれるものじゃなか?」 「そうだが、まあ待てサキ」 「チッ」 制止されて、頬杖をついてサキちゃんはソファに座り直す。 「単にワシがお前らに香水をプライベートで贈る、というのなら箱を開けて勝手にしろ、で済む。 しかしこれは……仕事道具だ。仕事に関することだから、まずは俺が説明する。その上で何か 不満があるなら、後で文句を言いに来い」

5 21/07/25(日)00:25:43 No.827191879

そして地下室から運んできたのか、いつの間にかある黒板の横に彼は立ち、説明し始めた。    まずは香水自体の簡単な説明。香りの種類や、持続時間などによる分類、あるいは香水    以外の香りをつけるものについて。今回用意した物には香水ではないものもあるとか。    次に、どういう意味で「仕事道具」なのかを話した。つまり、これは「香りによる個人    のイメージ戦略」である、と。メンバーそれぞれが「特定の香り」を身に付けることで    ファンに強く印象付けたい、と。    だから、今回は種類を多めに用意したが最終的には「どれか一つ」を選ぶようにと彼は    言う。そして、「個人イメージ」なので「香りのダブり」はない方が良い。とも。    これから数日間は「実験期間」にするらしい。実際につけてみて香りや持続時間を見る    ように、と。

6 21/07/25(日)00:26:23 No.827192188

幸太郎さんが話している間、サキちゃんは「せからしい、はよつけさせろ」と若干イラ立ち、純子 ちゃんはふんふんと頷き、感心している様子を見せる。愛ちゃんも「アイツもたまにはマトモなこ ともするじゃないの」と「香り戦略」には概ね賛同のようだった。ゆうぎりさんは普段通り笑顔で 黙って話を聴いていた。リリィちゃんは彼の口から時折出る雑学的な話題に「へ~」と返す。たえ ちゃんは鼻を鳴らして箱を破壊しようとするので、私が止めていた。 「まあ、こんなところだ」と、幸太郎さんは小一時間喋り通した。聴いてる方は学校の授業を一限 分受けたみたいな気分で若干グッタリしていた。 彼に「箱の中を見ていい」と言われたので、みんなで箱のテープを剥がしたり、さらに中の箱をど んどん開けていく。様々な形の容器に色々な香水が入っている様子は、見るだけでも楽しい気分に させてくれた。しかしその一方で、私は幸太郎さんの懐具合を心配してしまう。 「こんなにたくさん……高くなかったですか?」

7 21/07/25(日)00:27:16 No.827192621

「言ったじゃろう、仕事道具だと。必要経費だ。それに、さっきも言ったが種類があるのは今回  だけで、一人一つに絞ってもらうからな」 「……」 「投資じゃ投資。これで「香り戦略」が成功してファンが増えれば、香水代なぞラクに回収できる  じゃろう」 そうして数日間は、「香りの実験期間」となった。 一週間程度経って、身に付ける香りはだいたい決まりつつあった。 最速はたえちゃんだった。要するに、第一印象重視で「本人の食いつき(文字通り)」の良いものが 選ばれた。元々たえちゃん向けに何種類か用意されたものの一つで、複雑でないものだった。 つまり、配合されている香りの種類が元々少なく揮発してもあまり変化の少ないものということだ。 メインとなる香りはナンテンだった。

8 21/07/25(日)00:27:51 No.827192871

サキちゃんは、シトラスフルーティなものを選んだ。メインが柑橘系なのは本人の快活なイメージ とも合っていると思う。決め手はラストノートがトンカビーンズだったことだ。香りが"桜"の葉に 似てるというのも個人的には悪い気はしない。 愛ちゃんと純子ちゃんは、王道のフローラルフルーティ。基調の香りは、ラベンダーと薔薇。愛ち ゃんはクール系だし、純子ちゃんは内に秘めた情熱みたいなものが表されてて良い。 リリィちゃんは、香り始めは林檎で徐々にヒヤシンスの爽やかさが広がる、ジャンルとしては「フ ルーティグリーン」と呼ばれるもの。中性的な印象が反映されている。 ゆうぎりさんは、そもそも香水ではなかった。アガーウッドのエッセンシャルオイルというものら しい。まあ、これも元からゆうぎりさん向けに用意したんだろうけど。本人は「きゃらあぶらのに おいが懐かしい」と言っていた。何かはよくわからん。 ……で、源さくらは?

9 21/07/25(日)00:28:45 No.827193216

他のみんなが思い思いに自分のイメージの香りを決めた中、私は迷っていた。 別に、幸太郎さんのチョイスに問題があったというわけではない。 むしろ、全体的には私の好みとも合っていたように思える。しかし「一つだけ選べ」と言われると どれも決め手に欠けるのもまた正直な印象だった。 彼のいない、布団を敷いて寝る準備をしている時になんとなく私は呟く。 「幸太郎さんに選んでもらう訳にはいかんかなあ?」 すると、サキちゃんから思わぬツッコミをされる。 「さくら、もしかしてグラサンのこと好いとー?」 「えっ!?」 「まあ、特定の男性の好みの香りをつけたいって彼女みたいな発想だよね」 「おっ?チンチクもそう思うとか?」 「チンチクじゃないもん!!」

10 21/07/25(日)00:29:22 No.827193440

リリィちゃんとサキちゃんがいつものやり取りをしてる中、私はなんだか体が火照る気がした。 ゾンビだから「気がした」だけだけど。 困ってるように見えたのか、今度は純子ちゃんが助け舟を出す。 「さくらさんがそう思うなら、まずは素直に尋ねてみてはどうでしょうか?」 「そ、そうだね」 翌日の朝、私は幸太郎さんが一人でいる時を見計らって声をかけた。 「あ、あの……おはようございます幸太郎さん」 「おはよう、さくら。その顔は何か用事か?」 「香水のことなんですけど……。今回買ったもので幸太郎さんの一番好みのってどれですか?」 彼の眉がぴくりと動いた。……あ、なんかこの雰囲気は……。 「何故そんなことを俺に訊く」

11 21/07/25(日)00:30:15 No.827193811

「こ、幸太郎さんの好きなものにしようかと思って」 すると彼は腕を組み、落ち着いた声でも若干厳しい印象で私を諭した。 「ゾンビィとはいえ自分の体は自分のものだ。香水の匂いを一番嗅ぐのは他でもないさくら自身。  自らが心地よい匂いを纏うのが、一番仕事にも身が入るんじゃないか?」 「……少し、考えてみます」 自分でも気づかないうちに頬が膨らむ。そして捨て台詞みたいな言い方をして、私は幸太郎さんの 傍を去った。単純な話、彼の言ったことは気に入らなかった。一から十まで正論に思えるからこそ、 私を不機嫌にさせた。あ~あ……どやんす? その晩、寝床で今回のことを私は愛ちゃんに愚痴った。しかし、返答は意外なものだった。 「まあアイツの言う事も一理あると思うけどね」 「どういう意味?愛ちゃん」

12 21/07/25(日)00:31:03 No.827194110

「単純な話よ。例えば、アイツが選んだ香りがさくらの好みじゃなかった場合、さくらは我慢して それを身に付けるの?ってこと」 「確かにそれは困るとね……」 「別にアイツのためにそこまでする義理はないでしょ」 「まあ、普通に恋人とかだったら互いに話し合って自分の好みを言い合えばよさそうだけど、今の  アイツが素直に教えてくれるかっていうと怪しいもんだし」 「う~ん……」 それにしてもサキちゃんにしろ愛ちゃんにしろ、私はそんなに幸太郎さんのことが好きなように 見えるんだろうか?多分今の自分に過去の記憶がないから、雛の刷り込みっぽくなってるだけ…… だよね?多分?……絶対そうだ。 「なんか微妙に気が利かないわよね。個人のイメージどうこう言うなら、それこそ桜の香りのする  香水でも用意すればいいのに」

13 21/07/25(日)00:31:49 No.827194415

"桜の香り"。自分は考えもしなかったが、確かにそれは良いアイディアかも。ただ……。 「愛ちゃん、私一応対外的にはフランシュシュ1号だから……」 「……そうだったわね」 「巽さんの好みの香りではないとか?」 「……」 隣で聴いていた純子ちゃんが口を挟んだ。しかし、自分たちで言っていて何か引っかかったのだ。 "桜の香り"。でも、この時は何が原因なのかはわからなかった。 「わ、私が桜の香りばしてても、別に名前には結びつかんよね?」 「それもそうね」「……大丈夫だと思います」 そうすると決まったわけではないけど、私が桜の香りを身に纏うことに問題がないか、確認した。

14 21/07/25(日)00:32:37 No.827194733

本人が教えてくれないせいもあって、何故か私は意地になっていた。「幸太郎さんの好みの香りを 見つけるぞ」と。それと、何故かはわからないけど、彼と私の好みが合わないということはないだ ろうという確信があった。でも、具体的にどうすればいいのかわからないまま数日が過ぎた。 そんなことを考えていた頃、いつもの朝の地下ミーティングが終わった後で私はゆうぎりさんに 「地上に上がらず、少し待つように」と呼びとめられる。 ゆうぎりさんも、幸太郎さんと同じでなんだかよくわからんけどすごか人という印象だけはある。 何故なら、あの特攻隊長のサキちゃんが一線引いてるくらいだからだ。 「悩んでいるようでありんすな。香りのことで」 「ゆうぎりさん……はい」 彼女に呼ばれると、何故だか自分が悪いことをしたんじゃないかと不安になったが、予想に反して 話題は"私の困りごと"に関することだった。

15 21/07/25(日)00:33:25 No.827195013

「さくらはんは幸太郎はんの好みに合わせたいと思いんす。でも本人からは応えて来いせん……と。  そんなところでありんすな?」 「まあ……はい」 俯く私。横に並んだ椅子に座ってそれぞれ前を向いて話していたが、ゆうぎりさんがこっちを向く。 「常々につぶさに見なんし」 「え?」 「直に尋ねても、その口から出る言葉が真であるとは限りいんせん。でも、日々のふるまいで嘘を  つきつづけることは難いこと。そこから、おのずとさくらはんの求める答えに繋がると思いんす」 「幸太郎さんの日常を観察すれば、そのうちに好みの香りも見つけられる、と?」 「左様」 「なるほど……そうかもしれませんね。ちょっとやってみます」 「あい」 顔を上げた私を見て、ゆうぎりさんはニッコリと笑った。多分、私が男なら"落ちてた"。

16 21/07/25(日)00:34:06 No.827195299

話が終わって、階段を上る私の下から、かすかにつぶやきが聞こえた。 「……素直でなくて困ったお人でありんす」 そのつぶやきについて、私にはその真意がまだ分からなかった。 それから数日、彼女のアドバイス通りに幸太郎さんの普段の生活を可能な限り見続けた。 もちろん、怪しまれない範囲で。……ちょっとは怪しまれてたかも。 そして、ある日のこと。とうとう私は見つけた。目当てのものを。 なるほど…………なるほど。そういうことだったのか。 今回の件で絡まっていた紐は、すべて解けた。これで、「自分が身に纏う香り」も決まった。 ……ゆうぎりさんは、多分初めからわかってたんだ。でも、自力で気づけて良かった。 その晩は興奮しすぎてほとんど寝られなかった。まあ、ゾンビだから寝なくてもいいんだけど。

17 21/07/25(日)00:35:47 No.827195959

「源さくらの香り」について、問題が全部解消されたわけではなかった。私の希望する香りは幸太郎 さんが買ってきた香水の中にはなかったので、改めて用意して貰う必要がある。ただ、「商品」その ものを彼に直接知られたくはなかった。これは、「好みを言わなかった復讐」も兼ねている。あと、 幸太郎さんには自分で気づいてほしいと思ったからだ。 それで、どうするのか。……まあ、おねだり再びである。 ・・・・・・ 俺が彼女の「要望」を突っぱねて一週間ぐらい経った後の晩、俺の部屋にフランシュシュのメンバー が全員一度にやってきた。先導するのは源さくら。 「なんじゃい、こんなゾロゾロ引き連れて」 「別に私は、一人でもよかったんですけど……」 「グラサンの回答次第では、こっちも考えがあるけんな」 ニヤっと不敵な笑みを浮かべるサキ。え?何、怖い。

18 21/07/25(日)00:36:28 No.827196190

「幸太郎はんは、そんな冷たいお人ではないと思いんす」 流し目でこちらを見るゆうぎり。別の意味で怖い。 「今は夜も遅い。さっさと用件を言え、さくら」 「えっと……香水……というか香水とは限らないんですけど……を買うためのお小遣いを下さい」 「え?」 ここ数日、俺から見ても悩んでいる様子だったさくらが昨日から何かスッキリした表情になったから てっきり「選ぶ香水」を決めたのかと思っていた。しかし違った。 「香水なら、俺がこの前買ったのがあれだけ色々種類があるじゃないか」 「……私は、あの中からは選ばんとです」 さくらはこちらを真っ直ぐ見て、力強くそう宣言した。

19 21/07/25(日)00:37:19 No.827196488

以前に"自分で選べ"と言った以上、さくらがそうするのを俺に止める権利はなかった。しかし、彼女 に"だけ"直接現金を渡すのは何か抵抗感があった。まるで贔屓しているみたいで……。 「……別のものが欲しいというのはわかった。何かアテがあるのか?それなら俺が買って……」 俺は精一杯の抵抗をした。だが、 「私は自分の好みの香りを身に纏います。その内容をあなたが知る必然性はありません。幸太郎さん  の好みも私、知りませんし。自分で選べと言ったんですら、ちゃんと選ばせてください」 「むむむ」 俺が自分の好みを言わなかったのを、根に持ってるのかコイツ……。さらに、トドメを純子が刺す。 「巽さん、さくらさんのこと信用してないんですか?仕事道具ですし、ちゃんと必要なものを買って  来るだけだと思いますよ?」 「………………わかった。さくらが何を買うかは詮索しない。しかし、予算くらいは教えてくれ」

20 21/07/25(日)00:37:57 No.827196692

俺が承諾したのを見て、フランシュシュメンバーは一斉に喜んでいた。 いや、小遣い渡すのさくらだけだぞ? その後、さくらは予算を伝えたが、幸いにして大した金額ではなかった。 俺に小遣いをねだる前に目星がついていたせいか、さくらが"目的の品"を入手するのに大して時間は かからなかったようだ。"ようだ"というのは、何日か経った後に俺がメイクする時にさくらの匂いの 変化に気づいたからだ。ただ本人から特別何か言ってくるわけでもないし、俺の方から指摘するのも 微妙にセクハラっぽい気がしたので黙ったままにした。 が、どうも何か気になる。その香りの正体が。 別に香りそのものに問題がある訳ではない。むしろ個人的には好みだとすら言える。 ただ、そもそもその香りにどこか"覚えがあった"。 とりあえず、以前に買った香水類の中に該当する香りはなかった。 では、どこで?

21 21/07/25(日)00:38:45 No.827196954

悶々とした気持ちのまま、幾日か過ぎた。ある晩、廊下ですれ違った愛にさりげなく尋ねてみる。 「結局、さくらのやつ何を買ったんだ?」 「それは言わないと思うわよ」 「まあ、そうだろうと思う。だから愛に尋ねたというのもあるんだが」 すると、愛はため息をつきやれやれといった手つきをした。 「アンタ、元々さくらに『自分で選べ』って言って、『じゃあお小遣い下さい』って返されてお金  渡したんでしょ?だったらそれ以上訊くのは野暮ってもんじゃない?」 「むむむ」 どうやら愛は"香りの正体"を知っているようだ。しかし、教えてくれるような様子もなかった。 「それとも何?今のさくらがしてる香りに不満でもあるの?」 「そうではないんじゃが……なんか引っかかるんだよなあ」 「……まあ、アンタもそのうち気づくとは思うけどね」 彼女はそう答えて、俺に背を向けて片腕を上げて手を振られてそのまま置いてかれてしまった。

22 21/07/25(日)00:40:11 No.827197468

数日後の夜、風呂に入っていた俺はいつも使っているシャンプーのノズルを押した。 シャンプーが手について香りがした時、「源さくら」のことが頭に浮かぶ。……何故だ? ……「あ」。 ここ最近の源さくらが漂わせていた匂いとは、"俺の使っていたシャンプー"が由来だった。 道理で"身に覚えがある"わけだ。 それにしても、この出来事はいくつかの意味で巽幸太郎を高揚させた。 つまり、さくらが俺を香りで喜ばせようとしたこと。 その俺の好む香りとは何か?さくらが考えた結果、それは俺自身が身に纏ってる香りであると。 そして、今のさくらが俺と同じ匂いを漂わせているという事実。

23 21/07/25(日)00:44:26 No.827198825

体が火照り、「血の巡りが良くなる」のを感じた。 思わず、自分の身の「衝動を鎮めようとした」。 「せ、生理現象は仕方ないじゃろがい……」 俺は、誰がいるわけでもないのにそんな言い訳を口走った。 "源さくらの香りの秘密"を知って少し経った頃、俺は「さくらに優しくなった」と他のメンバーから 口々に言われるようになった。 しかし、そんなものは気のせいだ。気のせいに決まっている。 【サクラ・カオル・タツミ】 おわり

24 21/07/25(日)00:44:54 No.827198959

乾くんの理性崩壊寸前

25 21/07/25(日)00:45:15 No.827199066

抱きなんし!!!!!!!!

26 21/07/25(日)00:46:41 No.827199554

さくらは巽の香りを抱いている

27 21/07/25(日)00:47:40 No.827199885

スケベでありんす…

28 21/07/25(日)00:50:57 No.827200960

「幸太郎さんの好みの香りをつけたい」と思うことに何の疑問もわかないさくらちゃん いいよね

29 21/07/25(日)00:53:57 No.827201859

>乾くんの理性崩壊寸前 崩壊しないように賢者にならないとね

30 21/07/25(日)00:56:02 No.827202536

こんなん恋人じゃん……

31 21/07/25(日)00:57:47 No.827203119

ああああああ!!・・・・・・ふぅ

32 21/07/25(日)01:00:36 No.827204095

(ゾンビだから生前の体臭までは再現できんか……)

33 21/07/25(日)01:00:41 No.827204124

さくらはん!恋心を自覚しなんし!!!!(バシィ

34 21/07/25(日)01:02:57 No.827204873

特殊メイク後のゾンビィ共はいい匂いしそうな雰囲気ある 実際はどうなってんのかわからんが

35 21/07/25(日)01:05:56 No.827205930

どうせ同じシャンプー使うならもう一緒に風呂入れよ

36 21/07/25(日)01:09:56 No.827207298

スレ立てた直後に急に重くなって焦ったが無事完走できてよかった

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