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21/07/22(木)14:14:03 よく友... のスレッド詳細

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21/07/22(木)14:14:03 No.826145729

よく友人たちに初恋を聞くとみんなウマ娘の名前を出す。 それはそうだ、それはそうだ。クラスで一人ぐらいしかいないけど、みんな必ず美人で不思議な尻尾と耳があるし、足も速くて、魅力なら同年代のヒトの女の子と比べると勝てる子のほうが少ない。 でもまぁ、そんなウマ娘の皆は小学校を卒業すると殆どが走るために中央だったり地方だったりのトレセン学園に行ってしまって、輝かしい黄金の時代はすっかり色を失いすっかりかすんだ中学時代を過ごすことになる。初恋とは叶わないものだ。 クラスで憧れのあの子は今や門で閉ざされた秘密の園の中、見ることができるのはテレビの中だけ。ウマ娘を彼女に出来たなんて男は宝くじで高額当選を出すぐらい幸運で、周りから英雄扱いだ。 そんな中、幸運にもチャンスは向こうから訪れた。 それは、昼と夜の飯を買うために近くのスーパーに立ち寄った時の事だった。

1 21/07/22(木)14:14:30 No.826145847

「ん…? もしかして〇〇じゃないかい?」 蒸し暑い外から逃げるようにして入ったスーパーの中で涼みつつ、。カップ麺や菓子類をかごの中に詰め込んでいると、ふと横から声をかけられた。そちらの方に顔を向けてみると、こちらの指を受けたウマ娘が目を丸くして立っている。 黒鹿毛の髪に、健康的なふくらみを感じられる肉体と褐色の肌。はて、自分にウマ娘の知り合いなんていたかな、と考えているとふと小学生の頃の呼び起こされて、こちらもひゅっと息をのんでしまう。 「あっ、も、もしかしてヒシアマ母さん!?」 「姐さんだ! なんでワンランクアップしているんだい!」 それはヒシアマゾンという小学校のころのクラスメイトだった。クラスでは男女隔たりなく優しく、時に強引で、悩みを聞いたり相談に乗ったりと頼れる姉貴分といったウマ娘でよくクラスの女子からはヒシアマ母さんとか冗談交じりに呼ばれていた。 もちろん自分にもよく気さくに話しかけてくれたり、世話を焼いてくれたりしていて、立派な初恋のウマ娘だった。男というものは何歳であろうとも優しくしてくれる女性に弱い。

2 21/07/22(木)14:14:52 No.826145949

数年ぶりの彼女はテレビで見るよりもさらに輝いて見えて、どこか野性じみた雰囲気さえも魅力的に感じてしまう。それに、数年越しだというのにすぐに自分だと気づいてくれたのが嬉しい。 「へぇ、家族が旅行で家に一人と。ご両親仲が良いんだねぇ」 「一人暮らし気分味わいたいって断ってるのもあるんだけどね。ヒシアマは…あ、寮だったっけ」 「おうよ! 寮長を任されててね、今日は暑いから冷たくて美味いもん食わせてやろうと思ってね! ちょうどここが特売やってたから、ちょっくら遠出してきたのさ!」 「えっ、料理…できるんだ」 「おいおい、長いことクラスメイトやってきたってのに知らなかったのかい?」 思わず言葉に出してしまった、昔からの面倒見の良さもあって、寮長ということはすんなり納得できたけど、まさか料理ができるなんてこれっぽっちも思ってなかったのだ。遠足の時にやたら凝ったお弁当を持ってきていて女子たちから羨望の眼差しを受けていたが、もしかしたらアレも自分で作ったりしていたのだろうか。

3 21/07/22(木)14:15:26 No.826146084

「って、なんだいなんだい、そう言うそっちはカップ麺やらばっかりじゃないか。食べちゃいけないってわけじゃないけど、こんなもんばっかりになってると体の調子崩しちまうよ!」 「だ、大丈夫だって…ヒシアマって本当にお母さんみたいだよな…」 「うるさいっ! とにかく、此処であったのも何かの縁ってね、お昼まだなんだろ? ウチにきて食ってきなよ!」 「ウチってまさかトレセン学園…!? い、いや行けるもんなら行きたいけど、他の人は入れないでしょ…」 「細かいことはいいんだよ、カフェテリアぐらいまでならなんとかするさ! このヒシアマ姐さん、昔のダチ公見捨てるほど薄情じゃあないよ!」 断るも承諾するもなく、そのまま自分の手を引っ張ってずんずんと進んで行くヒシアマにその柔らかい手の感触に思わず顔が赤くなる。昔からこの強引さでみんなを引っ張っていっていて、よく自分も引っ張られていた。そしてそんなところが好きだったんだと思い出す。 これがきっかけにならないかな、と夏の奇跡に少しだけ期待する。毎日、お味噌汁を作ってもらいたいってわけじゃないけど、彼女の隣にいたいという思いが何年ぶりかに湧いてきた。

4 21/07/22(木)14:16:19 No.826146299

「おーい! トレ公ー!」 そして通路を進んで連れてこられた野菜の並ぶ生鮮食品コーナーで、ヒシアマは声を上げた。すると、そこで野菜をかごに入れていた背が高くてそれ以上に花崗岩の擬人化したかのような男の人がこっちにゆるりと顔を向けた。影だけみれば熊のように見えるかもしれない。 「一人増えたけど構わないかい? 昔のダチ公なんだ!」 ヒシアマがそう言うと、トレ公とか言われた男の人はずっと迫力のある顔をこちらに近づけると、顔をふっとほころばせてゴツイ手をこちらに差し出した。 「初めまして、ヒシアマゾンのトレーナーをやっています。苦手な食材、アレルギーはありますか?」 ごつごつとした手で握手をしながら、男の人はそういった。 「えっ、いや…ない…ですけど」 「それはよかった、歩きですか? それなら車で送ってあげられるのですが」

5 21/07/22(木)14:16:57 No.826146481

トレーナーと言った男の人は、いきなりしらない人間がトレセン学園に来ることも、いきなり食べる人間が増えたことも、何も気にしていないようだった。 「トレ公も料理ができてね、時々一緒に作るのさ! まぁ一つ化けの皮を剥がすと、アタシとは違ったとんだジャンクフードコックだけどね!」 「ははは、本性をばらさないでくれよ」 「すぐ目を離すと、いっぽん丸ごと甘々煮トローリチーズinにんじんハンバーグなんか作りやがって! すぐにウチの後輩たちを誘惑の道に引きずり込もうとするんだからさ、まったく!」 「しかし元々といえば、あれはその後輩たちから作ってくれと頼まれたんだ。まぁ月に一回ぐらいはいいじゃないか」 「なぁ~にぃ~! あの高カロリー中毒者共~~!」 そういって二人で笑い合う姿に置いてけぼりにされるように、自分はただその場に立っていた。今までもこれからも二人はまるでお互いが隣にいるのが当たり前だとそう思っているような雰囲気が醸し出されていた。

6 21/07/22(木)14:17:27 No.826146627

支払いをしてくる、と自分のカゴまで一緒に持って行ってしまったトレーナーを、暑い外に出ながらヒシアマと一緒に車まで歩く。やっぱりいいです、なんて言えるタイミングはすっかり失ってしまっていた。 「まったく、次の料理タイマンじゃあ絶対ぎゃふんと言わしてやる。ずっと引き分け続きなんだよ。ほら車入りなよ、クーラー入れるからさ」 「うん…なぁ、ヒシアマ」 後部座席にお邪魔して、助手席に座ったヒシアマの背中に質問する。少しだけの夏の奇跡に期待して。 「なんだい?」 「あのトレーナーさんのこと好きだろ」 「えぇ? ははは、何言ってるんだよ。そんなこと…アタシとトレ公はパートナーで相棒で時々ライバルってだけさ。まったく、いきなり何を聞きだすんだか…」

7 21/07/22(木)14:17:38 No.826146695

ヒシアマはそう言って笑った。でも、ミラー越しで見るその顔は、頬まで真っ赤になっていて視線も定かでなくて、今まで見たこともないヒシアマの顔で。自分は確かに彼女がもうお母さんじゃなくなったことを理解した。 少女で、乙女で、きっとこれから長い時間をかけて奥さんになるんだろう。どうして自分は当たり前のことに気づかなかったのか。 スーパーから食材を袋に詰めて出てくるトレーナーさんに、ヒシアマの耳が嬉しそうに動かすのを見ながら、ただ自分はこれから出てくる料理と出会えるウマ娘に思いを馳せた。 でないと、少しだけご飯が入りそうになかったから。

8 <a href="mailto:s">21/07/22(木)14:18:11</a> [s] No.826146849

毒矢が刺さってきたと思ったらヒシアマ姐さんとトレーナーのご飯が食べたいという妄想が抑えきれずに書いてしまった

9 21/07/22(木)14:18:29 No.826146936

美しい‥

10 21/07/22(木)14:18:33 No.826146954

つらい…

11 21/07/22(木)14:18:57 No.826147052

BSS…

12 21/07/22(木)14:22:44 No.826148141

間近にいるのに既に遠くに行ってしまってるような感じが美しい

13 21/07/22(木)14:23:14 No.826148291

これが美しいというものか

14 21/07/22(木)14:23:19 No.826148324

いちいちトレーナーどもがいい男で勝ち目見えなくなるのいいよね…

15 21/07/22(木)14:26:09 No.826149165

昔クラスの世話焼き女房だった初恋の子は今本当に奥さんになろうとしていてしました!十代の失恋なんてそれでいいんだよ…

16 21/07/22(木)14:28:44 No.826149991

心が苦しい…!

17 21/07/22(木)14:31:35 No.826150985

でもヒシアマ姉さんとトレーナーの飯は食べてみてえ…!

18 21/07/22(木)14:32:40 No.826151305

海外組のヒシアマ姐さんがいつ日本に来たとかは考えないものとする

19 21/07/22(木)14:32:51 No.826151351

そんな感じ全く見えない子がこうなると破壊力すごいよね…ちょっと横になる

20 21/07/22(木)14:34:29 No.826151890

寮生の胃袋がトレーナーに破壊される!

21 21/07/22(木)14:35:49 No.826152274

にんじんハンバーグはハンバーグの真ん中ににんじん刺すでしょ?あれによってハンバーグはゼロの形になるから実質ゼロカロリーなんです

22 21/07/22(木)14:36:18 No.826152452

>にんじんハンバーグはハンバーグの真ん中ににんじん刺すでしょ?あれによってハンバーグはゼロの形になるから実質ゼロカロリーなんです 良いことを聞きましたわ! 良いことを聞きましたわ!

23 21/07/22(木)14:36:52 No.826152608

これ以上の芸術は無いでしょう....

24 21/07/22(木)14:37:18 No.826152725

でも傷つくことは無駄じゃないさ…

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