21/07/19(月)21:51:42 うっわ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1626699102573.png 21/07/19(月)21:51:42 No.825261949
うっわー……、それがトレーナーの部屋を見たアタシの第一声だった。 チラリと少しだけ視線を上げれば、見慣れた童顔が落ち込んでる。 けど、これはないでしょ。 制止も聞かず、部屋の真ん中まで進み、辺りを見回す。 壁一面に――――私服のアタシ、勝負服のアタシ、水着のアタシ。 隙間なく『ゴールドシチー』のポスターが壁を覆ってた。 一つ一つ見てみれば最近の奴だけじゃなく、子役時代のもある。 というか見た感じ、販売ポスターは全部揃ってんじゃないかな? コワ。 少し来た事を後悔しつつ、壁から視線を下げると机が目に映った。 レース資料やトレーニングメニュー、ファッション誌など。 様々な書籍やメモがごちゃっと積み重なり、崩れてる……へぇ。 自然な風を装い、ベッドに腰を下ろす。汚れてないし、臭いも気にならない。
1 21/07/19(月)21:54:28 No.825263264
「ほら、立ってないで座ったら?」 「う、うん……」 脇をぽんぽんと叩いて招くと、トレーナーが恥ずかしげに腰を下ろした。 化粧とかしてないから顔が赤くなってるのが分かりやすい。 そして横目でちらちらと、アタシが話し出すのを待っているのも。 ……まぁいきなり私服の担当ウマ娘が来たら、そんな反応にもなるよね。 特にアタシは気まぐれで性格難で知られてる、だから分からなくは、ない。 少し寂しさと苛立ちを感じながら口を開く。 「アンタは、なんでアタシの担当になったの?」 唐突な質問に戸惑ってるみたいだけど、それは無視した。 ぐるりと部屋を見回せば、そこにはたくさんの『ゴールドシチー』が居る。
2 21/07/19(月)21:56:03 No.825264005
色々な顔をした、みんなから望まれる姿をしたアタシ……気持ち悪い。 視線を戻し、下から伺うようにトレーナーの顔を見つめる。 照れているのか顔を背けようとするも、ネクタイを掴んで逃がさない。 人間を超えるウマ娘の腕力で吐息が掛かる距離まで顔を引き寄せる。 「ねぇ、どうなのさ。アンタが担当になってくれた理由」 もしかしてアタシが綺麗な『ゴールドシチー』ちゃんだから? 出かかった言葉をギリギリで呑み込む。流石に掛かり過ぎだ。 けれどアタシの本心からの疑問でもある。 なんで今も担当を続けてくれているのか、分からない。 最近のアタシは負け続きだ。この前もイナリ先輩にブッちぎられたばかり。 なのにトレーナーは何も怒ったりしない。どころか
3 21/07/19(月)21:58:39 No.825265265
『次は必ず勝とう! ううん絶対に勝てる!』 そう息巻いて、アタシを励ましてさえくれた。 ……なんでか分かんない。 どうして調子を落としているアタシに優しく出来るの? ファンだから? それともアタシに気を遣って? それとも……他人が羨む、この身体が目当てなのか。 口をもごもごさせるトレーナーを、じっと見つめる。 男だし正直、そういう感情を持っていても仕方がないと思う。 トレセン内でも人目に隠れて付き合ってるウマ娘とトレーナーって多いらしいし? ……けどアンタには、そう思ってて欲しくないって思っちゃ駄目かな。 時間にすれば僅かだったろう静かさに耐えきれず、口を開く。
4 21/07/19(月)21:58:57 No.825265408
「ま、アタシみたいな美少女の傍に居るのに訳なんて要らないか」 「いや違うよ?!」 諦めと溜息の混じったアタシの言葉を、トレーナーは強く否定した。 そこを否定されると思わず、目を丸くする。 「え、ブサイクって思われてた……? 嘘でしょ……」 「いやシチーは綺麗だよ!? でも理由としては切っ掛けに過ぎなくて」 頭をガシガシと掻き毟る姿を見て、少し落ち着く。 子役を止めて、走りで結果を出すとイキってレースの世界に飛び込んだのに。 惜敗続きのアタシから、美貌がなくなれば、何も残らない。 だから、どんな形であれトレーナーと繋がりがまだ存在してる。
5 21/07/19(月)22:00:33 No.825266194
暗い安堵を憶えていると、逆にアタシの肩を掴まれた。 瞳を覗き込むように、顔を近づけてくる。 ア、アレ? これセクハラって奴じゃないの? 「シチーを今も担当してるのは、眼が好きだから」 「眼? それは、言葉通りの意味じゃないよね?」 「負けん気なのかな、『絶対に勝つぞ!』って気持ちが伝わってくるんだ」 言葉を切り、額にかかった髪を払われる。 触るなと言いたかったけど、視線の圧に押されて声が出ない。 前髪が除かれ、よりハッキリとしたアタシの瞳を見つめながらトレーナーが続ける。 「シチーは凛とした姿ばっかり目立つけど、本当は頑張り屋でガッツがあるウマ娘」 「けど……アタシ最近は負け続けじゃん」 「でも次は絶対に勝つつもりでいるんでしょ?」
6 21/07/19(月)22:00:48 No.825266317
なら全力で応援するのがトレーナーだよ、そう言って笑った。 対してアタシは何も言えなくなり、顔を伏せる。 だって全くの見当外れ、勘違いだからだ。 アタシに有ったのは、見放されるんじゃないかって不安だけ。 いつの間にか、次の事なんて忘れていた。 「それにイナリワンに負けたのは、こっちの指導不足。自分を責めないで」 「……アタシの事、気付いてて、くれてたんだ」 「一応長い付き合いだからね、シチーとは」 謙遜からか、トレーナーは頬を掻きながら苦笑したようだ……バカじゃん。 顔を上げれば、安心させるように笑ってる。アンタはいつもそうだと息を吐く。 「じゃあさ、アタシはどうしたらいいトレーナー?」
7 21/07/19(月)22:02:39 No.825267222
「やれる事をやってこ。シチーの良い所をもっと知ってもらうためにも」 「うん、そうだね……ヨシッ!」 気合を入れ直し、笑顔を浮かべてみせる。 これでもアタシはモデル、笑みを作るのなんて簡単だ。 ……本当の所はまだ不安はある。 けれど負けても走った先にはアンタが待っていてくれるなら。 頑張ってるなんて言い触らしたくないし、落ち込んでる姿も見せたくない。 それに本気のアタシを信じて応援してくれる奴がいるなら、尚更じゃん。 今更ながら掴んでいたネクタイから手を離す。 「次のレースは絶対に勝つから、見ててよね」 「うん、シチーの事はずっと見てる」
8 21/07/19(月)22:05:05 No.825268312
ほら、平然とこっぱづかしい事を、さらりとトレーナーは言う。 さっきまで軟派なリップサービスじゃないかって疑ってたけど、違うんだよね。 ううん分かってたのに、分からないフリをしてたのかな。 年頃の女相手に、情緒を壊すような事言うなんて何考えてんだか。 おかげで胸が痛くて、誰にも言う気がなかった事まで口から洩れる。 「アタシ全力で走るから、手綱を離しちゃヤダよ」 これから先、一生握ってて貰うから。きちんと最期まで見届けてよね。 横目で壁一面に映る『ゴールドシチー』を眺める。 ――――アンタ達には負けない 内心で宣戦布告をしつつ、トレーナーの胸元に額を預けた。
9 21/07/19(月)22:06:30 No.825268959
「ところでアンタ、独身のウマ娘が独り身の男部屋に来る意味分かってる?」 「んん? トレーナーとウマ娘だったら普通の事じゃ――――ぅわぁぁっ!?」 身体を軽ーく引き寄せて、トレーナーをベッドに押し倒す。 アタシが上、あっちが下。 目を真ん丸にしてアタシを見上げる、本当に分かってないみたい。フフッ。 両手を片手でまとめて拘束し、お腹の上に跨れば、ほら。 「動けないっしょ。役に立つじゃん三流女性誌も」 「な、何をする気?」 「ナンだとおもう?」 困惑するトレーナーを眺めながら、動悸をひた隠してアタシは緩く微笑む。 半信半疑だったけど本当に身動き出来ないみたいだ。 アタシより少し大きい程度の、小柄な男の体が震えてる。いいじゃん。
10 21/07/19(月)22:08:28 No.825269826
空いた手で襟元を緩め、胸の上半分を解放する。 「シチー?! 本当に何する気?! や、止め――――」 「止めるの? ねぇアンタ、止めていいの?」 自分でもビックリするくらい、重たくて熱っぽい声が漏れた。 ひっ、と息を呑むトレーナーの頬を舌先で撫で、指先で薄い胸板を弄る。 言ったよね? ずっとアタシを見てるって。 「嫌なら嫌って、止めてって言いなよ。ほら。五、四――――」 ゆっくりと顔を近付けると、見た事のないトレーナーの怯えた表情に徐々に朱色が差す。 男の瞳に金髪の女が映ってる、見た事のない笑みを浮かべ頬を赤らめて。 嫌がってもアタシは諦めないよ。ほら三、二、一 ――――ゼロ、んっ♥
11 <a href="mailto:s">21/07/19(月)22:12:01</a> [s] No.825271405
ゴールドシチーが実装されるという……こちらも書かねば無作法というもの…… イケイケギャルの逆ぴょいネタが好きなので、続きを期待して失礼する
12 21/07/19(月)22:12:30 No.825271637
続きはお前が書くんだよ!!
13 21/07/19(月)22:13:34 No.825272147
おい待てェ 失礼すんじゃねぇ お礼を言わなきゃならねぇだろうが
14 21/07/19(月)22:14:02 No.825272354
>「アタシ全力で走るから、手綱を離しちゃヤダよ」 >これから先、一生握ってて貰うから。きちんと最期まで見届けてよね。 ちょっと掛かり過ぎではないでしょうか?
15 21/07/19(月)22:16:18 No.825273356
>>「アタシ全力で走るから、手綱を離しちゃヤダよ」 >>これから先、一生握ってて貰うから。きちんと最期まで見届けてよね。 >ちょっと掛かり過ぎではないでしょうか? だが待って欲しい シチーはこれくらいやりそうではないだろうか
16 21/07/19(月)22:16:55 No.825273685
しっかりもののギャルにグイグイ押されるのいい... 何でもしてあげたくなる...
17 21/07/19(月)22:17:18 No.825273860
続きはないのですか〜
18 21/07/19(月)22:22:40 No.825276261
シチーのキャラソン見るとわりとガッツリ恋愛ルート行ってもおかしくないんだよな…
19 21/07/19(月)22:24:36 No.825277186
ゴールドシチーの怪文書初めて見た
20 21/07/19(月)22:24:58 No.825277377
シチーの怪文書見るのは二本目ぐらい
21 21/07/19(月)22:25:31 No.825277630
>シチーのキャラソン見るとわりとガッツリ恋愛ルート行ってもおかしくないんだよな… シチーのキャラソンいいよね
22 21/07/19(月)22:26:17 No.825278000
三流女性誌に載ってないことされてほしい…
23 21/07/19(月)22:29:11 No.825279360
ちょっとスれてる感じのギャルが知らないっ♥こんなの知らない♥ってなるのいいよね
24 <a href="mailto:s">21/07/19(月)22:30:08</a> [s] No.825279804
見慣れない天井を眺めながら、倦怠感に頬を緩ませた。 内にある感じる筈のない熱と異物感、そしてジンジンとした痛み。 それら全てがトレーナーとの見えない繋がりのように錯覚する。 少々強引になってしまったが、まぁ結果オーライでしょ。 なのに、とアタシは息を零し、両足に力を込めた。 「ちょっと余韻に浸ってんだから、拭くのは後にして」 「くえっ!? そ、そんな事言っても、急いで洗わなきゃ!」 足元でうろちょろしてたトレーナーを両太腿で挟み込み、押さえつける。が、口だけは威勢が良い。 さっきまでヒンヒン可愛い声で啼いてた癖に。そもそも数分でどうこうなったりしないっての。 呆れながら腹筋の勢いで身を起こし、逆にトレーナーを寝かしつける。 男とはいえ、ウマ娘の力には勝てない。そもそもアンタは小柄過ぎるよ。 あわあわと慌てるトレーナーの唇を指で閉ざす。
25 21/07/19(月)22:31:50 No.825280597
「これがアタシの、ゴールドシチーの中身」 「――――」 「思ってたのと違ったっしょ。どう? 幻滅した?」 自分で言いながら、すぐにアタシ卑怯だなって思った。 だってこんな言い方したら、アンタがなんて言ってくれるか、もう分かっちゃう。 抵抗を止めて、トレーナーの指がアタシの指をそっと押し返す。 「ビックリはしたけど……そんな事はないよ」 「なんで? こんな事するウマ娘って思ってたの?」 「ううん、けど気付けたよねって。追い詰めちゃって、ごめんね」 トレーナー失格だなと、自嘲した……何それ。暗い想いが首を擡げる。 男にしては華奢な肩を掴み、爪を立てる。爪痕が付き、ぷつりと血が滲んだ。 痛みに顔を歪めるも、トレーナーは呻きもしない……どうしてさ。
26 21/07/19(月)22:34:04 No.825281560
「なんでアンタが謝んの? 謝らなきゃいけないのは――――」 「……シチーはさ、優しいから期待に応えようとしちゃうよね」 「こんな事されて、言う事がそれ?」 「冗談じゃなくて、自分の事だけじゃなくて、ファンの皆の事も考えてくれてる」 口にはしないけど見ればわかる、なんて生意気な知った口を聞く。 そんな事はない、アタシは好きにやってる。遅刻やサボりも平気でする。 ……ただアタシを好きだって言ってくれる人を、悲しませたくない。 それもやりたいのリストに入っているだけ。 その時アタシはどんな顔をしてたんだろう、トレーナーがアタシの頭を撫でた。 「これからは今までよりも、もっとシチーを見るから」 「……キモ。何? またポスター増やすっていうストーカー宣言?」 「違うよ?! けどどんなシチーでも受け止めるから、きちんと言ってね」
27 21/07/19(月)22:36:21 No.825282502
こっちはもう何も隠すものもないし、とトレーナーは苦笑した。 釣られてアタシもついクスクスと笑ってしまう、さっきとは別でお腹が痛い。 まー、壁一面のポスター張りを超える秘密はないよねー。 けど気まぐれなアタシの内側まで見て、受け止めてくれると言うのなら。 額を胸板に押し付けると、なんだかんだ男らしさを感じる。 なんでかな、目の奥が熱いから……顔を隠したまま、口を開く。 「……言うから、これからはちゃんと何でも言うから」 「うん」 「だから、ちゃんと見てて。アタシの勝つとこも、負けるとこも、全部」 小さくトレーナーは頷くと、アタシの頭を掻き抱いてくれた。 何処までも走るよアタシは、最後に勝って笑うまで。