虹裏img歴史資料館

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21/07/18(日)22:55:27 前回ま... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1626616527665.png 21/07/18(日)22:55:27 No.824957173

前回までです sp92697.txt

1 21/07/18(日)22:55:44 No.824957288

~~~ 【警察署内】 「はあ…これで3日連続黙秘、か…。」 取り調べ室から出てきた刑事が、控えの刑事と共に喫煙室で煙草を吸っていた。煙を吐き出す所作も、心なしか疲れの色が見えるようだった。 「正直きついっすね…ここまで何も言われないとどうしようもないって…。」 「うん…早く何かしらの情報を吐かせないと、バックの黒幕が証拠隠滅に走るかもしれん。」 その時、喫煙室の扉が勢いよく開く。2人が振り向くと、走ってきたであろう若い刑事が息を切らして立っていた。

2 21/07/18(日)22:55:56 No.824957361

「おやっさん!あの子が…犯人を吐きました!」 「何ぃ!?そんで、誰だって!?」 「それが…いや、信じがたいのですが…。」 そう言ってから、2人のウマ娘が話した内容を伝えると、刑事たちは顔色が変わっていった。 「なんてこった…!いや、しかしそれは本当か…!?」 「今の時点ではなんとも…とにかく、おやっさん来てください!」 「よっしゃ、分かった!今そっちいくぜ!」 煙草を灰皿に擦り付けると、どたどたと刑事は走り出していった。

3 21/07/18(日)22:56:12 No.824957487

~~~ 【翌日 トレセン学園生徒会室】 「ですから!この記事を書いたライター、それと掲載を許可した編集長に代わっていただきたたいと申し上げているのです!!」 生徒会室から怒号が響き渡る。声の主─エアグルーヴは、スマートフォンに向かって怒りを露わにしていた。 「今日発刊のこの雑誌の内容…『皇帝シンボリルドルフが感謝祭のレースで八百長』など、事実無根です!このような根も葉もない記事を書くライターには、法的措置も辞しませんよ!?」 『とはいえですね~、その件に関しては共犯のウマ娘からもしっかり言質が取れているんですよね~。私達はただそれを記事にしただけですし~。あと私達も忙しいので何度もかけてこないでくださいね?では~』 「あっ、ちょっと!…くそっ!!」

4 21/07/18(日)22:56:31 No.824957618

エアグルーヴが握りしめる雑誌には、表紙にでかでかと見出しで『衝撃告白!「皇帝に指示されました…」模擬レース八百長の闇!!』と書かれ、その下に意味を成さない程度の目隠しを施されたシンボリルドルフの顔写真が載ってあった。 記事の内容はシンボリルドルフが封筒を受け取っている写真から始まり、逮捕された地方のウマ娘の供述、ライターの憶測などであった。 そして〆に「このような堕落した皇帝がトレセン学園の頂点である限り、新しく開催されるURAファイナルズもたかが知れたものであるだろう」という一言で結ばれた、徹頭徹尾トレセン学園、ひいてはトゥインクル・シリーズを批判し尽くしたものだった。 「なによりこの供述が気に入らん…!まるで嘘ばかりではないか…!!」 ウマ娘の供述内容は、要約すれば「自分が勝つように仕組まれた試合で、わざと転んだ皇帝に罪を擦り付けられた。もし嫌だというのならば、お前を金輪際レースに出せないように圧力をかけてやる、と脅された」というものだった。 「たかが会長一人にそんな権限があると思っているのか…!どいつもこいつも、こんな駄文を書きおって!」

5 21/07/18(日)22:56:48 No.824957714

~~~ 【トレセン学園 職員室】 いつもは活発ながらも穏やかなトレセン学園の職員室も、今日だけはいつもと様子がまるで異なっていた。鳴り響く電話の受信音と、それに応対するトレーナー達で大混乱だった。 「はい、トレセン学園です。…いえ、その件に関しては一切こちらも関知していないことでして…はい…」 「ですから、その雑誌の内容はすべて事実とは異なっていまして…ええ…」 「に、入学金を返せって…私の業務外ですからそう言われましても…!」 マヤノトップガンのトレーナーが受話器を置き、ふーっと深く息をついた。 「全く…これで10件目だぜ、シンボリルドルフについての電話はよぉーッ!これじゃこっちも仕事になんねーっての!」

6 21/07/18(日)22:57:08 No.824957841

そこへナイスネイチャのトレーナーがやってきて、首を振りながら苦々しく呟く。 「それだけじゃありませんよ。今日だけで30人も入学を辞退してきました…。これではそのうち入学予定者全員が居なくなりますよ。」 「30人!?おいおいやべーだろそれ…!!ってか、シンボリルドルフのトレーナーはどこ行った!?あいつが対応すべきだろこの電話!!」 「彼は理事長に緊急で呼び出されています。…まあ当然と言えば当然ですが。」 ~~~ 【理事長室】 「危機ッ!トレセン学園、最大の危機ッッ!!」 小さい身体で扇子をぶんぶんと振り回しながら、せわしなく部屋を練り歩く少女─秋川やよいが、ぱしんと扇子を閉じてシンボリルドルフのトレーナーに向かって振り下ろした。

7 21/07/18(日)22:57:25 No.824957952

「シンボリルドルフトレーナー!なぜここに呼ばれたか、理解しているかッ!?」 「…恐らくは、記事の件について、ですね?」 「うむッ!今朝から学園には問い合わせの電話やメールが殺到ッ!ネット掲示板やSNSも恐慌ッ!我が校の生徒会長たるシンボリルドルフの八百長疑惑で、大混乱ッ!!」 「ルドルフが八百長なんてする訳がありません!」 「しかし、ここに写された写真…まさしくシンボリルドルフそのもの!」 「…その写真は私も初めて見ました。しかし、きっと何かの誤解です!」 「うむむ…とにかく、学園としても早急に見解を出さねばならぬ!君はシンボリルドルフに事情を聞いてくるように!以上ッ!!」 秋川やよいの号令で、シンボリルドルフのトレーナーは廊下を駆けだした。 ~~~ 【トレセン学園生徒会室】 ふう、と息をついたエアグルーヴ、その目線の先に、シンボリルドルフ─ハルウララが俯いたまま生徒会長の席に座っていた。

8 21/07/18(日)22:58:03 No.824958194

「…ウララ。ここ数日は感謝祭の後始末で余裕もなかったが…今度こそ、聞かせてもらうぞ。あの封筒の事、写真の事…全てをな。」 「るどるふちゃんとぶらいあんちゃんは…?」 「会長は今こちらには来ない…というより、来られない。ここまで目立っている生徒会に、ハルウララの身体で近づけば悪目立ちすることこの上ない。 ブライアンは、少し別件でな…この騒動を受けて『会長の無実を信じる派』と『会長の解任を求める派』が生徒間で発生していてな。ちょっとした暴動騒ぎまで発展しているんだ。それの対応に当たってもらっている。」 「そんな…ウララのせい…?」 「違う、そうじゃない!…ただ、今回の件、ウララだけが知っていることも多い。だから、私に話してみてくれないか?」 「うん…。」 その瞬間、大きな音を立てて扉を開いたシンボリルドルフのトレーナーが転がり込む。ぎょっとしたエアグルーヴとシンボリルドルフと、トレーナーの目が合った。

9 21/07/18(日)22:58:24 No.824958336

「ルドルフ!今日の雑誌について話がある!」 「お待ちください!その件について、ちょうど私もお話を会長から伺おうとしていたところです。よろしければ私も共に聞かせていただいてもよろしいでしょうか。」 「…分かった。エアグルーヴも常にルドルフと共に歩む仲間だ。一緒に聞こう。いいだろ、ルドルフ?」 「…わかった。ぜんぶはなすね…」 ~~~ 「…では、共に食事をしたのは本当なのですね?」 「うん…でも、おかねはほんとうにかえしたんだよ!ほんとだよ!!でも、なんでかかばんのなかにあったの…。」 「ううむ…ルドルフが嘘をついているとは思わんが…それが本当だとすると、その黒服のトレーナーってやつは相当狡猾だ。もしこの状況まで計算づくだとしたら…。」 「とにかく、この騒動…それだけではありません、あの感謝祭の事件を解決するためには絶対に捕まえなければならない存在です。」 「だな…。それで、その金はどうする?まさかルドルフに持たせておく訳にもいかんし、俺が預かれれば一番いいんだが…この後もあの雑誌の出版社に直接話に行かねばならん。大金を持って動くのもな…。」

10 21/07/18(日)22:58:42 No.824958477

「であれば生徒会室で預かるのが一番よろしいでしょう。幸いここには機密書類を保管するための金庫もありますから。」 エアグルーヴが封筒を持ち、生徒会室奥の金庫に近づく。二度、三度と金庫のダイアルを回すと、扉が重々しく開いた。 「とりあえずここに保管し、帰還し次第トレーナーから学園に預かってもらうようにしていただけますか?」 「了解した。それじゃあ、俺は今からちょっと行ってくる。ルドルフを頼むぞ、エアグルーヴ!」 シンボリルドルフのトレーナーは再びせわしなく駆け出し、生徒会室を出て行ってしまった。 「さて…ウララ、騒動が収まるまで少し別の部屋に移るぞ。ここにいれば万が一記者が訪れた時逃げようがないからな。」 「うん、わかった。…えあぐるーぶちゃん、ウララがかってにごはんたべにいったから、こんなことになってるんだよね…?」 「まあウララの行動が軽率だったのは否めない。だが、ウララ─シンボリルドルフを利用してトレセン学園をかき回そうとする黒服の男とやらが最も悪だ。私はそいつを決して許さない。」

11 21/07/18(日)22:59:01 No.824958623

エアグルーヴの眉間に皺が寄る。いつも厳格なエアグルーヴだが、ここまで明確に怒りを露わにしたのをシンボリルドルフが見たのは初めてだった。 シンボリルドルフの荷物をまとめ、生徒会室を出る。そのまま別室までエアグルーヴと シンボリルドルフが歩いていった。 2人が曲がり角に消えたところで、小さな影が動く。その影は、静かに生徒会室へ忍び込んだ。 「…本当にカイチョーが無実なのか、ボクが確かめなきゃ。もしボクがカイチョーなら、あんな大金を持ちっぱなしなんてしない。安全な所に、だけどすぐに取り出せるところに隠しておくはず…。」 影の正体─トウカイテイオーが金庫の前まですばやく移動する。手をダイアルにかけ、そのまま回し始めた。

12 21/07/18(日)22:59:18 No.824958720

「ボクが言うのも何だけど…カイチョーってボクのこと、結構好きだと思う。だから、ボクが生徒会室に入り浸ってても油断して金庫を開けちゃってたんだろうな。うっかりダイアルを見ちゃって、忘れようと思っても却って頭にこびりついちゃってさ。」 ダイアルを記憶のまま回し続けると、がちりと開錠の音が手から伝わる。ゆっくり開くと、そこには目当ての封筒があった。 「…やっぱり。あの時の封筒だ。」 ~~~ 普段使われない教室へシンボリルドルフを送り届けると、エアグルーヴがポケットから鍵を取り出した。 「ウララ、これがこの教室の鍵だ。先生方には話を付けてあるから、ここには誰も近づかない。私も、ここに来るときは必ずスマートフォンで連絡を入れる。それ以外の来訪者はすべて無視するんだ。」 「はあい…。」 「よし…ん?」 エアグルーヴが腰の周りをぱんぱんと手でたたく。何かに気付いた瞬間、エアグルーヴの顔が青くなった。

13 21/07/18(日)22:59:37 No.824958835

「…しまった!生徒会室の鍵を閉め忘れた!」 駆け出したエアグルーヴは、一直線に生徒会室へ目指して速度を上げた。 「何たること…!封筒を金庫に仕舞ったのに安心して施錠を忘れるとは!」 幸い、部屋を開けている時間は数分にも満たない程だった。この程度なら、まず何も起こっていないはずだった。 「ふう、まさか鍵を忘れると…は……。」 しかし。現実とは常にままならぬということをエアグルーヴは思い知ることになる。 生徒会室の中には、トウカイテイオー。その手には仕舞っていたはずの、現金の詰まった封筒があった。

14 21/07/18(日)22:59:53 No.824958960

「なっ…!?テイオー!?なぜ貴様がここに…!!!」 「ねえ、エアグルーヴ。これってさ、なに?なんでこんな大金が生徒会室にあるの?」 「…!そ、それは…生徒会の予算だ。ある程度すぐに動かせるように現金で生徒会室で管理しているだけの事だ!それより、どうして金庫を…!?」 「生徒会の予算…?ふーん、じゃあこのお金ってずっとこの金庫の中にあったの?」 「……そうだ。さあ、テイオー!その封筒をこちらに返せ…!!」 「…エアグルーヴの嘘つき。この封筒、この時にカイチョーが貰ったやつでしょ。」 トウカイテイオーがポケットから取り出した写真をエアグルーヴの足元に投げる。エアグルーヴが思わず拾い上げると、それは雑誌に載せられた写真そのものだった。しかも、雑誌では施されていたモザイクも無しの完全なオリジナルだった。 「…!!!テイオー…これを…どこで…!!!」 「ねえ、なんで嘘ついたの?ボクに正直に説明できない理由でもあるの?」 「違う、テイオー!聞いてくれ!」 「うるさいよ!嘘つきのエアグルーヴにはもう聞かない…直接カイチョーに聞いてやる!!」

15 21/07/18(日)23:00:14 No.824959090

トウカイテイオーが瞬時に最高速に達し、エアグルーヴに突っ込んでくる。衝突するコンマ数秒前に、その身を空中に跳ね上げ、エアグルーヴを飛び越して生徒会の外に飛び出した。 「テイオー!待て!!くそっ、生徒会室の鍵はどこだ!!」 エアグルーヴの叫びも虚しく、トウカイテイオーが廊下を駆けだした。廊下に微妙に漂うエアグルーヴの匂いを辿り、先程までいた場所を目指す。 あっさりとシンボリルドルフの隠れる教室に辿り着くと、扉に手をかける。鍵の感触に気付くと、そのまま力づくで扉を引き開けた。 「うひゃあっ!だれっ!?」 「ボクだよカイチョー…。ねえ、これ。この封筒って…なに…?」 睨みつける様にシンボリルドルフを射貫くトウカイテイオーの視線に、シンボリルドルフの心臓は止まりかけるほどの緊張を強いられた。

16 21/07/18(日)23:00:36 No.824959240

(うそっ、なんで、ていおーちゃんがあのふうとうもってるの!?なんで、ウララに?おこってるの?) ぐるぐると脳をフル回転し、この状況にそぐう台詞を必死に脳内検索する。テイオーから察する感情─怒りと疑念を感じとり、シンボリルドルフの中での最前の答えを口にした。 「えっと……よくわからない、けど…ごめんなさい…。」 「…………『ごめん』ってなにさ。なんで謝るのさ。なんで、この封筒を見て、自分が悪いことしてるって思うのさ。」 テイオーの声が震える。よく見れば、目の端に涙が溜まっているのが分かった。

17 21/07/18(日)23:00:55 No.824959362

「なんで………謝るんだよ………ほんとに……………八百長だったってこと……………?なんで…………………どうしてッ!!!!なんでなんだよッ!!!!!最強無敵の七冠馬、皇帝シンボリルドルフがどうしてそんなことするんだよッッ!!!!!!」 床に思い切り封筒を叩きつけ、ふーっ、ふーっと荒い息をする。反動で封筒からは、詰まった現金が床中に散らばった。 「……………………………………最低だよ。」 トウカイテイオーが背を向けると、ぐしぐしと腕で数回目を拭いた。 そうして、教室を去っていった。

18 <a href="mailto:s">21/07/18(日)23:01:11</a> [s] No.824959472

次回に続く

19 21/07/18(日)23:04:26 No.824960807

おつらい…

20 21/07/18(日)23:27:12 No.824970703

どうすればよかったんだ

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