虹裏img歴史資料館

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21/07/18(日)21:29:11 「私の... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1626611351909.jpg 21/07/18(日)21:29:11 No.824920815

「私のこと、ちゃ~んと捕まえててくださいね♪」 初めて担当したウマ娘は何というか奔放な子だった。 成り行きで担当に逆スカウト…とも言いたくないような、なんとも言い難い感じで初めの3年目が始まった。 最初はとても苦労した。何せひどく気分屋で練習に来させるところから始めなければならないのだから。ふらふらと逃げ回る彼女を見つけるだけで日が暮れることもあったし、逆にきっちり時間通りに来てこちらが当惑するとこを笑っているときだってあった。 徐々に彼女の扱いに慣れて来て、重賞でも勝てるようになったと思ったら、彼女の脚と共に心が折れたこともあった。 長期の療養が必須、その間もライバルはお構いなしで先に行く。 「もう、走るのやめようかな」 泣き笑いでそんなことを言われた。言わせてしまったのかもしれない。 でも、それでも彼女にまた走ってほしくて、ありとあらゆる手を尽くした。誰よりも、あの子自身よりも、あの子がまた輝くところを見たかったから。 その甲斐あってか、療養明けのしかもGⅠで大勝を果たし、世間は奇跡の復活と彼女をもてはやした。 「トレーナーさん、私、あなたのこと好きだったんですよ」

1 21/07/18(日)21:29:24 No.824920932

「それでなんでお母さんとくっつかなかったんですか!?」 「いや、トレーナーとウマ娘はそういうのじゃないからね……?」 その数年後、何の縁か初担当のウマ娘の、その娘を担当することになった。 昔話でよく聞かされていたのか初期から好感度が高く、周りにも憚らないので少々困った子だった。 それに困ったのは態度だけではない。 『グランプリ二世、やや遅咲きか』 ざっくり言えば彼女に母親ほどの才能は無かった。長距離中心に人々を魅せたあの子のように華麗な逃げを決めるのは夢物語だと早々に察せられるほどに。 それでもてんでだめという訳ではなく、体が小さい分トップスピードには目を見張るものがあったのだ。 「君には君の走り方がある」 母親のような走りを目指していた彼女にとって初めこの提案は受け入れがたいもので、言い方で何かと傷つけてしまうこともあったと思う。 それでも最終的には和解して、いつしか彼女は短距離レースの花形とまで言われるまでに成長した。 小さい体のコンプレックスも拭うことが出来たようで、指導者としては冥利に尽きる思いである。 「お母さんでなく、私を見てくれてありがとうございました」

2 21/07/18(日)21:29:47 No.824921082

「目指すは一番よ!それ以外認めないから!」 あの気性難の子のこともよく覚えている。誰よりも理想にこだわる強い子だった。 日常でもレースでも一番優秀であることを目指し、そのための努力ならいくらでも惜しまない。 けれど彼女と出会った当初はライバル相手の連敗で燻ってて、少々過剰に自分を追い込んでいるところだった。 それが見てられなくて、半ば強引にスカウトしてライバルとの対策を徹底的に話し合った。何とか納得してくれて、それ以来はいい信頼関係を築けたと思う。 悲願のティアラも、その年一番を決める有馬記念も勝ち取って、彼女の扱いにも慣れて来て、それでちょっと順調すぎたのかもしれない。 あの日のこともよく覚えている。夕陽だけの暗い校舎で壁際に追い込まれて逃れようのない告白を受けた。こんなおじさんを~、なんてぬるい反論は真正面から叩き潰されて、潤んだ瞳が真っすぐ熱を持って私のことを見つめていた。 「好きよ、トレーナー」

3 21/07/18(日)21:30:01 No.824921199

「……悪いけど、それには応えられない」 「なんで、歳の差なんて───」 「そうじゃない、僕が君にふさわしくないというだけなんだよ」 「そんなことない!!だってこんな私と向き合って、こんなに立派に成長させてくれたのに!!」 「それは僕がトレーナーだからだよ。当然の務めを果たしたまでさ」 「っ……、他のトレーナーでも同じなんて言わせないわよ……」 「それにね、僕は君だけを見ていたくないんだ。酷い言い方だけどね」 「……へ……?」 「僕はもっと沢山のウマ娘を指導してみたいんだ、まだまだ未熟だけどね。いや、だからこそかな」 「……」 「君と一緒になったら、多分それはそれで幸せだと思う。でもきっと僕は走りについて考えることをやめられない」 「私じゃ、アンタの一番にはなれないの……?」 「多分、ね」 その日、僕は初めて女の子を泣かせてしまった。

4 21/07/18(日)21:30:14 No.824921298

「で、今の今まで独身なのか。トレーナーは」 「ははは、手厳しいね」 「来年には定年だろう?老後はどうするんだ」 「まぁのんびり暮らすよ」 「……トレーナーさえよければ、私が──」 「流石にその同情は受け取れないよ。それに君にも故郷に残してきた好い人が居るんだろう?」 「なぜそれを……いや、あいつとはそんなのでは…」 「まあこんな老いぼれの心配より、次のレースの心配をしなさい。また食べ過ぎて地獄を見たら僕も泣くよ?」 「むぅ、善処する……」

5 21/07/18(日)21:30:31 No.824921451

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6 21/07/18(日)21:30:49 No.824921596

どれもこれも、僕にとっては素晴らしい思い出だと思う。沢山のウマ娘を担当させてもらって、その誰もを胸を張って送り出すことが出来た。 こうして一人で月を眺めていても、思い出話には事欠かないのだから本当に幸せものだ。 ああ、でも 、 (看取ってくれる人は、いた方が良かったかもしれないね………───────── 『……続いてのニュースです。昨夜、有名トレーナーの○○氏の葬儀が執り行われました。○○氏はこれまでベテラントレーナーとして様々なウマ娘を────────』

7 <a href="mailto:s">21/07/18(日)21:32:39</a> [s] No.824922367

こういうトレーナーもいるのかなって思いました 登場するウマ娘は既存のキャラを参考にしたモブなので深く考えないでください

8 21/07/18(日)21:37:35 No.824924447

「ウマ娘」と結婚した男である

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