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21/07/18(日)18:54:00 あの日... のスレッド詳細

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21/07/18(日)18:54:00 No.824849550

あの日からドーベルは確かに変わった。 …そもそも婚約者であったし、今更スキャンダルとか気にしない…と思ってたのに、流石にエリザベス女王杯で行ったアレは記者の目を大量に集めることになったのだが… 俺の元に彼女の想いに対してどうなのかとか、ドーベルは今どんな気持ちなのか?と集まる彼らに対し…… 「私が対応するから」 ドーベルはぶっきらぼうにそれだけ言って、思ったよりも丁寧で焦らず、来る人来る人の質問にしっかりと応えていた。 「成長したな」 「…そう?」 少しだけ照れ…随分と素直になったドーベルの姿は、カメラマンにとって絶好の瞬間だったらしい。

1 21/07/18(日)18:54:29 No.824849741

その時、記者達の中に俺を名指しして直接依頼をしてくる人がいた。 明らかに記者達とは違う…小さなメモ帳を持っていて、辺りの様子を静かに観察している。 「すいません、…ひとつ、あなたのお話を聞きたいのですが」 「もちろん、大丈夫ですよ」 「では、できれば個人的に…」 簡単に予定を組んだと思えばもう居なくなってる… そんな少し不思議な風貌の男の人はすぐにいなくなってしまった。

2 21/07/18(日)18:57:21 No.824850840

数日後、彼と対談する事になり… ドーベルとの経緯や、どうして婚約者になったのか…他にもエリザベス女王杯までの経緯や… 「最初、群がる彼らを…記者達をどう思いましたか?」 と、中々珍しい質問をしてくる。 「…嫌とは思ったことはありません、最初はちゃんと聞いてくれなかったんですけど…桜花賞を勝利した時から、少しずつ俺たちの理解をしてくれました」 「なるほど…これはこれは…」 ではその記者はどんな質問を?とか。ドーベルはどんな表情を?と言ったやけに具体的で細かい事まで聞かれる。 「えっと…これは何に…?」 「これらのエピソードはとても素晴らしい物です、是非、私の作品に使いたい」 「えっ」 俺は頭が真っ白になる。 …1時間は過ぎた頃だろうか、ようやく意識が明瞭として来た時には…

3 21/07/18(日)18:58:40 No.824851334

「とても有意義な対談でした」 その一言で俺は真っ白だった頭がはっきりと意識が戻された。 「えっ?あっ……はい、ありがとうございました」 「おや?」 彼が不思議そうに聞いてきたので、俺は一応聞いてみることにする。 「ああ…ちゃんと質問できてました?」 「?もちろん、キチンと答えてくれましたよ」 「ならよかった…」 完全に覚えてなかった事は黙っておこう。 あっという間に記者との対談は終わっており、…どうやらちゃんと受け答えはできたようだった。

4 21/07/18(日)19:00:16 No.824851938

数日後、ドーベルには女性の人が同じく個人対談を求めてきたらしい。俺と違って学園を通さないとならなかった関係で俺が最初に対談してから2週間後に取材に訪れた。 「あたしひとりでやれるから大丈夫」 「わかった、もしなんかあったら呼んでね」 「…うん」 ~~⏰~~ ドーベルが部屋から出てきて、何やら自分の部屋に向かっていった。 しばらくして、何やら大量のノートを持ってきて… 「…なにそれ?」 ドーベルに強く睨まれたので、それ以上は聞かないことにした。 そして2人のガヤガヤと意外にも賑やかな声が部屋から聞こえてくる。 ~~⏰~~ 「お疲れ様、取材は何に使うの?」 「ん、…なんかドラマとかの題材に使いたいらしいって」 「………………」 なんとなく俺は嫌な予感がしたが、…たぶん的中するのだろうな。

5 21/07/18(日)19:00:37 No.824852125

それから時はあっという間に過ぎて…12月前半。 「…ん」 ドーベルがテレビを付けると、ゴールデンタイムを使って放送された、…ある専属のトレーナーにウマ娘がティアラを届けるために努力をするドラマが流れ出す。 ご丁寧に彼女は全てcmの部分を編集していた、最初から一緒に見る気だったんだろうな…。 「おお、これは…」 「…ん」 2人は婚約者同士で、お互いに気持ちを伝えれない不器用な性格故に、ウマ娘側がトリプルティアラという形で愛を伝え、最後はエリザベス女王杯の優勝で公開告白という形で…… ………うん? 「ねぇドーベル、…この作品ってさ…」 「………違うから」 そのドラマは…その…ちょっと行き過ぎたレベルで王子様側がキラキラしすぎてるって言うのかな…。 悪い言い方だと夢小説に出てくる王子様がめちゃくちゃなくらいそういう属性盛りまくった内容になってる。…少なくとも男性側はこんなドラマ見るだけでキツイ内容なのでは……? 「…えーと、ドーベル」 「………るさい」 「はい……」

6 21/07/18(日)19:00:57 No.824852305

ただトレセン学園の練習メニューとか本当に細かい部分までちゃんと凝ってる所がトレーナー視点から見ても良くできてる内容で、とにかく女性向けなのだろうなとひしひしと伝わってくる。 「………凄い男性側がイケメンだy」 「うるさいうるさいうるさいっ!」 「………」 ドーベルはその後、ドラマ全話が終わるまで何を言っても答えてくれなかった。 ~~⏰~~ 「…面白かったよ、あと編集してくれたのも助かった」 「ふん」 ドーベルはそっぽ向いてたが、尻尾は嬉しそうにさわさわとよく動いている。 …よほど見せたかったんだろうな…

7 21/07/18(日)19:01:34 No.824852582

~1時間後~ 「…あのさ」 「なに」 ドーベルは未だにそっぽ向いてる、さっきのこと根に持ってるのかな。 「えっとね…おば様が、結婚式会場どうするってしつこく連絡してくるんだけど」 「っ…」 ドーベルはどうしたい?と俺が聞く前に 「…ウマ娘らしいのがいい」 と小さな声でポツリと言う 「うーん…」 らしいもの…?そんなのあるかな… 「結婚式会場でライブ?とかかな…」 「………」 いやまさか、流石にそんなのはなぁ…と思ってると。 「したい」

8 21/07/18(日)19:02:03 No.824852796

「えっ」 「ファンの皆にも…お世話になった人にも…あの急にやった場所じゃなくて、祝福してる人達皆にしっかり感謝したいの」 「……ドーベル……」 2人はしばらく沈黙する。 少したって、彼女から…口を開いた。 「トレーナーも付き合ってくれる?その…踊りはしなくても、一緒にまたステージに上がらないとダメだから…」 「もちろん、付き合うよ」 「……ありがと、お祖母様には私から伝えて置くから…えっと…その…6月がいい」 ジューンブライド……ドーベルもここまで来たらそういうのが良いという気持ちがあるのかもしれない。 長い旅路で、ようやく分かり合えた俺達…… 最後はドーベルが動いてくれたこと、不甲斐ない俺を最後まで信じてくれたことも…。 「…絶対成功させような」 「分かってる…大丈夫だから」 ドーベルはぎゅっと俺の体に顔を埋めるように抱きつき、…そう静かに呟いた。

9 21/07/18(日)19:02:16 No.824852889

「……おっと、ドーベル?」 「もう少しこのままで居たい」 ただ小さく、ぎゅっと強く抱きしめる。 「ありがとう」 思わず、俺はそう呟く 「なんで?」 「…ようやく甘えてくれたから」 「………ごめん」 「ドーベル、俺こそごめんね」 抱きつく彼女を撫で続け、…彼女は幸せそうな顔で俺にただ抱きつく。 彼女がついに素直に甘えれたこと…俺はただそれだけで幸せなのだ。

10 21/07/18(日)19:02:32 No.824853018

時は立って6月 ついに来週、…メジロ家主催のとんでもない結婚式がやってくる。 ファンに対して無償で参加できるらしく、…その抽選は開始直後にサーバーダウンを起こして3分後には完全に埋まった。 …おば様は数万は入れるようにしていた、と言っていたのだが…そんな人数の会場なんて、ドーベル、大丈夫かな。 この日が訪れるまで、とにかく大変な事になった まずトレセン学園の入学希望者が凄まじい数 になったらしい、前年度の5倍近く地方からの転入含めて希望者が現れた。 当然ここは狭き門だ、…今年は特に熾烈な争いになったと聞いてる。

11 21/07/18(日)19:03:15 No.824853344

「今年で終わりか…」 ぼんやりと職員室で書類整理をする中、同僚がそっと机に缶コーヒーを置いてきた。 「よう、ドーベルの担当が終わったら、どこかすることとか決めてるか?」 同僚の質問に対し、俺はあっ!と声がでる。 「トレーナーを続けるのはやっぱ無いよなぁ」 「そりゃそうだろ…仮にもあんな形で結婚する事になったんだから」 「…どうしよ」 「メジロ家の仕事にでも着いたらどうだ?仮にも財団に近いんだし」 「うーん」 「最近東京近辺に物凄い都市が出来たらしいしな」 「確かに…」 「お前、その繋がりにあるご当主さまとやらにお願いすりゃいいだろ、少なくともトレセン学園に残れるとは思わない方が良いからな」 「わかってるって」 「本当に分かってるのか~?」 「あはは……悪かったって」

12 21/07/18(日)19:03:44 No.824853596

「はぁ…気楽だなぁ…でも本当羨ましいんだよ…マジで…」 そこから、同僚は愚痴をぼやきだす 「お前のせいで今年のティアラは大変なことになってるんだぞ」 「そんなにか?」 「そんなにだよ、 出走希望者が今年前年度の6倍近くになったんだ、桜花賞の出走権の時点で取り合いなんてもんじゃなかったからな…?その前のフューチャリティとジュベナイルの時点で熾烈な争いが起きてたし…」 「枠取るための実績の為か」 「そうだ、…んで持ってそれかg2勝利辺りで桜花賞のチケットは確実に取れるだなんてウマ娘の間では言われててな…まあ実際はファン数とかそこら辺考慮されるんだけど…もう地獄のような争いだったよ」 あのドラマは放送されてから社会現象の如くウマ娘にとってのシンデレラストーリーとして有名になったらしい…。 「オークスはもっとヤバかったけどな」 彼はケラケラと笑っていたが、同時にとんでもないことをやらかしてくれたな、と一言付け加えた。

13 21/07/18(日)19:04:00 No.824853726

「……はは…俺たち目立ちすぎたんだな…」 「おかげでトレーナーの質って奴がほんとに大変な事になったんだぞ、…トレセンに入れるってだけで有能なのに、そこに女性関係の技術までいると来た、酷い職場だよ…」 「…色々申し訳ない…」 いいって、と彼は苦い顔で笑う。 「とにかく、お疲れさん、…今年で寿退社するんだろ?…あの子と末永くお幸せにな」 「うん、…お前も…その…今年の担当と上手くやっていけよ?ダイワスカーレットだったか?…ダブルティアラ取ったんだって?今年の戦争の中本当に凄いよな」 「ま、どんだけティアラ路線が厳しくなろうとも、それを志望するウマ娘を勝たせる為に尽くすことがトレーナーの原点の心構えだからな」 自信満々に言う彼を見て、…これなら大丈夫だろうな。と少し安心した。 「頑張ってな…そっちも」 「ああ」 俺はコーヒーを飲み干して、…今週末に何もしなくて言いよう、書類整理の作業に戻った。

14 21/07/18(日)19:04:16 No.824853869

結婚式当日。 この年で結婚とか…ドーベルには結構やばいことをしたとは思ってる。 「…婚約してた上での行動だし問題無いでしょ」 「…うう…」 「シャキッとしてよ!…せっかくの晴れ舞台なんだから…」 「ドーベル」 「なに」 そこにいる純白のドレスに身を包んだ彼女は、言葉に詰まるほど、美しくて素敵だった。 「…ごめん、いい言葉浮かばない」 「ふふっ、ありがとう、…嬉しい」 紫陽花のブーケを彼女は握りしめ、目の前の扉を開く。 まさか、…花嫁衣裳の勝負服をメジロ家が用意するだなんて…。 華やかな舞台、…白いバラの花で飾られた舞台の上で…。 彼女は俺の手をぎゅっと握って、共に歩きだす。 堂々と、最後くらい、彼女の王子様になれるよう…俺はぎゅっと顔に力を入れて歩きだした。

15 21/07/18(日)19:04:35 No.824854008

ここからSide ドーベル

16 21/07/18(日)19:04:54 No.824854163

可愛いもの。 素敵なもの。 綺麗なもの。 ――アタシには、似合わないもの。 少なくとも、似合うとは思ってなかったもの。 そうやってずっと遠ざけてきた。 華やかなものは、たくさんの視線を集めるから。 …あの人のように 遠ざけて、突っぱねて、…それでも最後までアンタはアタシを支えてくれた いくつ視線が集まろうと、どんなにアタシが無理しようと…隣で胸を張って堂々してくれていた。 立ち上がるまで、立ち上がってもずっと…支えてくれた。

17 21/07/18(日)19:05:29 No.824854492

それでも 「メジロドーベル、誓いの言葉を」 神父様がやってきて、そんな結婚式の代名詞の様なことを聞いてくる。 「…アタシは…」 大きな声で叫ぶんだ。 「…誰よりも…どんな人よりも…1番彼に相応しいのはアタシなの!ずっと…ずっと!アンタに相応しい女になってやる!」 いつか、ドレスに見合う アタシになれるって――自惚れてやるんだ。

18 21/07/18(日)19:05:47 No.824854633

「…あはは…」 最後まで、アンタは苦笑いだった。 「…当たり前のこと言うなぁ」 「えっ」 「最初から離すつもりも、相応しいのはお前しかいないって、ドーベル、…何年、何十年と色褪せる物か」 「ううっ……!」 彼にミシミシなるほど強く抱き締める。 一瞬狼狽えるが、…痛い痛いなんていつもの軽い調子に戻らず。彼は続けた。 「だから…誓うよ、君の王子様は俺だけだ、そうなるように常に相応しい存在であり続けよう…ドーベル」 そのまま…私の唇を奪った。 大歓声が鳴り響き、アタシは目頭が熱くなる。 「………バカ」 「ありがと、ずっと愛してる」 「アタシも…大好き」

19 21/07/18(日)19:06:03 No.824854765

ここから~Sideトレーナー~

20 21/07/18(日)19:06:17 No.824854876

その後、彼の隣で…思いっきりソロライブを敢行した。 ライブは大成功、アンコールも既に2回目となってる。 「…本当、ドーベル…君は…」 素直じゃないな、最後のセリフだけ口パクでアイツは話しかける。 「…………」 アタシも、目線をしっかりと合わせて… ありがとう…と口を動かし、誰にも聞こえない音を届けたのだ。

21 21/07/18(日)19:07:06 No.824855280

終わり 少し前に書いたドーベルを結婚式をかかずに終わるのは嫌だったからどうしても書きたくてかなり駄文気味になったけど書ききりました ドーベルsideのサポカの引用がしたかっただけです

22 21/07/18(日)19:07:49 No.824855623

ウワーッ!大作!

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