虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/07/07(水)22:53:28 No.821127759

｢いらっしゃい！｣ 店主さんの威勢の良い掛け声に迎えられ、入店。ここは行きつけのラーメン屋さんです。 ｢ここ、よく来るんです。ラーメンだけじゃなくて餃子も美味しくて｣ もちろん、後で牛乳を買う必要があるのですが。今日はテイオーさんもいますからリンゴも買いましょう。 ｢へぇー、たづなさんよく来るんだー。ちょっと意外かも｣ 女性の一人ラーメンは今では一般的になったとはいえ、やっぱりそうでしょうか？でも、ここの味、大好きなんです。まあ、それだけではないんですが。 ｢そんなに意外ですかね？｣ ｢うん。もっとイタリアンとか食べてそうなイメージあったから｣ …テイオーさんの私のイメージってどうなってるんでしょう？まあ、それはさておき。 ｢味は保証しますよ？この前〇〇トレーナーさんと来た時も好評で…｣ ｢……へぇ。｣ ……あっ！ 気付いた時にはもう遅いです。テイオーさんは以前のような据わった目で私を見つめていました。

2 21/07/07(水)22:54:01 No.821127985

テーブル席に通されて、ラーメンを待つ間。向かいに座るテイオーさんの鋭い視線に晒されて私は縮こまっていました。完全に失言です。仲良くなったからって油断していました。 〇〇トレーナーさん、即ちテイオーさんの専属トレーナーさん。いくら親しい間柄と言っても、自分のトレーナーが女性と二人で出かけていたら面白くはないでしょう。ウマ娘にとって、トレーナーは無二の拠り所。専属なら尚更です。誰かに盗られるという不安はウマ娘なら誰しも一度は抱くものですから。何故分かるのかって？実は私もウマ娘だからです。テイオーさん達には秘密なんですけどね。 とにかく、このままではせっかく仲良くなったのにまた警戒されてしまいます。どうにかして誤解を解いて、トレーナーさんを奪う気なんて無いことを伝えなければ。 ｢テ…テイオーさん…？｣ ｢……何さ｣ あ、駄目ですねこれ。怒ってます。なんなら最初の頃より怒ってます。しかし、ここで怯むわけにはいきません。頑張れ、私。 ｢〇〇トレーナーさんとここに来たのは別にやましい意味があったわけではなくてですね…｣ ｢……じゃあ、何さ｣

3 21/07/07(水)22:54:36 No.821128232

お出かけ自体を提案したのは彼だと言うことは黙っておきましょう。大変なことになります ｢覚えてますか？以前話した私が一番尊敬するトレーナーさんのお話｣ ｢ボクのトレーナーと似てるって人のこと？｣ ｢そう！その人です！私が今までトレセン学園で出会った中で、最も尊敬する彼が今回の件には関わっているんです｣ 普段はあまり思い出さないようにしてる彼のこと。緊急事態ですので、また助けてもらうとしましょう。もちろん、私がウマ娘であることは伏せているので、彼との関係は嘘を交えて伝えますが。 ｢このお店はですね、そのトレーナーさんの行きつけでもあったんです｣ ｢そうなの？｣ テイオーさんが食い付いてきました！目から警戒の色が消えてますね。チャンスです！ ｢えぇ、彼が何かお祝いしたい時、決まってこの店に担当を連れてきたんです。私も何度かご一緒させてもらったことがあって｣ ｢それが、何でボクのトレーナーを連れて来た理由になるのさ？｣

4 21/07/07(水)22:55:09 No.821128469

｢〇〇トレーナーさんに、あの人に似てる彼に、ここを知ってもらいたかったからですよ。素敵な場所なんです、ここ。美味しいし、何より落ち着くんです｣ これは本心です。あの人と似てる彼に、この場所を知ってもらいたかった。素敵な場所だから、今度は彼が、テイオーさんを始め多くのウマ娘とここに来てくれればこんなに嬉しいことはありません。 ｢だから、決してやましい意味はないんですよ？｣ 私の話を聞き終えたテイオーさんは、少し考え込んでる様子。やがて、口を開きました。 ｢分かった。たづなさんがそう言うなら、そうなんだろうね｣ やりました！信じてもらえました！一時はどうなるかと思いましたが、これでテイオーさんとの仲は安心ですね。 ｢それと、そのトレーナーの話を出せば毎回許すってわけじゃないから気を付けてね？｣ はい、ごめんなさい。

5 21/07/07(水)22:56:01 No.821128842

無敗のテイオー様に睨まれてしまいました。しかし、テイオーさんはすぐに笑って ｢冗談だよ！ちょーっとヤキモチ妬いちゃっただけ｣ あぁ、良かった！胸を撫で下ろしました。今度こそ安心です。 ｢でも、ボクはこの場所落ち着かないかなぁ？ガヤガヤうるさいし｣ えっ…？ ショックです。私が良かれと思って紹介したつもりが、テイオーさんのお気には召さなかったようです。押し付けになってしまいました。 ｢あ、そうじゃなくてね。たづなさんには落ち着く場所ってことだと思う｣ …？どういうことでしょうか？ ｢たづなさんにとって大切な思い出なんだよ、ここ｣ 勢いよく叩かれたような気分。そんな風には思ったこと、ありませんでした。だって。 ｢落ち着かないけど、たづなさんの思い出の場所なら、ボクも好きだよ｣ …今は深く考えるのはやめましょう。この場所を好きと言ってくれる子がいるのなら。精一杯ここの良さを伝えることに努めましょう。 ｢あ！でも、女の子のお祝いの場所としてはあんまり良くないと思う！｣ ｢そーなんですよ！！！｣ あ、つい素が。やはり彼女といると、少しだけ昔の私に戻ってしまうのかも。

6 21/07/07(水)22:56:42 No.821129120

テイオーさんと別れて。少し考え込んでしまいました。 私は日頃、あの人との日々を思い出さないようにしています。いえ、少なくとも私自身はそうしてると思っていました。ですが、今日テイオーさんに言われて気付きました。私は、実は思い出を捨て切れていないのではないか、と。 あの場所に何度も通うのがその証拠。思い出さないようにしていると言いつつも、気が付けばあのラーメン屋さんに足を運んでいる。テイオーさんと話す度に、あの日々を楽しく語る自分がいる。本当は私は未練でいっぱいで… …はぁ。未練があるから何だと言うんでしょう。どんなに望んでも、どんなに昔を懐かしんでも、あの日々は二度と返ってこない。そんなの、分かりきってるじゃないですか。今一度、気を引き締めなさい、【駿川たづな】。今の貴方はもう、彼女ではないのだから。 ─じゃあ、あのラーメン屋さんにはもう行かないの？ それは…… 『落ち着かないけど、たづなさんの思い出の場所なら、ボクも好きだよ』 テイオーさんの笑顔。それが、私の自問に答えを出すことを許しませんでした。

7 21/07/07(水)22:57:49 No.821129667

～⏰～ ｢トレーナーさん！見てたかしら！？アタシのパーフェクトな走りを！｣ ｢ナイスランだったぞ、トキ！見事な勝利だ！今日はお祝いだな！｣ ｢え、本当！？じゃあ｣ ｢あぁ、いつものラーメン屋へ直行だ！餃子も頼んでいいぞ！｣ ｢……はぁ｣ ｢どした、トキ？ラーメン好きだろ？｣ ｢好きだけど…｣ 女の子のお祝いで毎度ラーメン屋さんってどうなんだろう。それに、これでも年頃の乙女なのに。ニンニクとか、そういうの、気になって。でも。

8 21/07/07(水)22:58:02 No.821129752

｢いや、すまん。俺はよく女心が分かってないと言われるから…恥ずかしながら｣ あの場所には好きなモノもあって。 ｢別に、嫌とは言ってないでしょ。早く行きましょ、トレーナーさん｣ ｢本当にいいのか？他の場所でも…｣ ｢いいから！｣ 美味しそうに、ラーメンを頬張る貴方の顔が好きなんて、言えるはずなかった。 ｢牛乳とリンゴも買ってくれるなら構わないから。もちろん、奢りでね？｣

9 <a href="mailto:s">21/07/07(水)22:58:40</a> [s] No.821130028

以上です たづなさんの話の続きです

10 21/07/07(水)23:04:20 No.821132522

テイオー流石に賢い

11 21/07/07(水)23:12:40 No.821136110

ちょっと不穏

12 21/07/07(水)23:15:38 No.821137330

幼名パーフェクトさんいいよね

13 21/07/07(水)23:17:46 No.821138219

仲良しいいよね