ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/07/07(水)22:46:31 No.821124726
セイウンスカイお気に入りのお昼寝スポット、そこには一人と一匹が寝転んでいた。 「はあ~~~」 「どうしたんですかセイちゃん!せいちゃん心配です!」 深くため息をつくセイウンスカイを心配するのは、彼女の特徴が散見されるせいうんたぬき。彼女たちはこうして共にお昼寝をする程には関係が良好だった。 「ありがと、せいちゃん。んー…なんというかね、せいちゃんみたいに素直になれたらなぁって思う時もあるわけですよ」 「せいちゃんよくわかんないです!」 「にゃはは、そうだよねぇ。ほりゃ、ぷにぷに~」 「突かないでください!突かないでください!」ムニムニ 「はあ、私もトレーナーさんに一言くらい好きって言えたらなぁ……」 うっかりこぼしたスカイの一言をせいうんたぬきは聞き逃さなかった。短い手足を全力で回転させ、一気に起き上がった。 「……!セイちゃんはトレーナーさんに大好きって言いたいんですね!せいちゃんわかりました!」 ぽてっと右手を胸元に叩きつけ、自信満々に駆け抜けていくせいうんたぬき。
1 21/07/07(水)22:48:15 No.821125517
何を分かったのかわからないが、スカイは自分がとてつもない失策をしたことをすぐに悟った。 「ちょっまっ、せいちゃん!待って!まーってー!!!!」 せいうんたぬきは速い。それは単純にウマ娘と同じ速さ、という意味ではなく学園内においてはたぬきたちしか知らない、あるいは通れない道はところどころにあり、彼女はそれを熟知しているのだ。 ぽてぽてと駆け、茂みを抜け、床下を潜り抜けていく。目指すは自分もセイウンスカイも大好きな人の下だ。 せいうんたぬきはトレーナーのことはもちろん、自分と似たウマ娘であるセイウンスカイのことも大好きだ。大好きな二人が、大好き同士になるのなら、それはせいうんたぬきにとってとっても喜ばしい。 「せいちゃんがんばります!」 ぽてぽてぽてぽて……。決意を胸に、せいうんたぬきは学園を駆け抜けていく。
2 21/07/07(水)22:48:40 No.821125698
セイウンスカイは嫌な汗が止まらない。彼女は己の気持ちを表に出すことを非常に恐れていた。 たとえ担当トレーナーが、自分に対して公私を問わず尽くしてくれようとも、所詮は担当とそのウマ娘にすぎない関係なのだ。 それが、自分の気持ちを知られて、そして壊れてしまったらと思うと、胸中は宇宙空間ほどにも冷えてしまう。 「ぜーーったいせいちゃんを捕まえなきゃ!」 学則を無視しない程度の全力で、彼女は駆け抜けていく。
3 21/07/07(水)22:49:07 No.821125915
「せいちゃん見つけました!トレーナーさん!」「見つけたぞっ!せいちゃん!」 ほぼ同時に、彼は一人と一匹に補足された。ぽてっとしているなんとも愛らしいせいうんたぬきと、美少女の完成形と心中で呼称しているセイウンスカイだ。 「お、ふたりともどうした?とりあえずこれからトレーナー室に向かおうと思ってるんだけど、一緒に行くか?」 なにやら込み入った話になってそうだが、とりあえずくつろげる場所に向かってからでも遅くないだろうとノンキしていたトレーナーに爆弾が降り注いだ。 「せいちゃん言います!セイちゃんは「だから私がトレーナーさんのこと好きって言ったら駄目だって―!!!」です!」 長い沈黙が、廊下を支配した。 いや、正確に言うとその沈黙が支配していたのは渦中の二人だけであって、他の人々はすぐさま息を吹き返し、只今の事件を反芻している。 やってしまった、と彼女は思った。終わった、とも。頭の中は絶望と羞恥だけが支配していて、喉は言葉を操れなくなり、涙はもうすぐ溢れそうになった。 二人だけの沈黙を破ったのは、彼女の方からだ。声は発さず、静かに振り向いて、駆け出そうとした。
4 21/07/07(水)22:50:03 No.821126311
だがこの時。紛れもなく彼は彼女よりも速かった。彼女の右腕を掴んで、自分の方へ引き寄せる。 「スカイ」 押し黙ったままの彼女を、彼は後ろから抱いた。 セイウンスカイは、もはやこの状況の理解が追いつかなかった。悲しめばいいのか、愛しい人が至近にいるこの状況を、喜べばいいのか。 「あー…なんていうか、その、だな。……うん、よし」 彼の中で、いったいどんなことが逡巡されたのか、スカイは知る由もない。 ただ、彼女の中に逃げる気はなくなった。己が彼に囚われている以上、彼に全てを委ねてしまおうと、決意した。 くるり、と彼女の体が半回転した。目の前にあるのは、トレーナーの顔で、その顔はまるでレース前のように緊張した面持ちだった。
5 21/07/07(水)22:51:56 No.821127091
たぬき! ありがとう…
6 21/07/07(水)22:52:20 No.821127252
かわいい…
7 21/07/07(水)22:52:22 No.821127265
「俺は、トレーナー契約が終わったとしても、君がレースを降りることになっても、ずっと一緒に居てほしい」 それはきっと、彼が今言える、精一杯の言葉。その意味と意図は齟齬なく彼女に伝わった。 「だめです」 「えっ」 伝わったからこそ、彼女はわがままをいう。策だとか駆け引きだとか打算とかではなく、一人の女の子としてのわがままを。 「ちゃんと、ストレートにいってください…。私に、ちゃんと伝わるように。変な誤解とか、しないように」 「……わかった」 一息の深呼吸を起き、彼の中のありったけの感情を乗せて、彼女に解き放つ。 「愛してる、スカイ」 廊下中に、歓声が湧いた。
8 21/07/07(水)22:53:05 No.821127593
抱けー!抱けー!
9 21/07/07(水)22:53:31 No.821127782
嬉しそうに抱き合う二人を、ぽてぽてと嬉しそうに見守るせいうんたぬき。 しかし、せいうんたぬきは知らない、人の秘密を気軽に喋ろうとしてはいけないと、セイウンスカイにお説教される未来を。 でもその後「ありがとね」と彼女に撫でられ、ルアー付きの勲章を贈られる未来のことも。 ただただせいうんたぬきは、嬉しそうな二人を見て、とても幸せな気持ちになっていた、 「せいちゃん、セイちゃんもトレーナーさんのことも大好きです!」 おわり。
10 21/07/07(水)22:54:15 No.821128079
一番きつい水曜日にスーッと効いてこれは…いい…
11 21/07/07(水)22:54:43 No.821128272
ルアー勲章は貴重だし…
12 21/07/07(水)22:55:23 No.821128572
セイウンたぬきは賢いな…
13 21/07/07(水)22:57:42 No.821129617
今日の聖ウンス界の高まりによって書きました 多分この後せいうんたぬきは「せいちゃん、セイちゃんとトレーナーさんと一緒に暮らしたいです!」とか爆弾を投げ込む日々を送ると思う
14 21/07/07(水)22:57:43 No.821129621
せいうんたぬき可愛くていい子だな
15 21/07/07(水)22:57:52 No.821129690
>ただただせいうんたぬきは、嬉しそうな二人を見て、とても幸せな気持ちになっていた、 かわいい…かわいい…
16 21/07/07(水)22:58:58 No.821130145
セイトレとセイちゃんに子供出来たら凄い溺愛しそうだな…
17 21/07/07(水)22:59:38 No.821130458
いいんですか理事長!?
18 21/07/07(水)23:00:20 No.821130766
推奨ッ!
19 21/07/07(水)23:00:38 No.821130906
公認ッ!
20 21/07/07(水)23:04:09 No.821132441
セイちゃんもせいうんたぬき可愛すぎる…
21 21/07/07(水)23:12:42 No.821136124
ただひたすらに可愛いで満たされた…
22 21/07/07(水)23:33:53 No.821144808
しょんぼりたぬきもいいが いい子なたぬきもいいね
23 21/07/07(水)23:34:46 No.821145127
せいうんたぬき有能すぎない?
24 21/07/07(水)23:42:52 No.821147904
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
25 21/07/07(水)23:43:31 [s] No.821148117
ありがとう…ありがとう!
26 21/07/07(水)23:44:22 No.821148415
せいちゃんかわいいな…
27 21/07/07(水)23:45:03 No.821148648
今まで読んだ中でも有数のほっこり感…いいね…