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21/07/07(水)22:30:38 戦争の... のスレッド詳細

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21/07/07(水)22:30:38 No.821117288

戦争の原因は、全て学園長が気まぐれで持ち込んだブツが引き金だった。 「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング笹じゃねーか」 完成度高ぇなおい、とか妙な事を口走るゴルシから視線を笹に移した。 グラウンドのど真ん中に、紙垂やしめ縄などに取り囲まれ厳重に設置されている。 多少色艶が良い事を除けば、どう見ても普通の笹だ。 完成度もくそもねぇと、つまらなそうに鼻を鳴らすと、目敏くゴルシが振り返る。 「あ、オヤジ。今これを普通の笹だと思ったろ」 「んだよ、違うってのか?」 「違うんだって! いやマジで!!」 頭の後ろで手を組みながらゴルシを胡散臭げな目で眺める。 が、すげぇ必死な勢いでバカは顔を近付けて来やがった。うぜぇ。

1 21/07/07(水)22:30:59 No.821117452

「つーか唾を飛ばすんじゃねぇよ」 「ぐへぇ!?」 ヘッドバッドをかますとゴルシは顔を押さえて、地面を転げまわる。 まぁ大げさに痛がってるが、こいつのタフさなら怪我しねぇだろ。 呆れながら舎弟のウマ娘を見下ろしていると、小さな影が近付いてきた。 「博識ッ! その通り、これはただの笹ではない――――願いを叶える笹である!」 「はぁ?」 頭のおかしいゴルシ事を言い出したのは、理事長だった。 ついに脳へにんじんキメ過ぎておかしくなったのかもしれない。 隠す気もなかった俺の不審そうな眼に、理事長は苦笑した。 「理解ッ! ま、頂点に飾った短冊の願いを三女神が叶えたという逸話がある、ということだ」

2 21/07/07(水)22:31:54 No.821117910

「あー、そういう奴な」 箔漬けとしちゃ良くある話だろう、イベントにも持ってこいだ。 ただオレ個人としては胡散臭いことこの上ないし、興味も湧かないが。 そもそも願いってのは自力で叶え―――― 「うむ! かつて悲恋に終わりかけたヒトとウマ娘を結び付けたという浪漫溢れる伝説である!」 その瞬間、ウマ耳を立てやがった連中の空気が変わった。 へぇ、恋を、三女神が……ほぉー。 集まる視線に気付いていないのか、更に理事長は続ける。 「まぁ他にも人生を賭けたレースで勝てた等の話もあるが、これが一番青春という感じで好みだ!」 わははと笑いながら立ち去る姿を、誰もが笑わず見つめ――――戦争が始まった。

3 21/07/07(水)22:32:10 No.821118027

     ・ ・ ⏰ ・ ・    

4 21/07/07(水)22:32:25 No.821118149

「アンタなにアタシの短冊どけてんのよ!!」 「うるせぇ! 俺が一番カッコよくなるんだ!」 「あ、あなた程の人が何をなさってるのですか!?」 「そういう君が手に持ってるものは何か言ってみろ!」 「一流のウマ娘の短冊は、トップに飾らなくちゃいけないの!」 「あはははは……お嬢様、私も今だけはそこを譲れないかな!」 「ちょわわわ!? 何故学級委員長の短冊を外そうと?!」 「いや、モルモット君と、その……べ、別に構わないだろう?!」 「お兄さま!」 「お兄ちゃん!」 「義兄貴!」

5 21/07/07(水)22:32:36 No.821118279

     ・ ・ ⏰ ・ ・    

6 21/07/07(水)22:34:33 No.821119252

掲示板に張り出された処罰者名簿を端から端まで眺めた。 理事長が『願いが叶う笹』を持ち込んでから連日リストに名前が増えてやがる。 「うっわ生徒会の三冠バも反省部屋行きになってるっス」 「生徒会のトップ3がそれってさぁ……」 「あそこ、私らよりイカれてる時あっからな」 錚々たる顔ぶれに引き攣った笑いをオルフェ達が浮かべる。 これがG1や重賞を勝った栄えあるウマ娘の姿なのか? 呆れ顔のままグラウンドへと視線を向ければ、数日前とは随分様変わりしていた。 自由に短冊をつけられた筈の笹周りにはバリケードが。 周辺には常に数人の風紀委員のウマ娘達が、相互監視しつつ見張りに立っている。 乱闘騒ぎにまで発展した事を受け、激怒した理事長の強硬策だった。

7 21/07/07(水)22:35:30 No.821119674

『憤怒ッ! 健全な成長を願っての催しに邪な私情を挟む者には処罰を下す!』 七夕当日、お焚き上げまで警備も強化する、そう全校集会で宣告までした。 にもかかわらず笹の先端に自分の短冊を取り付けようとする奴は後を絶たない。 仮に今付けられた処で、すぐ取り除かれるに決まってんだろーが。 なんとも言えない気分のまま、周囲を見渡す。 が、目当ての人物はいない。何処に行きやがった? 代わりに別の人物が目に留まった。トレちゃんだ。 向こうもこちらに気付いたのか、急ぎ足で駆け寄ってくる。 「おーいリョテイ、今日のトレーニングはどうする?」 「パス……って言いたいとこだが、やるか」 「「「「「えっ!?」」」」」

8 21/07/07(水)22:36:47 No.821120228

なんだてめぇら、オレが練習すんのに文句あんのか? あとスズカにトプロ、なにちゃっかり混じってやがる。 「おお、やる気だな! よしッ、今日は何がしたい?」 「基礎トレとフォームチェックだ……七夕までに仕上げてぇ」 「ゴールドシップと似たような事言うな、まぁいいけど」 一瞬聞き捨てならない事をトレちゃんが口にした。 問い詰めようかとも思ったが、手を下ろす。 あいつが何を何を企んでるのかは予想がつき、不敵に笑う。 「上等だ、やってやるよ」 「何か言ったか?」 別にと嘯きながら考えを巡らせ、トレちゃんやドリジャ達を連れて歩き出した。

9 21/07/07(水)22:37:25 No.821120535

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10 21/07/07(水)22:38:01 No.821120829

――――七夕祭り、当日夜 短冊と笹を焚火にくべて三女神に捧げるまで、あと五分。 時計を確認し、深呼吸。靴紐をきつく締めて、覆面を被り直し、 ドアを蹴破り、グラウンド目掛けて駆け出した。 願い事を書いた短冊を無理矢理早く飾った所で没収される。 ならどうするか? 焚き上げる直前に吊っちまえばいい。 いや日中の人目に付く時間帯に事を起こすのは掛かり過ぎだろ。 潜伏していた部屋から廊下を走りながら大声で吠える。 「なぁ、お前もそう思うよなぁタイキよォ!」 「ワッツ!? その声はリョテイですネ!」

11 21/07/07(水)22:38:59 No.821121244

前方を走るウマ娘が驚き声で振り返ると、ホッケーマスクだった。ヤベェな。 まぁ顔を何で隠してようが、声とフォームを見りゃ誰か分かる。 しかも付き合いが長い奴となれば尚更だ。 「リョテイも狙ってましたか、でも頂点は譲らないデース!」 「言ってろ、勝つのはオレだ!」 強気な言葉が予想外だったのか、尻尾を一瞬立てると加速しやがった。 ギアを上げ、ぐんぐんと差を広げられる。 最強のマイラー、タイキシャトル。 あいつに勝つのは万年シルバーコレクターのオレでは無理だと? 普通なら確かに少々厳しいが……長距離ならどうだ? 本日のメインイベント会場周辺は、風紀委員が巡回している。

12 21/07/07(水)22:39:45 No.821121577

だから二〇〇〇メートルは離れた位置に潜んでた訳だが。 (曲がり角の多いコースで脚が持つか試してやるよォ!) (この距離でも負けまセン! 絶対にトレーナーさんと牧場経営しマース!) 先行するタイキの脚が尽きるの窺っていると、角から影が乱入する。 タヌキの被り物をしながらも、鋭い走りを見せるウマ娘だ。 顔は分からないがフォームと忌々しいでけぇ乳袋をぶら下げた奴は一人しかいねぇ。 「ドトウ! てめぇが来んのはちと予想外だったぜ!」 「ワァオ! ドトウ、ユーもウィッシュが?」 「ひゃぁ!? 私もトレーナーさんと、ハ、ハッピーになりたいんですっ!」 気弱な叫びとは裏腹に、ドトウはピタリとタイキの背中に付いて隙を伺う。 メイショウドトウ、あの歌劇バカと共に時代に蓋をした副王の走りに弱さはない。

13 21/07/07(水)22:39:57 No.821121659

笹までの距離は三ハロンも目前、ってとこか。 すでに校舎を抜けて、グラウンドの照明も見えてきた。 先頭をひた走るタイキの後をドトウ、オレと続きながら機を見る。 そろそろ勝負を仕掛けるかと思っていると、腕時計型ディスプレイに連絡が入った。 『風、注意』 『SWまもなく合流』 短文だが意味は分かった。いい働きだ、てめぇらあとで焼肉奢ってやるよ! 加速を入れかけた脚を一瞬緩めて、ドトウとの間隔を僅かに広げた。 と、そこに滑り込むように一陣の風が突っ込んでくる。狙い通りに。 「よおスペちゃ~ん、会いたかったぜぇ~?」 「げぇーっ! リョテイさん!? なしてー?!」

14 21/07/07(水)22:41:41 No.821122433

サングラスにマスクをしたスペが悲鳴を上げて、速度を上げる。んー、普通だな。 ただ、おいおい中々嬉しい反応を見せてくれるじゃねぇか。 こっちも抑えていた脚を解放し、スぺの背中に貼り付く。 「この尻尾、なんか邪魔だなぁ~? んん~?」 「ぎゃーっ! もう噛まないで下さいリョテイさん!」 以前のトラウマかビビってまた加速したスぺを、ニヤニヤ笑いで見送る。 間抜けた叫びを上げてるが、絶対に油断しねぇ。 名実ともに日本総大将の異名を背負ったスペシャルウィークを侮る気はない。 囁きやちょいとした演出でペースを乱してくれるなら、助かるってもんだ。 何より目視可能になったグラウンドでは、もう篝火の準備が進んでる。 最後の直線のようなもんだが、オレは先行組よりも少し迂回路を選んだ。直後、

15 21/07/07(水)22:43:07 No.821123129

「「「「こらーっ!」」」」 「ノー!?」 「あううう、どうしてぇ……」 影に隠れていた風紀委員達が飛び掛かり、タイキとドトウを捕まえた。 限界に近付いていたタイキと、運が悪かったドトウはこれでリタイア。 で、スぺにも潰れて欲しかったんだが、 「待ちなさーい!」 「すみませーん! 私にも願いがあるんですー!」 脅威の末脚を発揮して魔手を回避、そのままスぺはラストスパートをかける。 舌打ちをしながら、オレも速度を上げてグラウンドへ飛び込んだ。 こっちに気付いた連中が驚いてドンドン左右に分かれていく。 笹の周りに屯する短冊を諦めた連中を横目に、脚を廻す。

16 21/07/07(水)22:43:21 No.821123263

警備の連中が手薄になった今、暴動を警戒してたが何事もなく助かった。 僅かに前を行くスぺの背中に叫ぶ。 「おいスぺ! お前の願いってなんだ!」 「ひょえっ!? な、なんだっていいじゃないですか!」 「どうせにんじん食べ放題とかだろーが。それとも口に出せねぇような内容かぁ!?」 バカにした口調で煽ってやると、スぺは勢いよくこちらへと振り返った。 お前はそういう奴だよな、そういう真っ直ぐな所は嫌いじゃないぜ。 「違います! 夏にトレーナーさんと一緒に実家に行きたいんです!」 「え、それくらいなら別にいいけど」 「へっ!?」 急な男の声に急ブレーキをかけると、スぺがUターンをかました。

17 21/07/07(水)22:44:02 No.821123587

すれ違うあいつの背後を視線で追えば、ありゃスぺのトレーナーか。 どうやらスぺの叫びを聞きつけたらしいが、競り合わずに済んだ。 こうしてオレの前に敵は居なくなった訳だが、脚は止めない。 風紀委員共が来る事やカウントダウンが始まっている事もある。 が、何よりも警戒すべきなのは―――― 「退け退け! ゴルシちゃんのお通りだァァァ!」 「来やがったな、大バカがァ!!!」 取り押さえに来た連中を蹴散らしながら、妙な形のこけしが突っ込んでくる。 ゴルシだ。ま、別ルートで来てるのは連絡を受けて知っちゃいたが、 「まさか妨害に潰されず来るとは、タフ過ぎんだろ」 「あ! メッチャ邪魔入ると思ったらオヤジのせいかよ!?」

18 21/07/07(水)22:44:52 No.821123970

目ん玉ひんむいて怒鳴ってくるが、無視を決め込む。 読める手で来て、手回ししてねぇ方が悪ぃんだよバーカ。 笹まであと少し、残った全力を振り絞る。 同じくゴルシも速度を上げてくるが、いつものキレ味はない。 妨害が思いのほか効いたらしい、よくやったぞお前ら。 胸元から短冊を取り出し、柵を跳び越えようと脚を力を入れた時、 「危ないリョテイ、ゴールドシップ!」 「げっ!?」 観客の中から飛び出したトレちゃんが、大手を広げて立ち塞がった。 慌ててブレーキをかけるが、勢いを殺し切れずゴルシ共々胸に飛び込む。 「あっぶねぇだろうが!? はねたら大怪我じゃすまねぇ――――もがっ!?」

19 21/07/07(水)22:45:54 No.821124459

抗議の声を遮るように、トレちゃんがオレ達に覆いかぶさる。 ひ、人前で誰に触ってんだ! そう叫びかかるが、 直前にトレちゃんの背後で燃え盛った焚火の勢いに言葉を呑み込む。 後で聞いた話だが、実は点火が急遽前倒しになっていたらしい。 原因はオレ達が走り出したのを、防犯カメラで学園長が察知したからだ。 これ以上騒ぎが大きくなる前にとの判断だったが……。 結局セレモニーなどを省略しても、まだオレ達の足が速かったとか。 ちらちらと舞い上がる火の粉を、呆然と見上げる。 柵があるしウマ娘である以上、大事にはならないが軽い火傷しただろう。 「二人とも大丈夫か?」 「お、おう。ありがとなトレちゃ……って、おい背中?!」

20 21/07/07(水)22:47:11 No.821125072

「へ? って、アチチチチ!?」 背中に飛んできた火の粉を消火しようと、トレちゃんが地面に倒れ転げ回る。 なんでオレ達を庇って自分が火傷してんだよ!? と、いつの間にかゴルシがバケツを持って走って来る。 「水があったぜ! オヤジ!」 「でかした!」 水をぶっかけて火を消し、そのまま引き摺って篝火から離れる。 どうやら服に穴が開く程度で済んだらしく、胸を撫で下ろした。 が、それでも自分が原因である事に変わりはない。 「その……ごめんな、大丈夫か?」 「悪ぃ、ちょっと掛かってた」

21 21/07/07(水)22:48:41 No.821125703

「別に気にしないで。とりあえず二人に怪我がなくて良かった」 ほっと顔を泥まみれにして笑うトレちゃんに、胸が痛んだ。 ……これは責任、って奴を取るべきか。 もし仮に同じ目にオレが合えば、トレちゃんに嫁にしろと言うだろう。 ならば仕方ないな、うん。 覚悟を決めて口を開きかけるが、先に横から言葉が割り込んできた。 「慶事ッ! 大した怪我無かったとは喜ばしい――――が」 「「こ、この声は……」」 恐る恐るゴルシと振り返れば、青筋を立て仁王立ちする理事長が。 そうして先に捕まったタイキ達諸共、オレは夜遅くまで説教され続けた。

22 <a href="mailto:s">21/07/07(水)22:50:30</a> [s] No.821126498

雨だし時間も遅いけど、まだ七夕だから許して しかし長すぎたので失礼する 織姫と彦星の話は間に合わなかったからお蔵入りするね

23 21/07/07(水)22:53:23 No.821127720

いい…

24 21/07/07(水)22:53:30 No.821127774

おい勝手に失礼するんじゃない いい話をありがとうとてもよかったです

25 21/07/07(水)22:54:06 No.821128017

大作だった… ありがとう…

26 21/07/07(水)22:54:39 No.821128261

>妙な形のこけし ねえこれってジャスタウェイ…

27 21/07/07(水)22:54:52 No.821128349

実際願いを叶える笹なんてもの飾れば湿度高いウマ娘達が狙わないわけないのだ

28 21/07/07(水)22:56:05 No.821128876

短冊は隠し通したのか見られたら相当恥ずかしいだろうが

29 21/07/07(水)22:56:38 No.821129098

ゴルシ突っ込んでたら爆発してたんじゃ…

30 21/07/07(水)22:58:55 No.821130130

よかった…ありがとう…

31 21/07/07(水)22:59:30 No.821130399

ゴルシと一緒に爆発したらまあアフロになって終わりだろうし

32 21/07/07(水)23:01:38 No.821131343

>ゴルシ突っ込んでたら爆発してたんじゃ… だからトレちゃんは身を挺してでも止めるね 心配してもらえるゴルシを見てチクリと胸が痛むリョテイ

33 21/07/07(水)23:05:17 No.821132941

書き込みをした人によって削除されました

34 <a href="mailto:s">21/07/07(水)23:05:45</a> [s] No.821133143

双眼鏡を外し、正座するオヤジたちから夜空へと視線を向けた。 屋上からは見上げる空は地表より近いけど、天の川が見える程じゃない。 多少の寂しさを感じつつ背を伸ばすと、フェスタが缶ジュースを差し出してくる。 「飲めよオルフェ、どーせ長丁場だ」 「どもっス。やっぱ説教長引くっスかね」 「多分な、オヤジもゴルシも私らの事チクらねーみたいだし」 肩を竦めるとフェスタは缶コーヒーを傾けた。 その姿が何故かワンカップ片手にしてる様に見えるのは内緒っス。 貰ったジュースを飲みながらグラウンドへと視線を投げる。 今回の騒ぎに関わったウマ娘がトレーナー共々、理事長に叱られていた。 監督不行き届き、という奴らしく関係者諸共、連帯責任だとか。 それを言うならオヤジに協力した責任を追及されるとこなんスが、

35 21/07/07(水)23:05:58 No.821133247

「そこら辺は口堅いからな、トレちゃん込みで」 「そうっスねー……と、ドリジャから連絡きたっス」 文面は『おにぎりかパン、どっちがいい?』。 説教から解放されるの待つ気満々っスね。 呆れつつ買い出しリストの返信をし、顔を上げる。 と、頬杖をついてるフェスタと視線が合った。 ガン付けっスか? それなら自分、目ぇ逸らすっスよ? 内心怖気づいていたが、ふと気になっていた事を思い出した。 「フェスタはなんでオヤジに協力したんスか?」 「賭けに負けたからだよ」 言うにはオヤジに協力しろと迫られ、賭けで勝ったらいいと答えたらしい。

36 21/07/07(水)23:07:08 No.821133767

で、丁度その時に猫が目の前を通りかかったから、 「オヤジが『大きい肉と小さい肉、どっちに飛びつくか賭けようぜ』って言い出してさ」 「ほーん……で、オヤジが賭けた小さい肉に飛びつかれたと」 「そうなんだよ! ……って、なんで結果が分かったんだ?」 本気で困惑しているフェスタを前に、溜息が漏れた。 この人、時々変なとこで抜けてるよなぁ……。 今回に限って言えば、自分はタネを知っていた部分も大きいけど。 「その猫、多分オヤジの仕込みっスよ。なんか校舎裏でごそごそしてたし」 「いや猫に芸を仕込むってアンタ……」 「フェスタ、相手はあのキンイロリョテイっスよ?」 納得したのかは分からないけど、自分の一言にフェスタは押し黙った。

37 21/07/07(水)23:09:10 No.821134650

最近は随分丸くなったけど、オヤジは基本的に根性がひん曲がってる。 策を弄するための労力は惜しまないのは、ゴルシに似てる気がするっスね。 あー、と大きく声を上げ、フェスタは屋上で大の字になった。 「クッソ私のベガスで億万長者の夢が……って、まーいいか」 「いいんスか?」 「必ず当たる賭けなんざつまんねーし……でだ、オルフェよ」 視線だけをこっちに投げかけると、フェスタは唇をにやりと曲げた。 あ、さっき自分を見てたのはキチンと訳があったんスね。 「なんでアンタとドリジャは協力したんだ、えぇ?」 それも結構前向きだったろ、と付け加えたフェスタの言葉に、詰まる。

38 21/07/07(水)23:11:51 No.821135785

別に大した話じゃなかった。たまたま自分とドリジャの願い事が 『自分とあいつ、どっちが早いかレースで勝負する』 って内容だっただけで、それを知ったオヤジが 『同じ願いの短冊飾るのもバカらしいから、どっちの飾るか勝負しろ』 って唆されただけ。 で、軽く走ったら何か満足して、後はオヤジの後を着いてきたのが現状だ。 審判役を買って出た辺りで察するべきだったけど、まぁいいっス。 その辺りを説明していると、屋上の扉が開く。 姿を見せたのは買い出しから戻ったドリジャだった。 「あん? なんの話してんの?」

39 21/07/07(水)23:12:47 No.821136160

「アンタとオルフェが勝負したって話さ。で、どっちが勝ったんだ?」 目を輝かせてフェスタが尋ねてくる。 無言でついとドリジャを見上げると、向こうもこっちを見下ろしていた。 申し合わせた訳でもないけど、一息吐いてフェスタに向き直る。 「「秘密」」     「ちなみにオヤジの願いってアレだよな」 「「「トレちゃんと一緒に居られますように」」」 くしゅん 「風邪かリョテイ?」 「どっかのバカ共がオレの噂をしたみたいだが……まぁ今夜は許してやるか」

40 <a href="mailto:s">21/07/07(水)23:14:10</a> [s] No.821136715

リョテイ的には一晩中トレちゃんと居れたのでプラマイゼロくらいの感覚(少しプラス? 短距離因子が欲しいので本当に失礼する

41 21/07/07(水)23:16:58 No.821137877

すごく楽しい文章でした お疲れ様…

42 21/07/07(水)23:23:00 No.821140491

リョテイ怪文書は疲れに効く

43 21/07/07(水)23:24:30 No.821141165

リョテイはどの世代とも知り合いだなってつくづく感じる

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