21/07/07(水)16:54:07 「ねえ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1625644447165.png 21/07/07(水)16:54:07 No.820996816
「ねえねぇマックイーン、彦星と織姫ってあるでしょ?一年に一度しか会えないやつ」 「なんですか、急に」 「急じゃないよ、今日は七夕だよー!」 テイオーにそう言われて思い出す。今日は7月7日、七夕の日だった。イベントごとに浮かれるつもりもないが、忘れてしまうのも不覚。 「七夕くらい知っていますわ。天の川にカササギが橋をかけ、織姫と彦星が一度だけ出会える日。そして私たちは願いを込めた短冊を吊るして、星に望みを託す日」 対抗するように七夕についての知識を述べる。とはいえ誰でも知っているようなことで、テイオーもさらりと受け流す。どうでもいいことで少しムキになったとこっそり反省する。 「でさーちょっと考えたんだけどね、なんで彦星は天の川なんてぴょーんと超えちゃわないわけ?」 …こういう度肝を抜いてくるような発言については、やはりテイオーに分がある。子供らしい発想というのか、それともやはり天才的な視点なのか。
1 21/07/07(水)16:54:31 No.820996892
「天の川なんてって簡単に言いますが、テイオーは天の川を渡ったことがあるのですか?」 「…そりゃ、ないけど…」 「きっとそう簡単に渡れる川ではないのでしょう。なにしろ星空に跨るのですから」 「…うーっ、でもさ!」 既に話題は荒唐無稽な分野へ入っているのに、なぜか2人とも譲らない。自分でもそのことが不思議だった。 「でもさ、絶対って思うなら。絶対会いたいのなら。絶対渡ってみせるって、ボクならそう思うよ」 「…テイオー」 彼女のその言葉は無茶や誇張などではなく。覚悟に裏打ちされた、決意の証。 「…流石、と言いたいところですが。貴女が彦星になったところで、織姫がいませんわね。あら、織姫がいないならどうやって織姫に会うのでしょう?」 「…むー…」 「愛しい人がいて、初めて彦星の気持ちは分かると思いますわ。その点まだまだテイオーはお子様ですわね」
2 21/07/07(水)16:54:55 No.820996982
「…なにさ、マックイーンは知ってるの?」 「私にはメジロ家がありますわ」 「…それはなんか違うんじゃない…?」 むう。自信満々で言ってはみたが、違うと言われると確かに返す言葉に困る。愛する人というのは大事な人のことだとして、一年に一度しか会うことは出来ない。そんな状況に置かれた時、私は耐えられるものだろうか。いい例えが思いつかず、織姫と彦星の苦しみは測り取れない。 「まあ、ボクもやっぱり分からないかも。好きな人も分からないし、ずっと会えないのも分からない。いつかまた会えると信じて、一年後も好きでいる。そんなの辛いよね、多分」 「いつでも皆に会える私たちは、恵まれているということかもしれませんわね」 自分たちの運命を辿ってみる。それは数奇で、劇的で、容赦なかった。レースに神様がいるとして、決して優しいばかりではないのだろう。何も私たちに限った話ではない。レースが終われば誰かは笑い、誰かは泣く。けれど、それを支える人たちがいる。だから私たちは走り続けることができる。 「そうかもねぇ…ボクたちは幸運だよ」
3 21/07/07(水)16:55:28 No.820997096
そう言い切った彼女がどんな道を進んできたのか、私は当然知っている。でも本人がそう言うのだから、間違いない。結局のところ、全ての事象は本人でなければ正しい受け止め方など分からないし、本人が受け止めたならそれは全て正しいのだ。 「幸運。でも織姫と彦星も、案外幸運かもしれませんわね」 「まぁ、そだね。それだけ好きで、それだけ会いたい人に出逢うことができたんだから」 そういうことかもしれない。まだまだこの世界には知らないことばかり。だから、私たちはどうしても会いたい人を見つけてはいないかもしれない。それは焦っても見つからないものだろう。永遠に見つからないかもしれない。終生の存在というのは、何物にも変えがたい貴重なモノで。 「…うーん、決めた!」 少し考えた後に、テイオーが大きな声で言う。 「何をですの?」 「短冊に書く願い事だよ!…願い事があるんだったら、自分で叶えちゃえばいいのにって思ってたんだけどさ」 それは、同感だ。織姫たちには申し訳ないが、一年に一度しか会えない二人は、願いごとをするには少し頼りない気もする。
4 21/07/07(水)16:55:59 No.820997191
「けど、これは決意表明。織姫と彦星に負けないくらいの幸せ者になるぞーってことを書くんだ!…きっと、二人は幸せだから。どんな逆境にあっても、次の一年を思うだけで前を向ける。それぐらいの元気をもらえる存在がいたら素敵だよね。…恋人とかは、まだわかんないけど」 なるほど。 「それは確かに、素敵ですわね」 理にかなっているのかはわからないが、納得した。 「でしょー?あとはちゃんと夜晴れるといいけど。二人が会えなかったら寂しいもんね」 最初は彦星に文句をつけていたのに、今やすっかり二人の恋路を応援しているテイオーに思わず笑みが溢れる。 「そうですわね、晴れて欲しいですわね」 満天の夜空に光る織姫星と彦星、そしてその間を渡る天の川。こんな会話をしたおかげで、いまからそれが楽しみになってきた。 「…そうだ、マックイーンは何を短冊に書くの?」
5 <a href="mailto:おわりです">21/07/07(水)16:56:20</a> [おわりです] No.820997273
そういえば、どうしよう。生半可なことを書いては、テイオーに馬鹿にされてしまう。かと言って思ってもいないことを書いたらバチが当たりそうだ。…よし。 「もちろん」 心の底の底。掬い上げた本当の気持ち。 「貴女とまた走ること。…勝つことは、願うまでもないでしょう?」 「…負けないよ」 「そのままお返し致します」 それは奇跡や夢だとしても。二人が本気で願うのだから。織姫と彦星の逢引きのように、絶対に叶うのだ。
6 21/07/07(水)16:56:39 No.820997337
いい…
7 21/07/07(水)16:59:58 No.820998041
急にそういうテイマクが来ると心臓に悪
8 21/07/07(水)17:02:19 No.820998578
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