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21/06/23(水)23:17:11 「俺は... のスレッド詳細

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21/06/23(水)23:17:11 No.816338732

「俺は奇跡とか信じない性質でさ」 それが私のトレーナーの口癖だった 事象が発生するなら等価値で相殺されるべきでお前さんの名前にケチを付けてる訳じゃないのだと ただ私が見せる手品は大好きで良くせがまれた 種も仕掛けもあるところが素晴らしい、そう言って喜ばれるのは不本意だったが… 「だって俺は魔法が使えるからね」 じゃあ見せてくれるかな、という私の目の前で手品で出したハトを手招きし 腕に留まらせた後二度、三度と撫でまわすとハトは兎に変わってしまった 手品に関してはうるさい私の目の前でよもやこんな物を見せてくるとは 挑戦的な事をしてくる彼が兎をハトに戻した後も 何度かおねだりをしたが何度見ても彼のタネが分からなかった

1 21/06/23(水)23:17:23 No.816338803

一方で彼の指導はまるで魔法のようだった 私の長所を伸ばしつつ、身体の負担を極力抑え、弱点を克服する 当たり前の事をしているようで実際幾人ものトレーナーやウマ娘がそれに悩まされている事か 迎えたデビュー戦、2着に8バ身をつけての1着に身を震わせ 続くもみじステークスでもレコードタイムでの1着 朝日杯ステークスでもまた余裕を持ったままの勝利に私は興奮気味に彼にお礼を言ったが 「何が魔法なもんか。全てはフジキセキ。君が俺のトレーニングに真摯に打ち込んでくれたからだ 君のその堅実さが結果につながった、それだけの事だよ。こちらこそ俺を信じてくれてありがとう」 そう言って優しく撫でられればやはり悪い気はしないのである

2 21/06/23(水)23:17:35 No.816338880

褒められれば伸びる。一方でそのつもりは無かったが、増長もする 何しろトレーニングの度にタイムがみるみる伸びるのだ。正直毎日がとても楽しかった お陰で食欲も充実し、ポニーちゃん達からの差し入れも増加 程ほどにしておけよとトレーナーからも言われていたにも関わらず 私の体重はみるみる増えていったものの それでも弥生賞もまた、圧倒的な結果で勝利を収める事ができた まるで奇跡のような快進撃 でも、やはり奇跡など存在しないのだというトレーナーの言葉は正しかった

3 21/06/23(水)23:17:45 No.816338951

左前脚に屈腱炎を発症していると告げられた春、私は絶望していた 治療に専念したとしても丸1年はかかる そして身に着けてきたフィジカルも、テクニックも大きく劣化するだろう その事実に恐怖し、私はトレーナーにすがりつきながら泣いた そこにはポニーちゃん達の憧れの的である私はおらず ただただ、明日に怯える等身大の少女でしかなかった 「助けてトレーナー!魔法が使えるんでしょう!?」 あまりにも身勝手な、半ば自暴自棄な叫び 「わかった」 にも拘わらず、彼は事もなげにそんな事を呟いた

4 21/06/23(水)23:17:55 No.816339007

呆けている私をソファに座らせ、そして手をかざす 途端彼の手が淡い光を発し、そして私の左足に暖かい感覚が広がっていく 「ト、トレーナー…これ…?」 「言ったろ、魔法だよ魔法」 目を白黒されていた私だったが、確かに私の足に活力が戻りつつあった これでまた走れる!そう思って前を見た私はそこでまた…言葉を失い 「トレーナー!?身体…透けっ…!?」 「ん?ああ、そうだな。前にも言ったろ、奇跡なんか無い 事象が発生するなら等価値でしかないってな フジキセキの命ともいえる脚を直すなら代わりに俺の命が消えていくだけの話さ」 「だ、ダメだ、すぐにやめて、止めてよっ!」 「いや、もう遅いかなあ。それに俺はまた君が元気に走るのを見たいしな …いやダメか。見れないな。うっかりだなすまん トレーナーなら悪いが代わりを探すか、俺のノートでトレーニングを続けてくれるか?」

5 21/06/23(水)23:18:07 No.816339076

「や、やだぁっ!行かないでくれよ!行くな!行かないでっ!」 透けていく彼を留めようと掴もうとするが 最早彼の存在自体が希薄になっており、私の手は彼自体を擦り抜けてしまった 「あ…あぁっ…あぁぁぁぁ…」 「ごめんな、泣かせたい訳じゃなかったんだ… 俺は俺の持論を試したかったし、そのために魔法を使わずヒトが、ウマ娘が成長できる事を証明したかった その為に出会った君に色々協力して貰ってた、それだけの話だと思ってたんだけどな …ああ、フジキセキ。君が歪んで見えるのはそうか。ああ…」 最早胸元から上しか見えなくなった彼の頬にも伝うものがあった 「まあこれで足は大丈夫だろう。魔法なんかもういらない 後は君だけでもできるはずさ。走れ、フジキセキ。君ならやれるさ」

6 21/06/23(水)23:18:17 No.816339145

そんな事を最後に呪いのように残され、私の孤独な戦いが始まった 彼の残してくれたノートを元にトレーニングを行い、そしてレースに挑む 新たな担当の誘いもあったが、私はそれらを全て突っぱねた 何しろ、私の左脚にはトレーナーが宿っているようなものだったから やがて有馬記念を終え、秋冬の三冠を取った私は巻き起こる歓声の中にいた あれほど望んでいた景色。切望し、欲していた称号 だというのに地下バ道に入った私の顔から外向きの笑顔が消える 「…トレーナー」 そうだ。これを見たかったのは貴方とだもの もう一度力なく彼の名を呼び、そして壁に寄り掛かると崩れ落ちる まるでシンデレラの魔法が解けたかのように私の身体から力が抜けていた

7 21/06/23(水)23:18:28 No.816339233

「…セキ。フジキセキ。寝っ転がってると風邪引くぞ」 聞きなれた声に目を上げるとそこには今一番会いたい男の人がいた 「…ね、トレーナー。これって夢なのかな」 「さあどうだろう?だが少なくとも気づいたらここにいた この歓声…レースがあったのか?場所は?中山競馬場か?」 「有馬記念…出てたんだよ。すごいでしょ、私」 「え?有馬を!?君が!?2000までしか走った事無かったのにか!」 「そうだよ!トレーナーがあんな事言うから私、私…!」 すがりつき、そして感触を確かめるかのように彼に抱き着き、そして泣きむせぶ

8 <a href="mailto:オワリ">21/06/23(水)23:18:54</a> [オワリ] No.816339420

魔法はある、だが奇跡など起きない そうお互い思っていたものだが、意外とそこら辺に転がっているものらしい。

9 21/06/23(水)23:21:26 No.816340437

不治の病に奇跡をおこした

10 21/06/23(水)23:33:13 No.816344922

ハッピーエンドは心が温まる…

11 21/06/23(水)23:35:55 No.816345920

愛の力で奇跡が起きた そんなんでいいんだよ復活の理由なんて

12 21/06/23(水)23:38:20 No.816346802

見てるかスリーゴッテス こういうのだぞ

13 21/06/23(水)23:41:02 No.816347770

ハッピーエンドの為ならどんな奇跡も起こっていい

14 21/06/23(水)23:43:19 No.816348650

素敵なハッピーエンドだけどまず何その魔法

15 21/06/23(水)23:48:29 No.816350535

>見てるかスリーゴッテス >こういうのだぞ うーんちょっとパンチが足りなくない?

16 21/06/23(水)23:50:30 No.816351280

>うーんちょっとパンチが足りなくない? チェーンソーを使ってやろうかクソ神!

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