虹裏img歴史資料館

1 21/06/23(水)23:09:00 No.816335496

え

2 21/06/23(水)23:09:16 No.816335590

ろ

3 21/06/23(水)23:10:04 No.816335895

か

4 21/06/23(水)23:10:33 No.816336077

俺は自宅兼倉庫の再建された洋館に向かっていた。 業務関係の物が多くなったという理由もあるが、現在フランシュシュメンバーはそれぞれ別のところに暮らしている。 本当は俺だけで行くつもりだったが、何故か隣に一人くっついてきた。 何やら置き忘れた私物があるらしい。 「ツアー……がば良かったね」 「………………そうだな」 妙な間を感じたせいか、さくらがこちらを覗きこむ。 「……ちょっと……まだ時差ボケが抜けんだけじゃ」 「ああ、なるほど……私たちはよくわからんかったけど」 「……ゾンビィは本来、睡眠も不要だからな。時差ボケにも無縁という訳だ」 「ツアーの後半、辛そうやってもんね幸太郎さん。あと、舞々ちゃんも」

5 21/06/23(水)23:12:10 No.816336699

「彼女は、今回のツアーもよくやってくれたと思う。フランシュシュのマネージャーとして」 「うん……」 屋敷にほぼ着きかけたところで、さくらが歩みを止める。 両手の人差し指を胸の前でちょんちょんと突き合わせて、何か言いたげだ。 「なんじゃい、さくら……？」 「今日、何の日か覚えちょる……？」 「何って……今日は七月七日だから七夕だろう」 自分の言ったことに反応するというのも変だが、なんとなく俺は空を見上げた。 曇ることの多い日だが、今年は織姫も彦星も見える。 「そやんこと…………」

6 21/06/23(水)23:13:36 No.816337278

哀しみ、ではない。が、少し震えた声。 思わずさくらの方に向き直る。彼女の瞳がさっきの夜空のように瞬いていた。 「誕生日おめでとう。…………乾君」 満天の星に照らされる笑顔。そして、完全に想定外の言葉。 「　」 もう固まったという「反応」を見せた時点で既に負けているわけだが、どうやって切り抜けようか考えていると、 「誤魔化せないよ。大古場さんに色々調べてもらったから」

7 21/06/23(水)23:14:49 No.816337752

ダメだ。これは。 口から言葉が出るより、まず体が反応した。 俺は彼女の前で跪き、首を垂れ、両手を揃えて前の地面につけた。 涙を零すわけにはいかないので、顎に力を入れる。 「……ごめんなさい…………源さん」 「えぇ！？え、と、そ、そんな反応……ど、どやんす？？」 戸惑う彼女。どのタイミングで次に何を話せばいいか考えあぐねていると、 「と、とりあえずど、土下座はやめてください、"幸太郎さん"」 「……わかった」

8 21/06/23(水)23:16:12 No.816338344

俺は立ち上がり、さくらに背を向けた。 俺は彼女に謝らなくてはいけない。何から。 それを話すのもいいが、しかし、戸惑っているさくらをそのままで、という訳にも。 俺は微妙に話をずらした。 「…………いつから？」 「ハッキリいつってことはなかと……だんだんというか」 「……そうか…………今まですまなかったな」 「！？……わ、別れの挨拶みたいなことば、言いよらんでください」 俺はさくらに腕をギュっと捕まれ、無理やり向き直らされた。 眉間にしわが寄り、目が潤んでいる。

9 21/06/23(水)23:17:15 No.816338748

「わ、私……幸太郎さんに謝ってほしくて言ったんじゃありません」 「す、少し驚かそうとは思いましたけど……」 「誕生日に言おうって決めてたんです……私……幸太郎さんのことが好きだって」 「え……」 俺が困惑の素振りを見せたせいで、掴まれていた腕から力が抜けて手を離された。 違うだろう！！今、彼女にすべきだった反応は！！ しかし……。 俺は再び彼女に背を向けた。そして、さっき言うべきだったセリフをつづける。

10 21/06/23(水)23:18:37 No.816339311

「ダメなんですよ。"源さん"」 「……」 「俺は……"巽幸太郎"としてしか……"フランシュシュのプロデューサー"としてしか、あなたには関われない。俺は……"源さくら"という存在を"蘇生させた"わけじゃない。"ゾンビとして第二の生を無理やり与えた"だけなんです。生前の"縁を切らせた"上で成り立っているんです。他のメンバーがそうしているように。それを、俺だけが無視するわけにはいかんでしょう。ズルって奴です」 「そんなの関係なか！！！」 半分泣いているような声とともに、俺はさくらに背中から抱き付かれた。 お腹の部分を両腕でガッチリ掴まれている。 逃げられない。

11 21/06/23(水)23:20:13 No.816339966

誠意、とはなんだろうか。 今ここで嗚咽を漏らす女の子の想いに応えず、あくまで自分の決めた約束事を守ることが果たして誠意なんだろうか。 「……未来にどうこうするとかじゃなくていいです。気持ちを……幸太郎さんの"今の"気持ちが知りたいだけです……」 「わかった。ちょっと……いいか？」 「はい……」 背中に密着していた彼女を引きはがして、俺は正面に向き直った。 そして、サングラスを外した。

12 21/06/23(水)23:21:30 No.816340456

「巽幸太郎」として振る舞っている限り、見られなかった彼女の姿がそこにある。 ……互いに直接こんなにも顔を見合うのは、初めてだ。 そう思うと、思わず口が緩む。 「源さくらさんのことが好きです。19年前から、その想いは変わっていません」 「幸太郎さんっ……！」 そうやって涙を浮かべながら呻くように言葉を発した後、さくらは俺に抱き付いて涙を流した。 冷静になって見ると、自分のしたことが酷いので思わずため息をつく。

13 21/06/23(水)23:22:15 No.816340753

「……酷なことをしている。気持ちを伝えたところで俺は…………何もしてやれないぞ、これ以上」 「何言いよらすか幸太郎さん？幸太郎さんには恋人になってもらいます」 上目遣いでこっちを見ると、彼女はニヤっと笑った。 「あのなあ、さくら。俺にも立場ってもんが……」 「もちろん、こっそりやります」 「それに、メンバーの誰かをそうやって贔屓するのは……」 「それは、幸太郎さんが勝手に自分で決めたことです。他の人が問題ないって言えば問題なかと？」 「えっ……？」

14 21/06/23(水)23:23:02 No.816341035

そんなバカな、と思いかけた矢先にさくらは一歩下がってペコリと頭を下げる。 そして、ポケットからスマホを取り出した。 「通話中」という表示が見える。 まさか。 その時、屋敷の玄関の扉が開いた。 中から、他のフランシュシュメンバーが出てくる。 あ、あぁ……。

15 21/06/23(水)23:24:43 No.816341699

「すみません、巽さん……」 ピッキング用具を手に持ち頭を下げる純子。 「まぁ……ここまで見せつけられちゃったら……ねえ？」 顔を赤らめながらスマホを持つ愛。 「おい！！グラサン！！男だったら惚れた女ば幸せにせやんかならん！！フランシュシュのことは後回しで良か！！」 と、拳を握るサキ。 「そもそも、キッカケはさくらだったんでしょ？それならしょうがないでしょ」 やれやれといった表情でこちらを見るリリィ。

16 21/06/23(水)23:25:28 No.816341998

「わっちは……ある意味この時をずっと待っていたような気も致しんす」 頬に手を当てて、何やら満足げな様子のゆうぎり。 「さくら！！こーたおー！！」 拍手するたえ。 全身の力が抜け、へなへなとその場に倒れ込んだ。 さくらはそんな俺の目線に合わせるようにしゃがむ。

17 21/06/23(水)23:26:17 No.816342279

「そういうわけで、これからもよろしくお願いします。幸太郎さん？」 「ｱｯﾊｲ」 幸い、今日は七夕だ。 天帝に引き裂かれた織姫と彦星が年に一度、再会できる日。 「巽幸太郎でない自分」が源さくらと束の間の逢瀬を楽しんでもいいのではないか。 そう思って、さくらを抱き寄せて、そのままその唇に口づけを交わした。 ・ ・ ・ ・ ・ ・

18 21/06/23(水)23:27:51 No.816342886

「っていう同人誌を配りたいんですけど、よかですか？」 メガネを光らせ、得意げに本を掲げる楪舞々。 文化祭のライブ後も、時たま彼女は屋敷に遊びに来るようになっていた。 他のメンバーが仕事で出払ってるのを見計らって、今日は"そんなもの"を俺に見せに来た。 「そういう……ガチなのはダメです」 「ガチなんですか？」 「……。……そもそも、ワシは七月七日が誕生日じゃないし……」 「話を逸らしましたね。そこは捏造設定です。ラッキーっぽいし、誕生花がちょうどよかばい」 「七月七日……誕生花……

19 21/06/23(水)23:28:26 No.816343108

　アベリア：「強運」「謙虚」「謙譲」 　スイレン：「清純な心」「信頼」「信仰」 　クチナシ：「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「洗練」「優雅」 　スグリ　：「あなたの不機嫌が私を苦しめる」「私はあなたを喜ばせる」 　……まぁ……悪い気はしないが」 「……私は応援していますよ。"乾君"とさくらさんのこと」 「応援するのは勝手だが、絶対に本人に言うなよ」 「はい」

20 21/06/23(水)23:29:14 No.816343379

どこから嗅ぎつけてきたのかわからないが、楪舞々は俺と源さくらの生前の関係を知った。 そのせいである意味弱みを握られたとも言え、今日も彼女の妄想に付き合う羽目になった。 実際にはこんなことはあり得ない。 墓の下まで持っていくと決めたのだから。 でも。 もしも。 万が一、"彼女"の方から言われたら……？ ダメだ。 「とにかく……これは封印します」

21 21/06/23(水)23:31:43 No.816344354

「ですよねー。まぁ、わかってました。その本はあなたに譲渡します」 「え？」 「元々そのつもりで作ったものですし、あんな夢中で読んでましたし」 「……頂いて、おきましょう」 「いえいえ」 一通り用事が済んで楪舞々を見送った後、俺の手には一冊の本が握られていた。 表紙には織姫の姿をしたさくらと、彦星の姿をした俺が描かれている。 そして、タイトルがこう綴られていた。 【七年後の七夕】 おわり

22 21/06/23(水)23:38:00 No.816346683

よか…

23 21/06/23(水)23:38:12 No.816346754

11話で巽→さくらはほぼ絶たれたのがなー

24 21/06/23(水)23:38:28 No.816346838

11話できぶってた気持ちを少し解放できた ありがとう

25 21/06/23(水)23:38:48 No.816346950

これならゆうぎり姐さんも満足……かと思いきや

26 21/06/23(水)23:39:09 No.816347074

>11話で巽→さくらはほぼ絶たれたのがなー ちょっと深読みしすぎじゃない？

27 21/06/23(水)23:39:12 No.816347087

舞々ちゃんナマモノはいかんよ… 登場人物はゾンビィだけど

28 21/06/23(水)23:39:54 No.816347317

よかったいよかったい

29 21/06/23(水)23:41:31 No.816347967

>舞々ちゃんナマモノはいかんよ… >登場人物はゾンビィだけど 好きな子ゾンビにして蘇生するのに比べたらセーフ……？

30 21/06/23(水)23:42:55 No.816348504

そういや大古場さんはさくらの正体までは突き止めてるんだよな…… 乾君も時間の問題じゃね……？

31 21/06/23(水)23:44:30 No.816349057

>そういや大古場さんはさくらの正体までは突き止めてるんだよな…… >乾君も時間の問題じゃね……？ 純子を筆頭に過去に死んだ有名人から死亡事故を辿ってサキやさくらに行き着いただろうしまだ生きてるただの乾幸太郎は逆にバレなさそう

32 21/06/23(水)23:45:33 No.816349452

抱きなんし……？

33 21/06/23(水)23:50:38 No.816351328

実はゾンサガのＳＳ書いたのは初だが、まあとりあえず最終回に間に合って安堵 なんかこういうネタが見たいとかある？

34 21/06/23(水)23:50:40 No.816351341

大丈夫？この薄い本ゾンビィ達にバレない？

35 21/06/23(水)23:52:47 No.816352057

えらいよかったばい！

36 21/06/23(水)23:53:18 No.816352252

>大丈夫？この薄い本ゾンビィ達にバレない？ 普通に部屋に入られてるからまずいですね…… まあどのみち全部流れちゃうんですけどね

37 21/06/23(水)23:54:28 No.816352686

>>11話で巽→さくらはほぼ絶たれたのがなー >ちょっと深読みしすぎじゃない？ まあ乾君の個人的なさくらへの想いは封印しちゃったからねえ 今はＰとしての立場もあるし......

38 21/06/23(水)23:56:15 No.816353303

そういや巽の誕生日は不明なんだな

39 21/06/23(水)23:58:06 No.816353971

11話はわりとガツンと来たけど 12話は幸さく要素あんのかなあ？

40 21/06/24(木)00:00:48 No.816354940

幸さくをもっと見たい

41 21/06/24(木)00:01:43 No.816355292

>なんかこういうネタが見たいとかある？ こんな感じで各自と幸太郎の絡みが見れたら幸せったい お願いします！

42 21/06/24(木)00:02:20 No.816355514

幸愛とか幸純とかもみたい

43 21/06/24(木)00:04:51 No.816356384

>>なんかこういうネタが見たいとかある？ >こんな感じで各自と幸太郎の絡みが見れたら幸せったい >お願いします！ 数年後のifみたいな？