虹裏img歴史資料館

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21/06/23(水)23:06:43 ※長いで... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1624457203413.png 21/06/23(水)23:06:43 No.816334586

※長いです 我が愛バ──キングヘイローの交友関係は非常に広い。理由は単純、彼女が優しく、親しみやすいからだ。気位が高く、気難しく見える彼女だが、(実際にその通りではあるが)持ち前の優しさ故に先輩から後輩、上から下までまるっと親しまれている。正に一流の人徳と言えよう。 そんな一流の彼女にも、特別付き合いが深い友人達が存在する。取り巻きのボブ子(仮)にネコ美(仮)、同室のハルウララ、妙に懐いて彼女を師事するカワカミプリンセス等々…… そして、欠かせないのが黄金世代の面々だ。スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサー、セイウンスカイの4人。そこにキングヘイローを加え、誰が呼んだか黄金世代。彼女達は才能溢れる優駿として一纏めにそう呼ばれている。一時期は他の4人の才能に嫉妬していたキングも、成長の末、今では4人を良き友人として認めている。 そこまでなら良かったのだが。

1 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:07:35</a> [sage] No.816334898

「キング~、そこのおせんべい取って~」 「何でこのキングが貴方に顎で使われなきゃいけないのよ!……まったく」 「そう言いながら取ってあげるんだねキングちゃん」 「グラスー!エルにもそこのお饅頭を取っっ自分で取りますデース…」 「うふふ…分かればいいんですよ~」 ここは俺のトレーナー室。愛バ、キングヘイローをより強く、より速く走れるように導く我が居城。だと言うのに、どういう訳か俺の城は5人のウマ娘に占領されていた。 一体どうしてこうなったんだ? キングが4人を認めたまでは良かった。友達と親交を深めるのは俺も嬉しい。 だからと言って、トレーナー室を女子校の部室みたいにされるのを許可した覚えはないぞ。

2 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:08:09</a> [sage] No.816335095

本来なら、担当バの成長や交友関係の広がりを喜ぶべきなのだろう。俺だって重々承知している。だが、いくら仲が良いと言っても彼女らはライバルであり、今後の競技でも幾度となく戦う、倒すべき存在のはずだ。 そんな相手を、作戦や今後の予定を取り扱うトレーナー室にわざわざ招き入れ、やることがない時はのんべんだらりとお喋りに興じて良いものなのだろうか?いや、良くない。 ここは心を鬼にしよう。彼女らに競技者としての一流の心を取り戻してもらうのだ。仲良いことは大いに結構。だが、馴れ合うことは違うはずだ。そう、そのために俺は心を鬼にする。決して、部屋を占領されたことや、日に日に雑誌や茶菓子などの私物が持ち込まれて俺の領域が狭くなっていくことや、楽しみに取っておいたカステラを勝手に食い尽くされたことに腹を立てているわけではない。本当だよ? よぅし、善は急げ。早速キング達とお話をしよう。 「なぁ、キング?大事な話があるんだが、いいか?」

3 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:09:09</a> [sage] No.816335549

それまでかしましかったウマ娘達がピタリとお喋りを止め、一斉にこちらを向いた。 「あ~、キング!これはとうとうアレじゃない?愛のこ・く・は・く」 「かっ…からかわないでちょうだい!そんなはずないでしょう!」 「じゃあ何なんデース?あっ、お饅頭食べたいんデスか?ねぇ、スペちゃん?」 「あげませんっ!って何言わせるのエルちゃん~」 「も~、皆巫山戯ちゃダメですよ~。トレーナーさんが困ってますから。あ、これお饅頭です」 ぐあああっ!駄目だっ!こういう女子が集まった時のノリと勢いは苦手だ!あ、この饅頭美味しい。 負けるな俺!このままだとただ教え子とその友人から饅頭たかっただけだぞ! 「いや、饅頭が欲しかったわけじゃなくてね…」 「じゃあこっちのおせんべいデスかー!」 ばりぃっ!?エルコンドルパサーに無理矢理せんべいを口に突っ込まれた。美味しい。

4 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:10:09</a> [sage] No.816335925

「せんべいでもなくて…」 「じゃあこのミルククッキーあげますね」 さくぅっ!?スペシャルウィークにはクッキーを突っ込まれた。こっちも美味しい。 「そうじゃなくて…」 「ようかんですよ~」 このままだと延々と菓子を口に押し込まれそうなので止めた。 「野点にも使ってる美味しいやつなのに…」 グラスワンダーはしょんぼりしていた。 「じゃあ何なの?はっきりなさいな」 「あ、セイちゃん分かっちゃったかも~」 怪訝な顔をするキングにセイウンスカイが耳打ちしてる。何か嫌な予感がしてきた。 「ずばり、トレーナーさんはキングの『あ~ん』をご所望なのだよ~」

5 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:10:58</a> [sage] No.816336237

今何かとんでもないこと言ったなこの子… キングはというと、口をパクパクとさせている。金魚ヘイロー、そんな言葉が頭を過ぎった。 「だってスペちゃんとエルちゃんにあ~んしてもらったのに全然満足してないじゃん?これはもう担当バのキングが愛を見せるしかないよね~」 あ~んというより口の中に無理矢理捩じ込まれた感じだったと思うが… 「いや、俺は別にあ~んなんて望んでは…」 「や、やってやるわよぉぉぉぉ!!!」 キングが吠えた。ガッと肩を掴まれ、無理矢理キングと対面させられる。 「ようかんでいいわね!?い、いくわよトトトレーナァァァアア!!」 「無理するなキング!声も腕も震えてるぞ!セイウンスカイだってふざけて言ってるだけ…」 「「「「あーん!あーん!あーん!あーん!」」」」 何でそんな乗り気なの君達! 「いや、俺そんなこと望んじゃいな…」 「「「「……はぁー」」」」 盛大にため息をつかれた。怖いこの子達。

6 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:11:50</a> [sage] No.816336578

「ト、トレーナー…あ、あ~ん…」 上目遣いで顔を赤らめながらようかんを差し出す我が愛バ。可愛い。不覚にも抱き締めたい衝動に駆られる。しかし、俺は一流トレーナー。YES担当NOタッチだ。とはいえ、このままでは事態が進まない。致し方無し。 パクッ 「ど、どう?美味しいかしら?」 「うん」 人の気も知らずに4人がワッと歓声を上げている。おのれ、こちとら何やらドッと疲れたぞ。 「んぅぅ~…キングにここまでのことをやらせたのよ。対価を貰わなくちゃね」 「ん?ああ?」 そういえば今の今まで忘れていた。俺はキング達と話をしようと思って…… 「この部屋、私達に使わせてもらえるかしら?」 「あぁ…えっ?」 驚いて顔を上げると、5人のウマ娘がニヤリと悪そうな笑みを浮かべていた。 俺はようやく、ハメられたことに気付いた。

7 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:12:38</a> [sage] No.816336885

曰く、要求はこうだ。 一つ、このトレーナー室の出入りを自由にさせること。所有領土は4分の3で勘弁する 二つ、一々寮から持ってくるのは不便なので私物の置きっぱなしを許可すること 三つ、この部屋にあるお菓子の共有 「許可するまでもなく勝手にやってるじゃないか!」 「勝手にやるのと許可の元やるのとでは心の平穏!安穏!静穏が違うのデース!」 めちゃくちゃ言ってやがる…! 「私達のお菓子を食べたトレーナーさんには、当然の対価だと思いますが?」 「えへへ、よろしくお願いしまーす」 「待て待て待て待て!君ら以前俺のカステラを何の対価も無しに食べただろ!」 ジワジワと追い詰められてるのを感じながら、それでも必死に食い下がる。

8 <a href="mailto:sage">21/06/23(水)23:13:21</a> [sage] No.816337173

「あら、貴方はたった一竿のカステラと私達のあ~んが同等の価値と思っているのかしら?」 言葉に詰まる。ここにいるのは容姿も然ることながら、実績も優れた一流のウマ娘ばかり。何も知らない競バファンが見たら俺は叩いて殺される程の厚遇と言えるかもしれない。いや待て。 「口に無理矢理捩じ込んだだけだろ!」 「エルコンドルパサーさんと、スペシャルウィークさん、そしてこの私、一流のキングヘイロー。カステラ一竿と釣り合うと思ってるのかしら?」 「聞いて!」という俺の願いを無視してキングが続ける。 「2人はともかく、私はちゃんとあ~んをやったわ。トレーナーはい、愛しの担当にそこまでやらせて、お願いを無下にするのかしら?」 先程の上目遣いが蘇る。確かに可愛いかった。眼福だった。 ……こう考えさせられてる時点で俺は負けているのかもしれない。 自らの敗北を悟った俺は、嫌々ながらも首を縦に振った。

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