21/06/23(水)22:49:24 「こい... のスレッド詳細
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21/06/23(水)22:49:24 No.816327432
「こいつはヤベェな……トレーナー……無事で居てくれよッ!!」 先端のみが白く染まった後ろ髪をたなびかせながら走るウマ娘ーーーウオッカ。 その表情には何時もの余裕は無く、事実彼女はその胸の奥から込み上げる焦燥に追い上げられるように脚を動かしていた。 つい先程、理事長発信のお知らせという名の注意喚起が学園中に触れ渡った。 トレセン学園が誇る問題児の一角、アグネスタキオンがまたも作成意図不明の薬品を誤って学園内に散布してしまったというのだ。 今回の薬品は『男性の因子を良質な金因子にする薬品』というものだそうで、自室のベッドに寝っ転がりながら配布された注意文書を読んでも、その薬効は殆ど理解出来ない。 同室の代え難い友人であり、良きライバルであるダイワスカーレットに頭だけ向けて「なあ、これどういう意味だ?」と問うてみたが、どうやらダイワスカーレットは自前のアロマオイルを弄るのに夢中なようで 「アロマオイルの含有量ってどんなものかしら……アロマスプレーにして……やっぱりお菓子とかに混ぜて経口摂取の方が……」 などと低い声で呟いてはボトルの成分表と睨めっこしていた。
1 21/06/23(水)22:51:37 No.816328367
「んだよ、無視するこたねえだろ」 些か気分を害して更に一声かけるも、余程熱中しているのか返事は無い。諦めてもう一度よく読み直すべく、起こしていた頭を再び枕に預けたのだが、とある一文が目に入った瞬間に弾かれたように飛び上がり、そのままの勢いで寮を飛び出した。 先程まで気怠げにしていたウオッカの血相を変えさせた一文、それは「この薬品を摂取するとアルコールに非常に弱い状態になり、軽いアルコールでも泥酔状態になります」というもの。 そもそも未成年であるウオッカには、憧れは多分にあっても飲酒をする機会は無い。 しかしながら、彼女の相棒たるトレーナーは別である。 歴とした成人であり、更に彼女の追い求める『カッコ良さ』の最大の理解者でもある彼は、毎夜のようにウオッカとお揃いのスキットルでウィスキーを煽っていると日々公言していた。
2 21/06/23(水)22:52:26 No.816328724
いつだったか、ウオッカがトレーナーの部屋に遊びに行った時には飾り棚に所狭しと並んだ洋酒の瓶がキラキラと煌めいており、ウオッカが目を輝かせながらそれを眺めていると、トレーナーは大きな手で乱暴に、優しく頭を撫でながら 「ウオッカとも飲める日がはやく来るといいな」 と未来に想いを馳せた笑顔を見せてくれたのを覚えている。 そう、ウオッカのトレーナーは日常的に酒類を嗜む人間なのだ。 それも酒精の強い洋酒の類。よくわからない薬品を摂取してしまっているかもしれない現状、そんなものを一口でも飲んでしまえばどうなる事か想像に難くない。 良くて泥酔、悪ければ急性アルコール中毒を引き起こしそのまま…… 最悪の未来を予測し、ウオッカの脚は更にスピードを上げる。 無事で居てくれ。ただ只管にそれだけを想う。切なる願いを燃料にして驚異的な速度でトレーナー寮に辿り着いたウオッカは、勢い良く相棒の居室のドアを蹴破った。
3 21/06/23(水)22:53:06 No.816328999
「トレーナーッ!無事か!!?」 ドアを蹴破ると共に声を張り上げるが返事は無く、代わりに聴こえた微かな呻き声と、ウマ娘の尋常では無い嗅覚に感じる仄かなアルコール香。 「トレーナー!!?」 靴も脱がずに室内に駆け込むと、キッチンに倒れ伏すトレーナーと、その横に転がるスキットルが目に入った。 慌てて駆け寄り抱き起すと、彼は薄く目を開けてウオッカを見る。その顔は赤く火照り、とろんと蕩けた眼差しは、普段ウオッカを指導する際の厳しい目付きとは程遠く、何とも言えない艶かしさを湛えていた。 「うおっか……?どうひて……?」 「アンタが心配ですっ飛んで来たんだよ!!酒はどんぐらい飲んだんだ!?気持ち悪くねえか!?」 意識を途切れさせまいと矢継ぎ早に質問を繰り出すウオッカに対し、非常にゆっくりと、たどたどしく、億劫そうな表情でトレーナーは答えを返す。
4 21/06/23(水)22:54:34 No.816329657
「のんれ、ない……あらおうとして……たれてきたしずくを、なめたら、ねむくなって……」 答えを聞いたウオッカは、トレーナーから床に転がるスキットルに目線を移す。 確かに床にはスキットルが転がるのみで、確かに酒などは撒き散らされていない。 ほっと一息胸を撫で下ろし再度トレーナーを見やると、僅か数瞬の間に夢の世界へ旅立っていたようで、安らかな寝息を立てている。 思わず苦笑を漏らすと同時に、誰にも何も言わずに飛び出してきたことを思い出す。 寮長へ今の事態の報告と、念の為にトレーナーの救護を頼むべく自らの携帯端末を取り出し、通話アプリでコールを入れる。 「はい、フジキセキです」 「あ、フジ先輩。実は今かくかくしかじかで~」 「わかったよ。たづなさんに連絡を入れるからもう少しそこに居るように」 「了解ッス」
5 21/06/23(水)22:55:48 No.816330199
簡略な通話を終えて、改めてトレーナーを見る。 「気持ち良さそうに寝ちまってまあ……」 そう独り言ちて彼の頬を撫でる。 今はだらしない顔をして、むにゃむにゃと言語にもならない音を漏らしている、自分が追い求める『カッコ良さ』へ向かって背中を押してくれる、サイコーにイカした相棒。 普段は優しい笑みを浮かべているのに、トレーニングの時には厳しくも凛々しい表情に変わる眼差し。 嬉しい時も悲しい時も、ワシワシと頭を撫でてくれる自分とは違う大きな手。 悔しい時に何も言わずに顔を隠してくれた広い胸板。 ズボンの上からでもわかるほど隆起した股間。
6 21/06/23(水)22:56:31 No.816330531
隆起した股間。 ?????? 「な、なん、これっ……!?」 ウオッカは見逃していた。注意文書の中の、理解を諦めた言葉の羅列の後半に『アルコールを摂取すればするほど強い発情状態になるのが確認されている』という一文が続いているのを。 しかしながら鼻から血を流したウオッカの問いに答えるものは此処にはなく、ウワーッ!!という悲鳴がトレーナー寮に木霊し、要救助者は2名になった。
7 21/06/23(水)23:00:28 No.816332047
昨日の夜にあった学園からのお知らせを見て閃きました 短い文章で終わらせるのって難しいね
8 21/06/23(水)23:05:59 No.816334313
バカコンビのやつ怪文書にしてくれたのか…
9 21/06/23(水)23:15:40 No.816338100
>バカコンビのやつ怪文書にしてくれたのか… というかあれ書きこんでから一本書けるかな?と思ったので書いたら意外といけました 怪文書お出しするの初だったから緊張したよ…
10 21/06/23(水)23:43:13 No.816348610
アグネスタキオンはちょっとハザードしすぎじゃないかい