虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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  • ―数日ほ... のスレッド詳細

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    21/06/23(水)20:38:23 No.816270747

    ―数日ほど前に、幸運にもセイウンスカイと結ばれることが出来た。今日のミーティングも終わったころ、あの時のようにセイに声をかけられた。 「映画借りてきたんですけど、見ませんか?」 「…ほう。どんな映画だ?」 「オペラ座の怪人、ってやつらしいよ?キングが借りてきてくれたらしくてさ」 これまた古い映画だ。流石に上映はしていなかったのか、セイは手に握られたDVDのケースをひらひらさせながらそう俺に問いかける。あの時以来、映画にはまったらしいセイはよく映画を見ようと誘ってくるようになった。最近はレースも落ち着き、ほとんどのウマ娘は実家へ行っているため、デスクワーク片手にセイと遊ぶ日が続いていた。 「まぁ、いいぞ。ちょうどこっちもひと段落したところだ。行こうか。」 「…へへ。じゃあ、行きましょっか」 そういい、パタンと日誌を閉じてセイの手を握る。未だにこれに慣れていないのか、握られるたびに顔を赤くするがそれも愛おしい。鍵をかけ当直室に置き、自室へと戻る。

    1 21/06/23(水)20:38:36 No.816270835

    トレセン学園に併設されているトレーナー寮のため、ミニシアターなどを設置することはできないが、薄型テレビで見る映画もまた乙なものだ。冷蔵庫からお菓子と飲み物を取り出し、テーブルに並べ二人で座る。つつ、という音とともに吸い込まれた円盤から出力される映像に、俺たちはのどを鳴らした。 映画も終わり、お菓子もある程度食い尽くす。内容は省略するが、やはりこれも名作映画の一つと言えるだろう。特徴的でキャッチーな冒頭の音楽は、まさにミーハーな俺達でも胸が高鳴る出来だった。切なくも悲しい、それでいて恐ろしさを孕んだ展開で進み、終わりに哀愁を漂わせる。いつの間にか腕に絡みついていたセイも、映画に見とれているようだった。 「…全く、今回も面白かった。な、セイ」 そういい、セイの頭に腕を回して撫でながら抱き寄せる。映画に未だ見惚れているセイは気づかずに、ぼーっとした目と口調で相槌を返す。 「…うん、そうだね。」 殆どが元に戻った後、セイは顔を真っ赤にして手を顔で抑えていたが、それを横目にゴミやペットボトルを片付ける。あらかた片付け終わった後、若干熱くなった部屋に空気を入れようと提案した。

    2 21/06/23(水)20:38:47 No.816270899

    「…ちょっと涼もうか。熱くなってきた。」 「…そ、そうだね。そうしよ…」 そういって、ベランダ側の窓扉を開ける。涼やかな風と共に、部屋の中を縦横無尽に風が撫ぜる。飛び回る鳥のように、部屋の空気を入れ替えていく。 「…セイは、後悔とかしてないか。あの時のこと。」 ふと、口から言葉が滑り落ちた。頭が冷静になってなおこの言葉が出る、ということに自身への嫌悪を表しつつ、どうしても離れがたい疑問や疑念を押し込めて言葉を投げ出す。セイの道を俺が閉ざしたりしていないか、それで後悔はしてないか。何がどうしてこのような面倒くさい言葉になったのか、言った後にはもう遅かった。 「…するわけ、ないじゃん。私の、その、す、すきなひと…に、あれだけのこと言われて後悔する人なんて、いませんよ。トレーナーさんは、違うんですか。」

    3 21/06/23(水)20:38:57 No.816270956

    声が少し震えながら、こちらに弱く刃物を突き立てるように言葉を返す。こんなこと、言わなきゃよかったと後悔をしてしまったが、それならばこちらも返す言葉は決まっていようといわんばかりに返した。 「…いや、すまなかった。その通りだ。俺も君が好きだ。あの時言った言葉は一言一句、嘘はない。不安にさせたようで、ごめんな。」 そういって、頭を寄せてやわらかい髪を撫でる。ふわふわと跳ねるような質感のそれは、まさに存在を確認し合うにはうってつけのものだった。 「…私だって、時々そうなるときはあるんだよ~。だから、さ。繋ぎとめててほしいな。大好きなトレーナーさんのおっきな手で、言葉で、目で…」 そういった後に、少し泣き出してしまった。あやす様に、また愛おしく撫で、抱きしめ、二人の時間を享受していく。今日の天気は、曇りのち晴れだ。

    4 21/06/23(水)20:39:09 No.816271050

    その後、休暇も終わったウマ娘たちが続々とトレセン学園へ戻ってくる。皆思い思いの日を過ごしてきたようで、楽し気な声に包まれていた。セイは友達のところへ行き、お土産話を持ってくるといっていた。セイが戻ってくるまで、デスクワークでもしていようかと思い、俺はトレーナー室へ戻っていった。 「それで?スカイさんはどこまで進んだのかしら?」 「…いや、えっとその…腕を絡める、とか?」 「…で?」 「いやでって…」 「キスはしなかったの?」 「き、キスって…そんなまだ早いって…もう」 「渡した映画にキスシーンあったでしょう!?あれでそういう雰囲気にならないの?!」 「な、なるわけないじゃん!恥ずかしいったらありゃしない!」 「んもうっ!次の策練らないといけないじゃない!」 「てか、もういいって…私は私で進めるからさ…」 「そういって前まで進んでなかったじゃないっ!いいから私に任せなさい!今度こそ完璧で一流のプランを練ってみせるわ!」

    5 21/06/23(水)20:39:21 No.816271104

    そういって、ぷんぷんとした様子でキングは自室へ戻っていった。ああも意固地になられては断るわけにもいかなく、なぁなぁで事が進んでしまっている。成功体験を与えたせい、ともいえる。 「…ウララはさ、セイちゃんの好きにすればいいと思うな。一歩一歩着実に、でしょ?トレーナーさんだってセイちゃんのこと好きなんだし、ゆっくりやっていけばいいと思うな。」 そういったウララの顔は、どこか達観していた。 「う、ウララ?それってどういう…」 「…なんでもないよー!じゃ、キングちゃんまたせちゃってるから!また明日がっこーでねー!」 底知れない恐ろしさと、いくらなんでも早熟すぎるだろうという気持ちがせめぎ合って、どこか置いてけぼりを食らったような気がした。

    6 21/06/23(水)20:39:37 No.816271201

    久々にオペラ座の怪人を見て書きたくなりました ご査収ください

    7 21/06/23(水)20:40:25 No.816271512

    私はいいと思う

    8 21/06/23(水)20:40:42 No.816271608

    私もいいと思う