虹裏img歴史資料館

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21/06/23(水)00:32:29 ―セイウ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1624375949546.png 21/06/23(水)00:32:29 No.816044910

―セイウンスカイが、春の天皇賞で惨敗した次の日。ミーティングが終わると、スカイに話があると切り出された。 「…映画?」 「そです。映画、行きません?」 珍しくからかうでもない様子で、セイウンスカイがこちらに問いかける。 夏も入り始め、じりじりとした熱さとそれに似合わない深夜の寒さが体を狂わせる、そんな日が続く中、俺の愛バであるセイウンスカイがチケット片手に誘いを申し入れてきた。からかう様子もなく、純粋にこちらを向く顔が太陽のせいか明るく輝いて見える。断る理由も特にないが、何か意図でもあるのだろうか。 「…どういう映画だ?恋愛映画とかか?」 最初に懸念であったことを口にする。恋愛映画を一緒に見に行く、という事実を作られてからかわれては元も子もない。特段気にする事項でもないことではあるが、やられっぱなしは性に合わない。

1 21/06/23(水)00:33:14 No.816045148

「いーえ?ただ単にセイちゃんがみたい映画があるってだけですよ~?」 ウンともスンとも言わないような、微妙にはぐらかされるような、なんとも言えなく煙に巻かれ、曖昧に理解することしかできなかった。まぁ、からかわれたらその時はその時ってことにしよう。 「…まぁ、いいか。ちょうどレースも終わったころだし、行くか。」 「やったー…じゃ、明日!それでいい?」 またまた急だ。こういうところも魅力的ではあるが、どうにも身が入れがたい。明日の予定を確認すると、トレーナー同士の会議があった。その旨を伝えようとするが、珍しく誘ってくれた愛バの気持ちも無下にできない、何よりこんな機会が二度と来るかと思うとどうしても変えがたく、予定の書かれたメモの欄に二重線を引き、明日が大丈夫であることを伝える。 「…おう、明日だな。ちょうど予定もなかったしいいぞ。」 「そっか、よかった。…じゃあ、セイちゃん楽しみにしてますからね?遅れないで、ね?」

2 21/06/23(水)00:34:15 No.816045443

「わかってるさ。集合場所は?」 「校門前!」 「はいよ、じゃあ今日はお疲れさん。明日に備えて早く寝ろよ。」 「はーい」 誘いが受け入れられて上機嫌になったのか、浮き足でトレーナー室を出ていく。セイが出て行った頃を見計らって、理事長に明日の会議に参加できない旨を伝えた。どんな雷が落ちるかと思ったら、意外にも好意的に受け止められ、むしろその判断を賞賛された。最後に「避妊ッ!対策はしっかりな!」と下世話なことを言われた気もしたが、右から左に受け流して電話を切る。そういえばどんな映画を見るかを聞いてなかったな、という疑問が浮かぶが、それは明日の楽しみに取っておこうと思い、その日は業務を終えて床についた。 次の日の朝、待ち合わせ場所に行くとセイが少々頬を膨らましながらこちらを睨んでいた。一応30分前には出たはずだったが、どうやら向こうはもっと早く出ていたらしい。 「…すまん、早く出たつもりだったんだが。」 「いや、いいんですよ?いいんだけどね?何か言うこと、あるんじゃないかな?」

3 21/06/23(水)00:35:30 No.816045815

そう来たかと思ったが、あまり機嫌を損ねたまま映画鑑賞というのも忍びないかと思い、セイの瞳をまっすぐに見つめて 「遅れてすまなかった。」 そう真摯に謝った。真摯に映ったはずだ。ともかく、セイの顔が見る見るうちに綻んでいくのを俺は見逃さなかった。 「んふふ~、分かればいいのです。じゃあ、行こっか」 「ああ。ところで、何の映画見るんだ?」 「ミュージカル映画、らしいよ?」 「らしいって…セイが見たいんじゃなかったのか?」 「…そこは、察してほしいな~ってセイちゃんは思うのです」 どうにも歯切れが悪かったが、まぁたまの休日ぐらい楽しんでもバチは当たらないだろうと気合を入れなおし、映画館へ向かった。

4 21/06/23(水)00:35:49 No.816045904

…グレイテスト・ショーマンか。結構前の映画だったと思うが、まだ上映してたのか。」 「らしいね。キングが持ってきてくれたからそのまま持ってきたんだけど。」 「あの子から、か。」 キングヘイローの差し金であったことを知り、なんとなくこの当てもない行楽の意味が分かったような気がした。変に気にしなくてもいいのに、と思いつつ、映画を今か今かと心待ちにしているセイの横顔を見たら、キングヘイローに多少なりと感謝はせねばならないだろうと思った。 映画はつつがなく上映された。内容は省略するが、我々から見れば十分名作であったことは確かだろう。迫力のある音源、力強く生命力のある歌、王道ともいえるストーリー。見終わるころにはすっかり映画のとりこになってしまい、終わっても数分は席を立ちあがれずにいた。セイも俺と同じようで、すでに上映が終わった画面を食い入るように見ながら、その素晴らしさに打ち震えていたと思う。 「セイ、行くぞ。感想は喫茶で言い合おう。」 「…そうだね。行きましょっか。」 そうして、自然とセイと手をつなぎ映画館を出て行った。

5 21/06/23(水)00:36:35 No.816046132

感想も終わり、喫茶でだらだらとコーヒーを啜っていると、ふとセイがこちらを見て話しかけてきた。 「…トレーナさんはさ、今日楽しかった?」 「勿論。セイは?」 「私だって楽しかった。でも突然だったし…今日って、用事ある日でしたよね?」 「…あー、なんていうかそのあれだ。セイのために断った、って言えば正しいかな。」 「…そういうとこ、ほんとずるい…」 顔を少し赤くしたセイを見て、嗜虐心が芽生えるがぐっとこらえる。あまりいじりすぎても可哀想だし、せっかくの楽しい休日なんだから、と自分を落ち着かせコーヒーをもう一口。 「まぁセイはあんまり気にするな。俺がやったことだし」 「…まぁ、そういうことにしておきます。楽しかったなら、よかった。」 そうして、にこやかな顔をこちらに返す。どきり、と胸の奥で高鳴った感情は、かつて俺が抑えていた感情でもあったものだと思う。ここまでおぜん立てされては、逃げ切れる余地もない。

6 21/06/23(水)00:37:06 No.816046283

「…この後、海辺にでも行かないか。釣りするにはもう遅いけど、話ぐらいならできるだろ?」 勇気を出して、喉の奥がぐろりと鳴る。緊張とそれによる汗が徐々に体に伝わってくるが、これ以上気にもしてられない。そうしてセイのほうをじっと見つめる。すると、顔を真っ赤にしながら 「…は、はひ…」 と、噛んだものの誘いを受け入れてくれた。その顔はリンゴのように真っ赤に染まり、まるで誘われるのを予知してなかったような、そんなものを感じ取った。 海辺をぶらりと歩きながら、話をした。今日のことも、これからのレースについても、話すに話して話しつかれた。そうして、本来誘った目的のものを出すために、ぐっと勇気を振り絞る。 「…セイは、好きな人とかいるのか。」 恐る恐る、確かめるように言葉をひねり出す。自分の予想した答えが返ってこなかったとき、自分はどうひっこめればいいのか、そんなことを考えていたがそれはすぐに打ち破られた。 「…トレーナーさんは?」 セイはそういって、逆に聞き返してきた。最早これまでだろう、と内心降伏を宣言して、セイに向き直った。

7 21/06/23(水)00:37:30 No.816046395

「…そうだな。俺は、君が好きだ、セイウンスカイ。結婚はまだ早いだろうけど、いつかしよう。君をずっと、そばで支えていきたい。」 言いたいことは全部ぶちまけた、なるようになれ―そう思い、ありったけを語りつくした後、セイのほうを見た。セイはこれまで見たことがないような顔で、恥ずかしそうに体をよじりながら俺のほうをちらちらと見てきている。 「…へ、へぇ~…へへへ…トレーナーさんも、だったんだ~…へへ…」 「…セイは、どうなんだ。教えてほしい。」 「ふえっ!?あー、えーとその…まぁ…うん、その…はい、私も…トレーナーさんのこと、すきです…」 真っ赤になる余地もなくなった顔が、夜みがかった海岸線に映える。ざぱーん、と波が堤防に打ち上げられる音と共に、潮が徐々に落ち着いてきていた。 「…そうか。よかった。少し早いが、これ…受け取って、もらえるか?」 そうして、胸ポケットから1つの箱を取り出す。セイは察したようではあったが、鳩が豆鉄砲を食ったようにそれを見つめるばかりで、言葉にもできていなかった。

8 21/06/23(水)00:37:43 No.816046462

「…愛しているよ、セイウンスカイ。これからも、一緒にいよう。」 そういい、リングを差し出す。セイは、涙を流しながらそれを受け取り、指にはめた。嬉しさのあまりか、ふるふると震えるようにつけた指輪を愛おしそうに眺め、そしてこちらに一言 「…はい、トレーナーさん。私は、セイは、とても幸せです…!」 そういったが最後、俺の胸に飛び込み、小さな青い鳥はしばらく泣き腫らしていた。

9 21/06/23(水)00:38:08 No.816046599

初怪文書です ご査収ください

10 21/06/23(水)00:38:39 No.816046750

いいね…

11 21/06/23(水)00:38:44 No.816046784

助かる

12 21/06/23(水)00:39:07 No.816046911

長距離適性高い新人来たな…

13 21/06/23(水)00:39:57 No.816047164

健康になれた

14 21/06/23(水)00:41:00 No.816047513

めっちゃ良かった…ありがとう…

15 21/06/23(水)00:41:05 No.816047548

ド直球のイチャイチャは脳にキく

16 21/06/23(水)00:41:13 No.816047590

いずれ腰痛にも効くようになる

17 21/06/23(水)00:41:20 No.816047615

期待の聖ウンス会の新人だ!

18 21/06/23(水)00:42:08 No.816047852

this is me.

19 21/06/23(水)00:42:26 No.816047944

>いずれ腰痛にも効くようになる もう腹痛に利いているが…

20 21/06/23(水)00:42:40 No.816048018

グレイテスト・ショーマン見てるときにふと思いついた怪文書です 好評なようで嬉しい限り…

21 21/06/23(水)00:42:55 No.816048111

左足の小指の骨折が治った

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