ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/22(火)21:15:28 No.815966538
じーわじーわ、外で蝉が番を求めて鳴いている。このむし暑さにも負けずに雌を求めて健気に鳴き続けている。 暑い、圧倒的に暑い。汗がまるで止まらない、水分補給だけは欠かしていないが飲めば飲んだ分だけ流れ出ていくのだからとんだ鼬ごっこだ。このままじゃ先に無くなるのは飲み物だろう。 いつもならば冷房の一つ効かせるのだが、何が悪かったのかエアコンが突然うんともすんとも言わなくなり、報告したところどうやら学園全体で突然エアコンが一斉に故障したらしい。現在教室のものから優先的に修理を行っているため、事態の改善にはしばらく時間がかかるとのこと。 ここは大人の見せ所だ、とトレーナー全員で結託したのは記憶に新しい。汗の匂いが気になる女性には厳しい環境だろうに、むしろ男よりも男前な判断をしたマヤノトップガントレーナーには男として勝てる気がしない
1 21/06/22(火)21:15:53 No.815966733
ああ、ダメだダメだ。一人でトレーナー室にいるとどうしても後ろ向きな考えになってしまう。少し寂しいと感じただけでこれとは情けない限りだ。 閑話休題。外気とパソコンのダブル熱アタックの猛攻に耐えながらキーボードを叩いていると、ノックの音。どうぞ、と声をかけた後に入ってきたのは見覚えのある顔。 「こんにちはっ。暑い中お疲れ様です! これ、麦茶のおかわりですっ」 「ああ、ありがとうスペシャルウィーク」 笑顔で冷えたやかんを手渡してくれたのは担当バのライバルであり友人でもあるウマ娘、スペシャルウィーク。まるでニトロの如く加速するその爆発的な末脚はあまりにも有名で、日本ダービーではまんまと彼女に出し抜かれてしまい、愛バに三冠を持たせることが出来なかった悔しさはまだよく覚えている。
2 21/06/22(火)21:16:12 No.815966891
「本当に助かるよ、丁度飲み干してしまったところだったから。けど無理はしてないか?」 「私なら全然大丈夫です! 走ったら涼しくなりますし、それに教室に入ればクールダウンも出来ますからっ」 トレーナー達の力になりたい。そう思ってくれる生徒たちは多かったらしくエアコンの修理が終わるまでの間、こうして冷えた飲み物を順番制で定期的に届けてくれる。昨日はエルコンドルパサーが来てくれて、その前はハルウララだったか。同僚の所にはキングヘイローが来たとも言っていたなぁ。 「その……トレーナーさん、一つ聞いてもいいですか?」 「ん。ああ、なんでも聞いてくれ」 じゃあ、と息を吸い込んだ彼女は、こう問いかけてきた。 「最近、セイちゃんと何かあったんですか?」 「…………」
3 21/06/22(火)21:16:42 No.815967145
何かを言おうとしたが、言葉にならなかった。 寂しいと感じていた理由、それは我が担当バであるセイウンスカイがよそよそしくなったからだ。 話しかけようとすると顔を赤くして煙に巻いて逃げたり、サボり先に行くと逃げはしないが話しかけることもしてこなかったり等々。以前の距離感が嘘のようにとにかくよそよそしい、それが寂しくて仕方がない。 心当たりは、ある。あるにはあるのだけど、言うにはかなり恥ずかしい。スペシャルウィークに伝えるべきだろうか── 「……実は──」 恥を偲んで、事の本末を彼女に話した。セイウンスカイの態度が気になって、まるで私物化させるような言葉を放ってしまったこと。きっとそれが嫌で彼女はよそよそしいのだということを。
4 21/06/22(火)21:17:18 No.815967428
最初こそは笑ったりせず真剣に話を聞いてくれた彼女だったが、話が進むにつれて顔をどこか赤くさせて最後には苦笑いを浮かべていた。やはり呆れてしまっただろうか……と思っていると。 「トレーナーさんは、セイちゃんが本当に大好きなんですね」 と言った。俺は当然それを否定すること無く、 「ああ、本当に大切に思っている。これからも彼女と楽しくしていきたいと思っているし、(担当トレーナーの座は)誰にも渡したくない」 そう答えると呆れ返ったのかいよいよ彼女は後ろを振り向いて── 「だって、セイちゃん」
5 21/06/22(火)21:17:51 No.815967686
なんだって? 少し開いた扉の影から、ぴょこんと生えた見覚えのある耳飾り。しばらくするとあの時のように茹で上がった顔色をした愛バが、セイウンスカイがこちらを潤んだ瞳で見ている。 「トレーナー、さん」 気がつけばスペシャルウィークはどこにもいない。気がつけば彼女の顔が目の前にあって。お互いの吐息すら感じられる距離の中、残されたのは俺と愛バだけ。 「トレーナーさん、私……私ね」 体が熱い、顔も手も吐く息すらも。端正な顔が少し近づく度に熱くなっていく。もう目と鼻の距離なのに、まだ彼女はこちらへと体を近づける。
6 21/06/22(火)21:18:15 No.815967881
ウワーッ!
7 21/06/22(火)21:18:20 No.815967929
「せ、セイ……」 駄目だ、それ以上はいけない。俺と君は生徒とトレーナーという関係であって、それ以上を求めてしまうのは。 「……貴方のことが、」 求められてしまっては、俺だって……! 距離が、0に。
8 21/06/22(火)21:18:52 No.815968260
『あれー? 皆そこでなにやってるの? あっ、ウララわかった! 新しい遊びでしょ!?』 沈黙。 なんとも聞き覚えのある声が二人の空気を凍らせた。 『う、ウララさんっ……!?』 『ごめんねウララちゃんっ、もうちょっと静かに……!』 『あっ、ごめんねっ……! じゅーよーにんむちゅーなんだね……!』 こちらとの距離を積めていた彼女は急に方向転換、真逆となる扉へ向かうと力強く音がなりそうなほど握りしめてそのドアノブを回しドアを引いた。 バランスを崩し雪崩れ込んできたのは、二人のウマ娘。
9 21/06/22(火)21:19:37 No.815968635
「わぁっ!?」 「……キング~? スペちゃ~ん?」 「お、おほほ……ごきげんようスカイさん……。それではこれにて失礼するわね!」 「あっ!? 待ってよキングちゃん~!!」 黄金世代の名に偽りなし。差しウマとしての末脚をフルに生かした彼女達はあっという間に視界から消え去り、去っていく音すらすぐに聞こえなくなる。うーん、驚異的な末脚だ。クラシック時代、あれにどれだけ冷や汗をかかされたか。 「……にゃははっ。なんか、気が抜けちゃいましたね~」 「……ははっ。ああ、そうだな」 正直、ホッとしている。あの時の俺はどうかしていた、一体何を考えていたというのだろう。俺とセイがそういう関係になるだなんて、あり得るわけがない。俺はトレーナーで、彼女は生徒。それ以上もそれ以下もない、彼女だってそう考えて── 「トレーナーさん」 「ん、なんだ……」
10 21/06/22(火)21:20:22 No.815969002
「んっ」 俺の耳が確かであれば、俺の頬の感覚が生きているのであれば。 ちゅ、と。そういう感覚が、そういう擬音が聞こえてきた。 「せ、い?」 「……にゃははっ☆ お顔真っ赤っかですね~」 まるで新しいドレスにはしゃぐ女の子のように、くるりと一回転してからピースマーク。
11 21/06/22(火)21:20:36 No.815969127
「トレーナーさんのスケベ♥」 少しぶりに見た彼女の笑顔は、やっぱり素敵なままだった。
12 21/06/22(火)21:22:15 No.815970030
イチャイチャしやがって… 自爆もいいがイチャイチャも矢張りいいな…
13 21/06/22(火)21:22:56 [スレ] No.815970392
ドンテンスカイに脳が破壊されそうになったので書きました。数日書いてないだけでこれほど文章が拙くなるとは思いませんでした、お見苦しい文章で申し訳ないです
14 21/06/22(火)21:22:58 No.815970409
イチャイチャたすかる…
15 21/06/22(火)21:24:09 No.815971035
お前は「」の何人かを救った 誇れ そして続きを書け
16 21/06/22(火)21:24:55 No.815971429
助かる
17 21/06/22(火)21:26:09 No.815971999
脳が再生した
18 21/06/22(火)21:26:38 No.815972234
>No.815970392 いやいや脳破戒を救ってるんで中々ヨシ!ですよ それはそうとして自爆セイちゃんも好きだな…
19 21/06/22(火)21:28:02 No.815972845
>「……にゃははっ☆ お顔真っ赤っかですね~」 ここ自分も真っ赤っかになってそう
20 21/06/22(火)21:30:34 No.815974052
もっと破壊と再生を繰り返させて
21 21/06/22(火)21:40:50 [没ネタ] No.815978610
『いけーっ! そこデース! キスデース!』 『エル。静かになさい』 『ケ!? アルゼンチンバックブリー………!?』
22 21/06/22(火)21:43:21 No.815979727
気ぶりエル。
23 21/06/22(火)21:46:00 No.815980840
>じーわじーわ、外で蝉が番を求めて鳴いている。このむし暑さにも負けずに雌を求めて健気に鳴き続けている。 むっ!この情景にかこつけた心理描写いいね…