21/06/22(火)19:04:39 夏と言... のスレッド詳細
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21/06/22(火)19:04:39 No.815916032
夏と言えば浜からの遠投だよね、という様な自論を聞かされて、 私はよく分からないな、という言葉を押し留めてそうだなと頷いた。 季節は初夏。例年に増して長く感じた梅雨がようやく明け、 湿気った空気が心なしかからりとし始めたこの頃、私の担当するウマ娘、セイウンスカイは 海が待ち切れず浮ついた様子を見せていた。 深く青い空、雄大な入道雲。 名前がそうさせる訳ではないだろうが、脳裏に浮かぶ情景は彼女にぴったりだ。 窓辺に振り向く爽やかな笑顔を見ながら、ふとそう思った。
1 21/06/22(火)19:04:49 No.815916086
明けて、次の週末。 起き抜けの空は既に快晴、窓から見える空は抜ける様な青だった。 何となく予感があり、朝食を済ませた後にのんびりとアパートの自室を空けずに居ると、 ワイドショーも半ばという頃合いで鳴るチャイムがあった。 ようこそ、おつかれさま。釣果はどうだった? 尋ねるや否や、スカイは肩から下ろしたばかりのクーラーボックスを開ける。 キスがたくさん!それから…色々! 普段飄々とした彼女が息を切らし、満面の笑みを浮かべる。 ボックスの中身に目を向けるべきなのだろう。目の端に映るそれは、大漁を感じさせた。 私は、彼女の顔から目が離せないまま、やったじゃないかなどと口にしていた。 今日もお願いね、と言われては、応、以外の返答は無かった。一度こなした以上は仕方がないのだ。 午前9時30分。
2 21/06/22(火)19:05:01 No.815916148
という訳で本日の食材はこちら。 キスが10尾余り、カレイが1尾、珍しいところでホウボウが1尾。 キスは頭と内臓を手早く処理、で良いとして…カレイとホウボウはどうしたものか。 差し当たりこちらも内臓の始末だけはしておく。 記憶の中から何とか完成形を引きずり出し、キスはムニエルに、ホウボウは吸い物に。 そしてカレイは…一旦保留。一人暮らしのキッチンは狭く、限界がある。 鮮度の高いカレイは刺身も絶品だという話だが、そこまでの技量は無い。 不足物の買い出しをスカイに頼み、順に下拵えを進める。 水分の多く柔らかな白身魚はフライ、或いはムニエルがよく合う。 塩コショウ、ニンニク、そしてバター。シンプルな味付けが淡白な白身の旨味を引き出す。 コチやホウボウ等の、底棲の骨太でしっかりした肉質の魚は良い出汁が出る。 ことにホウボウはかなり上品な吸い物に仕上がった…様な覚えがある。試してみよう。 方針を決め、ざっくり鱗を落とし、ホウボウをぶつ切りにした頃、スカイが帰宅した。 顆粒だし、バター、三つ葉。それから、シャーベット。 パッケージ表面に溶ける氷が、夏の日差しを美しく映した。午前11時。
3 21/06/22(火)19:05:13 No.815916210
良いものを食べさせて貰っていただけだよ。親に感謝しないとな。 素人じゃないだろう、と詰められたのではぐらかす。 興味はあった。ただ時間と機会が無かっただけなのだ。 このところ、スカイの持ち込む魚介類に触れた事により、にわかに料理熱が高まっている。 新しい事を覚えるのは楽しい。他人に供さないのであれば、失敗でさえ面白い。 わざわざ出刃を買った、と明かすと…持ち込みのペースが上がりそうなので、 彼女にはもう暫く内緒にしておくことにする。 煮付けにしようか、などと考えていたが、結局カレイ1尾は干物にすることにした。 塩水に少し漬けて、洗濯バサミで吊るす。本当は網などで仕上げるのだろうが、無いものは仕方がない。 ソファーに身体を預け、午睡を貪るスカイの猫毛を撫でながら、揺れるカレイの影を目で追う。 渇いた夏の風に、微かに潮の香りが混ざる。午後2時30分。 西の空には入道雲。夕立が来るかも知れないな、と考えながら、私も目を閉じた。
4 21/06/22(火)19:26:48 No.815922696
ウンスと夏を過ごしてぇなぁ…
5 21/06/22(火)19:39:43 No.815927021
キスのムニエルは本当に美味すぎて無限に食べられるのでオススメです