21/06/21(月)10:09:52 斜陽の... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1624237792029.jpg 21/06/21(月)10:09:52 No.815493095
斜陽の橙色が、新年のトレセン学園を染め上げる。 そのうちどこかのトレーナー室で、男は机に向かっていた。 彼はトレーナーとしては新米で、担当を持つことも初めてだった。 彼女とともに歩みたい。その一心で、若さを盾にした努力だけでここまでやってきた。 だが、結果はそう簡単についてくるものではない。 勝利がないわけではなかったが、彼女の素質を考えればもっと勝ち得る場面はあったに違いない。 力不足、経験不足、世間の嘲笑。様々なものがのしかかる彼の精神は、限界を迎えつつあった。 「はーっはっはっはっは!新年にあってもその勤勉さ、称賛に値するよ!」 唐突にトレーナー室の扉が開け放たれ、高笑いが響く。 テイエムオペラオー。男が2年を共に過ごし、だが、今最も会いたくない相手だった。
1 21/06/21(月)10:10:09 No.815493140
「君がボクのためにそうしているのに、ボクが休んでいられるわけもないからね! 安心したまえ。君の教えどおり、オーバーワークには気を付けるとも!はーっはっは… ・・・トレーナー君?どうしてボクの前で泣いているんだい…?」 男は泣いていた。ここにきて決壊した苦悩と後悔はあふれ出し、男の頬を流れた。 男は涙ながらに吐露した。いままで言うまいとしてきたすべてを。 すまない。ぼくのせいで。 すまない。ぼくにもっと力があったなら。 すまない。君の真の輝きを引き出してやることができない。 ごめんよ。ぼくにはやはり、きみの伴侶たる資格は――― 「トレーナー君。それ以上は、流石のボクでも怒るよ。」 それまで沈黙を保っていたオペラオーの言葉が、男の弱音を制した。
2 21/06/21(月)10:11:30 No.815493362
「君はボクの共犯者。それはボクが決めたことだ。勝手に降りることは許さない。 幕は下りていないのだから、続けなけらばならない。ボクの舞台も、君の舞台も!」 泣きはらし俯く男の顔を、掬い上げるように両手でとらえて、オペラオーは言った。 いつの間にか日は落ち、夜の帳が下りていた。 「君の指導の成果は、ほかでもないこのボクが誰よりも分かってるさ。 確かに、ほかの皆より歩みは遅かったかもしれない。今まで悔しくなかったかと言われれば嘘になる。 だが、主役は遅れてやって来るものだからね。第三幕まで物語はわからないものだよ。トレーナー君! 君の指導の成果とボクの覇王たる素質。開花の時が来たということさ!」 オペラオーは男の立たせると、そのままかしづくように跪づき、手を取った。
3 21/06/21(月)10:11:59 No.815493445
「トレーナー君。我がヴィットーリアよ!顔をあげておくれ。 そして長らく待たせ、不安にさせてしまったことを許しておくれ。 今こそ君に捧げようとも!ボクの勝利とその栄光、勝者に与えられる輝かしいものすべてを!」 ヴィットーリア 勝利の女神と呼ばれるには性別も違うし、いささか荷が勝ちすぎてはいないか。 涙声で男はそう言ったが、オペラオーはウインクとともに言葉を返した。 「間違ってはいないさ。ボクの女房役は、世界に君だけなのだからね―――」 泣き止まない男にオペラオーは寄り添い、静かに時だけが流れた。 そしていつの間にか空は白み始め、鳥のさえずりが世界に夜明けを告げる。 その時、世界でただ二人のみが聴いていた。覇王の誕生を祝うファンファーレを。 世界でただ二人のみが確信していた。のちに『世紀末覇王伝説』と呼ばれる偉業の始まりを―――
4 21/06/21(月)10:13:21 No.815493690
たまにはマジメぶってみたかった オペラオーのエミュがうまくできてなくても許していただきたい
5 21/06/21(月)10:17:43 No.815494441
いい…
6 21/06/21(月)10:18:46 No.815494601
どうしてもトレーナーがリュージになる…
7 21/06/21(月)10:18:48 No.815494607
100%解釈通りでありがたい…ウッ