ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/17(木)22:15:16 No.814285596
トレーナーの運転する車は首都高速4号新宿線を走り、高井戸料金所を通過して中央自動車道へ乗り継ぐ。 空いた区間をハイペースで飛ばして休憩時間の遅れを取り戻し、調布インターチェンジで降りる。 学園に到着したのは中山レース場を出発して一時間と十六分、電車ならば二時間以上は掛かっただろう。 車両通用門の前で窓ガラスを下げ、守衛へトレーナー証を見せて関係者であることを示して通過。 数メートル進んだ所で赤いブレーキランプが灯って停車する。 即座に後席ドアが開いて人影が飛び出した。それはレース出走の瞬間に凡そ似ていた。 走るのはエアグルーヴ、目指すゴールは窓から明かりを零す生徒会室、数え切れない程通った最短ルート。 「学園内は静かに走るべし」の張り紙の前を通過し、飛び込むように扉を開ける。 「エアグルーヴ、只今戻りました!!!!!」
1 21/06/17(木)22:16:51 No.814286237
ナリタブライアンは甘辛いタレを纏った豚肉と白米が渾然一体となった豚丼を平らげた。やはり肉は良い。心が救われ豊かに満たされる。 先ほどの電話でまたもエアグルーヴから厄介を押し付けられた訳だが、放棄するとそれはそれで後が面倒になる。 最低限の野菜補給としてにんじんスティックを齧りながら寮の食堂を見渡す。ナリタタイシンは自分や姉と同じこの栗東寮生だ。 徐々に混雑が始まる食堂で空いた器のまま席に座り続けるのも居心地が悪いので、から揚げの大盛りを追加する。 味は生姜しょうゆと塩麹の粗挽きコショウ。 ゆっくりと肉の食感と味を堪能しつつ、昼間に覚えた顔と姿を探す。 食事時の雑音で耳に響く大声がした。目を向ければ近くには見慣れた葦毛のシルエットは姉のもの。その向かいにナリタタイシン。 敵愾心を露にしていた時とは変わって携帯電話を片手に退屈そうではあるが険が無く、リラックスしているのが見て取れた。 既に三人が食事を終えているのは大声の主であるウイニングチケットから察せられたので席を立つ。
2 21/06/17(木)22:18:10 No.814286769
夕餉を終えて皆で浴場に行くかどうかを話していた三人の前に立ったウマ娘が居る。 「どうした、ブライアン。不機嫌な顔をして」 「生徒会の仕事だ。用があるのはナリタタイシンだけど。話がある、来て貰おうか」 「……続きは明日にするんじゃなかったっけ?」 うんざりした口調で言いながら食器を載せたトレイを持ってナリタタイシンが席を立つ。 大声を上げそうになったウイニングチケットの口元を押さえたのはビワハヤヒデだ。 「ナリタタイシンに何の用だ?」 「知らん。用があるから生徒会室へ連れて来いっていうお使い。本当に面倒だ」
3 21/06/17(木)22:20:12 No.814287613
テーブルへ静かに置かれるのはプラスチックの折詰めが二つ、中身は二色のから揚げだった。 「口止めにしては随分と安くないか?」 「食べ切れなかっただけだ。それとレモンは掛けてない。わかるよな、姉貴」 「そんな事をしたら、いくら妹でも戦争だぞ。融通の利かない頑固な妹だ」 表情を少し和らげてビワハヤヒデは言う。 「姉貴もだろ。そろそろ手を離さないと息ができないんじゃないのか?」 このあとウイニングチケットは「めちゃくちゃ苦しかったんだけどー?! 聞いてるのビワハヤヒデ!!」と真っ赤な顔のままで怒った。
4 21/06/17(木)22:21:46 [s] No.814288292
6/10くらいです これまでの内容はこちら sa79771.txt
5 21/06/17(木)23:06:47 No.814307610
どうなるんだ…?
6 21/06/17(木)23:07:49 No.814308033
流石のビワハヤヒデもからあげにレモンをかけたらげきおこか…