虹裏img歴史資料館

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21/06/17(木)00:25:13 春。私... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1623857113123.jpg 21/06/17(木)00:25:13 No.814019354

春。私とトレーナーさんが迎える四度目の春。トレーナーさんはチームを持つことになった。 原因は理事長で、担当がつかないままになっているウマ娘を減らすための施策だとか。トレーナーさんに白羽の矢が立ったのは私達がクラシック三冠やURAで優勝した功績を受けてとのことだった。 決定が通達された時、トレーナーさんは「急にチームを受け持てなんて言われても困る」とか「セイのトレーニングを見る時間が減る」だとか文句を言っていたけど、当の私はトレーナーさんが評価されたことが嬉しくて、それじゃあサボってても連れ戻しに来る人がいなくなりますね~なんて、軽口を叩いていた。 チームは私がエースという形で発足されて、新たにトレーナーさんが見ることになったのは二人の新人ウマ娘だった。 新人が二人もいる、というのはやはり負担が大きいらしく、トレーナーさんは彼女らにつきっきりになった。私は先輩としてサボりの仕方を教えてあげたりした。 一人でトレーニングする時間が増えた。

1 21/06/17(木)00:25:49 No.814019604

二人がデビューするとトレーナーさんと話す機会が減った。二人が出るレースのライバルの調査まで始めたようだったから、それは無理からぬことだった。トレーナーさんの負担にはなりたくなかった。 サボる時間が増えた。 レースには負けた。二着だった。 二人はGⅢを中心に戦っていくとに決まったようだった。私だったらもっと上の舞台で勝てるのにな、とそう思った。 サボっても誰も迎えに来てくれないことがとても悲しかった。寝ても釣りをしても寂しさは積もって、代わりに走った。 レースはギリギリ入賞の5着だった。

2 21/06/17(木)00:26:21 No.814019795

トレーナーさんに呼び出された。不調なんじゃないかと聞かれた。トレーナーさんの目の隈が今まで見たことがないほど酷くなっていた。彼に無理をさせている二人に無性に腹が立った。同時に、そんな彼に心配を掛けている自分に嫌気がさした。 そんなことはないと返して、トレーナーさんの方が不調なんじゃないかと聞いた。ちゃんと寝てる?と。トレーナーさんからは今が二人にとって大事な時だから、と苦笑いと共に帰って来た。 今迄は私だけのものだったその表情に、私の中で明確に二人への敵意が芽生えた。 そんな心が生まれたことが、何より悲しくて情けなかった。 トレーナーさんを避けるようになった。彼といると醜い感情を曝け出しそうだったから、彼にそんな私を見せるのが嫌で恐ろしくて、トレーニングコースに彼の顔を認めた途端私の足は180度回転していた。 日を増すごとにぐちゃぐちゃになっていく私の心を、どうすれば治せるのか私には分からなかった。いや、正確には一つだけ方法を私は持っていたけれど、それを使いたくはなかった。今の彼に、我儘は言いたくない。 掲示板外だった。

3 21/06/17(木)00:26:40 No.814019939

昔の私なら引き際だと言って引退していたはずだった。でもしなかった。したくなかった。してしまえば、些細な繋がりさえなくなってしまいそうだったから。 乱れた心のままで勝つことなんてできないと分かりながらでもどうすることもできなくて、走って、走って、走った。 全く勝てなかった。 いくらヒトとは一線を画した身体能力を持つウマ娘と言えど走り続けることはできない。先の見えなくなった道を、足掻いて、足掻いて、どうにか前に進もうとして、でも出来なくて。 立ち止まったのは、いつかトレーナーさんと二人で釣りに来た渓流だった。 「うぁ、あああ……あああああああっ!」 ここに来て私は初めて泣いた。悔しかった。何もかもが。一年前の私は無敵だった。隣にトレーナーさんがいて、彼に寄りかかって歩んでいくこの道が輝いていた。 「勝ちたい……勝ちたいよトレーナーさん……」 それが今は何だ。彼が隣にいない私のなんと弱く脆いことか。 「あなたと二人で勝ちたい……」 嗚咽は漆黒の空へと溶けて行く。

4 21/06/17(木)00:27:10 No.814020132

じっとりしてきたな…

5 21/06/17(木)00:28:06 No.814020454

Side:トレーナー セイの不調は分かっていた。サボりの頻度が増えているのも。寮に戻らないという報告もなんどか受けた。だが今セイの問題を解決するためには時間が全く持って足りていなかった。 世のチームトレーナーはどう回しているのだろう。新人二人のウマ娘のトレーニング管理とレースの調査・対策。たったこれだけで時間は異常に早く進んで行く。セイの指摘通りにほとんど寝れていない。 セイと話をせねばと感情は訴えるが最近のセイは寮にいても呼び出しに応じてくれないし、では外で会おうと思っても俺の顔を見た瞬間真っ青にして逃げられるのが現状だ。唯一レースの時は移動を共にする都合上セイと一緒になるのだが──疲れてるでしょ。と言われて無理矢理眠らされている。 実際、そこでの僅かな睡眠がなければ倒れてしまっているとも感じるから、甘えてしまっている。

6 21/06/17(木)00:28:22 No.814020529

だが、いい加減セイと話す時間を作らねば。 そう決心して二人のトレーニングを休みにして貰ったのが今日の昼だ。そこからセイを探し始めて──既に夜。 「そっか、まだ帰ってきてないか。ありがとうヒシアマ姐さん。うん、セイは俺が責任もって連れ帰るから──う、はい。毎日ちゃんと見ないといけないのは、仰る通りで……」 セイはまだ帰っていない。多分今日も帰らないつもりなんだろう。やはり、今日しかない。 「チーム持ちになっても、お前は俺のただ一人の愛バなんだから」 それを、伝えなければ。

7 <a href="mailto:s">21/06/17(木)00:30:31</a> [s] No.814021273

ここから良バ場に向えるといいなと思います頑張ります あと私事ですが幻覚を出力して一週間になりますので記念にまとめを貼らせてください fu88614.txt

8 21/06/17(木)00:31:55 No.814021786

>Side:トレーナー これいる?無くても伝わるよ?

9 21/06/17(木)00:34:42 No.814022774

まとめありがたい…

10 21/06/17(木)00:35:27 No.814023051

>これいる?無くても伝わるよ? 多方面から幻覚を見ることで幻覚の輪郭がより強固になっていくんだからいるに決まってるだろ

11 21/06/17(木)00:35:53 No.814023202

いいんだぜ重バ場のまま駆け抜けてもよぉ!

12 21/06/17(木)00:36:58 No.814023541

これから生まれるであろうカタルシスがとても楽しみな幻覚だ…のんびり待ってますね…

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