ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/15(火)07:08:06 No.813394006
併設のホテルから見える夜景は、どこか儚くて、そして見事なものだった。 2泊3日の旅の中腹。その最初の段落で貰った、薬指の指輪と、目の前の夜景を交互に眺めながら、思わず溜息をつく。 ────ホテル内は、家族連れとカップルで一杯だった。 単身者を確保する作りはしていないので当然ではあるが、友人連れすらほぼ見ないのは、なかなかのことだ。 皆一様に、手を繋いだり、腕を組んだり。隣に居る”家族”の存在を、強く噛み締めているようで。 そんな中に混ざっている事実が、なんだかむず痒い。 「責任くらい、全部取るわよ」 いつかに言われた、そんな言葉も思い出す。 これもまた、責任を取るうちのひとつなのだろうか。卒業後の進路は、お嫁さんなのだろうか。 そもそも、キングってどこまで本気なのかな。私だけが空回りしてたり、逃げ損なったように感じているだけなのかな? 確かにあの時、将来を誓ってくれたけど、年頃の女の子って、結構うわついてるもんだったりしないだろうか? そんな事を考えていると、背後に他者の気配を感じる。 この部屋には私を含め、2人しか居ない。目の前のガラスに反射して映る影は、同伴した、私の恋人そのもので。
1 21/06/15(火)07:08:23 No.813394034
「……キング」 「それ以上口を開かないでちょうだい。あなたの考えている事が何か、いまの顔から分からないような付き合いじゃないから」 冷たく言い放つ彼女の腕が、私の肩を、背後から抱きしめる。 部屋着姿の彼女の、やわらかな身体が、背中にぴたりと張り付く。 「……スカイさん。私、選択を後悔したりしてないわ。 あなたを迎える事も、私の人生を賭す事も、後悔しないって誓って、その指輪を贈ったの。 気の迷いなんかじゃないわ。逃げも隠れもしない。一流に相応しい、あなたと一緒に居たい」 そう語る彼女の声色は、先と変わって、優しくて、恭しい。 ふと気付けば、背後から抱く手が、私の左手を捕まえて、ひょいと持ち上げる格好。 その左手の甲、指輪のある辺りに、彼女の柔らかい唇が、一度、二度と触れて。 つい熱くなってしまった顔を、思わず伏せてしまう。
2 21/06/15(火)07:08:37 No.813394061
「ねえ、キング、恥ずかしい」 「私だって恥ずかしいのよ、おばか」 そう語る彼女の方へ意識を割くと、背中に伝わる鼓動は確かに早鐘を打っている。 一流と恥じらいを天秤にかけて一流を取る彼女の努力、才能にただただ感服するばかりだが、そろそろ互いに、限界なようで。 「……ねえ、キング。腕、離して」 言われるままに解いてくれた腕を撫ぜながら、後ろに振り向く。 すると、首元まで真っ赤な顔をして恥じらう彼女の顔が目に入って、ますます恥ずかしくなる。 強張るばかりの口。狭まる喉。それらを押して、言葉を振り絞る。 「……ずっと、好きで居て良い?」 「……当然じゃない。生涯、誓って、あげるわ」
3 21/06/15(火)07:08:49 No.813394079
互いに途切れ途切れの、恥ずかしい問答。 それが過ぎた瞬間、ふと、無意識に、身体が跳ねて。 「────ん、っ」 「は、すかい、さん」 でたらめなハグに、乱暴なキス。互いの唇を傷付けんばかりに貪る、獣の口づけ。 二度、三度、四度。音を立てながら行われる、合意があるだけの、レイプまがいのそれは。 今、一番必要なコミュニケーションを、引き出す為のスイッチとなって。 「……あとで一緒に、お風呂入ろうか」 熱い息を吐く彼女の手を引いて、窓際のベッドに、身を沈める。 わざとらしく脱いだ下着が、ぺしゃりと、水音混じりの音を立てて、床に落ちて。 ────薄明るい間接照明の下。柔らかな明かりに作られた二人の影が、ゆっくりと、一つになっていくのを、映し出していた。
4 21/06/15(火)07:10:03 [s] No.813394190
多分ガラにもなくはしゃいだ後なので割とあっさり撃沈して朝はスッキリ起きるんじゃないかと思いながら見た幻覚です
5 21/06/15(火)07:13:20 No.813394474
もっと幻覚見ろ