ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/06(日)22:53:06 No.810579839
「お待たせしました。」 「ううん、全然。」 桜が咲き誇る学園内のコース場。喧騒とは程遠いターフの上で私の好敵手であるトウカイテイオーは、どこか嬉しそうに出迎えてくれました。 「やっと一緒に走れるんだね。」 「ええ。」 思えばなんて長い道のりだったのでしょう。私が繋靭帯炎という選手生命をゆるがす、いえ断ち切ってしまうようなケガを告げられたあの日から。おばあさまからの説得に抗おうとしたあの日から、そしてテイオー。あなたが人目をはばからず泣いた私の手を放してくれたあの日から。秋から冬へと向かいつつある中、痛めつけるように降りしきる雨に打たれていたあの日、もしテイオーが私の手をつなぎ留めていていたのなら、そして抱き寄せてくれていたら。きっと道はそこで終わり、この日をむかえることは決してなかったでしょう。あなた、そしてスピカの皆様のあたたかさを受け入れ、ぬるま湯につかるように春を超えていたかもしれません。
1 21/06/06(日)22:54:02 No.810580284
「芝2400、天気晴れ。バ場状態、良___。」 「負けて泣いちゃっても知らないから!ボク、最強のウマ娘だからね。」 それにも関わらず、あの日を冗談めいて茶化せる日が来るなんて。運命は意地悪だなんてあなたは言っていましたけれど、ジョークをも受け入れてくれる器の大きさも持っていると、今なら言えます。 もっと言えば、それは奇跡をも受け入れる、突き抜ける空のような器の大きさを___。
2 21/06/06(日)22:54:44 No.810580624
「望むところですわ。」 構えてコインをはじくと、スローモーションのように今までの出来事がよみがえってきました。思い返すと私たちはこのコインの表裏のように誰よりも近く、そして一緒になることなくお互いを思いあい、目まぐるしく互いを勇気づけようとしていましたね。 この日のことはきっと、あの有馬記念___大観衆、チームメイト、ライバル、そして私。全ての方々の記憶に、青の瞳とまとった勝負服が焼き付いたあの日。誰しもが凱歌に酔いしれたあの日のように、心の中に残り続けるでしょう。 コインが芝の上に降りるか降りないかその時、私たちは駆け出しました。
3 21/06/06(日)22:55:31 No.810580986
この先何が起こるかは、運命のみが知ることなのでしょう。再発しやすいと言われた私のケガも、最強のウマ娘の行く末も。ですが私たちは今ここで手足を振り上げ、肺を苦しめ、心を燃やしています。そこに疑念ははさみようがありません。 そしてテイオー。 間違いなくあなたは私の目の前にずっと見えていてくれました。
4 21/06/06(日)22:56:05 No.810581254
おわり 参考文献 https://www.youtube.com/watch?v=BxcxDqz2S0I
5 21/06/06(日)22:58:30 No.810582252
追記 カタ絵のシーンは声で「よーいどん」でもよかったはずなのにコインを使ったのは、こういう狙いがあったんじゃないかと思いを膨らますことができる今期最高の演出だったんじゃないかと思う
6 21/06/06(日)23:02:46 No.810583892
テイマクは原点して頂点
7 21/06/06(日)23:10:44 No.810587009
コインの演出いいよねよくない