21/05/30(日)02:30:28 私が初... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1622309428590.jpg 21/05/30(日)02:30:28 No.807909891
私が初めて彼に出会ったのは、お正月での家族の集まりでした。いろんな親戚が顔を合わせて酒盛りをする中で、ご飯も食べて退屈な子供達に娯楽を提供したのが彼らそっくりな当時小学校上級生ほどの兄弟でした。見分けがつかないほどにそっくりでしたが性格はまるで違ったように思えます。 彼らに誘われるがままに庭で遊ぶ子供達、まぁ私も子供でしたが、遊ぶ彼らをよそに私はただ一人縁側で本を読んでいました。理由は私の脚でした、私の脚は難病に侵されていて包帯を巻かれており、走ることはもうできないかもしれないと、そう言われていました。 普通のヒトの子供でさえも走れているのに、なぜ自分は。と、私は幼い心ながら本を睨みつけながら読んでいて、そのせいか誰も恐がって近づこうともしませんでした。 「よ」そんな中で、兄さんだけが私の隣に座ると声をかけてきました。「何の本読んでんの? うわ、難しそうな本だなぁ、そういうのって大人が読むやつじゃない?」
1 21/05/30(日)02:30:54 No.807909961
「私のことはおきづかいなく。しんぱいしてもらわなくても結構ですので」 「いやぁ言い方まで大人っぽい、俺より大人だ。最近の若い子ってのは吸収が速いんだねぇ…他の子も元気もいいしお兄さんついてけないよ。もうあっちに任せた、あっちの方が人気あるし」 「同じ小学生ですよね」 「そりゃま、お互い様ってことで」 そのまま彼は何も言うことなく、向こうで遊ぶ子供たちを眺めていました。それがなんだか気になって、しかし読書の邪魔だからあっちに行けともいえず、根負けしたように私から口を開くことになりました。 「あなたは、弟、それとも兄?」 「兄ちゃんです。父さんによればちょっとの差と、おみくじの差らしい、凄いいい加減だよなぁ、おみくじが違えば弟だったんだぜ?」 「何ですかそれ、変なの」
2 21/05/30(日)02:31:33 No.807910065
顎をさすりながらそんなことを言う兄さんが可笑しくて、笑うと彼はそっとその顔を見て優しく微笑んだので、私はなんだか顔を赤くなって慌てて本を読むふりをして顔を隠してしまいました。 「それ、痛いのか?」 兄さんはそっと私の脚を見て言いました。私が今まで向けられていた同情とは違った、あっけらかんとした言い方でした。 「いえ、歩くだけではぜんぜん。走るとすっごく痛いんです。もう、走ることもできないかもって」 「そっか。でもさ、多分治るよ」 それもまた、私に飽きるほどかけられる慰めとは違った、何処か確信がある声だったので私は本から目を逸らして彼を見つめてしまいました。 「どうして?」
3 21/05/30(日)02:33:07 No.807910309
「だってこう…なんか走りたい―! って脚が言ってるみたいだもんさ。ウチ、ウマ娘専用のスポーツ用品店でさ、手伝いしてると色んなウマ娘の子が来るんだよ。んでいろんな子の脚を見るんだけど、なーんとなく声が聞こえてくる気がするんだよなぁ」 「怖い話ですか?」 「かも。でも確かに君の脚はこう、とっても走りたい―って言ってる感じがする。うむ、勘だけど。だから治る! きっと大丈夫だ、うん!」 「足が…」 包帯だらけの脚を見ると、なんだかドクンと脈を打った気がして、私は何だか兄さんの言葉を信じたくなりました。根拠も何もないのに、私が治ると一つの疑っていない顔が心の曇り空を晴らしてくれたようでした。 「じゃ、じゃあ…もし、また走れるようになったら…一番近くで見てくれますか?」 「おー、飛んできちゃる。ちょっとお待ちなさいよぉ」
4 21/05/30(日)02:33:28 No.807910372
そういうと兄さんは家から折り紙を見つけてきて、慣れない手つきで折っていくと出来上がったものを私の手にそっと乗せました。それは折り紙のトロフィーで、何度か折りなおしたからくしゃくしゃでヨレヨレでお世辞にも綺麗とは言えませんでしたが、私にはなんだかキラキラと光っているように見えたのです。 「じゃん、弟の真似で作ったけど…やっぱへなちょこだな。まぁ、これが約束代わりということで勘弁してください」 「ううん」私はトロフィーを空に掲げながら笑いました「すてき」 そのまま親が来るまで、私は兄さんは難しい漢字や表現を教えてもらいながら一緒に本を読みました。実は全然内容は分からなかったのです。
5 21/05/30(日)02:33:51 No.807910453
果たして彼は本当に脚の声らしきものが聞こえたのか、それともただの出まかせだったのかは分かりませんが、私の脚は確かに奇跡的に回復の兆しを見せました。また走れると思ったときの喜びは筆舌つくしがたく、泣きじゃくったのを覚えています。ただ、心残りだったのはリハビリのために遠い場所へと引っ越したのとリハビリに一生懸命で、走れる頃にはもう兄さんには会う機会がなかったこと。まだ子供だった私には、遠い親戚に合うというのはハードルが高かったのでした。 でもくしゃくしゃのトロフィーは厳しいリハビリの中でも確かな支えとなりました。 そして、トレセン学園に入学が叶い、大人になった兄さんを見つけた。広い世界でこうやって出会うのは運命と形容すべきなのでしょうか。言いたいことがなら一つ、神様感謝します。以上、それだけ。
6 21/05/30(日)02:34:12 No.807910501
〇 「あー、急なことでーひじょーに、ひじょーに申し訳ないのですが…」 イクノと上の兄貴が話しているところをコッソリ見た次の日だった。 練習なのに姿見えないな、と思っていると、ひょっこりと頬をかきながら顔を出してきた。後ろにイクノを連れて。 「その、担当することになっちゃいまして…」 「イクノディクタスです。よろしくお願いいたします」 その言葉を聞いて口をあんぐりと開けたのが下の兄貴で、やっぱりかーと思ったのがアタシだった。特に下の兄貴は相談も何も受けてなかったようで、もう顎が外れる一歩手前である。
7 21/05/30(日)02:34:52 No.807910626
「な、兄さん! 俺なんも聞いてないけど!?」 「じ、事後報告になっちゃいましてどうも…いや、すまん! ごめんなさい!」 「すまん! じゃなくて、ネイチャのサブトレーナーはどうするんだよ!」 「いやそれもちゃんとするから! ちゃんとフォローしますから! ほら、覚えてるか? よく正月とかで遊んだろ? あの子だよ!」 「え、イクノ、兄貴たちと知り合い? マジ?」 「親戚です。ナイスネイチャさんもそのようで」 驚いたのは、イクノと兄貴たちが遠い親戚だったこと。いやいや聞いてない聞いてない、マジか。下兄貴もイクノを思い出したようで、不機嫌か不可解というような顔を一転して笑顔に変えると親戚のおっちゃんみたいになった。それでいいのか、スポーツ用品店の若き息子たちよ。
8 21/05/30(日)02:35:18 No.807910690
「いやぁ、脚すっかり良くなったんだね。いやはや…凄い確率だなぁ、それじゃあ兄さんも逆スカウト受けちゃうかぁ」 「約束ですので」 「でも本当にいいのか? こういっちゃなんだが弟の方がぶっちゃげ効率良かったぞぉ? 別に俺は二人のサブトレーナーでも良かったんだけど」 「約束でしょ」 イクノはそういって上の兄貴にまた笑顔を見せる。なんだかネイチャさん、蚊帳の外です。
9 21/05/30(日)02:36:15 No.807910847
約束、イクノはそういった。つまり私の知らないときにトレーナーになると約束していたのだろうか、兄貴と。そう思うとなんだか胸にどろっとしたものが流れてくる。 どうにもいけない、こういった感情はアタシには無縁だ。ぐぐっと何処か隅っこに押し込んでおく。 「おーい、ネイチャさん? ボーっとしてどした?」 「うぉーっと、あんまりにドラマみたいな話で脳が追い付いてなかったわ。いやーこんなこともあるもんですねぇー、頑張れイクノー」 だけど、この人の顔を見ると溢れだそうとしてくるのはどうしてだろう。 自分だけの兄さん達ってそう思ってたからかな。
10 <a href="mailto:s">21/05/30(日)02:36:54</a> [s] No.807910957
長くなりましたし遅くなりましたしネイチャのスレ画なのにいきなりイクノだったことを深くお詫び申し上げます でもスリーゴッデスがやれっつったんです私は悪くありません
11 21/05/30(日)02:37:21 No.807911033
>「約束ですので」 >「でも本当にいいのか? こういっちゃなんだが弟の方がぶっちゃげ効率良かったぞぉ? 別に俺は二人のサブトレーナーでも良かったんだけど」 >「約束でしょ」 ここで口調変わるのすごい好き
12 21/05/30(日)02:37:42 No.807911085
やめろよ…応援したくなる子サブヒロインに持ってくるの…
13 21/05/30(日)02:38:51 No.807911260
タッちゃんモテるなあ…
14 21/05/30(日)02:42:40 No.807911883
トロフィーイクノに渡すのか…
15 21/05/30(日)02:42:44 No.807911889
原作でもだいぶモテてたしな…
16 21/05/30(日)02:44:11 No.807912076
>トロフィーイクノに渡すのか… 弟の真似っこって言ってるから恐らくネイチャには弟が渡していると思われる 未来が怖くなったのでちょっとスリーゴッデスを討伐してくる
17 21/05/30(日)02:45:40 No.807912295
これは三女神は拳を振り上げている状態なんです…?
18 21/05/30(日)02:46:30 No.807912413
まぁテイオーも言う通り恋はダービーだからな うかうかしてたり内心自分だけ特別と思い込んでたんじゃ差されもするさ
19 21/05/30(日)02:47:12 No.807912507
うー!うまたっち!
20 21/05/30(日)02:49:29 No.807912829
ちくしょう高橋留美子みたいな恋愛劇繰り広げてるウマ娘とトレーナーに逃げるぞ!
21 21/05/30(日)02:51:23 No.807913082
ここから達也とネイチャがそういう関係になるのかならないのか 先がかなり気になる…
22 21/05/30(日)02:51:44 No.807913127
これはネイチャは自分の気持ちに気付いてないのか…?
23 21/05/30(日)02:53:17 No.807913334
>ちくしょう高橋留美子みたいな恋愛劇繰り広げてるウマ娘とトレーナーに逃げるぞ! 諸星あたるみたいなトレーナーが望みなのか
24 21/05/30(日)02:53:28 No.807913358
ネイチャも兄に矢印向いてたらおそらく同じように折り紙トロフィー送ったであろう弟が可愛そうじゃないですか!
25 21/05/30(日)02:54:02 No.807913432
これからタッチ展開だと新人トレーナーが2人を受け持つ事になる...? 先が読めなくなって参りました
26 21/05/30(日)02:58:08 No.807913964
三角関係か未だ平和に見えるあれが来るというのが俺の心に影を落とす
27 21/05/30(日)02:59:55 No.807914207
これから片方死ぬんだなって思うとこう、お辛い
28 21/05/30(日)03:00:47 No.807914301
1話の最後の1行がずっと頭に残ってる
29 21/05/30(日)03:01:05 No.807914331
これは兄弟どっちも死なない気がしてきた 3女神は死んで楽にさせないタイプのレズのサディスト