21/05/20(木)19:46:42 「トレ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1621507602012.png 21/05/20(木)19:46:42 No.804707804
「トレーナー!勝ってきたよ!指、三本目!」 トレーナーが待っている控室、ボクは三本指を立てながら地下バ道を駆け抜けて、走り込んだ。 「ああ、見ていたよ。いい走りだった。」 「えへへ、頑張ったよ。ゴールしたのも気づかなくて、マヤノに呼び止められちゃった。」 200m以上のオーバーラン、もしかしたらそのままコーナーまで曲がってたかも知れない、少し恥ずかしい。 「大分余計に走ったな、スタミナが余っているようで何より、次は全体のペースを上げるメニューで行くか。」 すぐに次のレースに向けてバインダーに挟んだページにメモし始めるトレーナー、全く!三冠バ様の前だというのにケーイが足りない!
1 21/05/20(木)19:47:12 No.804707970
「違うでしょ!ほら!」 その顔とバインダーの間に頭を無理矢理差し込んで、いつかの約束をお願いする。 「ああ、悪い。私もいささか興奮しているようだ。よく頑張った。」 初めての時に比べたら遠慮がなくなってきた撫で方。 レースの後は欠かさず、トレーニングも上手く出来た時におねだりすれば、トレーナーは最優先でボクを撫でてくれる。 トレーナーの手はいつも温かい、ボクの体は今燃えるように熱くなってるけど、それでも温かいと感じる不思議な熱を持ってる。 きっとトレーナーの手は魔法の手だ。どんなに辛いトレーニングも、撫でられたり褒められると、また頑張ろうって思える。 でも、今日は……ちょっと……。 「走りきってくれた、ありがとう……。良かった……良かった……。」 トレーナーの手にはいつもより熱がこもっていて、ついには両手でボクの頭を抱きしめてしまった。 「………ありがとう、テイオー。耐えてくれて……あの日、お前が倒れた景色が何度もちらついた……。 同じ過ちを、お前の身体で繰り返してしまうのではないかと……。だがお前は走って、勝利までした……ありがとう…。」
2 21/05/20(木)19:47:24 No.804708023
撫でる手が少しだけ震えている。トレーナーはずっと怖かったんだ、ボクがこれ以上怪我することが、三冠バになれないことよりずっとずっと、怖かったんだ。 けれど、ボクのためにずっと押し隠して、なんでも無いように振る舞ってくれてたんだ。 膝をついてトレーナーの胸に顔を埋める、ボクもトレーナーの背中を抱きしめる。 ありがとう、トレーナー。ボクのわがままに付き合ってくれて。 三冠バ、なれたよ、トレーナーのおかげだよ。もっともっと迷惑も心配もかけるかもしれないけど、一緒に頑張ろう。ボク達の夢のために。
3 21/05/20(木)19:47:44 No.804708138
「質問ッ!そろそろ構わないかな!」 「うおっ!」 「ひやっ!?」 突然部屋に響く声、リジチョー?!いつの間に!?びっくりして急いで離れる。
4 21/05/20(木)19:47:55 No.804708185
「失礼ッ!何度もノックをしたが聞こえていなかったようなので入らせてもらった! 早速ッ!トレーナー君に返却したいものがある!厳命ッ!二度と道半ばでこんなものを書かないように!!」 リジチョーは少し怖い顔をしながら封筒をトレーナーに渡す。隠すように懐に入れられるそれに書かれた文字が一瞬見えた。 「たいしょくねがい…退職願?!どういうこと!!」 「驚愕ッ!担当に何も伝えていなかったのか!独断ッ!このトレーナーはもしトウカイテイオーが故障したら受理するようにとシンボリルドルフに預けていたのだ。」 「何それー!!失敗したら勝手に辞めてさよならするつもりだったの!?隠し事はなしって前に言ったじゃん!!」 「いや、それは………その……。」 一緒の夢を目指していたのに、一人で降りる準備してたなんて!こんな無責任な話ないよ! それに何で預ける先がカイチョーなの!!ボクに相談しないでカイチョーには話してるなんて絶対おかしい!!
5 21/05/20(木)19:48:21 No.804708321
「私なりに…故障させた時の責任を……取ろうと………。」 「非理ッ!それは責任ではなく逃避である!残されるテイオーの気持ちを考えなかったのか!懲戒ッ!私からは不問とするが、当人にこってり絞られるといい。ではな!」 リジチョーはまだ怒っているようで、バタンと音を立ててドアを閉めていった。 残されたのは、リジチョーより怒っているだろうボクと、居心地悪そうに床を見つめているトレーナー。
6 21/05/20(木)19:48:37 No.804708392
「トレーナー。」 「…………ああ。」 「それ、出して。」 「……………。」 懐から退職願を取り出すトレーナー、それを奪い取って、ビリビリと破いてしまう。それをまとめてゴミ箱に投げ込んだ。 「他に何か隠してることはない?!」 「……………いや………。」 「あるんでしょ!!」 なかったらこんな口ごもるわけがない、こうなったら全部吐き出させてやる! 「ルドルフに………もう一つ、預けようと思っていたものがある……。受け取ってもらえなかったが……。 もう一つは、茶色の封筒、シワひとつなかった退職願と違って、何度も握りしめたみたいにくしゃくしゃになっている。 「…………遺書だ。」
7 21/05/20(木)19:49:22 No.804708617
頭に昇っていた血が一気に冷めていく。トレーナーは健康だって前に言ってた、じゃあ、もしボクが故障してたら……。 「死ぬつもりだった。アスリートとして死んで、トレーナーとして拾われた命が、それも出来んとなったら、もう生きている価値など…」 乾いた音が響いた。ボクがトレーナーの頬を叩いた音。 「………それ、本気?今回は良かったけど、次、ボクがキミのせいで故障したら死ぬつもりなの?」 「………………。」 沈黙の後、トレーナーはボクが退職願にしたように、茶封筒をビリビリに引き裂いて、ゴミ箱に投げ捨てた。 「これが納得してもらえるかな。これは私の迷いだった。理事長の言う通り逃げ道だった、失敗した時に備えていた。勝負する前から負けた場合を考えていたんだ、お前は前だけを見ていたというのにな。」 「そうだよ、ワガハイは無敵のテイオー様!!トレーナーもそれに見合う自信を持ってくれなきゃ!!」 「ああ、全くだ。そろそろウィニングライブだ、行って来い。特等席で見させてもらおう。」 「ほっぺた、絆創膏貼ってから来ても大丈夫だよ、これから何度も見せてあげるから!」
8 21/05/20(木)19:52:29 No.804709588
前回までのログです 塩死んでるんですね fu43124.txt これでようやく菊花賞については終わりです、次から時間進みます、牛の歩みですが 「」ブロイさんに拙作をご紹介いただいて恐悦至極です、普段からレスで感想頂いてるので十分嬉しかったんですが、他のスレでも言及されると望外の喜びですね
9 21/05/20(木)19:59:18 No.804711753
三冠も取れたしトレーナーの心の闇も晴れそうで何より 理事長はいい仕事してくれた
10 21/05/20(木)20:22:44 No.804720539
>「走りきってくれた、ありがとう……。良かった……良かった……。」 >トレーナーの手にはいつもより熱がこもっていて、ついには両手でボクの頭を抱きしめてしまった。 >「………ありがとう、テイオー。耐えてくれて……あの日、お前が倒れた景色が何度もちらついた……。 > 同じ過ちを、お前の身体で繰り返してしまうのではないかと……。だがお前は走って、勝利までした……ありがとう…。」 ここでちょっとウルっときた
11 21/05/20(木)20:24:19 No.804721198
良かったな… とりあえずトレーナーはテイオーにこってり怒られろ
12 21/05/20(木)20:30:05 No.804723455
普段鉄仮面被ってるトレーナーが頬に紅葉模様刻んだ状態に感極まった表情でウイニングライブ見てるわけだ 周囲のトレーナーは驚愕する
13 21/05/20(木)20:33:58 No.804724862
>普段鉄仮面被ってるトレーナーが頬に紅葉模様刻んだ状態に感極まった表情でウイニングライブ見てるわけだ >周囲のトレーナーは驚愕する 何かあれば腹を切るつもりだったって観念して言えば 皆一様に笑って当たり前だバーカって言ってくれるよ多分
14 21/05/20(木)20:38:43 No.804726587
この話に出てくる人物揃いも揃って魅力的だからな… テイオーの話が続いてる中でこんなこと言うのもなんだが会長とこのトレーナーが一緒に歩んでた世界線の話もいつか読んでみたい
15 21/05/20(木)20:40:16 No.804727228
マヤノのトレーナーも良い感じだったしタキオンのトレーナーも後々で話に出てくるんだっけ?
16 21/05/20(木)20:42:13 No.804728151
存在は明言されてたが出てくるとまで言われてたっけ
17 21/05/20(木)20:46:01 No.804729563
>存在は明言されてたが出てくるとまで言われてたっけ 出したいですとは言ってたけどこの世界観に光るモルモットがどう絡むのかわからん……