虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/05/20(木)12:29:25 No.804600178

トレーナーは椅子の背もたれに思いきり背を預けたまま、行儀悪くデスクに足を乗せていた。 一見不良社会人なトレーナーだけど、これで仕事はちゃんとやっているんだから大人ってわからない。 現にアタシはトレーナーの指導を受け始めてからというもの、少しづつだけど着実に成長していった。 少なくとも根性は人一倍ついたと思う。 なにせトレーナーの組むメニューは、昔のスポ魂ドラマも真っ青なほどハードなものだったから。 けれど体を壊さないギリギリの一線が見極められており、トレーニングをこなす度にアタシは自分の体が故障しにくい体になるのを実感していく。 座学もハードなのはさすがにキツかったけれど。

2 21/05/20(木)12:29:43 No.804600266

「しょ、勝負服ってそんなおっかないものだったのか…」 「けれど」 トレーナーは振り向かずに続けた。 その声には心なしか、さっきより力が籠っていた。 「けれど箱の底には希望が残されていた。自分の体を守る勝負服という希望がね。 超人的な身体能力を持つウマ娘も所詮はか弱い生身さ、レースに挑む際は迷わず箱を開けな」 「…！　わかった、わかったよトレーナー！」 アタシはなんだかうれしくなった。 怖がらせるような事ばかり言ったトレーナーだけど、アタシの事を心配してくれる事は、何となくわかったから。

3 21/05/20(木)12:30:04 No.804600346

メイクデビュー当日。 トレーナーは急用が入ってしまい、アタシは一人きりで挑むことになってしまった。 いつも後ろから見守ってくれる人がいない、一人だけの控え室。 ただそれだけの事が、いつになくアタシを不安にさせていた。 膨れていく不安を押しやるように、アタシはバ衣箱を見た。 その瞬間、トレーナーの声がアタシの脳裏によみがえる。 “レースに挑む際は迷わず箱を開けな” 「そうだ…！　アタシの夢は正義の味方！　絶対勝って、最強のスーパーヒーローウマ娘の一歩を踏み出すんだ！！」 トレーナーの言葉を思い出し、アタシはバ衣箱に手を伸ばした。 翼の生えた、奇妙な動物の顔があしらわれた箱だ。 やけに面長のそいつはアタシたちウマ娘と同じ形の耳をしていた。 なんだかトレーナーだけじゃなく、その生き物にも勇気づけられているような気がして心強くなった。 力強く取っ手を掴むと、レリーフと目が合う。

4 21/05/20(木)12:30:23 No.804600441

「悪霊が出るか、希望が出るか！！」 思わずニカっと笑みを浮かべてアタシは取っ手を引いた。 奇妙な生き物の目が光った、気がした。 そして鎖の引き抜かれる音と共に箱が展開し、おどろおどろしいオーラに包まれた、翼ある何かが飛び出したのだった。 「う…うわぁぁ～！」 思わず頭を抱えて伏せる。 アタシはぎゅーっと目をつぶって、そして自分の目が潰れていない事に気が付いた。 立ち上がり、恐る恐る箱の中身を確認する。 「うぅ…アタシは無事なのか…！？　勝負服は…。な、なにい……！？」 十文字に開いた箱の真ん中に、それが鎮座していた。 胸元にはシンプルなリボン。 袖は大きく折り返されており、もこもことしたブーツと相まって、着た者を小柄に見せるようだった。 両腰には蹄鉄状のアクセサリーが備えられ、トレセン学園のそれとは似て非なるスカートにも、やはり蹄鉄の模様。 そして、何故か背負われているのはオレンジ色の小ぶりなまんまるいリュック。しかもかわいらしい翼が生えている。 勝負服は、そんな真っ白なジャケット型のセーラー服一式だった。

5 21/05/20(木)12:30:36 No.804600493

「こ…これがこのビコーペガサスの勝負服だって…？」 アタシは憤慨した。 思っていたものとあまりにも違い過ぎたのだ。 「勝負服はヒーロー風のものがいいって言ったのに！　これじゃセーラー服に翼の生えたものじゃないか…。 こんなアイドルの衣装みたいなものが着られるか！！」 怒りとやるせなさのあまり、力任せに勝負服を掴んだその時。 「な…に…？　分解するぞ…？」 ガシャッと音を立てて、服の一部が外れた。 アタシは一瞬ヒヤッとして、けれどありえない外れ方を見てすぐ冷静になった。 「こ…このパーツ…。左腕にピッタリだ！」 ジャケット正面が分解し、ヒーローのグローブと言う他ない形に変わったのだ。 「む…。やはりそうか…」 まるで第二の皮膚のように、左腕に馴染むナックルの感触にアタシは確信する。

6 21/05/20(木)12:30:50 No.804600555

「このセーラー服はひとつひとつが勝負服の集まりなんだ！」 今度は変身ブレスレットを思わせる右のアームを装着する。 続いて左右のフット。 その次はボディ。 さらにパンツ。 「そしてこれこそが勝負服の真の姿だったのだ！！」 最後にウエストのパーツ――変身ベルトを装着し、アタシは全宇宙にただ一つの勝負服を装着し終えた。 鏡に映る自分自身の姿を前に、アタシは思わず震えた。 まるで自分の中に宇宙が広がっているみたいだ。 背後に奇妙な生き物の応援を感じ、遠く離れたトレーナーを思う。 爆発寸前に高まる闘志を胸に、アタシははゲートへ向かっていった。

7 21/05/20(木)12:31:09 No.804600651

削除依頼によって隔離されました http://img.2chan.net/b/res/804594144.htm

8 21/05/20(木)12:33:39 No.804601307

ﾍﾟｰｶﾞｻｽﾌｧﾝﾀｼﾞｰ

9 21/05/20(木)12:46:12 No.804605097

こういうギミック好きそう

10 21/05/20(木)12:51:40 No.804606842

なんという一発ネタ…

11 21/05/20(木)13:03:15 No.804610151

ｸﾛｽ バ衣

12 21/05/20(木)13:04:08 No.804610367

su4865225.jpg 育成来たら絶対星矢ネタ入れてくるよね

13 21/05/20(木)13:08:08 No.804611408

彼女の勝負服を直すためにはトレーナーの血が必要となる…

14 21/05/20(木)13:28:06 No.804616120

ｾｲﾝﾄｾｲﾔｰ!

15 21/05/20(木)13:28:32 No.804616214

だきしめた こころのウマソウル

16 21/05/20(木)13:30:45 No.804616788

>「このセーラー服はひとつひとつが勝負服の集まりなんだ！」 うｎ…