ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/05/18(火)02:45:02 No.803900395
トレーナーくんの機嫌が悪い。 機嫌が悪いというか、なにか怒らせてしまっただろうか? もちろん彼女は気分でトレーニングに支障をきたすような人ではないが、それでもふとしたときの表情が固い。 体調が悪いのかとも思ったが、他の人物と話す様子を見る限りそういうことでも無さそうだ。つまり、心当たりは無いものの私が―― 「なぁトレーナーくん、私は何かしてしまったか?」 トレーニング終わりに聞いてみる。思いのほか力ない声が出てしまって、堪えていたことを理解してしまう。 「えっ!? ごめん……顔に出てた……?」 そういう返答になるということは、私が原因で間違いないということだ。 「すまない。何か気に障ることがあったら教えてほしい。走りに関することならば指摘していると信じているが、君は私のことを優先するきらいがあるから……不快に感じることがあるなら遠慮なく言ってくれ。改善のための努力は惜しまない」 思わず縋るような口調になってしまう。恥ずかしいことだが、信頼するトレーナーが離れていってしまったらと思うと不安にもなるだろう。
1 21/05/18(火)02:45:54 No.803900510
「……で、…しい」 「うん?」 小さく吐き出された言葉が上手く聞き取れず、聞き返す。 「ほ、他のトレーナーのトレーニングなんて受けないでほしい! 聞いたんだからね! ナリタブライアンのトレーナー、契約前に貴方のトレーニングを見たんでしょう!? ずるいよ! 私はハヤヒデの走りに惚れて、せっかく口説き落としたのに! 貴方が妹を任せるって相当の信頼でしょう!? ブライアンとか、タイシンとかチケットとか……ウマ娘のライバルは仕方ないって思うよ。私はどうしたって貴方と一緒に走れるわけじゃないもん。でも……トレーナーとしてくらいは、貴方の唯一無二でありたいから……その……」 爆発するような大声がだんだんとしりすぼみになって行く。 「他の人に貴方をとられたくない」 想定外の台詞は、思った以上に破壊力があった。 「……わざわざ『姉の方』を選ぶような物好きは君の他にいないよ。分かっているだろう?」
2 21/05/18(火)02:46:51 No.803900629
照れ隠しに自虐的な言葉を選んでしまった。トレーナーくんの目の色が変わる。 「貴方のことをそんな風に呼ぶような人にだけは、絶対負けないから」 負けない、ときたか。 「ははは……君、意外と私のことが好きだな?」 「好き。大好きだよ。ハヤヒデが思ってるよりずっと」 手を取られた。私よりも一回り小さな手は力強く、さっきまで運動していた私より熱くなっている。 「誰よりも貴方のために努力するから。他のトレーナーなんて見ないで。ううん、見えないようにする。絶対そうしてみせる。私には貴方しか見えてないから、貴方も私しか見ないで。……お願い」 必死の懇願にいつの間にか私に主導権が移っているらしいことを悟る。 しかし、あれは妹を任せられる人物かどうか見極めようと思っただけで、他意は欠片も無かったのだが。 「トレーナーくん、顔が赤いぞ」 誤魔化すように指摘すれば、パッと離れた手が本人の頬によせられる。 はずかしいじゃない。せっかく格好つけたんだから。言わないでよ。珍しく狼狽える彼女の頬は夕陽のせいだけには出来ないほど赤く染まっている。 そういう仕草は素直に可愛らしい。
3 21/05/18(火)02:47:28 No.803900700
トレーニングが終わり、寮へと送ってもらうたびにこの人の方が私よりよほど一人歩きは危ないだろうと思う。 か弱いとは思わないけれど、背の高い私から見れば一回りも二回りも小さな、ごく普通の女性だ。 それがこうも離れがたく、頼もしく見えるのだから、私だって彼女に惚れきっている。 「ブライアンには悪いが、私にとって君より魅力的なトレーナーがいるとは思えないよ。あの人を含めてもね」 「……たとえそんな人が現れても、努力で貴方にふさわしいトレーナーになってみせる」 「うん。私も負けていられないな」 荷物をまとめて立ち上がった彼女の後を追うように立ち上がる。長話になってしまった。体が冷える前にシャワーを浴びて着替えなくては。 「ハヤヒデ」 「うん?」 「私、本気で言ってるからね。貴方のパートナーの座は誰にもゆずらないから」 告白まがいの言葉と共にじっと見つめられるのが恥ずかしくて、うんとうなずいてシャワー室へと急いだ。いつも通り先に待っているはずのトレーナーくんと合流するまでに熱くなった顔を冷やさなくては。さっきからかってしまっただけに何を言われるか分かったものでは無い。
4 21/05/18(火)02:47:58 No.803900767
クソボケがーっ!
5 21/05/18(火)02:48:02 No.803900772
走り去っていくハヤヒデの背中を見ながら深呼吸する。どうしよう。全然落ち着かない。思わず親指の爪を噛んでしまう。 ビワハヤヒデのトレーナーであるなら、いつでも理性的でなければいけない。理論を重んずる彼女に振り落とされないだけの知識と、冷静さと、分析力。情熱だけではいけない。それを、こんな、子どもっぽい嫉妬心をあらわにしてしまうなんて。 「ハヤヒデ……」 ぼそりと呟いた声に他人には聞かせられない熱が混じっているのを自覚している。気づかれなければいいと思っていたけれど、違う。上澄みだけに気づかせなければ。 彼女の走る姿が一等好きなのだ。それを奪ってでも手元に置いておきたいなんて、思っちゃいけない。思っちゃいけないから、思うような状況は潰さなければいけない。 「ハヤヒデが思ってるより、ずっと好きだからね」 もう一度深呼吸して、顔を手で覆う。いつも通り。それより、ちょっと照れてるくらいの顔を作って、彼女を出迎えなければならない。
6 21/05/18(火)02:49:03 No.803900903
ブライアンのトレーナーずるい!の気持ちを押さえきれませんでした 女トレーナーは趣味
7 21/05/18(火)02:49:23 No.803900949
いい趣味してるぜ…
8 21/05/18(火)02:50:08 No.803901036
百合か…っ!これはこれで 義姉貴!押し倒せ!
9 21/05/18(火)02:55:42 No.803901687
ハヤトレは女に設定すると妙に湿度高くなる気がする 口調かな
10 21/05/18(火)06:11:38 No.803913725
私の性癖にはあっています
11 21/05/18(火)06:13:37 No.803913840
これは気ぶる必要があるのか気ぶっていいのか ブライアンどう思う?
12 21/05/18(火)06:18:27 No.803914119
>これは気ぶる必要があるのか気ぶっていいのか >ブライアンどう思う? い 三 ?
13 21/05/18(火)06:53:53 No.803916453
なんていうか姉貴にしっとり熱い視線を向ける女トレーナーってのも悪くないもんだな