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21/05/11(火)00:40:34 トレセ... のスレッド詳細

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21/05/11(火)00:40:34 No.801526004

トレセン学園の朝はいつもと変わらず騒々しかった。 「トレーナー君!どうして逃げるんだい!?さぁこの紅茶をグイっと飲んでくれたまえ!」 「うるせぇ!お前また俺に変なもん飲ませようとしてんだろ!」 新入生や転入生には慣れない光景だが、在校生からすれば恒例行事となっているアグネスタキオンとそのトレーナーの朝の追いかけっこ。 トレセン学園のウマ娘の中でも超高速のプリンセスの異名を持つ少女が必死に追いかける存在、数々の実験の末に誕生してしまったウマ娘並みに速い足を持つ彼女のトレーナーの必死の逃亡劇である。 「いいじゃないか!私と契約を交わしたんだ!ウマ娘の未来のためにもぜひその体を貸してくれ!」 「ふざけんなお前!そんな契約破棄だ破棄!」 「生憎契約解除は受け付けない契約になっている!君はもう最高のモルモット君なんだ!」 「ヤメルォ!」 必死の形相で駆け抜けるトレーナーと嬉しそうに追いかけるウマ娘。そんな二人をしり目に、私マンハッタンカフェは騒がしい朝を肴にコーヒーを一口含んで舌を泳がせる。うん、今日もおいしい。

1 21/05/11(火)00:41:06 No.801526161

「……相変わらず、大変そうですね」 昼頃になればやっと落ち着いたのか、カフェテリアでダウンしている彼を発見する。タキオン曰く、全力で走ると短くもインターバルを要するのだとか。つまりしばらくは動けない状態にある。 「おぉ……キリマンジャロ!」 「マンハッタンカフェです。ですが確かに私が飲んでいるのはキリマンジャロAA。いかがです?」 「サンキュッ!」 嬉しそうに手渡したコーヒーをグイっと飲む。喉を一つならせば美味いと笑顔で答えてくれた。 ごく稀に失敗したとしても変わらずいい評価をくれる彼は「泥みてぇなもんは散々飲んだからな」と自慢していた。いったいどんな状況でそんなものを? 「……それにしても、貴方は毎日大変ですね……。タキオンの御守りはさぞ疲れるでしょう」 「あいつのマッドサイエンティストぶりには骨が折れるぜ。ったく、たづなさんには監督不行き届きだって叱られっしよ」 大きなため息を吐くモルモットさん。言動はバカっぽいですがこれでも中央トレセンに選ばれたエリート。確かトレーナー長、今のメジロマックイーンさんのトレーナーさんに選ばれた若き精鋭の一人でしたか。

2 21/05/11(火)00:41:22 No.801526233

教え方は擬音が多くて抽象的ですが、それでも勝負の感は素晴らしく、仕掛けどころやレース中の視野について飛び抜けた才能を持っています。 最も、担当である彼女の脚質を考えるとその才能が埋もれているように感じますが。 「あまり無茶はしない方がいいです……。あの子も心配していますよ」 「あぁいいのいいの。俺、体動かす方が得意だからな。っとそうだ」 そう笑顔で答えるモルモットさん。例えるなら太陽のように底抜けに明るい彼は、思い出したように私に包みを4つ手渡してきた。 「今日の弁当! シャカールとデジタルにもやってくれ!」 「あ、はい。ありがとうございます……でもいいんですか? 私たちの分まで」 「気にすんな。1つも2つも3つも4つもあんまかわんねぇから!」 いえ……流石に変わってくると思いますが。 そんな素っ頓狂な言葉を飲み込んでいると、インターバルを終えたのか、モルモットさんは飛ぶように立ち上がる。 軽く飛ぶだけで1mは簡単に飛び上がる彼は、いったいどんな劇薬を飲まされたんでしょうか。想像するのも億劫になります。 「っしゃあ回復完了! コーヒーサンキュ! 美味かったぜ」 「あ、はい。お粗末様です」

3 21/05/11(火)00:41:41 No.801526335

両腕をあげて首を鳴らすモルモットさん、大分体が凝っているのか何度も肩を回しては変な声をあげていました。 おじいさんみたいです、まだ若いのに。 「何度目になるかわかんねぇけど、タキオンにはもう朝から投薬しにトレーナー寮に突撃してくんなって言っといてくれ」 「わかりました……モルモットさん!」 「おう」 私の言葉に反応して、モルモットさんは軽くジャブとストレートを放った。一般人の速さとは思えないパンチは風となり、ちょうど躓きかけていたスペシャルウィークさんの背中を押して体勢を整えさせます。 もうすでに一芸です。カフェテリアで拍手が響いています。 「ありがとうございます!ありがとうございます!」 「気にすんな!それより食いす……腹いっぱい食べろよ!」 「はい!」 スペシャルウィークは嬉しそうにトレーを持ってお友達のところへ向かっていきました。その間の私ですか? 何もしていませんよ? デリカシーのない発言が聞こえそうだったのでおバカなモルモットさんの足を踏みぬいた事実はありません。 「……痛ぇ」 「自業自得では?」

4 21/05/11(火)00:44:41 No.801527208

そこから暫く言葉は少なくても他愛ない時間を一緒に飲む。そのちょっとした二人の空間に私は満喫した。 しかし残念なことに今はお昼のラッシュ時。モルモットさんは時計に目を向ける。 「もう生徒で溢れてんな。飯の邪魔だし俺はもう行くぜ」 「……ご一緒します」 二人して立ち上がりカフェテリアを一度離れる。お弁当を渡さなくてはいけない関係上、私自身もこれ以上長居出来ない。遅れると煩いので。 廊下の分かれ道まで同伴するとモルモットさんはまたなと手を振ってくれた。彼の笑顔を眺めつつ、私も手を振り返す。 こんな私に屈託のない笑顔を向けてくれるのはこの人だけ。基本私は怖がられているで向けられるのは若干引き攣った笑み。 本人には絶対に言いませんが、私の活力になっているのは間違いありません。 これが私とモルモットさんの1日。本当に他愛のない平凡な私の日中になる。 はずでした。 「……モルモットさん!」 「てかさっきからスルーしてたけど俺はモルモットじゃねぇ」 「タキオンの相手をして……辛く、ないんですか?」 あっそこもスルーねと膝がガクッと折れるモルモットさん。今はジョークの場面ではありません。知ってますか?

5 21/05/11(火)00:45:07 No.801527342

頭を掻きながらため息をついた彼は、まぁなと答える。 少し意地悪な質問をしてしまった。これではまるで彼女とモルモットさんを契約破棄させようとしているみたい。 確かに私は彼女があまり好きではない。勝手に実験の被験者にしてこようとしたり、授業もトレーニングもしないのに私よりも前を走ったり。 文句や愚痴は上げだせばきりがない。だからと言ってこういうことが聞きたいわけではなかった。 しかし、彼の隣にいるあの子が心配そうな顔をしていたから、どうしようもなく聞きたくなったのである。まぁ彼女を出しにしたのは否定しません。彼のことは好きですし。 「あいつのやってることは確かに傍から見りゃやべーけどさ。あいつなりに誰かのために頑張ってんだよ」 「誰かの……ために?」 「聞いても自分のためだっつうけど。結局回りまわって誰かの明日に繋がってる。ウマ娘限定だろうが何だろうが、知らない誰かの力になるってんなら俺は実験も悪くねぇと思ってる」 真剣な瞳が私を見つめます。タキオンは狂気の目と言っていましたが、なるほど。これほど澄み切った優しい目は時に狂気を孕むと言っても差し支えないのかもしれません。

6 21/05/11(火)00:46:30 No.801527691

「俺はバカだから実験の内容はわかんねぇけどよ。あいつがほんとに必要だってんなら、いくらでも付き合ってやるさ」 「……タキオンが羨ましいです。貴方は優しい──」 「っといけねぇもう会議じゃねぇか。じゃあな!いつもタキオンの相手してくれありがとよ。シャカール達にも言っといてくれ」 「──はぁ、わかりました。お気をつけて」 再び現れた太陽はそう告げると廊下の先へと消えていった。私の呟いた小さな欲望は、貴方の耳に届いていたのでしょうか。 ふぅ、と一息を入れる。やはり片思いとはなってみると思った以上にスタミナが必要になりますね。さて 「そこで顔を真っ赤にしている栗毛の人、貴方の愛した人のお弁当ですよ」 「はぇっ……んんっ、やぁカフェ君奇遇だね。ここで会うなんて」 「どの口が言ってるんですか……早くお弁当一つ取ってください」 「何を言うんだ。モルモット君は私のトレーナーだ。全部私のだと思うのだが?」 「あげません」 「そんな全身全霊をくれないスペシャルウィーク君みたいなこと言ってないでそれを渡すんだ」 「あげません」

7 21/05/11(火)00:46:41 No.801527741

まぁ、彼がここにいる限りチャンスはあるでしょう。今は目の前の研究バカからお弁当を死守しなくては。

8 21/05/11(火)00:49:53 No.801528697

モルモット君がタラシすぎる…

9 21/05/11(火)00:52:04 No.801529316

NTRに発展しかねないじゃないかー!

10 21/05/11(火)00:52:57 No.801529570

>NTRに発展しかねないじゃないかー! してから言ってください…

11 21/05/11(火)00:54:17 No.801529910

万丈みたいなモルモットくんだな

12 21/05/11(火)00:54:22 No.801529928

以前日本ダービー控室のウオッカを書かせていただいた「」でした。 今回はスレ画でわかると思いますがウマソルジャー5を見てたら思いつきました。

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