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21/04/27(火)20:11:09 作業が... のスレッド詳細

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21/04/27(火)20:11:09 No.796961032

作業が一段落したらほうじ茶を出してくれた。先程の席で楽しむ。じっくりとお茶の温かさがじんわり広がると自然とお店全体に目が行くようになる。 一日の激務の骨休めしている店内は白い壁と屋根にまで走る黒い柱が日本らしい落ち着きを与える。 席を囲む高さにある壁にはお酒の宣伝から商店街のお知らせ、何人かのトレセンの選手達の写るポスターまで貼られている。しかし、天井近くの壁には時計以外目立った装飾はなく白い壁が続く。 「ここには色々な思い出があるな。」 「ええ本当に。あっしは今でも覚えていますよ。オグリさんが初めていらっしゃった日。」 「ああ、『あっし』なんて言う男の子には驚いた。」 若は照れるように巻かれた頭巾を掻く。 そうあの日からこのお店が好きになった。確か高等部に転入したばかりの頃。休日に少し散歩しようとしたら 迷ってしまった。あちらこちら歩き周っているとお腹がすいてしまって、匂いに引かれてこのお店に入った。 「いらっしゃいませ~。お一人さまで?お席にどうぞ。」

1 21/04/27(火)20:11:32 No.796961205

初めて接客してもらったのも若だった。あの日は食欲に身を任せてしまって、お店の食料を食べつくそうとしてしまった。そんなときに若が電話やメールで商店街や地元の農家さんに応援を要請して、危機を脱したのだ。 自分のしてしまったことに気づいた時にはテーブル4つにお皿の山ができていた。 若のご家族の苦笑いが忘れられない。 それでも若は嫌なせず、 「またいらして下さい。」 そう言ってくれた。その言葉通り次の月の休みにトレーナーの道案内でやってきた。 その時も若が接客をしてくれた。 「『芦毛の怪物』なんてその時は呼ばれたな。色々すまなかった。」 「こちらこそ申し訳なかったです。あんな食べる方初めてだったので。でもおかげで商店街とか  地域の人と一層仲良くなれたんですよ。それにオグリさんのトレーナーさんに会えて、 栄養について齧りはじめましたから。」

2 21/04/27(火)20:12:29 No.796961631

そう、トレーナーさんが何やら考えて料理を選んでいることに気づいた若が話し掛けてきた。 それであれこれと話して意気投合したのかすぐ 仲良くなった。私とも話し掛けてくれて仲良くなった。 私もトレーナーに言われて迷惑かけない程度に食べた。 あの日からもう私とトレーナーはここの常連になった。 それからは「予約して行くように」とトレーナーに言われ、毎月1,2回予約して行くようになった。 お店の方も準備できるようになって、私が満足できるほどの量を出してくれるようになった。 私は迷ってしまうから最初のころは向かえに来てもらってもいた。 開店する午前10時から昼の12時までがここで過ごす時間だ。 私は料理を食べながら若を見ていることが多かった。

3 21/04/27(火)20:13:13 No.796961986

若は接客以外もこなす。バイトの人がいれば厨房に立つ。若のニンジンハンバーグは絶品だ。大きく肉汁のあふれるハンバーグに優しいニンジンの味が包み込まれている。ワインを使っているらしいソースは肉汁とよく絡む。 他のウマ娘たちにも大好評だ。昼はそうやってから揚げ定食やら、みそ煮定食、ニンジン定食なるものまでも用意する。それにトレーナーに色々聞いたり勉強したりしているおかげで栄養バランスの良いメニューをいくつも考えていた。私の時は全部食べてバランスが良いよう用意されている。お腹と健康にやさしいお店だ。 夕方からお酒をだし、居酒屋として営業する。どしどし来るオーダーを対処する。 一度見たその若はどこか大人に見えた。それでもやはり若が一番輝くのは接客の時だ。 目が回るほどの注文を混乱させずに厨房へ通し、お皿を運ぶ。「お客さんを待たせない」、お店のポリシーだ。 そして「サービス、サービス。」の言葉通りに、 学生にはご飯大盛り、小さい子にはキャンディー、 お年寄りには荷物持ち、会社帰りの人にはフライを一つ、 と自然と体を動かす。

4 21/04/27(火)20:13:42 No.796962191

そして何より「あっし、あっし」と来たお客さんに声を掛ける。愛嬌というのだろう、皆若には話してしまう。 さらに若は一人一人の名前はもちろん仕事や趣味なんかまで覚え、趣味の合う人を引き合わせることすらしてしまう。トレセン学園の生徒達も「若」や「若大将」と呼びながら練習のことやトレーナーの事、 はたまた恋のことまで話してしまう。 若には恋人はいないそうだが、 他の人から惚れられたことはあったのではないだろうか。 「そういえばオグリさんの誕生日会もここで開いていただきましたね。」 「うん、妹さんと奥さんが作ってくれたケーキが美味しかった。」 「タマさんもいらしゃってましたね。お二人の食べっぷりといったらそらぁすごい。 タマさんのツッコミもなかなか鋭いもので。」 「楽しくて美味しかったな。それもいい思い出だ。」

5 21/04/27(火)20:14:06 No.796962379

すると、「そうだ!」と言う顔で若はまた席を立ち店の奥へと向かう。 戻ってくると3つの額縁が手にあった。 全てに蹄鉄が入っている。 もう飲み切ろうとしているほうじ茶を手にしながらその蹄鉄を見る。 「左の蹄鉄がオグリさんに初めていただいたものですね。いやあ、あの有馬記念は良かったですな~。  最後の直線のタマさんとの一騎打ち。どどどって地響きは忘れられませんよ。 ライバルとの友情、負けん気、維持の張り合い。いやいいレースだった。」 「ああ、ここでの祝賀会の時にプレゼントしたな。笠松の皆も参加してくれたのは嬉しかった。」 「パソコンを通してでしたがね。」 「それでも嬉しいものは嬉しい。」 「そう言ってもらえるとあっしも嬉しい。」 二人でしばらく蹄鉄を眺める。 そして少し迷ったが私は残ったほうじ茶を飲み干す。 目の前の蹄鉄から「言わないといけない」、と背中を押された気がしたのだ。 「大切な話がある、若大将。」

6 21/04/27(火)21:08:30 No.796982611

画像は変えました

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