ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/03/19(金)06:04:21 No.784720524
これはゆかりさん(19歳↑)がきりたん(11歳)となにかする怪文書となっています 前回のあらすじ 自覚
1 21/03/19(金)06:04:34 No.784720536
それから少しして、私がきりたんさんを手放すと彼女は少しだけ困惑したような顔をしながら、私の隣に座り直りました。 「何かあったんですか?」 そう言いながら、少しだけ心配そうな顔をする彼女に私は出来るだけ気取られないように作り笑いをします。 「ううん、何でも」 私の言葉にきりたんさんは少しだけ、首を傾げながらこちらの様子を伺いました。 「……もし、何か辛いことがあったら、後でも良いので教えて下さいね」 そう言ってこちらに笑いかける彼女に、私はただただ頷きます。 貴女のせいです、などとは言えず私はただ静かに彼女の言葉に嘘をつきました。 「ええ、分かっています」 分かっていても、言い出せはしないのですが。
2 21/03/19(金)06:04:45 No.784720555
「それにしても、ずん姉さまには失礼してしまいますね」 そんな事を言う彼女を私はただ眺めます。 「家では少しズボラなだけですのに、やんちゃだなんて」 そんな軽口を言う彼女を見ながら、私は少しだけ口を開きます。 「……きっと、きりたんさんを心配しているのですよ」 私がそんな事を言うと、彼女は少しだけ苦い顔をしました。 「そうですかね……」 そう言って変な顔をする彼女に、私は少しだけ憂鬱な気持ちになりました。 「きっと……そうですよ」 そう言いながら、私はまた彼女に対して少しだけ嫉妬心のような抱いていることに気が付きました。
3 21/03/19(金)06:04:57 No.784720566
「……そうですか、まあ、そうかもしれませんね」 そう言いながら、今一要領の得ない回答をする彼女をじぃっと眺めます。 「……きっと、そうです」 私はそう言いながら、彼女の頭を撫でました。 羨ましい、そういった気持ちの他にもやはり別の感情を抱いているのかも知れません。 ……きっと嫉妬だけなら、こうも撫でようとは思わないのですから。 「……それなら、いいのですが」 少しだけ心地よさそうに私に撫でられるがままの彼女を見ていると、不意にずん子さんがまた小さく笑いながらお盆にお菓子を載せて顔を見せました。 「あらあら、仲が良いんですね」 そう言いながら私達を見るずん子さんの姿を見て、きりたんさんは恥ずかしそうに私の手から離れました。
4 21/03/19(金)06:05:09 No.784720572
「と、友達ですから」 そう言いながらも、彼女は恥ずかしいのか少しだけ頬を上気させています。 「あらあらお熱い事で」 そう言いながら、ずん子さんはちゃぶ台の上にクッキーと、羊羹、それに練りきりを並べていきます。 「大したものではありませんが、ゆかりさんが持ってきて頂いたお菓子と一緒にお召し上がり下さい」 そう言いながら、彼女は濃い緑色のお茶をちゃぶ台に載せました。 「あ、いえ、ありがとうございます」 私はそう言いながらずん子さんに、お礼を返します。 「いえいえ、きりたんも親しい友だちが出来て嬉しいようですから」 ずん子さんがそう言うと、きりたんさんは少しだけムッとしたような顔をしました。
5 21/03/19(金)06:05:39 No.784720598
「ずん姉さま、まるで私に友達が居ないみたいな……」 彼女がそう言うと、ずん子さんは少しだけ苦笑いをします。 「でも、貴女友達何か余り連れてこないものですから、姉さんも心配していたのですよ」 彼女がいたずらっぽくそう言うと、きりたんさんは少しだけ苦々しい顔をしました。 「他の人は外で遊ぶのが好きですが、私は家で遊ぶのが好きなだけですよ」 そう言い返すと、ずん子さんはにこにこと笑いながら立ち上がります。 「それではゆかりさん、私は自分の部屋に居ますから、何かありましたらお呼び下さいね」 そう言うと彼女はお菓子を運んできたお盆を胸に抱えて、部屋を出ていきました。 彼女が立ち去ると、きりたんさんがはぁ……とため息をつきます。 「全く、お節介なんですから……」
6 21/03/19(金)06:05:51 No.784720614
そう言いながら彼女は運んでもらった練りきりを、皿に添えてあるケーキフォークで口に運びました。 「……そうは思いませんか?」 そんな事を言いつつこちらを見る彼女に、私は少し俯きながら口を挟みました。 「……そう、でしょうか」 私は耐えきれず、苦々しい顔を彼女に見せます。 「……ゆかり?」 「私は……羨ましいですよ」 ぽつりとそんな言葉を漏らすと、彼女はこちらを一瞥した後バツが悪そうに、そうですか……と私に言葉を返しました。 「……もし、もしですよ」 そうして彼女は、少しだけ口を開きます。
7 21/03/19(金)06:06:07 No.784720626
「もし、いつかゆかりの家族について聞きたいと言ったら、教えてくれますか?」 彼女の言葉に暫し俯きながら、私は困ったように眉を顰めます。 特に話すことはないように思えたからです、面白みも無いですし…… 「聞いても、つまらないと思います」 私がそんな事を言うと、きりたんさんはそっか、と言葉を漏らしました。 そういった彼女ですが隣の少女は不意に立ち上がり、俯いていた私の顔を両手で持ち上げながら口を開きます。 「でも、知りたいんです」 私はそんな彼女の真っ直ぐな目を思わず見つめるのに耐えきれず、目を少し背けてしまいました。 「……知って、どうしたいんですか」 らしくないな、そんな事を思いつつもつい彼女に否定的を投げ返してしまいます。
8 21/03/19(金)06:06:17 No.784720634
「ゆかり、貴女の家族も、また貴女の一部なのです」 「……だから、何だって言うんですか……」 私はそう言いながら、目を伏せますが彼女はそれでも私に言葉を投げかけてくれました。 「私はゆかりが知りたいんです、どんなことでも」 そう言いながらこちらを見る彼女の目は何処までもまっすぐで、私は暫し閉口してしまいます。 少しイライラするほどの真っ直ぐさ、愚直さと言っても良いのかも知れません。 どうして彼女はそこまで私に興味を持ってくれているのか……分かりません、何ででしょうか。 「……分かりました、いつか話しますよ」 私はそう言いながら、彼女の手を両手で剥がして顔を背けてしまいます。 「……ええ、ずっと待ってますから」
9 21/03/19(金)06:06:27 No.784720645
そう言いながら彼女はクッキーを一つ摘みます。 それから彼女はこちらを見て、にっこりと微笑みました。 「ゆかり、折角だから食べましょう」 そう言いながら私にクッキーを差し出す彼女に、私は渋々ため息を吐きながらそのクッキーを手に取りました。 「全く、強引なんですから……」 そんな事を言いつつ、私はクッキーを一口齧ります。 甘くて濃いバターの味と、口の中でほろほろと溶けていく食感。 「良いじゃないですか、友達なんだから」 そう言って、彼女はにぃっとこちらに笑いかけます。 「……全く」
10 21/03/19(金)06:07:26 No.784720697
そう言いながらも、彼女の頭を手でグリグリと撫で回しました。 どうしてそうしたのか、と言われると少し困ってしまうのですが、可愛らしさ半分、憎らしさ半分と言った所でしょうか。 「……それにしても、もう一人のお姉さまはまだ帰られないのですね」 私がきりたんさんにそう呟くと、彼女も少し首を傾げます。 「そうですねぇ……もしかすると、課外活動で忙しいのかも知れません」 そう言いながら彼女はにぃっとこちらを見ます。 「ゆかりはそういうのはやらないのですか?」 そう言ってこちらを見る少女に、私は苦笑いを零しました。 「活発ではないですから」 そう言うと、彼女はふぅんと小さく言います。
11 21/03/19(金)06:08:07 No.784720739
きょうはここまで 今日の:su4697539.txt 今まで:su4697541.txt とんでもない家族でしたね
12 21/03/19(金)07:36:51 No.784727221
ゆかりさんひとりで行ったら食われそうだな