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21/03/18(木)04:12:37 夕暮れ... のスレッド詳細

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21/03/18(木)04:12:37 No.784428216

夕暮れの中、川原沿いの土手を歩く二人。一人は肩からバッグを下げた女、もう一人の男の方が手にした袋には食料品がぎっしり詰まっている。 「シンジく~ん‥‥顔がにやけてるよ」 「え?ほんと?」 何かにふけっていたせいなのか、シンジは隣の女性がずっと自分の方に向いていたことすら気づかなかったようだ。 「なんかさ・・・・自分でも笑えてきちゃって。こういう風に誰かと生活したりする日が来るのかって」 「違和感があると。確かにこんないい女と一緒にいるっていうのはね」 「そうだけどそうじゃなくて。父さんと離れて暮らしてからずっと‥‥ってほどじゃないけど、どうしてこんなに苦しいんだろう、どうしてこんなにいきなり戦ったりしてるのかなって。普通の暮らしってどんなのだろうなって思ってたんだ」 夕時の風が、やや強く二人の髪をなでる。遠く地平線のむこう、夕陽の沈む場所を眺めながらシンジは続ける。 「だから、いざこうやって穏やかっていう感じに過ごしてるの、すごい不思議なんだ」 遠くで響くチャイム、土手下の原っぱで遊ぶ子供たちの声、帰り道を歩く二人の足音。そんなありふれた音をかみしめるようにシンジは目を閉じた。

1 21/03/18(木)04:13:07 No.784428240

「あとはマリさんの夕飯の献立を考えたりとか。昔を思い出すと、ちょっと面白くってさ」 改めて見つめ返すシンジの顔にオレンジの照り返しがかかる。少しまぶしそうに顔をしかめるマリ。 「君だって十分まぶしいよ」 夕陽の前を突っ切る電車が横切った。かき消されそうなマリのつぶやき。 「え?」 「私も普通が何かなんて分からないな。いい女だけど、きみが笑っちゃうような過去とかあんまりないよ」 「マリさんは僕を助けてここまで連れてきてくれたよ」 「私は笑っちゃうより、ほんとは少し怖いくらいなんだ」 誰もいない自分の側面をかばうように、マリが左手を右手に寄せる。 「私を知っている人、みんないなくなったし」 「僕がいるから」 矢継ぎ早に思いを吐き出す度に、だんだんとマリはうつむいていく。 「君だって、私を知らないだろ」 決定的な一言を口に出してしまった、と唇をかみしめる。春を迎える前の風が、彼女の体に重く、冷たくまとわりついた。

2 21/03/18(木)04:13:56 No.784428267

「・・・・・知ってることか」 沈黙を破るように、ぽつりとシンジが切り出す。 「あるよ、メロディーだけだけど」 そのまま鼻歌を歌い始めた。やや驚いた顔で隣の青年が歌うメロディーを聞いていたマリ。 やがて、そこに乗せて自分も鼻歌で歌いだす。ゆったりとしたメロディーに歩調を合わせ、二人の歌声が重なる。曲調が変わっていく度にマリの表情はほぐれ、サビに行く頃には小さなほほ笑みが見えた。 「覚えてたんだ、その曲」 「わりとよく聞いてたし覚えたかったから。マリさんが好きな曲なら僕も知りたいって思って」 「‥‥君は真性のモテ男だにゃあ」 「え?」 「なんでもないよ」 先ほどシンジが歌ったの曲は1972年、天地真理のナンバー、『ひとりじゃないの』。無自覚ならあまりにも出来過ぎたチョイスだ。 「普通になれないなら、一緒にこれからそうなっていけばいいと思う。ダメなときはマリさんと一緒にそっち側に行くし、僕もマリさんのこと知っていくから」 シンジがマリに微笑みかける。いつの間にか体を包んでいた冷たい重さは、隣に佇む彼へと背中を押してくれる風になり、自然とそちらに向き合えるようになっていた。

3 21/03/18(木)04:14:26 No.784428294

「言うねえシンジ君。だったら私は今度歌を教えてあげるよ。なにせ私は歌声までいい女だか‥‥ふぇ、へくちゅ!」 大きくくしゃみをしてしまった。突然のことで、顔をそむけることも手で押さえることもできないまま、しぶきがべっとりと隣の彼にぶち当たる。 「にゃああ!ごめん、シンジ君!」 「いいよ、全然大丈夫花粉症かもね、マリさん。また一つわかった」 顔をぬぐいながらひきつった笑顔を浮かべるシンジ。 「そういえばマリさん、なんか目も赤いし鼻もぐずぐずしてるね」 「た、確かにこれは花粉症なんだにゃあ」 「これからのことを考えると車とか僕も買った方がいいかもなあ」 「まさか3人目のこと考えてる?気が早いにゃあシンジ君は。今夜も激しくなるにゃあ」 「そんなことまで考えてないよ!?」 「ん~でも、いろんな場所を歩きながら君の匂いを感じるの、結構好きなんだよね」 「えっ」 喧噪を続ける二人の長い影が背後に伸びている。先ほどまで逆側に置かれていた右手はいつのまにかそこをはなれていた。距離を確かめ合うように探り合うように弄び、今度は隣に立つ青年の左の手を握った。

4 <a href="mailto:sage">21/03/18(木)04:14:47</a> [sage] No.784428312

夜も更けようというのにお目汚し失礼しました 寝ます

5 21/03/18(木)04:17:05 No.784428411

おはよう ありがとう おやすみ さよなら

6 21/03/18(木)06:02:46 No.784432704

>「そういえばマリさん、なんか目も赤いし鼻もぐずぐずしてるね」 >「た、確かにこれは花粉症なんだにゃあ」 泣いたなコイツ

7 21/03/18(木)06:46:44 No.784434806

シンジ大人になれなんて言わないからその女だけはやめておけ…

8 21/03/18(木)06:47:45 No.784434861

>シンジ大人になれなんて言わないからその女だけはやめておけ… 父さんが大人になれよ!

9 21/03/18(木)06:51:15 No.784435063

大人シンちゃんのジゴロ感なんなの…

10 21/03/18(木)06:52:38 No.784435146

>大人シンちゃんのジゴロ感なんなの… 良いだろ?神木くんの声だぜ?

11 <a href="mailto:sage">21/03/18(木)06:53:52</a> [sage] No.784435212

起きて見直すと語彙と台詞の乱れが酷い 今までのぶんも訂正とかまとめてあるからいずれあげ直したい

12 21/03/18(木)07:29:07 No.784437851

台所仕事やってるシンちゃんの背中に乙女な感じの視線向けて ゲンドウにそういう態度取れたのか君って言われてそう

13 21/03/18(木)07:40:06 No.784438760

ひとりじゃないのいいよね…

14 21/03/18(木)07:41:58 No.784438919

>台所仕事やってるシンちゃんの背中に乙女な感じの視線向けて >ゲンドウにそういう態度取れたのか君って言われてそう かわいい男といい男を見る目は違いと言うことだよゲンドウ君

15 21/03/18(木)08:04:57 No.784441135

朝からいいもの見れた ありがとう

16 21/03/18(木)08:43:09 No.784445561

いいじゃないか…!

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