21/03/13(土)12:02:00 この怪... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
21/03/13(土)12:02:00 No.782949024
この怪文書はゆかりさん(19歳↑)がきりたん(11歳)となにかする怪文書となっています 前回のあらすじ きりたんがゆかりに今日の感想を聴きました
1 21/03/13(土)12:02:10 No.782949067
プラスチック製のまな板の上に並べられた春野菜や、お肉が転がっていました。 隣の少女が包丁を水で軽く浚って、並べられた食材の内半玉分のレタスを手にとって、包丁を入れます。 小気味の良い、食材を割く包丁の音に耳を傾けながら、私は彼女が野菜を刻むのを眺めます。 「ポトフというからには、ソーセージと言う人もまあ居ますが……今日はブロック肉を使いますよ」 そんな事を言いつつ、ザクザクと音を立ててレタスに包丁を立てる彼女が言いました。 「そうなんですか?」 私がそう言うと、彼女は頭を少しだけ縦に振ります。 「ええ、寧ろ我が家ではブロック肉で煮るのが主流でしたから」 そんな事を言いながら、彼女は切り分けた野菜を掴んで洗い場に置いたお鍋に入れていきました。 「美味しければそれで良いのです」
2 21/03/13(土)12:02:22 No.782949106
そう言いながら、彼女は固形のブイヨンも入れて水を鍋に少し浸します。 「……今日は野菜多めで」 彼女は水洗いしたトマトの茎を手で抉り包丁で十字に切れ込みを入れてから、水を入れたフライパンの上に置いて火を掛けます。 「トマトはお鍋でそのまま煮ないの?」 私が尋ねると、きりたんさんは軽く笑いました。 「一手間が大事なんですよ」 それから彼女はまた、ブロッコリーを手で一口大に千切ります。 「ポトフは元々はクズ野菜の集まりを、何とか美味しく食べるための手法でした」 「そうなんですね」 「ええ、元々は一般的な家庭料理で、適当な材料を煮込んで食べやすくしたものですから」
3 21/03/13(土)12:02:36 No.782949150
そんな事を言いながら、彼女はプロッコリー、セロリ、人参、玉ねぎを一口大に切ってはお鍋に入れていきます。 「トマトは隠し味、でも出来るだけ形は残したい」 そう言って彼女はブロック状の牛肉の端の油を包丁でさっと切り落とします。 「脂身と赤みは切り分けて、バラバラにして入れます」 ブロック状のお肉と薄い板状になった脂身を、包丁でさっさと彼女は刃を入れてこれまた一口大に切り落としました。 「脂身が多ければ少し味がくどくなってしまいますから、脂身は少しだけ入れて残りは明日以降の調理に使いましょう」 そんな事を言いながら、彼女は切って分けた脂身の幾つかをサランラップで巻いてから、タッパーに入れます。 「……色々、考えて作るんですね」 私がそう言うと、彼女は少し苦笑いをしながら鍋に少しの脂身だけを入れて火にかけます。 「折角なら美味しく食べたいじゃないですか」
4 21/03/13(土)12:02:47 No.782949199
そう言って苦笑いをする少女に、確かに言われてみればそうかと私は頷きます。 ……でも余り考えたことも無かったな、とも思いました。 「お肉は、まだ入れないのですか?」 中火で煮込まれる鍋を見ながら、私がそう言ってきりたんさんに尋ねます。 「ええ、脂身と野菜は煮込めば解れますが、この水分量ですとお肉は少し硬くなってしまいますから」 そう言って彼女は鍋に一度蓋をしました。 私は彼女がフライパンで軽く煮ているトマトをひっくり返すのを見ながら、頭を傾げます。 「それで……このトマトは?」 また私が尋ねると、彼女はフライパンの上のトマトを何度かひっくり返しつつ、口を開きました。 「これは……この後、皮を剥きます」
5 21/03/13(土)12:03:26 No.782949342
そういって、彼女は流し台にザルを置いて、フライパンで煮たトマトを流しました。 温まったトマトの皮は、少しだけ縮んでいるのか、ザルの上で切り込みに沿って皮から中身が見え隠れしています。 そこに今度は冷水でトマトを優しく冷やしつつ、きりたんさんはトマトを手で掴んで皮を向いていきます。 「トマトは……まあ、苦手な人も多いものです」 そんな事を言いながら、彼女が皮を切れ込みに沿って指で剥いていきました。 一度、二度、三度……彼女は丁寧にトマトの皮を向いていきます。 「それは何故か、ゆかりはどう思いますか?」 そう言って彼女はこちらを一瞥しながら私に問いかけます。 「……そうですね、皮が厚く、食べづらいからですかね?」 私がそう言うと、彼女はふふふ……と小さく笑います。
6 21/03/13(土)12:03:48 No.782949424
「それもあるかもしれませんね」 「それも、ですか」 私が興味深そうに彼女の言葉を繰り返すと、彼女は小さく頷きました。 「少し考えてみて下さい、トマトをそのまま食べると言うことについて」 「生のママ、ですよね」 「ええそうです、考えてみればとても不思議ではないですか?」 そう言って少し考えてみますが、少し考えてみると不思議では無いように思えました。 冷やしたトマトを齧ったり、生の野菜と一緒に切り分けて見たり、そういう食べ方は一般的な食べ方なような気がしたからです。 「……そうですかね、冷やしたり、生で齧ったり……」 私がそう言うと、きりたんさんはまた笑いました。
7 21/03/13(土)12:04:11 No.782949522
「ふふふ……本当にそうですかね?」 そう言いながら、彼女は皮を向いたトマトを私に見せつけます。 皮を向いたトマトからは、薄く朱い液体が彼女の指へと滴っていました。 「トマトが伝わったのは、西洋からです」 そう言いながら彼女は鍋の蓋を掴んで、皮を剥いたトマトを入れます。 指についた汁を口で吸いながら、彼女は言葉を続けました。 「でも不思議ではないですか、西洋の彼らはトマトを料理に使いはしますが、生で齧るなんて聞いたことありますか?」 そう言ってもう一つトマトの皮を剥きながら、私はそういう彼女の言葉を考えます。 「ですが、生トマトをモッツァレラチーズで挟む料理もあるでしょう」 そう言いながら首を傾げると、きりたんはまた小さく笑います。
8 21/03/13(土)12:04:21 No.782949561
「ですが、それも調理ではないですか?」 そう言いながら彼女は、トマトの皮を剥きます。 言われてみれば、確かにそんな気もします。 「そう、トマトこれは大体は調理されている筈です」 そんな事を言いながら、トマトの皮を剥いた彼女はまた鍋の蓋を開いて、中にトマトを入れます。 「何で生のトマトなんか食べ始めたんでしょうね」 そう言いながら、彼女はこちらを見て笑います。 「それでも、生で食べるのが好きだったのでは?」 私がそう言うと、少女が首を傾げました。 「それとも、彼らにとって生で野菜を食べるのが普通だったからか」
9 21/03/13(土)12:04:41 No.782949647
そう言いながら彼女は切った野菜を煮込む鍋の中身を見ます。 「うん……もう少し煮込んだら、お肉を入れましょう」 きりたんさんはそう言って鍋の中を菜箸で少しだけかき回しました。 その中身を覗き見ると、鍋の中では水と溶けたブイヨンに合わせて野菜の汁が少しずつ合わさって水のカサを増しています。 それにお肉の脂身と、ブイヨンの美味しそうな匂いに私は目を細めます。 「……随分、美味しそうな匂いですね」 鍋の匂いを楽しんでいると、きりたんさんはくすりと笑ってこちらを見ました。 その目は私を見ながらにっこりと微笑んでいます。 「美味しそうでしょう」 そう言いながらこちらを見る彼女に、私は頷きます。
10 21/03/13(土)12:04:52 No.782949681
「それなら良かった」 私はそう言ってこちらを見る彼女に言葉を返します。 ですが、私はふとそんな彼女に疑問を投げかけました。 「どうして、きりたんさんは生のトマトに違和感を?」 私がそう言うと、彼女はこちらを見ながら笑います。 「何かと合わせて食べたほうが、どう考えても美味しいじゃないですか」 そう言って彼女は微笑む。 「そんな事ですか」 少し呆れたように言うと、彼女は目を細めながらこちらを見ます。 「そんな事、ではありませんよ」
11 21/03/13(土)12:06:31 No.782950037
きょうはここまで su4679682.txt きりたんさんは何であそこで止めたんでしょうね PS:遅れて申し訳ない……
12 21/03/13(土)12:07:36 No.782950277
ありがたい…