20/12/26(土)00:56:05 苦労の... のスレッド詳細
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20/12/26(土)00:56:05 No.758656716
苦労の後に待つ楽しみは格別。 もう仕事とか考えたくもないくらいヘトヘトになった後なら、尚の事。 きっと、皆もそうなのだろう。 私達だけしか居ない筈なのに、いつにも増して騒がしく感じる。 「魅ぃちゃん魅ぃちゃん!このトナカイスーツ着て!着て着て!きっとかぁいいよぉ~!!」 「えぇ!?ちょっ、誰よレナにシャンパン飲ませたの!?ちょっとレナ、落ち着い」 「はぅ!はぅ!はぅううううう!!」 「へぶっ!?ぐへ!?ぎゃあああああ!?」 身内が盛大に巻き込まれた喧騒に苦笑いしながらも、ケーキを一口。 ……甘くて、美味しい。 「ん~~~!」 真っ白なクリームと柔らかいスポンジ。それらが合わさって、一日の疲れがとろりと溶けていく。 そんな相乗効果があまりにも味わい深くて、深い溜め息が一つ。 そして、もう一口頬張る。美味しい。
1 20/12/26(土)00:56:15 No.758656790
クリスマス。ここエンジェルモートにおいては、一番のかき入れ時であるこの日。 そこで溢れんばかりに迫り来る大量の仕事を終えた私達への、特別なご褒美。 そして、年少組が行く筈だったパーティーが騒ぎで潰された分も含めて。 頑張った私達と小さな子供達の、お店貸し切りご褒美パーティーだ。 「ねー、一穂は次何のケーキ食べる?和食好きだしライスケーキ?」 「え!?あるの!?」 「ちょっと一穂、乗らないの。センスの無い冗談だから」 レナさんに巻き込まれない程度に離れた場所で、話している三人。 あの三人……特に一穂さんと美雪さんには、お姉共々とても助けてもらった。 ……いいや、彼女達だけじゃない。 今回もなんだかんだ助けてくれた誰かさんの事を考えながら、頬杖をついて窓の外を見やる。 見つめた雪降る外の歩道に、見慣れた姿。 ……本当に。あの男は何をやっているのだか。 「ちょっと夜風に当たって来ますね~」 念の為少し出る旨を小さく残して、店の外へ出た。
2 20/12/26(土)00:56:39 No.758656903
私が店を出ると、眼下に立っていた目的の男は大袈裟に慌てだす。 両腕で顔を隠して、何事も無かったようにこそこそと歩き出そうとしている間抜けっぷり。 「……何やってんですか、圭ちゃん」 あまりにも見っともなさ過ぎて、一瞬声をかけようか迷ってしまった。 「いや!俺は通りがかっただけ……って、詩音?」 大方、私をお姉とでも見間違えたのだろう。 腕の間から様子を伺うように顔を出した圭ちゃんは、私を視認してようやくヘンテコな構えを解いた。 「もう……ボンヤリ見上げてるもんだから、気になって出てきちゃったじゃないですか」 「ハハ……わりぃわりぃ」 頭を掻きながら、苦笑い。本当に悪いと思っているのだろうか。 人が寒空に出てきたというのに、反省している様子が見られない。まったく、圭ちゃんというヤツは。 「……アイツ等、楽しんでるか?」 ……どう弱味を突っついてやろうかと考えている私に、そんな質問が飛んできた。 ちょうどいい。混ざれていない圭ちゃんに痛い目でも見てもらおう。
3 20/12/26(土)00:56:54 No.758656967
「えぇ、楽しんでますよ。もうこれ以上無いくらいワイワイやってます」 意地悪い笑顔を浮かべ、言い放ってみせる。 私の知る前原圭一は、これくらいで本気で悲しむほど脆い男ではない。 なので。思いっきり突っついてみて、渋い顔をさせてみようか。 「……そっか」 ……なんて、思っていたのに。 返ってきたのは、優しい笑みと安堵だった。 ……本当に、圭ちゃんというヤツは。 「……今は仮装用の衣装とかありますし、マスクでも着けて混ざっちゃいます?」 「いや、いい。様子見に来ただけだからな」 差し伸べた救いの手は、即答で振り払われてしまう。 ……違う。今のは悪手だった。 卑怯を何よりも嫌う彼は、そんな事で輪に入りたくはないだろう。 ……私の知る前原圭一は、そういうヤツだ。 そういう、不器用な人だ。真っ直ぐな人だ。
4 20/12/26(土)00:57:14 No.758657078
「はぁ……じゃあ圭ちゃん、今夜は一人寂しくクリスマスですか」 「うぐっ……まぁ、家で適当にチキンとケーキにでも食らいつくよ……」 む。思わずポツリと零した言葉に、顔が引き攣る圭ちゃん。 ……目標、達成? なんだかスッとした胸に、どこか機嫌が良くなっていくのを感じる。 「圭ちゃん、メリークリスマスって祝い合う人も居ないんですね……」 「い、いや!!母さんと親父が居る!!」 圭ちゃんが叫びと同時に浮かべた自信有り気な笑顔を、真顔で見つめる。 「……」 見つめる。降りしきる雪よりも冷ややかに、見つめる。 「……あぁあああ!!やめろ!そんな目で見るな!!わぁったよ家族ノーカンなら居ねぇよぉ!!」 勝った。実に気分が良い。 雪の上で地団駄踏む圭ちゃんが面白くて、浮かんでしまう笑顔。 笑う私に気付いたのか、少しムッとした圭ちゃん。 だけど、それは一瞬。すぐに笑顔へと変わり、二人笑い合う。
5 20/12/26(土)00:57:28 No.758657139
なんだか、楽しい。そこで今も騒いでいるパーティーの中に居た時とは、違う楽しさ。 胸をくすぐる、こそばゆいような……でもここに居たくなるような、楽しい。 「圭ちゃん」 「ん?」 そんな楽しさに、浮かれてしまった。 ……ちょっと、興が乗っただけ。だから。 「メリー、クリスマス」 ……驚きに開かれた目を見ていると、何故だか無性に恥ずかしい。 「じゃあ私、戻りますね!ここ寒いですし!皆さんも待ってますでしょうし!!」 それに耐えかねた。圭ちゃんに背を向けたのち口早にそう告げ、階段を登る。 私は、なんで言ったんだ。もっと茶化してやればよかったのに。真正面からなんて、恥ずかしいマネを。 心の中をグルグル渦巻く、疑問と羞恥。何故とどうしてが止まらない。 「……メリークリスマス、詩音」 ……言うのも、聞くのも。私一人だけなら、良いか。 後ろから届いた言葉を根拠に、バクバクうるさい自分の心へそう結論づけて。扉を開けた。
6 <a href="mailto:s">20/12/26(土)00:57:44</a> [s] No.758657214
ちょっと遅刻したのですよあうあう
7 20/12/26(土)01:01:35 No.758658301
命の圭詩いいよね…
8 20/12/26(土)01:07:08 No.758659855
いい…
9 20/12/26(土)01:09:50 No.758660636
命の怪文書だと!
10 20/12/26(土)01:11:45 No.758661235
キテル…
11 20/12/26(土)01:16:29 No.758662679
なんでこんな時間に 運良く見れたからいいが見逃すところだった ありがとう
12 20/12/26(土)01:29:23 No.758666318
乙女か?
13 20/12/26(土)01:32:33 No.758667217
楽しげなかつての仲間を見守る圭ちゃんいいよね…
14 20/12/26(土)01:37:30 No.758668366
記憶継承圭ちゃんだからハブられても腐らない
15 20/12/26(土)01:50:38 No.758670778
命だと圭一はぶられてるの…?
16 20/12/26(土)01:53:41 No.758671250
村から追い出されてる