虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

20/11/12(木)11:42:53 No.745429287

いつからか、崖が見えるようになった。 断絶の奈落は、誰かとの間にいつも拡がっていて。わたしはいつもひとりだった。 それがイヤだと思えるようになったのは、アイドルになれたから。愛依ちゃんに、冬優子ちゃんに、プロデューサーさんに会えたから。何度も何度も落ちては跳んで、こっち側に来てくれる人達が居てくれたから。 「……愛依ッ！もっかいやるわよ！」 「お、おっけ～！」 その痛ましい努力の成果が、見たくもないのに見えてしまう。 息が上がっている。リズムがずれている。ステップが歪んでいる。これ以上やっても、絶対にこの崖は越えられない。 なのに頑張り続けているから、わたしの大事な人の身体はどんどん傷付いていく。 「大丈夫、心配いらない。必ず、全員での仕事を取ってくる。……俺が、もっと頑張るから」 目の下の隈が濃くなっている。コーヒーの量が増えている。スーツがくたびれている。 なのに挑み続けるから、わたしの大事な人の心はどんどん痛んでいく。 だからわたしは一人で飛ばないといけない。もっと早く、どこまでも遠くへ。 誰も彼もが追い掛ける事を諦める彼方まで。 大切な人達が、どうか、安らかに過ごせるように。