20/06/06(土)20:18:26 ローラ... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1591442306839.jpg 20/06/06(土)20:18:26 No.696932226
ローラントの玄関口、漁港パロ。 この街では現在、ある噂が飛び交っていた。 「…ああ、俺も聞いたよ」 「あの王女様がねぇ」 風の王国ローラントの王女が、婚約したというのだ。 別にそれ自体はおかしな話ではない。ローラントがナバール盗賊団によって壊滅的な打撃を受けたのは人々の記憶に新しく、そして王女を中心として生き残ったアマゾネス達が復興の為に東奔西走しているというのも、パロに住む者であれば誰もが知るところだ。 王族の婚姻に政略が絡むのは世の常であり、このタイミングでの婚約となれば尚更だろうと、誰もが納得するはずだった。 「なんでも、お相手はどこぞの資産家だとか」 「リース様より年上らしいわね」 「ああ、やっぱりそういうことなのか…」 国家の復興事業ともなれば、なにをどうしたところで資本の確保に走らざるを得ない。パロの市民達は多少の同情を覚えつつも、仕方のないことだと割り切っていた――のだが。 「大丈夫なのか? なんか、タチの悪い連中と繋がりがあるって聞いたぞ?」 「女癖が悪いとも聞いたよ。それに資金をどこからどこに流してるのか、よくわかってないとかなんとか」
1 20/06/06(土)20:19:02 No.696932439
「獣人とも付き合いをしてるらしいわね。獣人って、あのビーストキングダムの連中でしょう? アスなんとかって村を滅ぼした…」 噂が噂を呼び、人々の間には会ったこともない王女の婚約相手の姿が形作られていった。時間と共にそれらは凡そ好ましからざる像を結び、やがて街には王女に対する同情的な空気が流れ始めた。 そして噂が広まれば、それは当然ローラントにまで広まり―― 「…なんて噂が流れてるそうなんです」 「なるほど、悪意は一見を越えるとはよく言ったもんだ」 麓の街に広がる噂話の内容を不機嫌そうに伝えるリースに、ホークアイはどことなく興味深げに応えた。 が、そのリアクションは王女の望むところではなかったらしい。 「感心してどうするんですか。まったく、どうしてこうなってしまったんでしょう」 「いやあ、でも聞いた限り、そんなに的外れな噂ってわけじゃないんじゃないか?」 リースが直接聞いたのではなく部下からの報告なのだろうが、それらを一つずつ検証すべく、ホークアイは指を一本伸ばして見せた。 「まず、リースより年上だっていう点。一歳だけだけど、年上には違いない」 「…ですね」
2 20/06/06(土)20:19:37 No.696932683
リースが不承不承といった様子で頷く。ホークアイは二本目の指を伸ばし、 「どこぞの資産家、なんて言い方をされてるのは、まだそんなに名前が知られてないからだろうな。実際のところ商売を始めてそんなに時間が経ってるわけじゃなし、無理もない」 「まあ、それもわかります」 三本目を立てる。 「政略結婚としての側面があるのも事実だ。リースだってそれは認めてただろう?」 「そう、ですけど…」 「そもそも、そこの問題をどうにかするためにニキータに頼んで、あいつの仲間達にまで力を貸してもらったんだ。俺としてはむしろ、政略結婚でもあるって胸を張って自慢したいくらいだね」 「自慢…に、なるんですか?」 怪訝そうな表情を見せるリースに、ホークアイは敢えて答えず四本目の指を伸ばした。 「タチの悪い連中ってのは、どう考えてもナバール盗賊団のことだろう。表向きには緑化活動の支援って事になってるけど、商売を始めたもう一つの理由は、資金面でナバールの柱になることだったわけだし」 「確かに、あなたとニキータさん以上の適役はいなかったでしょうね」 「商売に関しては、正直まだまだ勉強中かな。ニキータ達に教わってばかりだ」
3 20/06/06(土)20:19:54 No.696932780
「でも旅をしていた頃から、武器や道具の目利きには長けてましたよね?」 「ああ、そこはほら、長年の盗賊生活のおかげかな。もちろん、そんな経歴は伏せるしかないんだけど」 そのおかげで若干の胡散臭さを商売相手や周囲の人間に感じ取られたとしても、甘んじるしかない。 「女癖に関しては…」 「否定のしようがありませんね」 「…特定の相手以外に、本気になった事なんてないんだけど?」 「あなたはそのつもりでも、相手の女性がそう受け取らないという可能性を考慮してますか? してませんよね?」 「説得力があり過ぎて反論の余地がないなぁ…はい、今後は控えます」 ずいっと顔を近づけてきたリースになにやら不穏なものを感じ取り、ホークアイは全面的な降伏を余儀なくされた。まあ自業自得だと思っていないわけでもないのだが。 「獣人達とは確か、ニキータさんを通じての縁でしたか?」 「ああ。と言ってもビーストキングダムを飛び出した奴らであって、人間社会に理解を示そうとしてくれてるよ。商売を手伝ってくれてるのも、その一環だ」 「ケヴィンの努力が実を結んでいるんですね…良かった」
4 20/06/06(土)20:20:06 No.696932865
リースの眉が元の形に戻ったのを確認してから、ホークアイは手を引っ込めた。 「うん、やっぱり概ね事実じゃないか。知らない相手の噂ともなれば多少の悪意が乗るのは仕方のない事だし、ほとぼりが冷めるのを待つしかないと思うよ?」 「そうなんですけど…でもやっぱり、一番肝心な部分を誤解されてるのが、嫌なんです」 「肝心な部分?」 尋ねると、リースは胸の前で両手を握り――力説した。 「私が望んでいない形での婚約だと思われているところです! そこだけは絶対に譲れませんよ!」 「ああ、そんな事か」 むっ、とリースが拗ねたような視線をホークアイに向ける。 だがホークアイは構わずに続けた。 「それなら話は簡単だ。実際に民の前に姿を現して、その幸せそうな顔を見せてやればいい。多分、それでみんな納得するよ」 「え」 リースが言葉に詰まる。そのまま、なにやらもじもじと顔を逸らし、 「そ、そんなに…幸せそうにしてますか? そんな顔に見えちゃいますか?」 「ああ。そんな顔をさせているのが俺だと思うと、誇らしくなるくらいには、ね」
5 20/06/06(土)20:20:16 No.696932936
旅の後はニキータと商売でもやってそうなホークアイを怪文書にしてみました なんかローグ姿のホークアイは商人っぽさがあると思ったので
6 20/06/06(土)20:26:32 No.696935553
素敵じゃないか
7 20/06/06(土)20:37:09 No.696939746
いきなり素敵なホークリ怪文書に出会えて困惑してるぞ俺
8 20/06/06(土)20:59:09 No.696948226
ホークリ怪文書嬉しい… もっと欲しい…
9 20/06/06(土)21:08:47 No.696952113
ホークリ怪文書もっと増えてほしいよね…