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20/05/18(月)20:52:35 No.690626404
「成程ね、モールベアの高原の向こうか」 「は、はい。地元の人間でもあまり近づかない場所なので、確かとは言えないんですが…」 「いや、貴重な情報だったよ。ありがとうお嬢さん。このお礼は、戻った時に必ず」 「そんな、お礼だなんて…」 「遠慮はしないでくれ。特大の宝石を持ち帰ってくるからさ」 「ほ、宝石ですか…!?」 「宝石の谷に行くんだ。他に相応しいお土産なんてないだろう?」 「そうかも、しれませんけど…」 「――まあ、大した手際よね」 カウンター席でのやり取りを少し離れた位置のテーブルから眺めつつ、アンジェラがぽつりと漏らすのが聞こえた。 「役に立ってるからいいけど…あいつ、よく平気で夜道を歩けるわね」 月のない夜とか、と続けてくる。少し意味がわからなかったけれど、彼女はなにかが気に入らないような口振りだった。デュランがいないからだろうか?(彼は酒場に顔を出すのが気まずいらしく、宿屋で待機しているのだ。自分の故郷なのに)
1 20/05/18(月)20:52:58 No.690626568
ホークアイが立ち上がり、店を出ようとするのが見えた。それにあわせて私達も席を立つ。 その間際に、私はちらりとカウンターの方へ視線を向けた。先程までホークアイと話していた女性の姿を見る。 …彼が去っていった扉に、なんとも形容し難い目線を送っていた。 首尾よく望んでいた情報を手に入れた私達は、デュランの待つ宿屋へ向かうことになった。なった、のだけれど。 「あの…先に、行っててもらえますか?」 その途中で、私は皆にそう告げると、踵を返した。道を戻り、酒場の方へ歩いていく。 頭の中にあったのは、酒場でのホークアイの言葉だ。戻った時に、と言っていた。 ――そんな余裕は、恐らくない。宝石の谷で神獣を見つけ、そして撃退に成功すれば、そのまま次の目的地へ直行することになるだろう。 彼がどんなつもりで口にしたのかはわからないけれど、あの女性が約束を信じて待ち続けるようなことがあったら、こちらとしては心苦しい。だから、先に謝っておくべきだ―― と思っていたところへ。 「ちょっとまつでち」
2 20/05/18(月)20:53:26 No.690626789
背後から呼び止められ、私は足を止めて振り返った。見知った姿が二つ。 「シャルロットちゃん? ケヴィンも、どうしたの?」 「それはこっちのせりふでち。リースしゃん、どこにいくつもりでちたか?」 「え? いえそれは、さっきの人に――」 「あー、やっぱりでちか。わるいよかんがあたったでちね」 私の返答に、彼女は大仰な仕草で自分の額をぺちんと叩いた。見ていられない、とでも言いたげに。 「あんたしゃん、あれでちょ? さっきのおんなに、くぎをさしにいくつもりだったんでちね? ホークアイしゃんのいったことをほんきにするな、って」 「あ…えっと、それは」 少しばかり、言葉に詰まる。当たっているような、少しニュアンスが違うような。
3 20/05/18(月)20:54:04 No.690627064
二の句を告げないでいるうちに、彼女はぴしりとこちらに指を突きつけ、 「いいでちか、リースしゃん。じぶんがやろうとしてること、よーーーっくかんがえるでち。おちついて、れーせーにかえりみるでち」 「?」 「まえにウェンデルにも、そういうてあいがそうだんにきたのでち…かれのほんめーはじぶんなのに、ほかのおんながかんちがいしてこまる。どうやってあきらめさせたらいいか、みたいなおんなが」 「…っ!?」 これ以上なく唐突にそんなことを告げられ、私の思考は停止した。え…なに? なんて言ったの? 本命? ってなに? 無意味に空転するこちらの思考を置き去りに、シャルロットは続けてくる。 「まあそのときはヒースが、シャルロットにはこういうはなしはまだはやいって、それいじょうきかせてくれなかったんでちが…リースしゃん!」 「は、はい!?」 「おなじおんなとして、そういうみっともないまねはやめたほうがいいとちゅーこくしておくでち!」 「!!?」
4 20/05/18(月)20:54:25 No.690627237
がつんと。 それはもうがつんと、盛大に頭を殴られたような気分だった。思考が停止するどころじゃない。意識が体内からどこか上空へと離脱していくような、そんな感覚に近かった。 みっともない…女として、みっともない… 「…あれ? でも確かシャルロットも、ウェンデルにいた女の子に――」 「うるさいでちよケヴィン! こまかいことおぼえてるんじゃないでち! とにかく! リースしゃんはもどってホークアイしゃんをみはってるでち! あとではなしがありまちから! さっきのおんなには、シャルロットとケヴィンではなしをつけてくるでち!」 「え、オイラも? オイラ、そういう話ニガテ…」 「あんたしゃんにそんなのきたいしてないでちよ! まんがいちあらごとになったばあいにそなえて、シャルロットのぼでぃーがーどをするんでち!」 「う、うん…? よくわかんないけど、わかった」 「いいでちね!? ちゃんとみはっとくんでちよ!」
5 20/05/18(月)20:54:40 No.690627357
二人のやり取りも、私の頭の中には入ってこなかった。そのまま二人が酒場の方に向かって行く姿を、しかし見送ることもできない。 …そんな、つもりは―― 辛うじて、言い訳めいた言葉だけが浮かんできた。そんなつもりは――なかった。なかったはずだ。 私はただ、ホークアイのした約束の、責任を――責任? どうして、私がそんなことを気にするのだろう。どうして、私がそんなことを気にかけなければならないのだろう。言い訳が疑問へと変わる。 私は、本当に――あの女性のことを考えて、行動したのだろうか。 それとも――
6 20/05/18(月)20:54:50 No.690627444
「なんだよ急に!? シャルロット、これはなんの真似だ!? 離せケヴィン!」 「ホークアイしゃん! あんたしゃんぷれいぼーいをきどるのはかってでちが、つめがあまいでちよ! もっときっちりちゃらくなるでち! そんなだからおんなをなかせるんでち!」 「いや意味わからん! あと俺は別に気取ってるんじゃなくて、実際にナバールではそこそこ有名な――」 「はんせーするでち! さあ、かくごはいいでちね!? このはりせんちょっぷで、ちゃらさをたたきこんでやるでち!」 「どこからつっこめばいいのかわかんねえ! ケヴィン! シャルロットを止めてくれ! あと離せ!」 「ホークアイ、ごめん…でもオイラ、シャルロットとリースの気持ち、ちょっとだけわかるから…」 「リース? リースがどうし――ぐはっ!?」 宿屋のベッドで枕に顔を押し付け、ひたすら悶々とする私の耳には、すぐ近くの喧噪すら届いていなかった。それどころではない。 どうしよう。明日になれば、ちゃんと平静になれるんだろうか――
7 20/05/18(月)20:55:50 No.690627938
みたいな怪文書を誰か書いてくれると感謝せざるを得ない
8 20/05/18(月)20:56:35 No.690628274
お前が!書いてるんだよ!ありがとう!!!
9 20/05/18(月)20:57:32 No.690628700
シャルロットは大人だなぁ…
10 20/05/18(月)21:02:50 No.690630936
>シャルロットは大人だなぁ… え、でもシャルロットもウェンデルで女の子に……
11 20/05/18(月)21:12:22 No.690634985
ちょっとリースかわいすぎない? こういうのもっとちょうだい
12 20/05/18(月)21:14:37 No.690635880
嫉妬は人並み以上だけど省みれる女の子良いよね…
13 20/05/18(月)21:15:17 No.690636145
正統派のかわいいリースありがてぇ…
14 20/05/18(月)21:16:55 No.690636820
ローラント飯でもお母様でもない貴重なリースきたな…
15 20/05/18(月)21:24:14 No.690639793
素晴らしい怪文書を見た
16 20/05/18(月)21:25:07 No.690640125
まるでローラント飯やお母様が素晴らしくないみたいな…
17 20/05/18(月)21:26:46 No.690640764
ありがてぇ…ありがてぇ…
18 20/05/18(月)21:26:46 No.690640765
>ちょっとリースかわいすぎない? 落ち着いて聞いてほしい リースは25年前から可愛いし人気だったんだ 薄い本の外でも
19 20/05/18(月)21:28:12 No.690641317
ローラント飯やお母様もいいけどこういう湿度高いのもいい…
20 20/05/18(月)21:31:43 No.690642799
これ段々文章量増えてないか?
21 20/05/18(月)21:33:15 No.690643460
このアマゾネス梅雨入りに合わせてしっとりしてきたな…
22 20/05/18(月)21:33:50 No.690643754
ホークリだけじゃなくデュラアンケヴィシャルも匂わすとは職人だな…
23 20/05/18(月)21:34:19 No.690643985
ホークリはいいものだ
24 20/05/18(月)21:34:52 No.690644211
最近毎晩の一番の楽しみだわ
25 20/05/18(月)21:36:12 No.690644778
ホークリ怪文書増えろ!もっと増えろ!
26 20/05/18(月)21:38:22 No.690645610
いもげにいると毎日のようにホークリ供給されるのありがたい…
27 20/05/18(月)21:40:27 No.690646468
無自覚に卑しいのいいですよね やたら自分の送る視線気にしてる連れの女が 口説きつつ話聞いてきた男が去った後にアイツ誤解させるような事言ってゴメンね ってのは恐ろしいレベルの彼女面だわ
28 20/05/18(月)21:41:10 No.690646759
ここのホークリ文書ってこのしっとり文書とローラント飯文書とお母様文書だっけ…多くね?
29 20/05/18(月)21:41:48 No.690647028
>ホークリだけじゃなくデュラアンケヴィシャルも匂わすとは職人だな… 昨日のはもっと直球でデュラアンだったのだ...
30 20/05/18(月)21:42:22 No.690647258
ナチュラルに六人旅してるのも良い
31 20/05/18(月)21:44:36 No.690648141
>ここのホークリ文書ってこのしっとり文書とローラント飯文書とお母様文書だっけ…多くね? ビルベン後は任せました!もホークリだ…ホークリなんだ…
32 20/05/18(月)21:46:25 No.690648850
怪文書ではないけど私がイーグルとかホークリはバラエティ豊富だな
33 20/05/18(月)21:47:18 No.690649218
>ビルベン後は任せました!もホークリだ…ホークリなんだ… イケメンナバール忍者のキスRTA走者もその括りでいいんかな…いいかも…
34 20/05/18(月)21:49:57 No.690650226
ホークリ絵もそこそこ供給されてるし素晴らしい時代になったものだ
35 20/05/18(月)21:50:39 No.690650478
ケヴィンは可愛いですね