20/05/10(日)17:57:33 私――... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1589101053312.png 20/05/10(日)17:57:33 No.687815421
私――マリア・キャンベルは、眼前に立つ忌々しい魔法学校の校門を見上げる。 今更ながら、こんな所に通う原因となった馬鹿げた国の制度と、そして自分の光の魔力を呪う。 この力のせいで、幼い私は周囲から排され、敬遠され、心が擦り切れる地獄のような日々を過ごした。 そうした長い時間の末、私はもはや何もかもに諦めを抱き、昨日までを自棄のまま過ごしてきた。 そしてそれはきっとこの学園に入学しようと変わらない。 風に吹かれ宙を舞う葉のように、ただどうとでもなってしまえばいいと、そう思っていた。
1 20/05/10(日)17:57:45 No.687815492
入学後の学力試験の結果を見に行こうとした私は、順位表の前の群衆を見て早々に引き返した。 成績は多少気にはなったが、特に入れ込んで勉強をしていた訳でもないのでどうでもよかった。 帰る途中、ふと嫌らしい笑みを浮かべた、私の嫌う貴族像そのものの令嬢たちに声をかけられた。 彼女らは強制的に人の目の見えない場所へ私を連れて行くと、そこで光の魔法を行使するよう命令してきた。 忌み嫌う魔法の使用を断固として拒否する私と従わせたい彼女らで対立はエスカレートし、やがて令嬢の一人が私に手を上げた。
2 20/05/10(日)17:57:57 No.687815545
パシッと平手が当たる音が響くも、しかし私に痛みは訪れなかった。 気づけば私の前に長い茶髪の女性がいて、私の代わりに叩かれたどころか手を上げた令嬢たちを一睨みで散らしてしまった。 私がその急な乱入者に「どちらさまですか?」と問うと、彼女は公爵家の長女、カタリナ・クラエスだと名乗った。 思ったよりも高名な身分の口上に、私は再び悪態づく。結局彼女も私が嫌う種類の人間だ。 礼もそこそこに立ち去ろうとしたが、クラエスは何故か私の手を掴んで引き止め、こんなことを聞いてきた。 「あの、私が何かあなたを嫌にさせるようなことをしてしまったかしら?」
3 20/05/10(日)17:58:10 No.687815599
私は怪訝な目で彼女を見る。今まで聞いたこともない馬鹿正直な問いに、私はつい自分の貴族嫌いを話した。 私のかつての不幸の原因。それは魔力のせいで貴族の妾の子だと疑われたことにある。 だから私は、その疑いのもとになった母譲りの自分の容姿、そして魔力、貴族という存在を憎むに至ったのだ。 そんな事情は伏せて、ただ貴族が嫌いだとだけクラエスにぞんざいに伝えると、彼女は何事か考えた末、私を厳しく睨んでこう言った。 「マリア・キャンベル。私、カタリナ・クラエスに対するたった今のあなたの態度、そして発言。これを我がクラウス家に対する侮辱と見たわ。よって、それ相応の処罰をあなたに下すことを決めました」 「――明日から毎日、私の部屋に来なさい。もし来なかったら……わかってるわよね?」
4 20/05/10(日)17:58:26 No.687815684
その次の日から始まった、クラエスによる罰と称する呼び出し。しかしその実態はただ彼女の話し相手になることだった。 話し相手と言っても、私は一言も返していない。彼女が話すとても貴族とは思えない奇行の数々を仏頂面で聞くだけだ。 最初は何か裏があるのかと疑ったが、それが何日も経つうちにただの能天気だと確信した。 それに気づくと、一生懸命に下らない話を語るクラエスがなんだか愉快に思えてきて、ついに吹き出してしまった。 慌てて取り繕うとしたけれど、目の前の彼女に比べれば多少の粗相などあってないように思えた。 それからは少しだけ、クラエスの話をちゃんと聞くようになり、冷え切った私の心にわずかな熱量が灯った。
5 20/05/10(日)17:58:40 No.687815750
ある日、カタリナが私と下町に行ってみたいという事を言い出した。 私にとって苦い経験のあるその地名に返答を淀ませていると何故か彼女が慌てたため、仕方なく事情を話す。 自分はその場所で敬遠されているため、きっと嫌な思いをさせるだろうと。 かいつまんで簡潔にその旨を説明したところ、彼女は何を血迷ったのか変装しよう! と言ってきた。 呆気に取られる私本人を無視して、カタリナの使用人が私のあちこちを手入れする。 そしてものの十数分で一通りのセットを終えると、待ちきれんとばかりにカタリナは私を鏡の前まで連れて行く。
6 20/05/10(日)17:58:55 No.687815822
「……ね? これなら絶対あなたのことを無視する人なんていないわ。だって、髪も顔も身体も、どこを見たってこんなに綺麗だもの」 鏡の中、自分でも自分と思えないほど見麗しく飾り立てられた私に、カタリナは耳元で甘く囁く。 その現実感のなさにカタリナの囁きが止めとなって、思考がパンクした私はフラフラと席に戻った。 そこでカタリナは何か言っていたようだけど、余裕のない私はコクコクと頷く他なかった。 帰ってから、改めて自室の鏡で自分を見る。あれだけ嫌いだった母親似の金の髪と青い瞳が、少しだけ輝いて見えた。
7 20/05/10(日)17:59:08 No.687815885
カタリナとの歓談も長く続いた初冬頃、食堂に入った私は不穏な空気を察知した。 見れば、カタリナの前に大勢の令嬢が立ち塞がっている。そして、カタリナが私を見つけたのを革切りに全員がこちらを向いた。 どうやら彼女らはカタリナの悪事を告発しているらしく、その中心人物として何故か私が担ぎ上げられていた。 悪事の殆どは謂れのない冤罪だが、「連日の強制徴集」という題目だけは覚えがあった。 確かに、最初は不敬への罰だということで始まった今の関係だが、今の私は決してそれを嫌だとは思っていなかった。 私は自分の意志を勝手に推し量られ、あまつさえ都合の良いように使われたことに憤慨する。それも、カタリナを巻き込んで。 私は我慢しきれず、ついにカタリナの側へ歩み出た。
8 20/05/10(日)17:59:22 No.687815944
「――私はカタリナ・クラエスさんにこのようなことをされたことは一度もありません!」 「このような出鱈目な話で、私の友人を侮辱しないでください」 そう言い切る私に、悪事を捏造していた令嬢はみっともなく虚言を並べ立てる。 もはや口で何を言っても伝わらないだろうことを察した私は、大きな決心をした。 ――言って聞かないなら、見せてやれば良いのだ。 そして、私は戸惑うカタリナの首へ手を回し、その柔らかな頬へ唇を――
9 20/05/10(日)17:59:36 No.687816019
「……これで、お分かり頂けましたか?」 今にも爆発しそうなほど熱い顔と胸を留めて、私は強く令嬢を睨む。 今見たものが信じられないというように二の句も継げないまま時間は過ぎ、やがて現れた生徒会の面々によって場は収束した。 改めてカタリナに向かい大丈夫かと問うと、小さな声でさっきの行為について問い返してきた。 私は恥ずかしさのあまり死にそうな気持ちになりながらも、しっかりと言葉を返す。
10 20/05/10(日)17:59:48 No.687816082
「つい勢いで、ああするしかないと思ってしまったんです」 「あの場所で糾弾されていたのが別の人なら、きっと私は見ぬふりをしたでしょう」 「ですがカタリナさんだけは違います。私が晴らせる容疑なら、何をしてもその汚名を濯ぎたいと思いました」 「だって――私に温もりを教えてくれた、かけがえのない大事な人ですから」 包み隠さない私の本心を告げれば、カタリナは太陽のように朗らかな笑みを私にくれる。 その笑顔に早る鼓動を覚えながら、きっと彼女こそが私を優しく溶かす光なのだろうと、そう思えた。
11 20/05/10(日)18:01:30 No.687816602
以上です 環境に耐えられずグレたマリアがやっぱり野猿に救われるという妄想です 野猿視点も書いたんですがクソ長いので塩で供養します su3881317.txt
12 <a href="mailto:素晴らしいですわ">20/05/10(日)18:03:05</a> [素晴らしいですわ] No.687817056
光 光 光 光 光 光 光 光光光光光光光 光 光 光 光 光 光 光 光 光光光
13 20/05/10(日)18:04:59 No.687817639
ヒッ
14 20/05/10(日)18:06:56 No.687818180
この怪文書はスキャンされています 内容には問題はありません いえむしろもっと見せてくださいませんか
15 20/05/10(日)18:07:42 No.687818414
いい…ここまで積極的なマリアだと本編と違ってジオルドと正面からカタリナを奪おうとしそうだ
16 20/05/10(日)18:08:04 No.687818555
光あれ!最初にカタリナはそう言った!私が生まれた
17 20/05/10(日)18:09:12 No.687818891
ささくれだったマリアの心に野猿がスッーと効いてこれは…光
18 20/05/10(日)18:09:59 No.687819113
いい話だなーから光の書き込みのインパクトで吹いた
19 20/05/10(日)18:10:44 No.687819317
段階をしっかり踏んで攻略してる分本編よりも逆に大人しくなりそうなのが強いな…
20 20/05/10(日)18:11:22 No.687819487
こういう風な性格になってもおかしくない境遇だよね それはそれとして大変素晴らしいと思います
21 20/05/10(日)18:11:57 No.687819645
グレマリアいいね…
22 20/05/10(日)18:13:00 No.687819956
カタリナがマリアを飾り立てるところがなんというか…いいね!
23 20/05/10(日)18:13:18 No.687820052
闇を抱えた光は一回グレた方が常識的になる シンフォギアでも見た!僕も大好きだ!
24 20/05/10(日)18:14:01 No.687820288
闇と光が交わり最強に見える
25 20/05/10(日)18:14:09 No.687820327
闇の中で瞬く光だ
26 20/05/10(日)18:14:39 No.687820508
こういう可能性もあったと思いますわ マリア・キャンベルがカタリナ様と出会うまで苦しい日々を送っていましたもの ええ!ええ!特に頬に口付けなど少々恥ずかしくも心躍る描写です!
27 20/05/10(日)18:14:46 No.687820544
翳り裂く閃光いいよね
28 20/05/10(日)18:15:58 No.687820899
口にやってたら大問題だった
29 20/05/10(日)18:18:14 No.687821546
グレたことで他人の悪意や悪事の手口も敏感に察せるようになりカタリナを絶対に守護る騎士と化したマリアさんだ お姫様と騎士の恋は王道だしね
30 20/05/10(日)18:19:32 No.687821973
素晴らしい…
31 20/05/10(日)18:20:29 No.687822270
貴族は基本ゴミだなって考えてるシャイニングの方が今後危険なのでは…?
32 20/05/10(日)18:21:18 No.687822482
グレたマリアが元リナの世界で誕生してたらどうなってたんです?
33 20/05/10(日)18:21:46 No.687822633
>貴族は基本ゴミだなって考えてるシャイニングの方が今後危険なのでは…? どうせ光するだけだから
34 20/05/10(日)18:21:52 No.687822664
>貴族は基本ゴミだなって考えてるシャイニングの方が今後危険なのでは…? 原作より独占欲強くなりそうだし躊躇なく二人で国外脱出の計画立てそう
35 20/05/10(日)18:22:19 No.687822815
>グレたマリアが元リナの世界で誕生してたらどうなってたんです? 最初は険悪だった二人がある時を境に意識するのは王道
36 20/05/10(日)18:22:29 No.687822872
カタリナ編も良かった…ありがたい…
37 20/05/10(日)18:22:46 No.687822957
光魔法は洗脳魔法じゃないんですよ!?
38 20/05/10(日)18:22:54 No.687822993
グレた事でケンカの心得も習得できるようになり文字通りカタリナの騎士になれるって寸法よ 無茶して怪我してこんな程度平気ですって強がるし実際光魔法で治せるんだけどカタリナは本気で心配して焦って手当てしてあげちゃうんだな すり傷の上に巻かれたハンカチを撫でて魔法を使えなくなっちゃうグレマリアいいよね
39 20/05/10(日)18:22:54 No.687822994
ゲーム及び本編のマリアのほうが異常でこうなるか自殺する可能性のほうが高いよね… 第三王子の婚約者?知るか馬鹿!そんなことよりカタリナさんだ!ってなるほうのマリア
40 20/05/10(日)18:23:09 No.687823081
カタリナ編の野猿トレースが完璧すぎない?
41 20/05/10(日)18:23:37 No.687823229
>カタリナ編の野猿トレースが完璧すぎない? 原作通りの野猿だ…!ってなるの凄い
42 20/05/10(日)18:23:53 No.687823317
>翳り裂く閃光いいよね マリアアナザーか…
43 20/05/10(日)18:24:40 No.687823553
カタリナの騎士…カタリナの騎士か… 最期は娘に殺されるか約束故に友を殺すか…
44 20/05/10(日)18:25:18 No.687823739
どうしてカタリナ怪文書を書く人は悉く文才が凄いの…?
45 20/05/10(日)18:25:28 No.687823787
>>グレたマリアが元リナの世界で誕生してたらどうなってたんです? >最初は険悪だった二人がある時を境に意識するのは王道 そんなプリキュアみたいな
46 20/05/10(日)18:26:12 No.687823992
ロマンス小説読んでるから?
47 20/05/10(日)18:27:13 No.687824265
カタリナ編は良かった
48 20/05/10(日)18:30:38 No.687825196
カタリナの事を頑なに様付けしないのはなんかいいよね あとカタリナと頑な似てるね
49 20/05/10(日)18:31:54 No.687825512
なるほど感動的だ GHLはどう思う?
50 20/05/10(日)18:33:20 No.687825900
>光魔法は洗脳魔法じゃないんですよ!? パァァ
51 <a href="mailto:s">20/05/10(日)18:34:01</a> [s] No.687826079
先にカタリナ視点を書き上げてそれからマリア視点なので 単体だと正直説明足らずな部分が多いと思います 暇ならカタリナ視点→マリア視点で読んでください
52 20/05/10(日)18:34:21 No.687826176
逆に父親が出ていかずに家にいるままギスギスしてるとこうなったかもなって 父親がいなくなって戻ってきてほしいのが起点でいい子になったとしたら家の環境がギスギスパターンはやさぐれてもおかしくない
53 20/05/10(日)18:34:23 No.687826186
光魔法でぶん殴りそう
54 20/05/10(日)18:35:27 No.687826470
>光魔法でぶん殴りそう 光魔法は本来身体系はずだし肉体強化は出来そうだな ゴリラできた!
55 20/05/10(日)18:35:58 No.687826617
>逆に父親が出ていかずに家にいるままギスギスしてるとこうなったかもなって 父が母の不貞を疑い母が泣いて信じてくださいって喧嘩する家庭か グレるなこれ
56 20/05/10(日)18:36:40 No.687826820
>父が母の不貞を疑い母が泣いて信じてくださいって喧嘩する家庭か お父さんアル中になってDVしてそうな家庭になったな
57 20/05/10(日)18:36:56 No.687826895
>なるほど感動的だ >GHLはどう思う? 「ハント様も私のことを疎ましく思っておいでではないですか?」 「…ええ、確かにそうね。貴方のカタリナ様への失礼な振る舞いの数々は見るに耐えないと思いますわ。」 「そうでしょうね」 「…けれど、カタリナ様がお選びになったご友人ですもの。悪い人であるはずがありませんわ。私はカタリナ様を信じておりますので。あまり見くびらないで頂けますか?」 「…そう、ですか」
58 20/05/10(日)18:38:21 No.687827294
生徒会の面々と交流して段々と柔らかくなるやつ!
59 20/05/10(日)18:38:39 No.687827393
しかし改めて見るとマリアの人生酷すぎる よくあそこまで真っ直ぐ育ったな(ペカー) これからはカタリナ様と一緒に幸せになってほしいですね
60 20/05/10(日)18:39:43 No.687827713
光マリアとグレマリアが出会ったらどうなっちまうんだ
61 20/05/10(日)18:39:53 No.687827762
>先にカタリナ視点を書き上げてそれからマリア視点なので >単体だと正直説明足らずな部分が多いと思います 原作遵守過ぎる…
62 20/05/10(日)18:40:13 No.687827880
>光マリアとグレマリアが出会ったらどうなっちまうんだ カタリナ様いいよね… いい…
63 20/05/10(日)18:40:20 No.687827907
途中でクラエス呼びからカタリナ呼びに変わってるのいい…
64 20/05/10(日)18:40:26 No.687827943
>光マリアとグレマリアが出会ったらどうなっちまうんだ カタリナ様いいよね… いい… するよ
65 20/05/10(日)18:40:38 No.687828009
>カタリナ様を信じておりますので。あまり見くびらないで頂けますか? つ、強い…格が違う…
66 20/05/10(日)18:41:30 No.687828274
スレてるマリアちゃんなのに頬キスで顔真っ赤にしてるのいい…
67 20/05/10(日)18:41:58 No.687828416
この光ちょっと眩しすぎますね
68 20/05/10(日)18:43:55 No.687829139
とても美しいものを見た
69 20/05/10(日)18:44:11 No.687829231
>光マリアとグレマリアが出会ったらどうなっちまうんだ カタリナ様いいですよね… カタリナさんいい… ?カタリナ様でしょう? は?さんでも様でも一緒でしょ? 違うんです!!!
70 20/05/10(日)18:44:34 No.687829364
こういうのも王道よねー あっちゃんはどう思う?
71 20/05/10(日)18:45:06 No.687829537
グレマリアいい…
72 20/05/10(日)18:49:51 No.687830962
「貴方は…どうしてそうまでしてカタリナに入れ込んでいるの?」 「それはカタリナ様が私の全てを運んできて下さったからですわ。私の幸せ全てを…」 「そこまで言う程かしら…」 「ええ、そこまで言うほどなんです。お菓子を食べてくださった事も、友人が出来たのも、お母さんと仲直りできたのも全部。カタリナ様はそれくらい凄い方なんです」 「そう…かもね…」
73 20/05/10(日)18:50:02 No.687831035
>こういうのも王道よねー >あっちゃんはどう思う? 応援したいけどこのルートだとマリアがカタリナを連れて行きそうで複雑な心境になってそう
74 20/05/10(日)18:51:07 No.687831335
光の立ち位置が違うだけでもドラマが出来るのに 異なる光が相対してもドラマが生まれるのは やはり光は創造を司る存在…世界に光あれ…