ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
20/04/18(土)12:17:01 No.680645537
「藤丸さんはどんな感じでした?」 「相変わらず無口…容態は悪くなる一方」 薄暗い病院の廊下で暗い顔をしたナースたちが歩いていた。 藤丸というのは病院の角の部屋で一人死を待つ老人のことだった。 老人は孤独だった。家族もおらず友人知人でさえもついに誰一人として病人を見舞う者は現れず、彼自身もまた積極的にナースとも医者とも同室の病人とも話そうともせず、ただ病室から見える風景を眺めていた。 その荒れ地に一本だけ生えている枯れ木のような姿は見る者に少しばかりの同情心を植え付けるものの、恐らくそれは枯れ木が倒れても誰も知る者はいないのだろうという憐みからには違いなかった。
1 20/04/18(土)12:17:14 No.680645574
「あら?」 「どうしたの?」 ふとナースの一人が病室の前で立ち止まる。藤丸の病室であった。 薄いガラスの向こう、病人が寝ているベッドの隣に誰かが立っている、若い女のようだ。長い髪を三つに編んで才女を想像させる眼鏡をかけていた、美女であった。 消灯後の病室で窓から入る月明かりで薄く照らされるその姿はまるで天女のようにも思える。 その美女は孤独な老人の手を握り静かに言葉を交わしているようだった。 本来ならば面会はできないこの時間、注意するべきなのだろう。だが天涯孤独の老人にやっと現れた見舞い人を追い返すような真似をナースたちにはできなかった。 「行きましょうか」 「はい」 白衣の天使たちは微笑みながら病室の前を後にした今夜見たことは幽霊でも見たことにしよう。そんなことを思いながら。
2 20/04/18(土)12:17:24 No.680645626
次の日の朝、藤丸老人が死んだ。 穏やかに眠るようにその魂が体から抜けたのであろうと思えるほど毛布に皴一つなく、微笑みながらの亡骸だった。 その報告を聞いた昨夜のナースたちはもしかしてあれは本当に幽霊で、かの老人の魂を刈り取りに来た死神ではなかったのかと思ったが、不思議と恐怖は感じなかった。 確かに老人は笑っていたのだ。旅立つ者にとって彼女は救いだったのではないか。 彼が無縁仏に送られるという報告を聞きながら彼女たちは少しの間だけその記憶を繰り返し思い出していた。 眠る者がいなくなった病室では水に挿されたヒナゲシが窓際で風に揺れていた。
3 20/04/18(土)12:26:34 No.680647887
またパイセンが人間を嫌いになっちゃう…
4 20/04/18(土)12:27:59 No.680648225
またパイセンが友達に置いていかれてる…
5 20/04/18(土)12:30:57 No.680648979
パイセン は約束覚えてたんだ
6 20/04/18(土)12:32:47 No.680649463
若いころは友人ばかりだった人間が一人ぼっち孤独に死んでいくのを見送るパイセンいいよね…
7 20/04/18(土)12:38:01 No.680650864
来てくれたんだ 枯れ木のような老人は笑った 気まぐれよ 彼女はいつものように素っ気なかった
8 20/04/18(土)12:40:20 No.680651484
私はどうしたんでシュか!
9 20/04/18(土)12:42:07 No.680651993
ヴェドゴニア思い出す
10 20/04/18(土)12:46:33 No.680653188
>私はどうしたんでシュか! 寿命分生きたよ…
11 20/04/18(土)12:51:32 No.680654450
あの子が亡くなった時も 差出人の名前がないヒナゲシの花が送られていた 仏花でもないのにと葬儀屋の人は首をかしげていたっけ
12 20/04/18(土)12:57:40 No.680656000
看取ることは約束してるからな……
13 20/04/18(土)13:02:10 No.680657059
恐らく老人は友人がいないんじゃなくて友人がみんな死ぬまで長生きした系の老人
14 20/04/18(土)13:04:04 No.680657563
マシュとは子供作らなかったのか
15 20/04/18(土)13:05:33 No.680657972
母体が持たずに子供と逝ってしまったのかもしれん
16 20/04/18(土)13:08:53 No.680658858
だから人間って嫌いなのよ…って言ってそう