20/01/25(土)23:50:17 ・・・... のスレッド詳細
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20/01/25(土)23:50:17 No.657806013
・・・・ ウールー君が傷つき倒れ、その白い綿毛を土で染める。 「チャンピオンは見る目がありませんね。あなたのような人を推薦してしまうだなんて」 ホップ君は、ビート君の言葉に目を見開く。 「チャンピオンだけじゃありません。そこの二人もですよ」 ビート君が私たちを視線で指し示す。その態度はどこまでも不遜で、苛立ちを覚えてしまう。 「確かに、彼女たちはそこそこなのかもしれません。ですが、君はダメダメ。そんな君と一緒にジムチャレンジをしているだなんて、それこそ彼女たちの邪魔をしているのではないですか?」 「なっ……何を言ってるんだい!?そんなわけっ!?」 「オレが……邪魔、してる……」 私がたまらず反論するも、ホップ君は誰に聞かせるでもなく、小さく呟く。 彼の指示が乱れ、どうすれば良いのかわからないといったまま、アオガラス君が地に落とされる。 「ホップ、落ち着きなさい。あのような戯言真に受ける必要はありません」 お嬢様の言葉は、けれどもホップ君に届いた様子はなく、動揺を抑えられないまま最後のポケモン、ジメレオン君を繰り出す。
1 20/01/25(土)23:50:56 No.657806221
「こんなにも弱いあなたがバッジを3つ手に入れられたのが不思議でしょうがないですね」 いっそ、乱入してやろうか。そんな事を考え私はモンスターボールをぎゅっと握り締める。 だけど、その決断に至る事は無かった。 「ほら、これで終わり」 私が動くより先に、ジメレオン君が手も足も出ないまま地に臥せる。 ホップ君の手持ちはもういない。 ホップ君は、負けた。 「あなた、いったいこれまで何をしてきたんですか?チャンピオンだけじゃなく、そこの二人の顔にまで泥を塗ったってわかってますか?」 ビート君の言葉に、ホップ君が私たちを振り返る。その目は深い後悔と、後ろめたさに満ちていて、 「あなたの旅、無駄でしたね」 その言葉を最後にホップ君は項垂れ、膝をついた。 沈黙が、私たちに纏わりつく。。 「どうします?このままあなた達と戦ってあげてもいいのですけど」
2 20/01/25(土)23:51:21 No.657806350
ビート君のその得意げな顔が憎たらしくて、私は握りしめたままのボールを構える。 「上等だよっ……!今、この場で君をっ……!」 だけど、 「……残念ですがここまでです」 「お嬢様っ!?」 私を制止するようにお嬢様が前に立つ。 「なんだ、怖気づいたのですか」 「そう思いたければ勝手に思っていなさい。ただ、一言だけ言わせてもらうのならば……」 お嬢様の声から、温度が消える。 後ろで見ている私でさえ背筋が冷たくなるほど。 「……次に会った時が、あなたの最後です。とだけ」
3 20/01/25(土)23:51:52 No.657806517
「……ふん」 その言葉に彼はつまらなそうに鼻を鳴らすと、そのまま去っていった。 「……なんで止めたのさ」 「今のわたくしたちが冷静にバトルできるとは思えません」 「っ……」 「ビートとやらを叩きのめすにしても、ここは落ち着きましょう」 「……わかったよ」 お嬢様に免じて、ここは矛を収めよう。 それに、今の私たちはビート君の事よりももっと考えなきゃいけない事があるんだから。 「ホップ君……」 膝をついたままのホップ君に声をかける。 彼はゆっくり私に振り向くと、立ち上がりじっと、私とお嬢様を見つめる。 そして、申し訳なさそうに口を開いた。 「……二人とも、先にナックルシティへ行っててくれ」 「な、なにを言ってるんだい?」
4 20/01/25(土)23:52:24 No.657806696
その言葉を訂正して欲しくて、撤回して欲しくて。私は引きつった笑みで彼に問いかける。 でも、ホップ君は返事をせずに、そのまま歩き出す。 「ホップ、お待ちなさい」 困惑した表情のお嬢様が呼び止めると、ホップ君は立ち止まり、だけど振り返ることなく、 「……お嬢、ユウリ……ゴメンな」 そう残して、再び歩き出した。 「ま、待って!?待ってよホップ君っ!?」 その背中が霧に飲まれ消えていく。 見失ってなるものかとその背中に手を伸ばし―――横から伸びてきた手に掴まれた。 「なっ、どうしたんだよお嬢様!?」 「今は……そっとしておいてあげましょう」 私の手を掴んだまま、お嬢様は辛そうに首を振る。 「何を……何を言っているんだいっ!?今、彼のそばにいてあげなくてどうするんだいっ!?」 「今だから、です」 「っ……わけがわからないよっ」
5 20/01/25(土)23:52:45 No.657806815
その手を振りほどいてホップ君を追おうとする。 いまならまだ、追いつけるかもしれない。 なのに、お嬢様の手は、私の手を掴んだまま離れない。 私はたまらず叫んでしまう。 「離してッ!!」 「行ってどうするのですか」 「わからないよっ!?でも、一人にするわけにはいかないでしょ!?」 「それが、ホップを傷つけるとしてもですか」 「なっ……」 お嬢様は私の肩を掴んで真っ直ぐこちらを見つめる。 「今の彼を、慰めてはいけません。寄り添おうとしてはいけません」 あまりにも非情な言葉にその手を振り払って怒りをぶつける。
6 20/01/25(土)23:53:02 No.657806891
「ふざけないでよっ!?君は……君が折れそうになった時、彼に支えてもらったじゃないか!?」 「ええ。無様に敗北し、折れた心を持ち直せたのは間違いなく、ホップの力があってこそです」 「なのに彼の時は見捨てるって言うのかいっ!?」 私の言葉に、彼女の表情が辛そうに歪む。 だけど、それでも私から視線を逸らさなかった。 「ホップはきっと、わたくしたちが行っても喜びません。いえ、もっと深く、傷つくでしょう」 「なんで、なんでそんな事がわかるのさっ!?」 「彼が、ホップが男だからです」 「っ……」
7 20/01/25(土)23:53:20 No.657807001
確信をもって、お嬢様は言う。 私には、それが理解できない。 「彼は、自分のせいでダンデさんやわたくしたちまで貶められた事に深く傷ついています」 「ホップ君のせいでって……そんなわけっ!?」 「その通りです。あの者の言葉になんの重みもありません。言われたところでそよ風にすらなりません。ですが、ホップにとっては違ったのです」 「ならっ!?だったら猶更言ってあげないとでしょっ!?」 「違うのです。そういう、事ではないのです……」 今度こそ、お嬢様は目を伏せる。 それはまるで、自分自身を責めているように。 「『自分のせいで』。そう思っているホップに、わたくしたちが何を言ったところで刃にしかなりません。慰めなんて、彼を惨めにするだけです」、 「なんだよそれっ……!君は、私よりもホップ君の事を知ってるっていうのかいっ!?」 「……少なくとも、今のあなたよりは彼の気持ちを理解できています」 「っ!?」 先ほどまでとは違う、冷たく突き放すような声色。
8 20/01/25(土)23:53:30 No.657807051
反射的に私は彼女の胸倉を掴む。無理やり引き寄せ、視線を合わせて叫ぶ。 「私の方が!!君より早くホップ君に出会ってたっ!!私の方がっ!ホップ君と長くいたっ!?なのにっ!?」 たった数週間程度であっても、それでも私の方がホップ君と長く一緒にいた。 それは、紛れもない事実だ。 それは、私が旅を始めてからずっと抱えていた小さな優越感だった。 なのに、 「なのにっ……わからないよっ……!!全然っ、まったくっ……わからないよっ……!」 お嬢様の言葉の意味も、彼にかけるべき言葉も。 彼が、私たちの元から去っていった理由も。 私が、どうするべきなのかも。 今の私には何もわからない。
9 20/01/25(土)23:53:40 No.657807108
「あなたの気持ちは痛いほどわかります。ですが、ですがっ……ここは、堪えてください」 お嬢様は胸元を掴む私の手を包み込むように握る。 その言葉に、私への優しさと、何よりもホップ君への思いやりを感じた。 それが悔しくて、もどかしくて。 私の瞳から涙が流れ出す。 「なんでっ……なんでっ……私たちの旅は、まだ、これからじゃないかっ……」 カブさんたちに激励されエンジンシティを出た時はあんなにもワクワクしていたのに。 今の私たちの気持ちはこのまとわりつく霧のように重く、冷たい。 「なんでなのさっ……ホップ君ッ!」 霧に向かって涙ながらに叫ぶ。 彼の背中はもう、見えない。 「なんでっ、なんで私をおいて行ったんだいっ!?」 あの時君は、私を見つけてくれたのに。 一人迷っていた私を見つけ、手を引いてくれたのに。 私は、ホップ君に助けてもらったのに。
10 20/01/25(土)23:54:14 No.657807301
なのに、私はその背中を見送るしか出来なかった。 それが悲しくて、悔しくて。 「嫌だよっ……おいてかないでよっ……」 私が霧を嫌いなのは。 ただただ、怖いからなのだと、思い出した。 取り残されるのが、一人にされるのが、ホップ君においていかれるのが。 真っ白な闇の中を迷う恐怖を思い出してしまうからなのだと。 「あなたも、だったんですね」 崩れ落ち、泣きじゃくる私に向かって、お嬢様が何かを言った。 それを聞き返す前に、彼女が私を無理やり立たせ、支える。 「……行きましょう」 「どこに……」 「ナックルシティですよ。そこで、ホップを待ちましょう」 「……嫌だ。私は、ホップ君を探す」
11 20/01/25(土)23:54:28 No.657807386
「彼は、先に行けと言いました。なら、きっと。彼は来てくれます。だから、歩きましょう」 お嬢様が、私を引きずるように歩き出す。 「わたくしたちは、こんなところで立ち止まるわけにはいかないのです」 深い霧の中でも、その横顔ははっきりと見えた。 辛そうに歯を食いしばり、目元を潤ませて前を見つめるその姿は、それでも歩みを止める気配は無かった。 だから、私も歩き出す。 彼女に支えられたまま、一歩ずつ足に力を込めていく。 きっと、私も彼女の同じ表情をしているのだろう。 私たちは、支え合うように深い霧の中へと歩き出した。
12 20/01/25(土)23:54:58 No.657807571
前回までの su3598521.txt 一レス15行以内は短い…
13 20/01/25(土)23:56:36 No.657808079
再会したときホップくんの手持ちからウール抜けたら2人はどう思うんだろうな…
14 20/01/25(土)23:57:42 No.657808431
ビート君余命宣告
15 20/01/25(土)23:59:54 No.657809197
大丈夫?ビート君土に還されない?
16 20/01/26(日)00:04:33 No.657810929
ブチギレお嬢
17 20/01/26(日)00:08:18 No.657812546
「「遺跡を破壊しようとしたので止めた」」 「「殺すつもりはなかった」」 等と供述しており…
18 20/01/26(日)00:08:24 No.657812585
本編ではこれの件ホップとビートくんの和解や再戦イベントないまま終わるんだよな
19 20/01/26(日)00:10:20 No.657813322
最期じゃなくて最後だから! 命日にしてやるって事じゃないから!!
20 20/01/26(日)00:11:32 No.657813722
>本編ではこれの件ホップとビートくんの和解や再戦イベントないまま終わるんだよな ホップはどっかのタイミングで「嫌な奴だけど強い」的なセリフ言うし許してるよ ビートは煽ったこと覚えてすらいないだろうけど
21 20/01/26(日)00:17:03 No.657815659
冷静に考えるとホップが負けただけだし その分弱かったのは事実だしその弱さを理由に兄貴を嘲られたけどそれで気づつくのポップアップたけだしそもそもホップの負けとダンテの強さは関係ないし つまるところホップがどう扱うかって話でしかない
22 20/01/26(日)00:21:32 No.657817310
ゲームの都合とはいえダンデに御三家もらうまでウールー一匹しか持ってなかったのは何故なのか 何であんなアニキ大好きマンがアニキの師匠に師事しなかったのかdlcで明らかになるんだろうか
23 20/01/26(日)00:30:16 No.657820229
あの世界ポケモンを捕まえると親の庇護から独り立ちするってのがイコールみたいだし… ウールーはザ犬みたく向こうから捕まりに来たから所持を許されてた
24 20/01/26(日)00:31:57 No.657820799
ていうかウールーは家の仕事の手伝いしてるって事だし単純にホップに懐いてるから持っていたって感じかな
25 20/01/26(日)00:43:08 No.657824583
先日のまとめから読んでみたけど心理描写が丁寧で面白いね 「」ウリ怪文章の中では一番好き
26 20/01/26(日)00:43:34 No.657824729
マスタードはただ単に孤島に暮らしてるから情報入ってなかったんじゃねえかな
27 20/01/26(日)00:44:59 No.657825134
あとプレイヤーはゲーム的都合ですぐに大量のポケモン保持できるけど実際は一匹育てるのも大変なんだろ ブリーダーでもないのに大型犬以上のサイズのポケモン6匹育てろって言われたら普通無理だわ…ってなるわ