20/01/25(土)00:18:38 ・・・... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1579879118862.jpg 20/01/25(土)00:18:38 No.657540661
・・・・・ 色々あったが無事ホテルから出られた私たち一行は、ナックルシティへと向かうためエンジンシティの出口へと向かっていた。 「なんか……気づいたらホテルのロビーにいたんだけど何があったんだ?」 「ね、寝ぼけてたのではありませんの?」 「……そうだね」 白々しくとぼけるお嬢様に私も白々しく同意する。 「んー昨日はたっぷり寝たはずなんだけどなぁ。あとなんかめっちゃ顔が痛いんだけどどっかにぶつけたのか……?」 ごめんねホップ君……私は、君に真実を伝える事が出来ないんだ。 ……知らない方が幸せな事ってあるしね。 「まぁいいか!さっさとナックルシティに行こうぜ!」 私がほんのりとした罪悪感に苛まれていると、そこは流石のホップ君。すぐさま切り替えて次の街へ向かうモチベーションを取り戻す。 「ああそうだね!ナックルシティどんな街なのか今から楽しみだよ!!」 なので私もそれに合わせて元気よく行こうか。 私たちはまだ道半ば。だからこそ、まだまだ勢いを失う訳にはいかないのだから。 なんてことを思っていると、いつの間にか出口へとついていた。
1 20/01/25(土)00:18:48 No.657540716
「さぁ行くぞユウリ!お嬢!」 「ええ」 「うん!」 「よっしゃ!……あれ?」 気合いをいれていざ出発!となった時、ホップ君が何かに気づいた。 すると、カブさんが綺麗なランニングフォームでこちらへとやってきた。 「ジムリーダーなのにわざわざ見送り?オレがチャンピオンになるってカブさんにはわかるんだな!」 ホップ君の相変わらずな豪語をカブさんは大人の余裕で受け止める。 「ジムバッジを3個も集められずにジムチャレンジを諦めるトレーナーは数多くいる……だから、ぼくに勝ったものはみんな見送る事にしているよ」 カブさんはきっとその諦めたトレーナーをたくさん見てきたのだろう。 この街を次に進むためではなく、帰るために出ていく背中をたくさん見てきたのだろう。 だからこそ、次に進むものを見送りたい。 そんなカブさんの想いが伝わってきた。
2 20/01/25(土)00:19:04 No.657540791
「カブさん、ありがとうございます」 私が頭を下げると、カブさんは微笑む。 お嬢様に至っては涙で潤む目元を帽子で隠している有様だ。 私たちがしんみりしていると、今度はヤローさんとルリナさんまでやってきた。 「ふぅ、間に合った……空飛ぶタクシーさまさまだよ」 「あなた達、おめでとう!カブさんに勝つなんて凄いよ!」 まさかわざわざターフタウンとバウタウンから来てくれるとは思わなかった。 「カブさんからジムバッジをもらえるジムチャレンジャーは少ないんだ。だから応援の意味でみんなを見送りするんだな」 「というわけで、君たちに声援を送ろう」 カブさんが姿勢を正し大きく息を吸う。そして、カッと目を見開き、 「いけいけユウリ!やれやれホップ!頑張れ頑張れユウリ!」 ビリビリと空気が振動するかと思うほどの激励。 自然と身が引き締まっていく。
3 20/01/25(土)00:19:29 No.657540916
「勢い任せも良いけどそれだけだとこの先辛くなるわよー?」 「あはは……肝に銘じておきます」 いや本当に。ルリナさんのジムとか今考えると良く突破出来たな… 「カブさんを突破できたのなら、君はもう大丈夫だな。君が、君自身を信じられるなら、きっとこれからもポケモンたちはついてきてくれる」 「……はいっ!」 ヤローさんの言葉にお嬢様が自信満々に答える。 「ジムチャレンジはこれから先どんどん厳しくなっていく。だが、君たちなら勝ち抜ける。ポケモンを信じて突き進め!」 「カブさんたちサンキュー!オレたち、絶対にバッジを全部集めるぞ!!」 ホップ君が高らかと宣言し、私たちも頷く。 「目指すはナックルシティ。頑張ろうぜユウリ、お嬢!」 「うん!」 「ええ、行きましょう。道のりはまだまだ長いのですから」 カブさんたちの激励を受け、私たちはワイルドエリアへと走っていった。 さぁ、ここから中盤戦だ!
4 20/01/25(土)00:19:41 No.657540974
・・・・・ 意気揚々とワイルドエリアに出てきた私たちの前に現れたのは一面を覆う深い霧だった。 「うっわぁー……霧かぁ……幸先悪いなぁ……」 「あら、あなた霧が苦手だったのですか」 「好きになる要素ないでしょ。見通しは悪くなるから走れないし、湿気っちゃうしで。健康優良熱血少女の私としちゃ湿っぽいのはごめんなんだよ」 カラっと爽やかが信条の私としては今の状況は雨の次に嫌いな状況だからね。 出来る事ならスボミーインに戻って晴れるのを待ちたいところだけど。 「なるほど。ですが、進まないわけにはいきません」 お嬢様が不退転の決意を示す。 「まぁそうだけどさ」 私も別に本気で戻ろうって言ったわけじゃない。 ていうか先ほどカブさんたちにあんだけ激励されたのにとんぼ返りとかギャグにしかならないもの。
5 20/01/25(土)00:20:07 No.657541096
しかしこの霧の中ただ歩いていくっていうのが嫌だというのもまた事実。 そこで私は一つ名案を思い付いた。 「ホップ君手繋いでいこうか?はぐれちゃうと怖いしね」 「そういえば最近知ったのですがスマホロトムにはナビ機能なるものがついているそうですね」 私の名案にかぶせるようにお嬢様がスマホロトムをいじりながら答えた。 「これがあれば最悪はぐれてもナックルシティで合流できるでしょう」 「……ちっ」 「何か?」 「別にー」 残念なことに私の名案は露と消えてしまった。 「まぁ何とかなるだろ!せっかくだし強いポケモン探しながら行こうぜ!」
6 20/01/25(土)00:20:17 No.657541143
気落ちする私とは対照的にホップ君はとても元気だ。 だけど、 「寄り道せずにまっすぐ行こうか」 「同意です」 「なんでだ!?」 「いや言ったでしょ私霧嫌いなんだよ。ポケモン探すなら晴れてからね」 「わたくしも服が湿気るのは避けたいですわ。さっさと抜けるに越したことはありません」 お嬢様が言うように何が悲しくて服が湿気をバンバン吸い込む中ポケモン探ししないといけないんだよ。 私たちが口々に反対した事で流石のホップ君も提案を撤回する気になってくれたようだ。 「はぁ……わかったわかった。でも、途中で見つけた時は戦って仲間にするからな!」 「はいはい」 「そのぐらいでしたら」 「よっしゃ!それじゃあ伝説の一ページ増やしてやるぞ!」
7 20/01/25(土)00:20:35 No.657541230
折衷案をまとめ、私たちは今度こそ第二のスタートを切ろうと歩き出す。 「ムダなことはおよしなさい……」 それを、誰かが呼び止めた。 「どうせ、ジムチャレンジも突破できないのですから」 声のした方を向くと、紫色のコートに年に合わない白い髪をした男の子―――ビート君がいた。 「あなた達のような遊び半分で参加しているような人を推薦するだなんてチャンピオンもどうかしていますね」 「……聞き捨てなりませんね。誰が遊び半分だと」 「君の眼は随分と節穴なんだね。ビー玉でも入ってるのかい?」 いきなりの喧嘩腰に私たちの言葉も鋭くなる。 ビート君はそれを鼻で笑って、癖なのだろう。髪をかき上げる仕草をする。 「お友達と仲良くジムチャレンジ。遊びでなくてなんだというのですか?」 「ちょっと違うぞ。オレたちは確かに友達だ。だけどな、ライバルでもあるんだ」 ……うん、まぁ友達で良いよ今はね。 私と、多分お嬢様も内心複雑な気持ちでいると、ビート君はやはりそれを鼻で笑う。
8 20/01/25(土)00:21:01 No.657541350
「同じですよ。3人仲良く次のジムへ。神聖なジムチャレンジを旅行とでも思っているんですか?」 「んー……これはあれか。喧嘩を売られてるってやつなのか」 人の気持ちには鈍いホップ君も流石に彼の悪意には気づいたようだ。 ていうか今まで喧嘩売られてることに気づいてなかったのかい君は。 「いいえ、ただ事実を言っているだけですよ。ですが……そう思うのでしたら相手してあげますよ。この辺りで身の程を教えてあげるのも優しさですから」 「よく言うぜ。オマエ、ユウリとお嬢に負けてるくせに。つまりだぜ、二人のライバルであるオレにも勝てないぞ」 「ごちゃごちゃうるさいですね……あなたの強さを見せてくださいよ」 「だから、勝負で教えてやるぞ!」 ビート君の挑発に乗って、ホップ君は駆け出す。 「あ、ちょっ……もう!寄り道しないって言ったのに!」 「ああなっては仕方ありませんね」 戦いの場へと走っていく彼を、私たちはやれやれと追いかけていく。 さっさと終わらせてナックルシティへと向かいたい。 そんな気楽な考えで。
9 20/01/25(土)00:21:54 No.657541588
でも、 でも。 考えてしまう。 この時、私は彼を止めるべきだったのだろうか。 わからない。いや、どのみち私が何と言ったところで止まるホップ君ではないだろう。 いっそ、背中を押すべきだったのか。いや、それこそしない方が良いだろう。 なら、私に出来る事なんて無かったというのか。 それは、あまりにも認めがたい。 だって、私は彼の事を誰よりも知っているつもりだったのだから。 ずっとずっと、隣にいたのだから。 でも、結局それは間違いだった。 私が知っていたのは彼のほんの一部分だった。 だからきっと、私は何もできなかった。 その結論だけは、何度考えても同じだった。
10 20/01/25(土)00:22:22 No.657541719
前回までの su3596117.txt
11 20/01/25(土)00:23:19 No.657541986
ああ…ついにホップが曇ってしまう…
12 20/01/25(土)00:23:46 No.657542129
ホップ曇らせ隊来たな…
13 20/01/25(土)00:27:55 No.657543294
底抜けに明るいやつかと思ってたホップが実はとても繊細なんだな…ってわかるの良いよね…
14 20/01/25(土)00:34:18 No.657545075
でも炎ウリとお嬢がいるから大丈夫だろ? 大丈夫なんだろ!?
15 20/01/25(土)00:42:40 No.657547443
実際あんだけカブさんたちに激励されてからのこれは落差が酷い
16 20/01/25(土)00:47:30 No.657548795
けっこう序盤なんだよね…