虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    20/01/19(日)23:45:55 No.656283779

    ・・・・・ 灼熱の地、エンジンスタジアム。わたくしはそこで再びカブさんに挑んでいました。 「アママイコ!しんぴのまもりっ!!」 兎にも角にもやけどを負う事は避けねばなりません。 守りを固め、すぐさまバチンキーに交代します。 「バチンキー!いやなおとです!!」 そして、相手の防御を下げ、バチンキーの攻撃を最大限活かせるように立ち回ります。 一手のミスがそのまま終わりに繋がりかねない緊張感が、スタジアムの気温と相まってわたくしの頭から余裕を奪っていきます。 「キー!!」 バチンキーの攻撃がキュウコンを沈めます。 そこで浮つきそうになる気持ちを必死で抑え込み、わたくしは次にカブさんが繰り出すであろうウィンディへの警戒を強めます。 そて、予想通りウィンディが場に出た時、カブさんがわたくしに声をかけてきました。 「ずいぶんと考えてきたみたいだね」 「泥臭いと笑いますか?」 カブさんは首を横に振ります。

    1 20/01/19(日)23:46:06 No.656283856

    「いいや、勝つために策を尽くすのは当然の事だよ。君が、勝利への執念を得た事をとても嬉しく思う」 カブさんは嬉しそうにほほ笑み、そして再び表情を引き締めます。 「だから、もう一度聞こう―――君は、このジムチャレンジに何を求めているんだい」 あの時と同じ問いかけ。 わたくしは迷わず答えます。 「強さを」 即答したわたくしに、カブさんは驚いたように目を見開きました。 「わたくしが旅に出たのは強くなりたいからです。自分の願いを果たせる強さを、何よりも――――弱い自分に負けない強さを求めて」 「ジムチャレンジでそれを得られるのかい?」 「わかりません」 再びの即答にまたもやカブさんは驚き、その反応に内心苦笑してしまいます。 「わたくしが今、あなたの前に立っているのは仲間たちの助力があったからです。わたくしだけでは折れて、そのままでした。だからわたくしは、自分が強いだなんて思えません」 あの二人がいなければきっとわたくしは失意のまま、故郷へと戻り二度と立てなくなっていたでしょう。 だから、わたくしは未だに弱いままで、何も強さの証を見つける事が出来ていません。

    2 20/01/19(日)23:46:34 No.656284010

    「だけど、進み続ければ。勝ち続ければ。いつか答えが見つかるかもしれません。ならば、わたくしは勝利を目指します」 旅に出たのは彼において行かれるのが怖かったから。彼の隣にいるという現状維持だけを求めて、わたくしは故郷を旅立ちました。 だけど、それでも。わたくしは、踏み出したのです。 どれだけ後ろ向きな想いであったとしても、前に進んだのは紛れもない事実なのです。 ならば、そこにもう一つ想いを重ねても問題はないでしょう。 あの時、カブさんに挑んで、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて。 折れて萎れそうになった時、あの二人に支えられて、わたくしは望みを得ました。 それはあまりにも今更で、きっと彼と彼女は最初から持っていたもので。 だから、ようやく、わたくしもあの二人と同じ地平に立てたのだと、そう実感できたのです。 ええ、ええ。そうです。わたくしは―――― 「わたくしは……勝ちたいのですッ!!勝って頂点を目指したいッ!!わたくしの強さを、心から信じられるようになりたいッ!」 昂る感情を抑えきれず、ベンチコートを脱ぎ捨てる。 その下に着ていたユニフォームがあらわになる。

    3 20/01/19(日)23:46:45 No.656284055

    それは、ジムチャレンジに挑む者が皆、その身に纏うもの。何を望み、何を願うのか。託す思いはそれぞれだけれども、結局のところ目指す場所はただ一つ。 ならば、 「だからわたくしは――――チャンピオンになるのですッ!!」 「―――よくぞ言ったッ!!」 カブさんは本当に、本当に嬉しそうに笑います。 まるで、少年のように。 「君は良いトレーナーだ!だが、チャレンジャーでは無かった!!」 両手を大きく広げ、感激を堪え切れない様子でわたくしに語り掛けます。 「そんな君が勝ちたいと!挑みたいと!折れそうな心を奮い立たせて、もう一度ぼくの前に立った!求めるもののために全力を尽くす。君はもう、立派なチャレンジャーだ!」 そして、その表情が強く引き締まる。 「ならばぼくたちも全力で応えよう!!」 一片の油断もないその表情は、カブさんがわたくしと本気で向き合ってくれるという何よりもの証明です。 だからわたくしも、今できる全力で、それ以上を振り絞って。

    4 20/01/19(日)23:47:36 No.656284378

    「カブさん!!」 「なんだい!!」 ああ、ああ。体が熱い。内に籠った熱を吐き出したい。 そして、それに相応しい言葉を、わたくしはもう知っています。 それは、忌々しいあの赤髪の口癖で、以前のわたくしなら決して口にしないような激情の言葉です。 ですが……今だけは、この熱に浮かされましょう。 「わたくしは今ッ!最高に燃えています!!」 「ああッ!ぼくもだよ!!」 ロゼリアがウィンディの炎に包まれ、力尽きます。ですが、ウィンディもまた彼女によって与えられた毒で力尽きました。 お互い、残されたポケモンはあと一匹。 汗が蒸気へと変わっていくような感覚に陥ります。 脳髄まで熱に侵されていきそうですわ。 でも……悪く、ありませんわね。 さぁ、もうひと頑張りです。

    5 20/01/19(日)23:47:49 No.656284446

    書き込みをした人によって削除されました

    6 20/01/19(日)23:48:32 No.656284707

    「これで決めましょう!!ハスブレロ!!」 「マルヤクデ!燃えさかれ!キョダイマックスで姿も変えろ!」 現れる二体の巨影。 示し合わせたかのように水と炎がぶつかり、真っ白な蒸気が会場を包み込む。 それを、猛火が晴らし、ハスブレロを焼き尽くそうとします。 それを、彼は耐えきってくれました。 ならば、これで最後です。 「ハスブレロッ!! その声と共に、ダイストリームがマルヤクデを貫きます。 激流が吸い込まれるようにマルヤクデに突き刺さり、その巨体が爆発します。 爆音と爆炎が空気を震わせ、最後に力尽きたマルヤクデが残りました。 勝敗は決しました。 「っ……!」 わたくしは拳を突き上げ、ハスブレロが雄たけびを上げます。

    7 20/01/19(日)23:48:49 No.656284800

    何度も挑み、何度も敗北し、一度は諦めました。 ですが、ですが。今ここにわたくしたちはいます。 立って、ここにいます。 そう、わたくしは、わたくしたちは、勝ったのです。

    8 20/01/19(日)23:49:07 No.656284916

    ・・・・・ 試合を終え、わたくしは挨拶のためにカブさんと向かい合います。 「自慢じゃないがぼくはジムチャレンジ初めの関門と呼ばれている。そのぼくに、くさポケモンだけで勝てる子が現れるなんてね」 「結局、運任せでしたわ」 それは謙遜などではなく、純然たる事実。 もしも相手の方が先に動いていたら、もしもこちらの攻撃が外れていたら。 そんないくらでもあり得る事態のどれか一つでもあったら、わたくしたちの勝利などありませんでした。 ですが、カブさんはわたくしの言葉を即座に否定します。 「いいや、君は運に任せたんじゃない。運を掴み取ろうと、引き寄せようと考えて考えて、その運命を掴み取ったんだ。君たちが勝てたのは間違いなく、君たちの実力だ」 感慨深そうにうなずき、ほほ笑む。

    9 20/01/19(日)23:49:24 No.656284989

    「本当に良いバトルだった。まだまだぼくにも学べることがあるのだと教えてもらったよ」 そして、カブさんは手を差し出します。 「さぁ、ぼくに勝った証だ。バッジを受け取ってくれ」 「っ……ありがとうございます!」 わたくしはぐっと涙をこらえ、その手を握ります。 激闘の末わたくしはようやくほのおバッジを手に入れました。 やっと、チャレンジャーになれました。 やっと、彼と彼女に並び立つ事が出来ました。

    10 20/01/19(日)23:50:20 No.656285292

    ・・・・・ 控室までの通路をわたくしは壁に手を付きながら歩いていきます。 試合によって上昇した熱はだいぶ冷めましたが、それでも失われた体力はそのままで、わたくしはふらつきながら通路を進んでいきます。 その時、疲労からか、足がもつれてしまいました。体が傾いていくのをどこかスローに感じてしまいます。 このまま通路で寝てしまおうかと考えた時、わたくしの体は何者かによって支えられました。 「……?」 「お嬢、大丈夫か?」 そこにいたのは、観客席で試合を見ていたはずのホップでした。 走ってきたのでしょう、その額には汗が滲んでいます。 ……まったく、あなたという人は。 わたくしは、彼にもたれかかったまま、一言、呟きます。 「……疲れましたわ」 「そうか、なら」 瞬間、わたくしの体が重力から解き放たれたように浮き上がります。 どうやら、彼に横向きに抱き上げられたようです。

    11 20/01/19(日)23:50:42 No.656285397

    この体勢は所謂……お姫様抱っこですね。恥ずかしさにまた熱が上昇していくのを感じます。 「重くないですか……?」 「……少し」 「……そこは嘘でも『軽いぞ』と言うところです」 「……すまん」 「……はぁ。まぁ、良いですわ。ホップの事ですから」 ええ、ええ。彼にデリカシーを期待したわたくしが悪いのですよ。 「それはそれでなんだかなぁだぞ」 不満を表すホップを無視して、わたくしは意識が途切れる前に伝えておきたいことを言おうとします。 そろそろ、意識がおぼろげになってきましたから。 「……ホップ」 「ん?」 「わたくし……がんばりました、わ」 「……ああ。流石だぞユウリ」 その言葉に安堵して、私の意識は途切れました。

    12 20/01/19(日)23:51:22 No.656285634

    前回までの su3584117.txt ちょっと長くなりすぎた

    13 20/01/19(日)23:52:50 No.656286060

    お嬢は山場を超えたか… さて次はホップが曇る番だぞ

    14 20/01/19(日)23:59:34 No.656288212

    やったね…

    15 20/01/20(月)00:02:41 No.656289286

    ホップどうなるんだろうなぁ…

    16 20/01/20(月)00:02:55 No.656289362

    お嬢がこんなに昂ってる… 序盤の難関と草タイプってところがうまく噛み合って序盤の見せ場として熱いよね…

    17 20/01/20(月)00:03:11 No.656289443

    めっちゃいい…草が勝つための戦術もすごい練ってあって素晴らしい…

    18 20/01/20(月)00:04:15 No.656289766

    炎単だと壁になるのは岩ジムぐらいだけど剣盾どっちだっけ

    19 20/01/20(月)00:07:07 [おまけ 1/2] No.656290679

    ・・・・・ 「あーあ。いいないいなー。お姫様抱っこいいなー。私だってほのおバッジゲットしてるのになー」 私はエンジンスタジアムの控室でひたすら愚痴っていた。 ここにいるのは私と、ベンチで寝かされている彼女だけ。 まるで眠り姫のように安らかに眠っている彼女を見ているとどんどん文句が溢れてくる。 「あんだけユニフォーム姿嫌がってたくせに勢いでベンチコート脱ぎ捨てちゃうしさ。大丈夫かな?あの試合規制かけられたりしない?」 彼女の頬を指でつつくと、鬱陶しそうな声が彼女の口から漏れてくる。 どうやら安眠を邪魔されたくないようだね。 「まったくさー前から思ってたんだけどさーホップ君お嬢様にやたら甘くない?ていうか優しくない?」 女の子の夢みたいなシチュエーションで戻ってきた彼女を見た時はもう一戦交えてやろうかと思ったものの、 流石にひんしの相手に手を出すような真似は出来なかったので、大人しくベンチで寝かせてあげた。 あ、ホップ君は念のためお医者さん呼びに行ったよ。

    20 20/01/20(月)00:07:28 [おまけ 2/2] No.656290775

    「これはあれかなー、私との距離感が逆に近すぎて友人感覚なのだろうか。ホップ君私の事昔男だと間違えてたし」 ワザとらしくアゴに手を当て思案のポーズをとる。 「むーん。これはやっぱり私もお姫様抱っこ頼もうかな。してもらえるかは別として意識してもらえるだろうし」 そこまで言ったあたりで、私は盛大に溜息を吐く。 「……まぁ、今はやめておいてあげるよ。君が、頑張ったご褒美だからね」 そして、そっと眠る彼女に微笑む。 目が覚めた時彼女が、いつも通りのお嬢様であることを確信して。 「おめでとうユウリ。……流石、私のライバルだね」 譲れないものはあるけれど、それでも。私たちの旅がまだ続く事が嬉しいから。

    21 20/01/20(月)00:08:58 No.656291261

    >炎単だと壁になるのは岩ジムぐらいだけど剣盾どっちだっけ 基本盾ですけど剣の部分も入れる予定です 元より主人公二人制なのでどっちもって感じで

    22 20/01/20(月)00:09:37 No.656291495

    炎ウリどんどん嫉妬しろ!嫉妬の炎を爆発させろ!!

    23 20/01/20(月)00:10:00 No.656291629

    >……まぁ、今はやめておいてあげるよ。君が、頑張ったご褒美だからね イカン!これは敗北主義だ!

    24 20/01/20(月)00:15:56 No.656293634

    というかホップはお嬢抱きかかえれるなんてすごいな…

    25 20/01/20(月)00:16:08 No.656293698

    絆が深まるごとにビート君がどうなるのか怖くなる

    26 20/01/20(月)00:20:41 No.656295247

    体格差的に抱き抱えたとき顔にお嬢のおっぱい当たってそう…ムラムラこないホップの忍耐力すごい…

    27 20/01/20(月)00:23:43 No.656296361

    ホップ君は活発系美少女とセクシー美女の二人と冒険してるからな 忍耐力マックスだろう

    28 20/01/20(月)00:25:58 No.656297135

    幼馴染が二倍でコンプレックスも二倍だな

    29 20/01/20(月)00:29:29 No.656298349

    >譲れないものはあるけれど、それでも。私たちの旅がまだ続く事が嬉しいから。 いい… 女の友情もこのお話の見どころかなっていつも読んで思ってる

    30 20/01/20(月)00:42:25 No.656302767

    今見つけたからチクショウ! 今から読むわいつも楽しみにしてますわよ