虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • 「……」 ... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    19/11/11(月)23:18:25 No.637978578

    「……」 ぽりぽり、ぱりぽり。 眼前に佇むは黄金色に染まった大根。ただひたすらに無心で齧る。 「…………」 ぱりぽり……ぱり、ぽり。 私以外に誰もいない部屋に、たくあんを齧る音が響く。味も食感もいいのが、今ばかりは小憎たらしい。 「………………」 ぱり……ぽり……。 そっと箸を置く。 「…………あー!もうっ!どうしてっ!おやつがっ!たくあんっ!なんですかっ!」 誰に知られるでもなく、乙女の不満が密かに爆発した。

    1 19/11/11(月)23:18:44 No.637978675

    ――事の始まりは今朝。 「ふぅ……おはようございます」 「ん?……おう」 「おはよう、私ノーマル」 「お~、遅かったのぅ。厠でも行っとったか?」 「ちょっと朝の支度に手間取っただけですよ。食事の席で変な事言わないで下さい……って」 少し遅れた朝ご飯の席には、何故か小さな樽が置かれていた。 「……何ですか、これ」 隣に腰掛けて我関せずといった具合に朝ご飯を食べている土方さんに、一応尋ねてみる。と言うのも、その樽は見覚えのあるものだったし、中身の予想はついていたからだ。ただ、万が一と言う事も――

    2 19/11/11(月)23:19:08 No.637978830

    「たくあんだ」 ――無かった。実に予想通りの答え。安心感を通り越し、一周回って……いや、二周回って気持ち悪い。 「いや、それは見れば分かるんですけど……」 「美味しいぞ」 反対側からひょいっと顔を出した私オルタ。美味しそうにたくあんを齧ってはご飯を頬張っている。 「それも知ってますけど、そう言う事じゃなくてですね……って、こら。口に物を入れたまま喋らない」 「もぐもぐ……ん、分かった」 「分かってないですよね、絶対……。茶々さんはどうしたんです?」 「茶々ならおかわりに行ったぞ。ほれ、あっちじゃ」 振り返って見ると、茶々さんが食堂の奥へと向かっている途中だった。挨拶代わりに手を振っているので、軽く手を振り返してから正面に向き直る。

    3 19/11/11(月)23:19:26 No.637978917

    「それで、土方さん」 「あ?」 「何故突然たくあんを?しかも一樽」 「あー……今日はたくあんの日だからな。偶にはお前達にも一樽くらいやろうと思っただけだ」 そっぽを向きながらのぶっきらぼうな言葉。要するにこのたくあんは、土方さんなりの気遣いなのだろう。だとしたら、どうせならもっと良いものが欲しかった……そんな言葉は胸にしまっておこう。 「それなら、何でわしには無いんじゃ?」 「馬鹿言え。お前はいつから新撰組になったんだ」 「あ、新撰組限定な感じなのね……わし、仲間外れみたいでちょっとショック……」 「私のを分けてあげますよ。……では、いただきます」 樽を開けてみれば、ご丁寧に一口大に切った状態でたくあんが入っていた。一食分を小皿に取り出して―― 「って、土方さん土方さん」 「うるせぇぞ。黙って食え」 「いやいや……たくあん一樽は多くないですか?流石に一食では食べきれないんですけど」 「ああ、そいつは今日一日の分だ」 「そう言う事でしたか。……それにしたって多すぎるような気もしますけど」

    4 19/11/11(月)23:19:49 No.637979020

    「それから、今日の茶請けもそれだからな」 「はいはい…………はい?」 「それを買ったら丁度予算が無くなってな。偶にはいいだろ?んじゃ、ごちそうさん」 「えっ、ちょっ!?ひ、土方さんっ!?」 無断の金策は切腹だが、そもそも勝手に予算を使い込むのもいかがなものだろうか。 「ぱ、ぱ……パワハラですー!?」 そそくさと逃げていく背中に、懸命な叫びは届かず。 ……まさか今更になって組織の闇を見る事になろうとは。それもこんな形で。 「何々?何の話?」 「ん~、土方にたくあんをもらった話……か?」 「それだけだと喜ぶ事な気がするケド……」 「それがのう。おき太の奴、今日のおやつまでたくあんなんじゃと!」 「はっ!そいつは傑作じゃ!稀代の天才痩せ狼様にはちょうどいいじゃろうき!」 ゲラゲラ笑っているノッブとどこからかやってきては馬鹿にしてくるダーオカ。イラッと来たので切り伏せた。ついでにたくあんを口に捻じ込む。泡を吹いていたが、是非もなし。

    5 19/11/11(月)23:20:05 No.637979114

    ――時刻は戻って、おやつ時の部屋。 「美味しいですけど……美味しいですけど!でもやっぱり、おやつにたくあんは無いですよ……。権力許すまじ……パワハラ上司許すまじ……!」 いくらたくあんの日だからと言って、こんな横暴が許されて良いのだろうか。いつもの三割り増しのたくあん。朝昼晩だけでなく、おやつまでたくあん。たくあんたくあん&たくあん……げしゅ何とか崩壊?を起こし、下手をすれば夢に出かねないレベル。黄金色の大根に囲まれるのは、実際、悪夢めいた光景である。しめやかに切り刻んでしまいそうだ。 「馬鹿ーっ!土方さんの馬鹿ーっ!沖田さんにもっと甘味を!ぷりーずぎぶみー甘味!もあ甘味っ!」 どうせ誰も聞いていないのだからと不満と欲望を大きな声に出して大の字に倒れ込む―― 「……あ」 「えっと……や、沖田さん」 扉の陰で、少し気まずそうな顔をしたマスターとバッチリ目が合った。

    6 19/11/11(月)23:20:21 No.637979198

    「……マスター!聞いて下さいよ、マスター!土方さんが酷いんです!ついにたくあんに頭をやられたのかおやつまでたくあんで侵食してきてこのままじゃ沖田さんまでたくあんに染められちゃいます!おやつの予算がたくあんに……無断の金策は切腹と謳う一方で勝手に予算を使うとかありえませんよね!?マスターからも何か言ってやって下さい!」 ごろりとうつ伏せになり、起き上がる勢いを利用して急加速。最速でマスターの元まで詰め寄り、即座に悪魔の所業を訴えかける。 「ど、どうどう……無茶言わないでよ。とにかく落ち着いて、沖田さん」 対するマスターは若干引き気味。しかしこちらも死活問題なので、抑え込むわけにはいかない。 「私は馬ですかっ!――って、その手に持ったそれは……!」 「?……ああ、これ?ポッキー。今日のおやつに、沖田さんと一緒に食べようと――」 「――頂きましょうっ!」 自分でも若干どうかと思うくらいの高速レスポンス。しかし甘味レス故致し方無し。 「ささ、マスター!早く中へどうぞ!」 「これだけで機嫌直るんだ……ちょろいなぁ……」 「何か言いました?」 「いや、別に?じゃあ、お邪魔します」 「はいっ!」

    7 19/11/11(月)23:20:59 No.637979387

    「はぁ……甘くて美味しいです……」 ポッキーをパクリと一口。甘みが口腔に広がり、たくあん漬けだった味覚を一気に上書きする。 「本当にありがとうございます、マスター」 「いやいや、喜んでいただけた様で何よりだよ」 隣の彼は一本食べ終えた後、指先をちろと舌で舐める。その仕草が色っぽく感じられて、少しどきりとしてしまう。 「そっ……そう言えば、珍しいですよね、マスター」 「珍しい、って……何が?」 そんな邪な思いを振り払おうと、関係のない話題を持ち掛けてみる。惚けたような顔は年相応のもので、可愛らしい。 「ほら、何時もなら和菓子を持ってきてくれるじゃないですか。それなのに、今日はポッキーなんだなぁ、って……」 月に何度か、二人きりでお茶をする事がある。その時に彼が持ってくるのは、お団子やお饅頭、かりんとうに大福などなど……和風の物がほとんどだった。 「まあ、今日はポッキーの日だし?たまにはいいかなと思ってね」 「へぇ~……そうなんですか。たくあんだけじゃなかったんですね」 「たく……え?」 来年は土方さんの分のたくあんの予算でポッキーを買い占めることにしよう。食べ物の恨みは恐ろしいのだ……!

    8 19/11/11(月)23:21:19 No.637979496

    「そうそう。ポッキーと言えば、ポッキーゲームですよね」 「え!?」 「?私、何かおかしな事、言いました?」 「あ、いや……沖田さんの口からその単語を聞く事になるとは思わなくて」 「……まあ、確かに。鈴鹿さんからお聞きしなかったら、多分ずっと知らないままだったでしょうし」 そこまで言って、一区切り。私はポッキーに、彼は湯飲みに手を伸ばす。互いに手に取り、それを口にしようとした正にその時、ふと閃いた。 彼との短くない付き合いの中。思い返せばいつも私ばかり心揺さぶられているので、偶には大勝利してみたいと言うものだ。そして今、格好の題材が目の前にある。ならば見過ごす手はない訳で。 詰まる所。 「ポッキーゲーム、してみます?」 「――んぶっ」 ちょっとしたいたずらを仕掛けてみた。

    9 19/11/11(月)23:21:40 No.637979608

    「けほけほっ……い、いきなり何言い出すのさ」 「いやぁ、別にいきなりでもないと思いますよ?話の流れ的に」 「そ、それはそうかもだけど……!」 慌てている彼を見ると、少しだけ優越感。 「……おやおや~?その慌てっぷりは、もしやアレですか?マスターは、た・か・が!……ゲーム如きで恥ずかしがってるんですか~?」 「違う違う!ただちょっと、びっくりしただけだって!」 「本当ですかね~?」 「本当だってば!だから、ニヤニヤするのやめて!?」 手玉に取っているようで愉快な気分。ちょっとからかいすぎな気がしないでもないけれど、折角主導権を握れたのだ。心行くまで楽しんでもバチは当たらないだろう。 「だったら証明して下さいね?」 「証明って……!?」 彼の言葉を無視して体ごと向き直り、目を閉じる。ポッキーを口に咥え……そして差し出す。 「……ん、どうぞ、まふたー」 「~っ」 ちらりと目を開けると、彼は困ったように額を手に当てて顔を赤くしていた。実に愉快。

    10 19/11/11(月)23:22:16 No.637979784

    面白いものも観れたので、そろそろからかうのもやめようとした頃。 「だったら、受けて立つよ……!」 「……ぇ……?」 そう言って彼は逆の端を咥えた。 その距離、実に十センチ程。見据えた彼の顔は少し赤いが、多分私の顔はもっと赤いだろう。動悸も激しい。 だと言うのに、彼は御構い無しに容赦なく、ポッキーを食べ進めてくる。刻々と迫る彼の唇。避けなければと思いつつも、まるで金縛りにあったかのように体が動かない。 接触まで、三、二、一―― 「……ふんっ!」 「――!?」 その寸前で。ぽきりと架け橋が折れる。

    11 19/11/11(月)23:22:35 No.637979877

    「うん、美味しいね!」 「え、な、あ……」 安堵と落胆が体を包む中、声にならない声を出して固まる私とは裏腹に、彼は残りを食べ終えて素早く立ち上がった。 「はい、お終い!じゃ!」 駆け足で逃げていく背中を見ながら、唇に手を当てる。 「あと、ちょっと、で……」 意気地なし――なんて思ってしまい、どうにも居た堪れなくなって枕に顔を埋める。 一人取り残された部屋で、鼓動がうるさいくらいに響いていた。

    12 19/11/11(月)23:28:13 No.637981601

    たくあんでポッキーゲームやれないかな…

    13 19/11/11(月)23:28:18 No.637981625

    イチャイチャしおってからに…

    14 19/11/11(月)23:30:41 No.637982363

    攻めの姿勢の沖田さんも良き...

    15 19/11/11(月)23:35:29 No.637983794

    むっ、いいわね! 沖田ちゃん、私ともポッキーゲームしましょう!!

    16 19/11/11(月)23:41:07 No.637985446

    バビロニアが始まってから藤丸の色っぽさが怪文書でもアピールされるようになって鼻が高いよ…

    17 19/11/12(火)00:00:37 No.637990998

    いちゃいちゃしてるな?

    18 19/11/12(火)00:07:52 No.637993021

    >攻めの姿勢の沖田さんも良き... でも最終的に受けになっちゃう沖田さんもまた良き…

    19 19/11/12(火)00:10:02 No.637993638

    私はとてもいいと思う