19/09/14(土)21:31:22 「マス... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1568464282387.jpg 19/09/14(土)21:31:22 No.622779459
「マスター、無事に勝利しました」 「うん、お疲れ様。アナスタシア」 それはとある日のこと。新たに微小特異点が発見された為、俺とアナスタシアはその修正にレイシフトしていた。 二人だけなのはこの特異点の不安定さが原因らしい。なんでも特異点そのものの存在が揺らいでいるためレイシフトの経路も不安定であり、存在規模の大きいサーヴァントを複数レイシフトさせることは危険なのだとか。そのため、俺が最も信頼できる相手としてアナスタシアに白羽の矢が立った。 聖杯を霊基に取り込んだアナスタシアの力は凄いもので、押し寄せる敵性存在を軒並み蹴散らし、たった今特異点発生の元凶であるエネミーを打倒したのだ。 「いつももそうだけど、やっぱりアナスタシアが居てくれたら頼りになるよ」 「当然です。だって私は貴方の最強のサーヴァントだもの」 当たり前と言わんばかりに、淡々と言葉を述べる。だが、その自負も俺には納得できる。俺が一番信頼できるサーヴァントを聞かれたら真っ先にアナスタシアの名前を挙げる。それに、俺たちはこれまでの旅において、幾度となく困難を共に乗り越えてきたのだ。
1 19/09/14(土)21:31:43 No.622779592
「それよりも、カルデアに戻ったらお茶にしましょう。少し疲れてしまったから、甘いものが欲しいわ。マスター、今日のデザートのメニューは何だったかしら?」 「えっと……、確かミルクレープだった筈だよ」 「まあ。それは今から楽しみね」 ふっと彼女の雰囲気が柔らかくなる。戦闘時はロマノフの皇女として毅然とした態度で敵に立ち向かうが、普段は十七歳の可愛い女の子だ。こうしたギャップは、彼女の魅力の一つだと思う。 そうやって他愛ない会話をして、レイシフトでの帰還を待つ。何度も行ってきた微小特異点の修復。最早慣れたもので、今回も簡単とは言わないが大した苦戦もなく終えることができた。 だからだろうか、二人とも気を抜いてしまっていたのは。 それはまったくの偶然だった。視界の端に、黒い影が動くのが目に入った。それはまさしく影。消滅しかけたシャドウサーヴァントが、消えかけながらも銃のようなものを構えようとしている。 一体なんで気付けなかった?気配遮断?霊体化?瞬間的に思考が錯綜する。しかし、身体は、行動は迷わなかった。気付いた時にはアナスタシアを突き飛ばしていた。
2 19/09/14(土)21:32:09 No.622779759
突然の行動に驚いた顔をするアナスタシアを認識した直後、腹部に大きな衝撃が走る。アナスタシアを突き飛ばして不安定な体勢になっていた俺は、一瞬たりとも踏ん張ることはできず、為す術なく後ろに吹き飛ばされた。受け身を取ることもできずに少しの間地面を転がって、それでようやく俺の体は静止した。 腹部がとても熱い。思うように動かない手を熱の感じる場所に押し当てると、そこには穴が空いていて、そこから温かい液体が止めどなく溢れてくる。視線だけを動かしてシャドウサーヴァントを見やる。どうやら今のが最期の悪足掻きだったようで、その霊基は崩壊し、消滅していた。 「――マスター!?」 我に帰ったであろうアナスタシアがこちらに駆け寄ってくるのが見える。怪我は……ないようだ。それなら良かった。 さっきから視界がぼやけてきている。俺を呼ぶアナスタシアの声も、少しずつ遠のいている。腹部に感じる熱さと、それと反比例するかのように骨の髄から温度が抜けていくような寒さを感じながら、俺は意識を手放した。
3 19/09/14(土)21:32:36 No.622779931
……薬品の匂いが鼻について、ふと眼が覚める。 「ここは……」 知らない天井、ではない。カルデアの医療棟の一室だ。どうやら俺は、そこのベッドで寝かされているらしい。 一体どうしてこんなことに、と考えの回らない頭を無理やり働かせながら上体を起こそうとするが、体にはまったく力が入らず、代わりにと言うべきか腹部に鋭い痛みが走る。あまりに唐突な痛みに堪えきれず、声にならない声が漏れる。 しかし、その痛みがきっかけになったのか、なぜこうなったかを思い出した。そうだ、微小特異点でアナスタシアを庇って撃たれて……。それで医務室に運ばれたのだろうか。 ふと、足に何かが乗っていることに気づいた。首だけを起こして何かを確認すると、そこにあったのは美しい銀髪。 「アナスタシア……?」 彼女が俺の足に縋り付くようにして眠っていた。もしかして、ずっと側にいてくれたのだろうか。 彼女は僅かに身動ぎすると、小さく唸りながら目を覚ました。そして寝惚け眼の視線が俺のものと交わると、ぱちくりとその目を瞬かせ。
4 19/09/14(土)21:32:55 No.622780021
「マスターっ!」 俺の胸元に飛びついてきた。近くでその顔を見ると、目は赤く、泣き腫らした跡がある。もしかしなくても、泣いていたのだろう。 「生きてた……!よかった……!」 今もまた、俺のために涙を流してくれている。そのこと自体は嬉しいけど、いつまでも彼女の泣いている姿は見たくない。 「大丈夫だよ。こんなんじゃ死なないって」 元気だということを見せるために起き上がろうとしたけど、どれだけ頑張っても体はピクリとも動かなかった。 「その姿のどこが大丈夫なの!?」 悲痛な声を上げるアナスタシア。思えば彼女の大声など、聞くのはこれが初めてかもしれない。なんて場違いな考えが浮かんでしまう。 「貴方が気を失ったあと、貴方の周りも体に触れた私の手も真っ赤に染まって!カルデアに戻ったら一刻を争う状態だってすぐにICUに入れられて……!貴方は気づいてないかもしれないけど、三日も眠り続けたのよ!?」 そうだったのか。確かにまったく気づいていなかった。ふと目に付いたデジタル時計に目を向ける。日付表示機能を持つそれが示した今日は、俺の知っている日よりも進んでいた。
5 19/09/14(土)21:33:22 No.622780179
「……なぜ、あんな真似をしたのですか」 「なぜ、か」 そう聞かれても、その理由なんてたった一つしかない。 「守りたかったから」 「貴方は馬鹿ですか!」 俺の答えを聞いたアナスタシアは激昂とともに立ち上がる。ああ、これは本気で怒っているなとすぐに判る。彼女は優しい人だ。相手を思っているからこそ、無理や無茶に対して怒るのだ。 「私はサーヴァントです!この身に武勇はありませんが、サーヴァントとはマスターの刃、マスターの盾となるもの!それを貴方が庇って、命を落としかけるのは違うでしょう!私は消滅しても再召喚されれば済む話ですが、貴方は生きているのですよ!?」 「……ごめん。でも、分かっていたけどアナスタシアを盾になんてできない」 「……貴方は分からないのですか、遺される方の気持ちが。先に死なれてしまうという恐怖が」 「分かるよ」 その気持ちは凄くよく分かる。だって、いつも俺は守られて、遺される側だったから。 「俺を守って死んでいった人は沢山いる。その度にいつも怖さと不甲斐なさと罪悪感を感じきた。だから、例え再召喚すればまた会えるとしても見殺しになんてできなかった。それに」
6 19/09/14(土)21:33:40 No.622780279
それに。 「誰かを助けようと手を伸ばしてあと一歩届かない哀しさと悔しさも知ってる。だから、今度こそは守れて良かった」 もう誰も、自分の目の前で死んでほしくなかった。もう、あんな思いをするのは沢山だ。だからこそ今回は、自分の手で大切な人を守ることができて嬉しく思う。 「それで貴方が死んでしまったら意味がないでしょう……」 アナスタシアが俺の隣に座り込んで、俺の手を握ってくる。体の感覚がはっきりしなくても痛みを感じるくらい、強く。 「……お願い。掴んだ手を離さないで」 「うん」 「私の目の届くところに居て」 「うん」 「私の声を聞いたら、いつでも返事をして」 「うん」 「私はもう、失いたくはないの……」 「分かったよ」 そうアナスタシアに言う。だけど、もしまた同じようなことがあれば、俺はきっと同じことをする。申し訳ないとは思うが、自分でも止められないだろう。 だって、俺も、君という大切な人を失いたくはないのだから。
7 19/09/14(土)21:38:36 No.622781830
前のアナスタシア怪文書がイチャイチャさせようとして勝手に重くなったから逆に最初から重くするつもりで書いた
8 19/09/14(土)21:44:25 No.622783859
湿度高い
9 19/09/14(土)21:45:30 No.622784221
カド「……アナス…何を、やっているんだ…?」
10 19/09/14(土)21:52:11 No.622786273
もっと軽くイチャイチャしろ
11 19/09/14(土)21:57:50 No.622788360
むしろ今までずっと軽いイチャイチャばっか書いてたから偶にはね…
12 19/09/14(土)22:03:07 No.622790388
異アナは異アナだが汎アナは汎アナでいいよなと思ってたとこに供給あるのはありがたい