虹裏img歴史資料館

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19/08/04(日)23:27:21 カラッ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1564928841502.png 19/08/04(日)23:27:21 No.612121664

カラッとした暑さで目を覚ました。 いつも通りに起き上がって、いつも通りに体を解して。 そして一回、大きく深呼吸。 それでも嫌な感覚が続く自分の胸に手を当てる。 …今日は、私の命日。 イヤでも意識してしまうこの日が、来てしまった。 皆を起こしてしまわないように音を殺しながら、窓に向かい外を見る。 快晴。疎らな小振りの雲が遠くの方に見える。 あの日とも、サガロックの日とも違う天気。 私の不安が小さく感じるような晴れ渡る空を見て、少し胸が軽くなった。 うん、大丈夫。なんて事無い。 後ろから聞こえるちょっとした呻き声で溜め息が漏れる。 まったく…私が居ないといつまでも寝てそうなんだから。 「ほら!朝よ!皆起きる!」 ゾンビのようにゆっくりと起き上がる仲間達の姿で、ザワつく胸が少し落ち着いた気がする。

1 19/08/04(日)23:27:32 No.612121719

「愛ちゃん、ほんとに大丈夫?」 「大丈夫よ、大丈夫」 「無理なんてしなくていいんですよ?」 「もう!ほんとに大丈夫だから!」 全員を起こしてからずっとこんな調子。 大部屋からミーティング室に着いても、私を気にしてずっと皆が話しかけてくる。 大丈夫って言ってるのにそんなに言われたら気になってくるじゃない………まぁ、心配してくれて嬉しいけど。 「いつまで騒いでんじゃい!!」 そんな中で、アイツだけが変わらない。 「でも幸太郎さん!やっぱりこういうのって大事じゃむぎゅ」 「やかましぃのぉ!伝説になった日じゃろがい!真正面から受け止めりゃ良いじゃろがい!!」 立ち上がったさくらが指を突きつけられ、勢い良く椅子へ逆戻り。 「大体お前等もう死んでまぁ~す!もっかい起きようがどうにもなりましぇ~~ん!!!」 …確かに、そうだけど。

2 19/08/04(日)23:27:47 No.612121801

「そもそもサガロックでも食らってたじゃろがい!シャワー感覚で浴びんかい!」 「シャワーなんて使えた事無かっちゃけどな」 「…雷の一発や二発や百発、もう怖くないよな!なぁ愛!」 モヤモヤの相手をしている時に突然聞かれて、うまく言葉が出てこない。 「………私は」 「よぉ~く言ったぁー!!!!お前等も愛がこう言ってんだから気にするなぁーー!!」 全員がポカンとした表情を浮かべる。当然、私も。 「それに見ろこの愛の顔!」 「はぁ?」 「私は行ける!って顔しとるじゃろがい!行けるよな愛!?ウン、イケル。それでよぉーーーーーし!!!!」 「張っ倒すわよ!?」 意味わからないくらい雑な物真似と、意味わからない勢いで押し切る会話。 いつものアイツ。バカみたいなアイツ。 …なんか、気にしてた私もバカみたいじゃない。

3 19/08/04(日)23:28:03 No.612121910

「そういうわけじゃい!今日のお仕事は野外ミニライブ!ビビっとる場合じゃないからなぁ!?」 「野外ライブ…ね…」 本当に私とは縁があるみたい。………嫌な縁だけど。 「…怖いか?」 …こういうとこ、ほんと嫌い。 本当に大事なところは真面目になるの、ズルいじゃない。 「ふふっ。そんなわけ無いでしょ!私を誰だと思ってんのよ!」 だから笑って宣言してあげる。もう誰かさんのせいで怖くなくなったし。 「…いよぉっし!そんじゃあ今日も一日張り切っていきましょおーーーーう!!!」 アイツから貰った私の自信が、またアイツに。 不敵な笑みを浮かべたアイツの叫びに、皆頷いた。

4 19/08/04(日)23:28:15 No.612121974

「「「「「「お疲れさま!」」」」」」 「ヴァーヴ!」 晴れ渡る空の下で何が起きるわけも無く。無事にライブは歓声と拍手の中で幕を閉じた。 まぁ、何かが起きたと強いて言うなら。 「あぁーいお疲れさぁーん」 「あぁ!?グラサンおめーなんやそん格好!」 「巽幸太郎、一夏の思い出。バージョンでーす」 普段着ている赤チョッキを脱いで、冷えたサイダーを飲みながら出てきたアイツ。 いつも通りの衣装で蒸し暑かった私達を差し置いて、一人だけ涼しげ。 あっ、サキにぶん殴られてる。 「はぁーったくよぉ…そうだ!私達も何か飲もうぜ!」 「まぁ、確かに冷たい物欲しいけど…お金はどうするのよ」 「ここにあるやろ?」 倒れ伏しているアイツを指差すサキ。 …まぁ、いっか。

5 19/08/04(日)23:28:41 No.612122120

「皆疲れてるでしょ?私買ってくるから」 「え、でも…」 「大丈夫!皆より慣れてるから体力も余ってるの!」 「…それじゃ…お願いね、愛ちゃん」 心配そうな表情を浮かべる純子とさくらを笑顔で宥めて。 アイツの懐から長財布を抜き取って、外へ。 熱射が降り注ぐ道を一人歩く。 ………私、越えたんだ。 質の悪い冗談みたいな死因が、二度も続いたけれど。 今日を越えられたんだ。 「…やったんだ、私」 「…やった」 「やっ!ったぁ!」 思わず声に出ちゃった。慌てて周りを見るけれど、そこは流石の佐賀。誰も居ない。

6 19/08/04(日)23:29:01 No.612122215

ついさっきまで踊っていたのに、今度は心が躍る気分で足を動かす。 体が溶けてしまいそうな熱さも、笑って流せるくらい。 少し歩いて、ようやく自販機を見つけて前に立つ。 …皆が何を飲みたいか。聞き忘れちゃった…どうしようかしら。 前髪を弄りながら悩んでいると、ついさっきまで…ライブ中に散々浴びていたものを感じ取った。 ………誰かに見られているような気がする。 振り返り、周りを見渡す。 …誰も居ない。人っ子一人、居ない。 アイドルやっていたからこそわかる。気のせいにするにしては、強い思いが篭っている視線。 間違い無く何処かから見られている。 柱、家屋、車。 全部に注視するけれど、誰も居ない。

7 19/08/04(日)23:29:17 No.612122302

…早く、戻ろ。 自販機に向き直し、アイツの財布からお金を出す。 取り出した瞬間に、鳥の鳴き声が聞こえた。 空を見上げる。 晴れ渡る空。起きた時もライブ中も変わらない空。青がどこまでも広がる空。 だけど、違った。 朝起きた時遠くに見えてた疎らな小さい雲。 それが私の真上にあった。 体が、ピリつく。 何かが弾けるような感覚。サイダーを飲んだ時みたいな、そんな感覚が全身に。 …逃げなきゃいけない気がするのに動けない。体が、動かない。 経つ時間が遅く感じる。世界全部遅くなって、私の思考だけそのままみたい。 こういうのなんて言うんだっけ。そう、確か。 「…晴天の、霹靂」 私の視界が、真っ白に染まった。

8 19/08/04(日)23:29:34 No.612122415

轟音が響く。 白に染まった視界の中で、何も出来ずに音を聴く。 ………想像していた衝撃は、痛みは、無かった。 むしろ覚悟していたモノとは真逆。温かさが私を包み込んでいる。 …私、死なないって言ってたじゃない。 きっと、ここがあの世。天国かしら。 それなら、こんな事したヤツの顔を張り倒してやらないと。 動こうとしたけれど、強く体を縛れているみたいで動けない。 「…ほんと、なんなのよ」 「最悪。あの視線は、そういう事だったの」 「気持ち悪いヤツ。最低。バカじゃないの」 「私一人を、なんでそんなに殺したいのよ!」 ………そこまで吐き出して、違和感に気付いた。

9 19/08/04(日)23:29:58 No.612122544

白に染まった視界。その白を良く見ると、縫い目が見える。 私の頭は何かに埋もれているけれど、少しだけ動く鼻が制汗剤の匂いを嗅ぎ取る。 …そこに混ざる、ゲソの匂い。 「………アンタ」 「散々言ってたじゃない。私は死なないって」 「真正面から受け止めろって、シャワー感覚って」 「そう、言ってたじゃない」 話しかけても、返事が来ない。 「…バカ」 「あんだけ言っといて、焦ってんじゃないわよ、バカ」 私よりも、皆よりも。 アンタが一番、気にしてたんじゃない。

10 19/08/04(日)23:30:15 No.612122632

「………一人では、どうにも出来なくても」 「仲間と共に在れ。支え合うために、お前達は居る」 アイツの真面目な声が、頭上から届いた。 私を包み込む温かさが離れると同時に、染まった視界も世界を映し始める。 さっきまで見渡していた光景をバックにアイツの姿。 雷が落ちた瞬間から、高鳴っていた胸が、激情が落ち着いていく。 「…アンタも仲間でしょ」 「…」 なによ、このバカ。 あれだけ人を心配しておいて返事を寄越さないこの男に、感謝よりも苛立ちが募ってきた。 自販機にお金を入れて、飲み物を選ぶ。 がしゃこん。 落ちてきた缶を取り出して、アイツに放り投げる。 「アンタも仲間なんだから、手伝いなさい」 困惑した表情を浮かべるアイツに、笑顔。

11 19/08/04(日)23:30:53 No.612122847

「…そう、か」 微笑を浮かべるアイツ。 …少し、胸が高鳴る。 さっきまでの、恐怖とかそういうのじゃない。 もっとモヤモヤとして、だけどどこか心地の良い感覚。 掻き消すように頭を振って人数分のお金を自販機へ。私とアイツ。ジュースを持って、帰り道を二人で歩く。 ………ダメだ。ダメ。高鳴るこの胸が、止まりそうにない。 隣を歩くアイツが気になって仕方ない。 だから、これも仕方ない事。思った事を言ってしまうのは、仕方ない事。 「ねぇ?」 「なんじゃい」 「アンタのアレ。天国かと勘違いしたんだけどさ」 「…アレだったら…雷に落ちられるのも、悪くないかも」 きっと熱さだ。顔が真っ赤になるのは、仕方ない事。 だけど、アイツの顔も真っ赤なのは、仕方ない事で済ませたくなかった。

12 19/08/04(日)23:31:28 [sage] No.612123036

愛ちゃんの伝説の日を書きたかったでありんす 書いたでありんす

13 19/08/04(日)23:41:02 No.612126296

よか…

14 19/08/04(日)23:41:22 No.612126441

尊かー!

15 19/08/04(日)23:47:51 No.612128563

脱いだシャツの白さの活かし方が粋でありんすなあ

16 19/08/04(日)23:49:26 No.612129033

エモかー!

17 19/08/04(日)23:49:50 No.612129131

青春でありんすー!

18 19/08/04(日)23:49:53 No.612129162

そのまま抱きなんし!

19 19/08/04(日)23:56:00 No.612130994

一線引いてる幸太郎はんとそこを飛び越えていこうとする愛はんがエモエモのエモでありんすなあ

20 19/08/04(日)23:57:06 No.612131299

実はめっちゃ心配してたってよかね…

21 19/08/04(日)23:59:14 No.612131909

雷を見る度にこの時のことを思い出しなんし!

22 19/08/05(月)00:01:37 No.612132622

青い春とよ! 夏だけど!

23 19/08/05(月)00:02:50 No.612133015

よか…

24 19/08/05(月)00:08:02 No.612134355

この甘酸っぱい空気たまらん!

25 19/08/05(月)00:09:00 No.612134655

電流が走ったの

26 19/08/05(月)00:09:27 No.612134790

書き込みをした人によって削除されました

27 19/08/05(月)00:10:00 No.612134951

あなただと気付いたの

28 19/08/05(月)00:14:30 No.612136316

エモいでありんす!

29 19/08/05(月)00:18:23 No.612137419

夏の暑さのせいにはさせないでありんす!

30 19/08/05(月)00:18:54 No.612137539

エモかー!!

31 画像ファイル名:1564932004651.png 19/08/05(月)00:20:04 No.612137828

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

32 19/08/05(月)00:20:49 No.612138022

おあああああっす!!!!!!

33 19/08/05(月)00:21:16 [sage] No.612138144

>1564932004651.png あっあっあっ

34 19/08/05(月)00:23:06 No.612138628

>1564932004651.png これが天国…!

35 19/08/05(月)00:23:16 No.612138680

>1564932004651.png 間に挟まれたかー!

36 19/08/05(月)00:23:38 No.612138782

>>1564932004651.png >間に挟まれたかー! さくらはん!!!!!

37 19/08/05(月)00:24:22 No.612138977

尊い…!

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