19/08/04(日)23:17:00 ここは... のスレッド詳細
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19/08/04(日)23:17:00 No.612118240
ここはクラブ『サヨヒメ』。佐賀県某所、フランシュシュ邸地下の一室にて営業している小さなクラブだ。経営者は俺、巽幸太郎。ホストも俺、巽幸太郎。厨房も俺、巽幸太郎。皆、巽幸太郎。源氏名は『ハッピー=タツミ』 だ。この源氏名、とあるゾンビィはとても気に入ってくれたようで、嬉しそうにハッピーハッピーと呼んでくれる。こちらとしても嬉しい限りだ。まあ、調子に乗って呼ばれる度に『ラブ』と応じていたら他のゾンビィに舌打ちされたんだがな。うむ、調子に乗らないで全員を平等に扱えということだろう。失敗失敗。しかし、今日に限って言えば別だ。何故なら本日八月四日はそいつの命日。きっと沈んでいるに違いない。沈んだゾンビィを引き揚げるのもプロデューサー兼ホストたる俺の使命だ。見事癒してみせましょう。されど、あくまでゲストとホスト。他言無用の秘密の逢瀬。長い夜のほんの一瞬、刹那のような交わりであることはお忘れなく。それでは、クラブ『サヨヒメ』水野愛特別編始まります。
1 19/08/04(日)23:17:17 No.612118343
ガチャリ。 「来たわよ~」 やって来たのは綺麗に整った黒のショートヘアーと、そこに点々と咲く花が可愛らしいゾンビィ、否、姫だった。俺はすかさず出迎える。 「ようこそ、いらっしゃいませ。クラブ『サヨヒメ』、本日も誠心誠意おもてなしさせていただきます」 「うん、よろしく頼むわね」 おや?もっと凹んでいると思ったが、杞憂だったろうか?存外、姫は割り切っているのかもしれない。 「それでは此方へどうぞ、愛しい姫よ……」 「うん」 前言撤回。やはり元気が無い。いつもならここで『姫』ではなく『ラブ』と呼ぶように要求してくる。それに、挨拶代わりのコントも無しだ。おかげで廊下からゆうぎりの咆哮が聞こえてこない。押さえ付ける必要がないからさくら達は楽をしているだろう。
2 19/08/04(日)23:17:34 No.612118428
「姫、いやラブ。相談なら乗りますよ?」 入口で申し訳無いが、彼女には元気になってから『サヨヒメ』を楽しんでもらいたい。エスコートは後回しだ。 「ううん、大したことじゃないの。ただ……さっきテレビ観てたらね……」 「ああ……」 察した。今日は水野愛が伝説になった日。あの衝撃的な死に方だ。特番でも組まれていたのだろう。で、それを観ていたら…… 「泣いてる人がいたのよ……」 ラブがポツリと呟いた。 「私は、誰かを笑顔にしたくてアイドルになったのに……私が死んだせいで誰かから笑顔を奪ってしまったのかも、って思ってね……」 涙混じりに漏らすラブ。それを見ていると、ふと11年前の記憶が蘇る。歓声、轟音、悲鳴。人々の記憶に焼き付いたあの日。多くの人が悲しみに包まれたのかもしれない。
3 19/08/04(日)23:17:52 No.612118506
「でも……誰もが笑顔を失ったとは限らないんじゃないですか?」 確かに辛い出来事だった。それでも、笑顔を失わなかった人間もいるはずなのだ。 「……どうして言い切れるの?」 「……実例を知っているからです。知り合いに生前のラブのファンがいました。貴方が死んで、ソイツは相当ショックを受けて……その場は笑顔を失っていたかもしれません」 でも、と俺は一呼吸置いた。当時の、立ち上がった時の空気を思い出せるように。そしてそれが、ラブにも届くように。 「でも、ソイツは気付いたんです。悲しんでいてもしょうがないことに。失ったものを嘆くのではなく、取り返そうって。新しい何かに繋げようって。そうやって目標が出来たら、自然と笑えるようになって、頑張れた。貴方は最初から最期まで、ソイツの支えになっていたんですよ」 「でも……皆が皆、その人みたいだとは限らないわ。私のせいで折れて、立ち上がれない人もいるかも………」
4 19/08/04(日)23:18:16 No.612118637
「だったら……!だったらこれからの貴方が笑顔を取り戻せば良い!水野愛は死んで伝説になった。でも、フランシュシュ3号はまだ生きていて、伝説になる途中なんですよ!皆の笑顔を取り戻して、最高の伝説になってください」 ラブの表情が変わった気がした。ゾンビィの目に精気が戻る。 「……そうね!うん、その通りだわ!ちょっとうじうじ悩んでた!ごめんね、ハッピー!」 「いえいえ、アイドルに真摯に向き合う、ラブらしい悩みだったと思いますよ」 うむ、吹っ切れたらしいな。良かった良かった。 「ねぇ、最後に一つ聞いていい?その知り合いさんは今、幸せ?」 「ええ、もちろん。最高の毎日を過ごしていますよ」 「良かったぁ。その人に伝えといて。貴方がファンで良かったって」 「……かしこまりました」 ラブがニッコリと、笑いかける。頭の花も満開だ。
5 19/08/04(日)23:18:40 No.612118746
「じゃあ、元気も戻ったことだし!」 パァンとラブが両手を叩く。俺も合わせて身構えた。 「ねぇ、ハッピー。今日って私の命日なんだ!」 「おや、そうなんですかラブ。どんな死に方だったんですか?」 「こう、雷でバリバリドゴーンって死んじゃったの!」 「ほ~う、ということは漫画よろしく骨まで見えたことでしょうな~。まあ、ラブは普段から骨みたいに薄っぺらいボディなんだがな!」 「なんなの!?」 「や~い、ペチャパイ~」 「なんなの!?コイツめ!コイツめ!」 「や、やめんかい!俺が悪かったから!お詫びにホラ」 「わあ、綺麗な花束!くれるの?」 「ええ、もちろん。命日なんだから喧嘩もそこそこに献花ってね!」 「「ハイ、カットイン!!!」」 「「イエーイ!!!」」
6 19/08/04(日)23:19:23 No.612118940
「がああああああああ!!!!」 俺達がハイタッチを決めようとした瞬間、入口が勢い良く開き、黒服の花魁が乱入してきた。 「何ででありんすか!?何ででありんすかぁ!?途中までまともだったのにぃぃぃ!!!!」 「ごめんね幸太郎さん、愛ちゃん!ちょっと今日はゆうぎりさん抑えるの失敗しちゃったぁぁぁ!!!」 「やべやべやべ姐さんマジ切れとる!!!」 「ヴァァァァァァ!!!!」 「わぁ、さくらちゃんがとばっちりでぶっ飛ばされた~。死にそうな勢いだね」 「もう死んでますけどね。……それはそうと愛さん。ちょっとずるくないですか?」 やれやれ、ラブを癒すどころの騒ぎではなくなってしまったな。だが、チラリとラブの顔を覗きこむと、彼女は笑っていた。彼女が再び伝説となる時、その横にはあの騒がしい仲間達もきっと立っていることだろう。はてさて、彼女達はどんな伝説を作っていくのだろうか。及ばずながら力を貸すぞ、我がやーらしかゾンビィ共。
7 19/08/04(日)23:21:07 No.612119554
というわけで久し振りにホスト編を書いてみたでありんす あまりホスト関係無いないような気がするけど許してほしいでありんす 愛ちゃんに幸あれ
8 19/08/04(日)23:28:24 No.612122030
があああああ!!!
9 19/08/04(日)23:29:31 No.612122394
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