ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/05/22(水)22:21:26 No.593318131
技術の発展により成田から佐賀まで飛行機で僅か二日半となった昨今では有名な話であるが、佐賀県にはご当地アイドルというやつがある。 フランシュシュという名前のユニットで、最近初めてチェキ会をやったらぶち壊しになった。その事を苦にしたメンバーが一人逐電したので、大変なことになっている。 「というわけで私、探しに行ってきます!」 「ええけど、どこ行ったかの見当ついとっか?」 サキに答える代わりにさくらは指笛を吹いた。天井裏がドタドタと騒がしくなってガタガタと天井板が一枚ズレて、埃まみれのたえが落ちてきた。口角からはネズミの尻尾のように見えるものがはみ出しているが、多分イカゲソかなんかだろう。 「いっつも純子ちゃんを噛んでたたえちゃんなら、きっと分かると思うんです」 「なるほどなぁ」 サキはすぐに納得した。レディースでゾンビなので難しいことは考えない。 「じゃ、晩までには帰ってこいよー」 「はい!たえちゃん、行くよ!」 失われた純子を見つけ出し、己が手中に取り戻す。崇高なる目的を胸に秘め、二人は洋館を後にした。 「あちょー!」 夕方の曇り空にたえの鬨の声が響いた。
1 19/05/22(水)22:21:52 No.593318295
──── 「この道なんやね!」 「ウー!」 さくらとたえは迷いなく足を進めた。新鮮な純子の肉を求めるたえの嗅覚が大いに役に立っている。 そこに車が通りがかった。普段ならどうということもないが、今回は窓からスルメがはみ出している。山田たえという女、純子も好きだがスルメもたいそう好きである。故に、 「ウオー!」 目標をスルメに変更した。愛しきスルメを追って爆走するたえはさくらを置いて、遥か地平の向こう側へ消えた。 「たえちゃーん!」 不幸な事故によって純子へたどり着く手がかりを失った。とはいえ、手ぶらで帰るにはまだ早い。これまで歩いてきた道に従い闇雲に足を動かすと、海水浴場に辿り着いた。 さくらは唐津の海を眺めた。穏やかな波が寄せては返す。目を閉じて音のリズムへ集中すれば、不思議と焦る心は静まってくる。 瞼を開けて、再び海へと目をやった。波打ち際にはいちゃつくカップルがいて、それを狙う巨大なサメがいて、そのすぐ横を少女が一人で歩いている。 少女が目深に被る帽子の下からは春にきらめく残雪のように、見慣れた白髪がこぼれていた。 「純子ちゃん…」 強めに吹いた潮風はさくらの髪をなびかせ、少女の帽子を攫った。
2 19/05/22(水)22:28:13 No.593320394
>技術の発展により成田から佐賀まで飛行機で僅か二日半となった昨今 佐賀は地球の裏側か何処かにあるんです?