ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
19/04/24(水)00:19:02 No.585982838
厳しい冬を耐え抜いた花が咲き乱れるこの季節になっても、日が落ちれば外は身を切るような寒さになる。けれどこの部屋の中は、そんなことを忘れてしまうように暑かった。 「んっ…あ…あっ…あんっ…!」 余裕を見せるために噛み殺していた声がもう抑えられない。汗にまみれた彼と私の身体が触れ合う度に、私の中に深く埋めた彼の熱い半身が、私の中をかき回す度に、身体の隅々に言い知れないほど強い快楽が走るのがわかる。
1 19/04/24(水)00:19:25 No.585982946
「うっ…あぁっ…カーマ…カーマ…!」 懇願するように私の名を呼ぶ彼の声色からも、彼の限界が近いということは容易に伺い知れた。まだ微かに力の入る腕を彼の背に回して、彼の耳元で囁く。 「しょうがないですね…っ…いいですよ…んっ、いっぱい、出してくださいっ…!」 そう言うが早いか、彼の動くペースが目に見えて早くなっていく。私の中を抉る快楽も、もう抑えられないほどに感度を増してゆく--- 「っあっ…カーマ…!もう、無理っ……!!」 「あっ、来て、来て……!」 彼のそれが、熱い精をどくどくと吐き出してゆく。私の中を浸して、繋がっている所の間からも漏れ出ていくのがわかる。お腹の内側から広がってゆく温かさを感じながら、私は愛する人のものを自分の一番大切な場所で受け止めた幸福に包まれていた。
2 19/04/24(水)00:19:51 No.585983068
「はあっ…はあっ……もう、出しすぎですよ」 「ごめん、でもカーマが気持ちよすぎて…」 そう言う間も惜しいというかのように、私の唇が塞がれる。歯列を割り開いて入ってくる彼のせっかちな舌を、嗜めるように優しく愛撫する。 「んっ、ふっ、はむ、ちゅっ……!」 優しい愛撫が激しいディープキスに変わるまでに、そう時間はかからなかった。そして、いまだ私の中を満たしている彼のものが、もう一度熱く硬度を取り戻すのも、一瞬のことだった。 「ごめん、カーマ…俺、もっと……!」 「んっ、もう始めてるじゃないですかぁっ…本当に、しょうがないですね…!」 再び激しさを増しはじめた抽挿に声が漏れる。まだ私の中を浸している彼の出したものも、それにあわせてこぷこぷと揺れはじめた。 「好きなだけ、しましょう…?私の、あなた…」
3 19/04/24(水)00:20:14 No.585983153
私たちの情事は、決まっていつもこうなる。いろいろなシチュエーションから始めても、私が身体を変えてみても、最後には会話もそこそこに、初めて会ったときの姿で、獣のように激しく愛を確かめ合うのだ。仕方ない。気分を変えてといつもと違う格好でしてみても、事に及んでいくうちに、もっと互いに愛されたい、難しいことなんかやめて愛し合いたいという気持ちが、二人とも強くなってしまうのだ。だからずっと、二回目から先はいつもこんなふうになるのだった。 それに、一回だってもたない時だってある。決まった時間に示し合わせずに、片方がもう片方をいきなり求めるときがそうだ。 理由も状況も、いつも同じというわけじゃない。会社の用事が長引いた、パートで同僚のカップルの話を聞いてしまった、その場の雰囲気がそうさせた、なんて、動機を挙げたらきりがない。求める方もその動機も千差万別だけれど、結末は結局同じ。お互いにもう我慢できなくなって、お互いの与える快楽に激しく溺れていく。 今日のきっかけはいったい何だったっけ。でも、もうそんなことどうだっていい。 だって、彼の想いはこんなにも心地いいもの---
4 19/04/24(水)00:20:56 No.585983348
白い丸の中に無造作に走る赤い線。それは、私の中に新しい命が宿ったことを示していた。 うれしかった。大好きな彼が私にくれた、最高の贈り物。いつものように仕事から帰ってきた彼にこのことを伝えると、彼はその綺麗な青い瞳に涙を浮かべて、私を優しく抱きしめてくれた。 「ありがとう、カーマ…!本当に、ありがとう……!」 ああ、本当にうれしい。彼の腕の中でその幸福に浸りながら、私は心からそう思った。 緑が生い茂り、咲き誇っていた花が散りはじめた、夏のはじめのことだった。
5 19/04/24(水)00:21:28 No.585983484
急に
6 19/04/24(水)00:21:47 No.585983572
ここはどこだろう。 気がつくと、何もない真っ暗な空間に立っていた。周りに何があるかもわからず、自分がどこにいるかの見当もつかなかったが、頭はなぜか冴えていて、これはきっと夢だろうということはすぐにわかった。 しばらくたつと、目が慣れてきたのか周りが見えてくるようになった。しかし、見れば見るほど妙な空間だ。真っ暗だと思っていた場所には、大小様々の「点」があった。赤、青、黄色。それはまるで星空のような---
7 19/04/24(水)00:22:03 No.585983638
いや、何かおかしい。周りは見えてくるようになったが、自分の正面だけは暗いままだ。真っ黒な塊が、自分の前で蠢いていた。 それに周りも異常だ。正面の暗闇とは対照的に、どんどん明るくなっていく。自分の目が慣れてきているなどというものではない。そして、今まで私は自分が立っていると思っていたが、よく見れば立つための地面がない。 私はこの空間を知っている。これは、間違いなく--- そう気づいた瞬間、目の前にあった黒い塊が、どっと私に押し寄せてきた。 言葉など発するはずはないが、私にはあれの目的がわかってしまう。そう、あれは「生まれたがっている」のだと。 そう悟った瞬間、必死に逃げ出していた。あれに捕まったらお仕舞いだ。触れたが最後、絶対に逃れられないだろう。そして、きっとあれに取り込まれてしまうに違いない。 そんな私の焦りを嘲笑うように、黒い塊は私との距離を着実に縮めていた。全力で逃げようともがくが、足は空を掻くばかりで、まるで前に進まない。しまった。ここは完全にあれの空間になっていたのだ--- 逃げられない。絶対に捕まる。 だめ、私はどうなってもいいから、この子だけは---
8 19/04/24(水)00:22:25 No.585983730
「ーマ、カーマ!」 はっと目が覚める。心配そうな彼の顔が目の前にあった。 「私、いったい---」 「すごくうなされてたよ?大丈夫?」 彼の顔を見て、どっと安心した自分がいた。逃げ切れたのだ。あれはただの悪夢で、彼のいるこの家こそが、私の本当の居場所なのだ。 「少し悪い夢を見ていただけです。大丈夫ですから、そのうっとおしい顔はやめてください。私のほうが心配になるじゃないですか」 彼の胸に体を預けながら、いつものように軽口を叩く。そんな私を、彼は優しく抱きしめてくれた。 「よかった…。でも、何か心配なことがあったら絶対に言ってね?もう、君だけの身体ってわけじゃないんだし」 彼の温もりに包まれて、もう一度眠りについた。もうその後は、あの悪夢を見ることはなかった。
9 19/04/24(水)00:22:52 No.585983848
黒い痣。 それは私の下腹に、あるべき場所を見つけたかのように居座っていた。 絶望のあまり、気が遠退きそうだった。あの時私は逃げ切れなかったのだ。 私はかつて、彼を陥れようとしたことがあった。彼を堕落させ、自らの糧とすることで、災害の獣として羽化するために。しかしあのときは、彼は強固な意志で私の誘惑に抵抗し、それを退けた。 だが今や、彼は自ら望んで私と愛を交わしてしまった。当人たちにその気がないとしても、それは彼が私の愛に屈したと解釈できるだろう。ならばその結果であるこの子は、彼と私の犯した原罪の子であると言える。ならばこの子には、私の中に残る魔王の残滓の苗床となる素質があるに違いない--- 夢であってほしかった。早く目を覚まして、あの人がいる日常に帰りたかった。 けれど、何度朝を迎えようと、呪いの証は確かにそこにあった。
10 19/04/24(水)00:23:15 No.585983932
堕ろすしかない。 何度考えても、事態を解決する方法はこれしかない。この子に憑こうとしている呪いは、私の愛の神としての在り方から発したものだ。私が私であるかぎり、この子はいずれ、間違いなく第二のビーストIIILになってしまう。しかも、初めから完成された存在として。 そうなればもう次はない。私の時のような幸運な偶然は、もう二度と起きないだろう。この子が勝って人類を滅ぼすか、抑止力の使者によって始末されるか、末路は二つに一つだ。 いや、私やこの子が消えるだけでは収まらないだろう。きっと彼も、ビーストを産み出した存在の片割れとして消されてしまうに違いない。ただでさえ、今の彼の立場は綱渡りのような奇跡と彼自身や周りの人々の努力で実現しているのだ。もしこんなことが起きれば、間違いなく彼はただでは済まない。 やはり、私とこの子が共に死ぬしかないのだ。
11 19/04/24(水)00:23:33 No.585984011
もしこのことを打ち明けたとしたら、あなたはどうするだろう。あなたはとても優しいひとだから、きっと何か解決する方法を見つけようとするに違いない。 では、私を殺さずにあれを倒す方法がないと知ったら、あなたはどうするだろう。怒るだろうか。悔しがるだろうか。悲しむだろうか--- 私が我が儘を言ったとしても、あなたと一緒に生きたい、あなたがくれたこの子のことを、あなたと一緒に愛してあげたいと浅ましく願ったとしても、あなたはきっと微笑って許してくれるのだろう。そしてきっと私のせいで、誰にも見えないところで深い深い傷を背負って、その痛みを堪えながら涙を流すのだろう。私を悲しませないように、誰かの前ではいつものように精一杯の笑顔を浮かべながら。 それだけはいけない。あの尊い人がやっと取り戻したたった一つの幸せを壊すことなど、絶対にあってはいけない。 そうだ。たとえばそのために、私のほんの小さな幸せが、惨めで小さな私の世界が、灰のように燃え尽きて消えてしまったとしても、きっとそれは尊ばれてしかるべきことなのだ---
12 19/04/24(水)00:24:03 No.585984146
ちょっと待って
13 19/04/24(水)00:25:57 No.585984688
死ぬほど遅くなってすんまへん 前作を少し書き直したもの+続きの一部です ものすごく長くなったのでこの続きはスレを分けて投げたいと思います
14 19/04/24(水)00:40:19 No.585988237
むっ!
15 19/04/24(水)00:43:05 No.585988965
長編だ まとめて読みたい
16 19/04/24(水)00:45:51 No.585989646
この人の怪文書ストレートにエロくて好き
17 19/04/24(水)00:53:38 No.585991529
展開重いな
18 19/04/24(水)00:59:30 No.585992847
"One sorrow never comes but brings an heir, That may succeed as his inheritor. (悲しみは一人で来ない、必ず連れを伴ってくる、その悲しみの跡継ぎとなるような連れを)" などと我輩は常々申し上げておりますが、おぉ、この時の悲劇とはまさに自らが過去に遺してきた筈の獣性によりもたらされしもの。自らの過ちを無辜の赤子がそのまま跡を継ぐことになろうとは。運命とはかくも皮肉なものですなぁ さぁいざこの悲しみを背負うは彼女のみや?いやそれだけには留まりますまい。私に言わせればそれは連れを伴うもの。彼はこの事実を知った時、どのような面白い役割(ロール)を果たしてくれましょうか…我輩も一度ここで筆を置くことにしましょう あぁそうそう、我輩も名の売れた作家としてこういった相談を受けたこともありますが、そういう時はいつもこう言っておりましてね "Get thee to the nunnery ;why wouldst thou be a breeder of sinner?(尼寺へ行くがいい、罪深い子の母となったところでなんになる?)"とね 尼といえばここカルデアには…おっともうこんな時間。そろそろ作家サロンの集まりがありますゆえ我輩はここで失敬!
19 19/04/24(水)01:10:17 No.585994922
劇作家はさあ…どこにでも現れる人?
20 19/04/24(水)01:12:35 No.585995319
一応いっとくと「」ェイクスピアエミュの俺はスレ「」とは別人です お目汚し失礼しました
21 19/04/24(水)01:14:36 No.585995690
文章の波が押し寄せてくる…! 実際すいすい読めるのは凄いなこれ!
22 19/04/24(水)01:16:11 No.585995966
続き待ってるよ