19/04/09(火)22:33:03 人間を... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1554816783984.jpg 19/04/09(火)22:33:03 No.582522962
人間を親だと思って、雛鳥がその後ろをちょこちょこ歩いている映像を昔何かで見た。 その刷り込みのイメージそのままに、俺の後ろをちょこちょこと源さくら――正確にはそのゾンビィがついてきていた。 蘇ったばかりのゾンビィも起きてすぐに見たものを親と認識しているのだろうか。 たえの時はちょうど屋敷から出ていた頃に目覚めていたから、この事象が彼女にだけ発生しているのか、ゾンビィ全てに起きうるのかは判断しかねた。 まさかゾンビを引き連れて街を練り歩くわけにもいかず、ここしばらく屋敷の外に出られず引きこもりとなっていた。 メイクをすれば外出は出来なくもないだろうが、他のゾンビィたちが目覚めるまでなんとなくメイクしがたかった。 なんというかこう、源さんだけを依怙贔屓しているような感じがして気が咎めるのだ。 常に源さんに見られている、という意識もちょっと精神衛生上よくない。外出しても問題なくするのではなく、根本的な解決を図らねばなるまい。
1 19/04/09(火)22:33:36 No.582523133
「しかしどうしたらいいものか……」 「ヴぁうう」 源さんにゲソを与えながら、どうすればいいか考えてみることにした。 まずは別の動くものについていかせる作戦である。たえをゲソでおびき寄せ、その後は自由にさせることにした。 「ヴァアア」 うむ、いい感じに徘徊している。まさにゾンビィ。本能100%だ。 で、源さんの方はどうだろうか?ほら、彼女が源さんのお母さんだぞ。 「ヴぁう?」 ダメだ動かん。というか俺の隣に座ったまま立ち上がろうとすらしない。 仕方ない。次の作戦に移ろう。
2 19/04/09(火)22:34:10 No.582523314
服装をいつものベストから作業員風のツナギに変えてみた。これなら見た目には俺だとはわかるまい。 「ヴぁうう」 ドンドン。部屋を開けようとゾンビィがドアを叩いている。たえの可能性もあるが、恐らくは彼女だろう。 ふふふ、ドアを開けたら俺がおらず驚くだろうな。少し心が痛まないでもないが、これも仕方ない。 ドアを開き、そのまま知らん顔で部屋から脱出。さて、とりあえずは本屋で資料を……。 「あれ、車のカギはどこにやったか…」 「ヴぁう」 「…おう。………いやいや、なんでついてきてるんだ…」 変装も効果がないとは、今の彼女の判断力は少なくとも並の人間レベルにはあると考えなければならない。 …それなのに、俺の後をひたすらついて回っているとは少し不思議ではあるが。
3 19/04/09(火)22:34:51 No.582523542
そうだ。マスターならこういうことに詳しいのではないか。電話して聞いてみよう。 あっこら源さん、俺の腕を噛むんじゃない。俺までゾンビになったら君だって困るだろうに。 「はい、どちらさんで?」 「巽ですが。ゾンビについて聞きたいことがあるのですがいいですか?」 「なんだよ」 面倒臭そうではあるが聞いてはくれそうだ。 俺は今腕にがぶりと噛みついている可愛らしいゾンビィの刷り込みの話について、これまでの経緯を話すことにした。 あっだから腕を噛むのをやめて。ほら、ゲソ。ゲソやるからあっちに行ってくれ。 「聞いたことねえな。基本的にゾンビィは意識を取り戻すまでは死の直前の衝動で動いてるはずだ」 「…なるほど」
4 19/04/09(火)22:35:32 No.582523769
知っているところでは、彼女はオーディションの応募書類を出そうとした矢先に車に轢かれたはず。 俺の後ろについてくるような理由はまるでないように思うのだが……。 マスターにお礼を言って、がぶりと噛みついたままこちらを見上げてくるゾンビィを引きはがした。 噛みつくのはまだいいがその、なんというか体を押し付けてこられるのはその、困る。 「一つ思いついたんだが」 「なんですか?今ちょっとこっちも立て込んでまして…!」 「確かそのゾンビィ1号はお前の知り合いだったな。お前が知り合いだって察してるんじゃねえか?」 「…そうなのか?」 「ヴぁう」
5 19/04/09(火)22:36:39 No.582524120
たえの様子からゾンビィは意識がないものだと思っていたし、すっかり油断していた。 もしかすると、意識を完全に取り戻しても覚えていたりするのだろうか。 「可能性は高いと言っていいと思うが…。まあいいんじゃねえか?」 「よくないです。ないんですか、記憶をリセットする方法とか」 「ないわけじゃねえが…運が悪いと生前の記憶も消えちまうな。ま、軽い記憶喪失みたいなもんで赤子に戻るわけじゃねえんだが」 「………」 「やるかやらないか決めたら、また連絡しな」 「ありがとうございます…」 電話を置き、隣にちょこんと座っている源さんと目を合わせた。 確かに今のままだったら困るし、意識を取り戻して「あっ乾くんやん!」とかされたらもっと困る。
6 19/04/09(火)22:37:46 No.582524473
だが、マスターの言う処理をしたら…。 彼女は自他ともに認める「もってない」人間だ。恐らく生前の記憶も消えてしまうことだろう。 それまでの一生が努力した結果打ちのめされた経験しかないにしても、消した方がいいと俺には言い切れない。 「ヴぁう?」 いや。俺の目的は、佐賀を復興させることだ。源さん一人のために、この計画を崩すわけにはいかない。 それに最低限の記憶は残るとマスターは言っていた。彼女ならば、きっと記憶がなくてもアイドルとしてやっていけるだろう。 源さんの両肩に手を置き、じっと瞳を見つめ、頭を下げた。 「源さん、俺はこれから君に酷いことをする。……恨んでくれて構わない」 「ヴぁうぅ……」 恥ずかしげに目を伏せた源さんから手を離しマスターに電話を掛けると、何故か襲い掛かられた。 意識は本当にあるのだろうか。これゾンビィの本能だったりしないだろうか。
7 19/04/09(火)22:38:56 No.582524859
翌日。静かに眠っている源さんを確認して、これなら手もかからねえなとマスターはこちらに振り向いた。 「じゃ、記憶を消す処置をするぜ。お前は他のゾンビィたちを起こす準備をしてな」 「ええ、そうします。ここのところ、源さんに時間を取られていましたからね」 「……お前よ、容姿変えてみたらどうだ。髪を染めるとか、サングラスしてみるとかよ。またバレたら面倒だぞ」 「ああ…確かに。そうした方がいいですね。また源さんの記憶を消すわけにもいかないですから」 「あとなんかこう、違うキャラを演じろ。普段のお前とは逆方向な感じでよ」 そんな無茶な。これまで生きてきて培ってきた性格を変えるなど簡単ではない。 反論すると、また記憶を消したいのか?と脅された。 …仕方なく頷く。こんなことなど、できればもう二度とはしたくない。
8 19/04/09(火)22:39:40 No.582525104
「………本当にごめん、源さん」 せめて、記憶がなくなった彼女でも支えてアイドルにしてみせる。 そう決意して部屋から出ようとすると、「ヴぁあ」といつもの源さんのうめき声が聞こえたような気がした。 ――案の定、源さん…さくらの記憶は失われてしまった。 しかしそれでも彼女はアイドルとして前に向かって歩みだし、フランシュシュはアイドルとして自立し始めた。 アルピノを経てさくらは記憶を取り戻すことにも成功し、不幸だった自分すら受け入れた。 ……のはいいのだが。あの期間の記憶は果たしてどうなったのか。 今日はライブ疲れですぐにアイツらはお休みしてしまったから、明日辺りにでもこっそり伺ってみるとするか。
9 19/04/09(火)22:40:07 [sage] No.582525252
こんこん。 「ヴぁうう♪」
10 19/04/09(火)22:44:20 No.582526709
そうか…火かき棒を見るにヴぁ~してた頃のことも完全に忘れるわけじゃないんだよな…
11 19/04/09(火)22:46:05 No.582527267
乾くん…
12 19/04/09(火)22:46:22 No.582527356
言われれば覚えててもおかしくないのか しかしだとするとこれ巽の正体バレバレなのでは?
13 19/04/09(火)22:48:35 No.582528065
処置かー…
14 19/04/09(火)22:51:42 No.582529109
このゾンビィノリノリである
15 19/04/09(火)22:52:06 No.582529239
思い出せる夢程度の所々怪しい記憶だけど 覚えている光景やらぶっちゃけカレンダーやらで時期は推測できて 急に態度を変えた乾君が限りなく可愛く見えるさくらなのでした まる!
16 19/04/09(火)22:59:01 No.582531462
わっちこれ好き!
17 19/04/09(火)23:00:06 No.582531797
実際にさくらが記憶を失ってたのは想定内だったのかな
18 19/04/09(火)23:00:32 No.582531925
>「ヴぁうう♪」 よか…
19 19/04/09(火)23:01:56 No.582532335
呑んでる時は基本ダウナーな感じだよな巽… マスターと会話してるあの巽が素なんだろうか
20 19/04/09(火)23:01:59 [かってにつづき] No.582532351
「なんじゃさくら」 ドアを開けた所に居たのはつい先ほど寝たはずの彼女だった。 「ヴァ~♪」 「何をしとん…ちょっちょっ近い近い」 意識が無かったときのように身体をすり寄らせ、いやむしろ押し倒そうとしてきている。 「やめんかい…やめんかい…」 怒鳴り散らして突き飛ばせば良かったのだが、何故かそれが出来なかった。 「あのね」 これ以上は脚が踏ん張れん、と言う体勢になってさくらが口を開いた。 「思い出したって言ったでしょ?乾君♪」
21 19/04/09(火)23:02:05 No.582532378
実は記憶が戻る前から時々この頃のことを夢に見ててぇ そのせいで巽になんとなーく親近感を感じててぇ
22 19/04/09(火)23:03:07 No.582532691
抱きなんし!
23 19/04/09(火)23:03:10 No.582532708
最初驚いて逃げていったのは完全に想定外っぽいよね
24 19/04/09(火)23:20:26 [かってにつづき] No.582537525
「私持っとらんなぁ~…本当に持っとらん」 「なにがじゃと言うかどかんかい」 「いやもうそれこそ色々あったけど、本当に持っとらんのは…乾君のことをきれいさっぱり忘れてたって事やね」 「忘れとかんかいてかあっあっ腰が腰が」 「そないに踏ん張らんと、倒れてしまえばいいのに。後ろベッドだよ?」 「へ?うおっふ」 一瞬気を逸らした瞬間、俺はさくらを抱き抱えるようにして床に倒れ込んだ。 頭をぶつけ、若干意識が揺らいだ。 「つぅ~~………? !?」 さくらが俺の上に跨がって、寝間着をするすると脱ぎ始めているではないか。 「なっ、なにをするんじゃこんバカゾンビィ!?」 「ゾンビィに捕まってしまった哀れなお兄さんは…ここで食べられてしまうのです♪」 さくらの胸が顔に押し付けられ、俺は目の前が真っ暗になった…。
25 19/04/09(火)23:22:51 No.582538173
ざんねん たつみの えんぎは ここ で おわって しまった
26 19/04/09(火)23:24:41 No.582538699
幸せなバッドエンドに突入しちまう!
27 19/04/09(火)23:28:50 No.582539846
好いとーとよ乾くん 私嬉しくてもう止まれんよ
28 19/04/09(火)23:30:34 No.582540332
ゾンビが生者を食べるのはしょうがないこととよ!
29 19/04/09(火)23:32:11 No.582540780
そりゃあんなどやんすな胸押し付けられたら何も見えないよね…