虹裏img歴史資料館

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19/01/22(火)00:30:20 あれか... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1548084620148.jpg 19/01/22(火)00:30:20 No.563800292

あれからまた数日が経過した。戦々恐々としていたが、ゆうぎりは別に何をするでもなく普段通りであった。 つまるところ先の言葉は愛やさくらと同じく「これからは本気でトップアイドルを目指す」という意気込みを表明しただけではないだろうか。 好感度自体はもう気にしないことにした。下げようとすると失敗してばかりだったためだ。それほど上がっている気もしないし放置でいいだろう。 ストーカー問題について話していないのはリリィとたえだけになってしまったが、あえて話に行くべきだろうか。 それともいっそのこと、日記は全部嘘でしたと白状してしまおうか。 幸太郎はしばらくうんうんと唸っていたが、それを思い直した。 藪を突いて蛇を出す必要はない。佐賀のトップアイドルまでへの道はもう既に見えているのだ。そのレールの上を走る以外は今は必要ないのだ、と。 現実逃避であった。

1 19/01/22(火)00:30:50 No.563800449

「はぁ…」 レッスンの休憩の間、星川リリィは一人でそっと溜息をついた。 ここ最近は彼を除いたモチベーションがかなり高い。 元々積極的だったさくらと愛は言うまでもなく、純子もかなりレッスン内容に口を挟むようになった。 特にリリィが驚いたのはゆうぎりである。これまで皆の通りに、という風であったのが嘘のように活動内容に関わっている。 休憩時間の今でも愛と新曲の振り付けについて、議論を交わしていた。 そしてリーダーのサキはといえば、全員の覚悟が決まったのが嬉しそうでこれまで以上に気合を入れている。 さくらが頑張るのならば自分もと、たえも必死に振り付けの練習をしているところだった。 この空気についていけてないのは自分だけだ、とリリィは今まで感じたことのない疎外感を味わっていた。 「愛ちゃんはわからなくもないけど、なんで皆やる気になれるんだろ」 聞かれないように小さく呟いた言葉は、フランシュシュ6号の仮面が僅かに剥がれていた。

2 19/01/22(火)00:31:08 No.563800552

「リリィはおるかーい!!!!」 「あ、おはようございます。幸太郎さん」 「幸太郎はん、何かありんしたか?」 「営業先がフランシュシュ6号をご指名なんじゃい!はいゴーゴーゴーゴーゴー!」 「わわっ!?」 部屋に入ってきた幸太郎は鋭いコーナリングで近寄ってきたどやんすとありんすをかわすと、部屋の隅っこにいたリリィをキャッチ。 そのまま入ってきた勢いそのままに部屋を飛び出ていった。 「なんなのアイツ。今ゆうぎりや純子と話してたこと、相談しようかなって思ってたのに。ファン失格じゃない」 「まあまあ、巽さんもお仕事ですから」 「ちんちくはおらんけど仕方なか。6人で練習すっばい」 「ヴァー!」

3 19/01/22(火)00:31:41 No.563800739

「ねえたつみ、本当に営業先の人リリィを指名してきたの?」 「なんじゃい、お前そんなこと疑っとるんかい。嘘つく必要がどこにあるんじゃい」 メイクを施しながら、幸太郎が面倒臭そうに答える。 実際のところサキを除いた他の面々とあまり二人きりになりたくないのも本当だが、リリィの指名があったのも事実。 幸太郎としても問題行動の少なく言動も安定しているリリィは頼りにしているところだった。 「愛ちゃんじゃなくていいのかなーって」 「お前までそれ言うんかい。もう言われすぎてて飽き飽きじゃい」 「あんな気持ち悪い日記を書いておいてそれは無理かなってリリィ思うなー」 態度には出していないが、気持ち悪がってはいるということか。 もう今更好感度調整をしようとは幸太郎も思っていないが、意外な手応えを感じていた。

4 19/01/22(火)00:32:10 No.563800882

「………はぁー」 「ご苦労だったな、リリィ。よくやってくれた」 あれもこれもと押し付けられたお菓子を隣の助手席に渡しながら、いつもより疲れ気味の様子の相方を労わった。 ファンに接する態度こそいつも通りであったが、車中での様子は普段とはかなり異なる。 そもそもさっき連れ出した時も、妙にメンバーと距離があるように見えた。 藪を突くのは躊躇われたが、しかしフランシュシュの活動に支障が出る方が問題だろうと、あえて聞いてみることにした。 「どうかしたのか。いつもより疲れているみたいだが」 「べっつにー。レッスンの後にいきなり営業に連れてこられたから疲れちゃっただけ」 「……本当にそれだけか」 「本当にそれだけだよ」

5 19/01/22(火)00:32:55 No.563801097

気持ちと言葉のずれを感じながら、それでもリリィは幸太郎の心配を拒絶した。 自分たちと距離を取りたがっている男は、こう言えば深くは追及してこないだろう。 リリィはそう思っていたのだが、幸太郎は距離を取ろうとすると失敗してしまうと学習していた。 「いいや嘘だな。お前、レッスンの時も面白くなさそうだったろう」 「面白いもん。たつみは見てなかったけどリリィ爆笑する五分前ぐらいだったし」 小学生か、と呆れかけて目の前の小さな存在が本当に小学生であったことを今更ながらに思い出していた。 大人びているところがあるからどうも大人に接するようにしてしまっているが、彼はまだ子供なのだ。 更に追求しようとした言葉を止め、冷静になれるように諭す方向にした。 「そうか。別に嫌だったら言わなくてもいい。だが、何かあったら俺やフランシュシュの奴らに相談しろ。あいつらなら真摯に受け止めてくれるだろう」 「―――」 その言葉に、しん、と車内が静まり返った。剥がれかけていたフランシュシュ6号の仮面が崩れていく。

6 19/01/22(火)00:33:26 No.563801265

「ウソツキ」 無音になった世界に、冷えるような死者の言葉が響く。 「愛ちゃんの気持ち悪いストーカーのくせに」 辛辣で冷たい言葉は、しかして泣いているように幸太郎には感じられた。いや、まさしく彼の心は泣いているのだろう。 ゾンビィとなって、親とは離れて暮らすしかなく、ゾンビィの仲間たちは居れど心細くなかったわけがない。 そんな中で最初こそゴミみたいにダサいセンスの持ち主とバカにしていたが、彼とその父のために尽力してくれた幸太郎。 リリィの中で保護者を見るような目線に変わっていったとしても自然なことだったろう。 ―そして、そんな折に保護者がお前のことなど何一つ気にしていないなどと思わされてしまったら― 「……そうだな。俺は気持ち悪いストーカーだ」 「そうだよ。リリィすっごい引いたもん。こんなゴミみたいにだっさい内容よく書けるなって」 「フランシュシュの、な」

7 19/01/22(火)00:34:00 No.563801428

はぁ?と普段では出さないような低い声が小さな口から漏れる。 そんな誤魔化しが通用すると思っているのだろうか、このサングラスは。 「始まりは確かに水野愛だった。だが今の俺は、お前たち全員の願いを叶えてやりたいと思っている」 「なにそれ」 「……こういう事を言うのは気が引けるんだがな。お前、俺がお前とその父親のために作ってやった曲を聴いてだ。その上でお前の事を大切に思っていないと言うのか」 怒りたいのはこっちだ、と言わんばかりに幸太郎が言い返す。 リリィが想いのままに歌詞を詰め込むものだからリズムを整えるのに苦労したし、ミュージカル風の曲だって初挑戦だった。 それでも、父親に想いを届けたいというリリィの気持ちを無にはできないと必死に頑張った。 何度病院と牧のうどんの世話になったかわからない。

8 19/01/22(火)00:34:31 No.563801596

「なにさ、それ……」 幸太郎の言葉に不貞腐れながらも、リリィはその時の事を思い出していた。 そうだ。想いを届けるのを手伝ってくれたから、それまでのウザい変なグラサンというだけでなく、信頼できるプロデューサーだと思ったのだ。 でも、そうだと認めて謝るのは何とも悔しかった。少なくとも三日くらいは欲しい。 「リリィちょっと寝る。たつみ、着いたら起こして」 「……。ああ、ゆっくり休まんかい」 静まり返った車内に、しばらくして小さな寝息が響き始める。 幸太郎は横眼でちらりと寝入ったゾンビィを見やると、車の速度をやや緩めた。

9 19/01/22(火)00:36:34 No.563802221

危なかった。 他の面々がる気を出していたところで、リリィの気持ちがあれだけ冷えていればトラブルになる可能性はあった。 好感度調整をしないように努めたおかげで、何とか持ち直すことが出来ただろうか。今度重機のカタログも持ってきてご機嫌を取ってやろう。 信頼されるのはどうにもくすぐったいが、相手は子供だしリリィである。そういう怪しい感じになることはないだろう。 ホッとした気持ちでハンドルを握っていると、しばらくしてリリィがゆっくりと体を起こす。 「たつみ、あとどれくらい?」 「あと10分かそこらじゃい。寝るなら布団まで我慢せんかい」 「はーい。……あ、そうだ。たつみ、リリィが愛ちゃんより人気出ちゃったらどうするの?」 「…別にどうもせんわい。というか不貞腐れたかと思いきやいきなりやる気MAXかい。リリィちゃんは偉かねーぇ」 「それぐらいやったら、たつみがギャフンって言うかなって」 「おう、言わせてみんかい」

10 19/01/22(火)00:37:07 No.563802420

――かくして、ほぼフランシュシュ全員を巻き込んだストーカー日記騒動は幕を閉じた。 幸太郎はこの騒動を通じて自分がゾンビィ達から信頼されてしまったことをやっとのこと自覚し、ほんのり自分の体調に優しくなるのだった。 おわり

11 19/01/22(火)00:39:13 No.563803114

計画がボロボロすぎる…

12 19/01/22(火)00:39:14 [sage] No.563803119

名探偵でないまさおもいると思ったので書きました ストーカー日記まとめ su2843336.txt

13 19/01/22(火)00:44:37 No.563804769

まさおは本当に癒し…

14 19/01/22(火)00:45:24 No.563804975

ふてくされリリィやーらしかな…

15 19/01/22(火)00:48:08 No.563805677

>何度病院と牧のうどんの世話になったかわからない。 やっぱり幸太郎さん殺しとかんと…!

16 19/01/22(火)01:12:39 No.563810938

大人びていても子供なリリィよかよね…

17 19/01/22(火)01:18:27 No.563811922

まとめありがとうでありんすよ ゆうぎり姐さんの奴見逃してたか

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